会社設立の基礎知識

家族従業者とは?事業専従者との違いや社会保険・税金の扱いを解説

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

家族従業者とは?事業専従者との違いや社会保険・税金の扱いを解説

家族従業者とは、事業主が経営する事業を手伝っている親族のことです。

社会保険や労働保険の取り扱いは、親族として事業を手伝っている立場なのか、勤務実態などからほかの従業員と同様に「労働者」とみなされるのかによって変わります。

また、家族従業者に支払った給与を必要経費に算入するには、青色事業専従者の要件を満たし、事前の届出など所定の条件を満たすことが必要です。なお、白色申告の場合は、事業専従者控除として取り扱われます。

本記事では、家族従業者の定義や事業専従者との違い、社会保険・税金・給与がどのように取り扱われるかを解説します。

目次

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家族従業者とは

家族従業者とは、一般に、事業主の事業に従事する親族を指す呼称です。法律上明確に定義された用語ではなく、主に社会保険や労働保険の実務で用いられる一般的な呼称です。

家族従業者の社会保険や労働保険は、通常の従業員とは扱いが異なります。また、家族従業者に支払った給与を必要経費に算入するには、青色事業専従者の届出など一定の要件を満たすことが必要です。

なお、白色申告では家族に支払った給与そのものは必要経費に算入できませんが、要件を満たすと事業専従者控除を受けられます。

家族従業者の範囲

一般的に、家族従業者に該当するのは、事業主と生計を一にする親族です。民法上の親族とは「6親等以内の血族および3親等以内の姻族」を指し、具体的には以下の親族が該当します。

家族従業者と事業専従者の違い

家族従業者は、事業主と生計を一にしており、その事業主の事業を手伝っている親族を指す言葉です。

一方、事業専従者は、事業主と生計を一にする配偶者や15歳以上の親族のうち、その事業主の営む事業に原則としてその年を通じて6ヶ月を超える期間、専ら従事している人を指す税法上の用語です。

用語は似ていますが、使われる場面に違いがあり、社会保険や税務上の取り扱いにも影響します。


項目家族従業者事業専従者
用語の位置付け労働保険や社会保険などの文脈で使われる一般的な用語所得税法上の用語
主な論点労働者として扱われるか給与を必要経費に計上できるか

家族従業者の労働者性

家族従業者は、原則として、同居の親族のみを使用する事業においては、労働基準法上の労働者とはみなされません。

この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」

そのため、同居の親族だけで事業を行っている場合は、労働基準法上の労働時間規制などが適用されません。ただし、労働基準法が適用除外となるのは、事業主が使用する者が「同居の親族のみ」の場合に限られます。

したがって、同居親族以外の労働者を雇用している場合、その事業は労働基準法の適用対象です。同居親族本人が労働者に該当するかどうかは、事業主の指揮命令下で働いているか、労働時間や賃金がほかの労働者と同様に管理されているかなど、就業実態を踏まえて判断されます。


出典:厚生労働省「労働基準法における「労働者」とは」

家族従業者の社会保険

個人事業主に雇われている家族従業者の社会保険・労働保険の取り扱いは次のとおりです。


保険の種類取り扱い
社会保険
(健康保険・厚生年金)
原則として自分で国民健康保険・国民年金に加入する
雇用保険原則として加入できない
労災保険原則として加入できない

なお、事業主が法人の場合は、原則として社会保険の強制適用事業所となるため、法人に使用される家族従業者も、勤務実態などに応じて健康保険・厚生年金の加入対象となります。

家族従業者の社会保険・労働保険の取り扱いは勤務実態などを踏まえて判断されるため、詳しくは社会保険労務士などの専門家や年金事務所に相談しましょう。


出典:日本年金機構「厚生年金保険・健康保険制度のご案内」

健康保険・厚生年金

個人事業主の家族従業者は、原則として健康保険・厚生年金の適用対象とならないため、国民健康保険や国民年金に加入します。

ただし、家族従業者以外にも常時従業員を使用する事業所において、勤務時間や業務内容などの就業実態から、事業主との使用関係が認められる場合は、健康保険・厚生年金の被保険者となる可能性があります。

なお、適用業種に該当し、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所は、社会保険の強制適用事業所です。


【関連記事】
個人事業主は社会保険に加入できる?各条件・加入方法や従業員を雇うケースも解説

雇用保険

同居親族である家族従業者は、原則として雇用保険の加入対象とならず、失業給付や育児休業給付などを受けられません。ただし、以下の条件を全て満たし、労働者性が認められる場合は、雇用保険の加入対象となる可能性があります。

加入条件

  1. 事業主の指揮命令にしたがって業務を行っていることが明確である
  2. 労務管理や賃金管理(始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締め切り・支払時期など)がほかの労働者と同じである
  3. 取締役など、事業主と利益を一にする地位でない

労災保険

家族従業者は原則として労災保険の適用対象とならず、業務中や通勤中の災害で負傷した場合でも、労災保険による給付を受けられません。

ただし、雇用保険と同様に、事業主の指揮命令にしたがっていることが明確であり、労働条件や勤務実態がほかの従業員と同様である場合は、労災保険の対象となることがあります。

また、労災保険には「特別加入制度」があり、一定の条件を満たす家族従業者は、特別加入制度を利用できる場合があります。


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家族従業者の給与と税金の扱い

家族従業者に支払った給与は、原則として必要経費として認められません。ただし、一定の要件を満たすと、税制面で以下の優遇を受けられます。


申告の種類取り扱い
青色申告の場合青色事業専従者給与を必要経費に算入できる
白色申告の場合事業専従者控除が受けられる

家族従業者への給与を無条件で必要経費として認めると、所得分散による過度な節税につながる可能性があるため、税法上で一定の制限が設けられています。

なお、青色事業専従者給与の支払を受ける人、または白色申告者の事業専従者は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。

【関連記事】
専従者給与とは?届出・いくらまで経費にできるかも解説

青色申告の場合

青色事業専従者の条件

家族従業者が「青色事業専従者」に該当する場合、青色申告の個人事業主はその人に支払った給与を必要経費に算入できます。青色事業専従者に該当するのは、以下の全てを満たす人です。

青色事業専従者の条件

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族である
  2. その年の12月31日現在で15歳以上である
  3. その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)、青色申告者の営む事業に専ら従事している

なお、青色事業専従者に支払った給与を必要経費に算入するためには、原則として、その年の3月15日までに税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

また、青色事業専従者給与は届出書に記載した支給方法・支給額の範囲内で支払う必要があり、労務の対価として過大とみなされる部分は必要経費に算入できません。


【関連記事】
青色申告の専従者給与とは?経費にできる条件や届出書の書き方、年末調整について解説

白色申告の場合

事業専従者控除とは

白色申告の個人事業主は、原則として家族従業者に支払った給与を必要経費に算入できません。ただし、その家族が税法上の「事業専従者」に該当する場合、事業専従者控除を受けられます。

事業専従者の条件

  1. 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族である
  2. その年の12月31日現在で15歳以上である
  3. その年を通じて6ヶ月を超える期間、白色申告者の営む事業に専ら従事している

控除額は、事業専従者が配偶者であれば上限86万円、15歳以上のその他の親族であれば上限50万円です。

ただし、控除前の事業所得等の金額を「事業専従者の数 + 1」で割った金額が上限額(配偶者は86万円、その他の親族は50万円)を下回る場合は、その金額が控除の限度額となります。

なお、事業専従者控除を受けるには、確定申告書に必要事項(控除を受ける旨や金額など)を記載する必要があります。


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白色申告の事業専従者控除とは?事業専従者給与との違いや控除を受ける方法を解説

家族従業者の保育園申請

家族従業者が保育園の入園申請を行う際は、一般的に、個人事業主本人が就労証明書を作成します。雇用形態欄は、自治体指定の区分のうち「自営業専従者」や「家族従業者」など該当する項目にチェックを入れます。

一般的に、保育園の手続きの「家族従業者」とは、個人事業主と生計を一にする親族で、その事業に従事している人のことです。ただし、自治体や就業実態によって判断が異なるため、詳細は自治体の担当窓口に相談・確認しましょう。

また、家族従業者が入園申請を行う際は、就労証明書に加え、1日の就労スケジュールや自営業の内容がわかる書類などが必要となる場合があります。

家族を従業員にするための手続き

個人事業主が家族従業者に事業を手伝ってもらう際に必要となる主な手続きは、以下のとおりです。それぞれ提出期限が設けられているため、余裕をもって手続きしましょう。


手続きの種類対象者提出先提出期限
青色事業専従者給与に
関する届出書
青色申告者税務署青色事業専従者給与額を必要経費に算入する年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合や新たに専従者がいることとなった場合は、開業日または専従者がいることとなった日から2ヶ月以内)
給与支払事務所等の
開設届出書
給与支払者税務署給与の支払事務を取り扱う事務所を開設・移転・廃止した日から1ヶ月以内

※「個人事業の開業・廃業等届出書」(いわゆる開業届)に給与の支払状況を記載して提出している場合は、原則としてこの届出書は不要です。ただし、2026年1月1日以後に開業した場合は、開業届を提出していても別途この届出書が必要です。


出典:国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続」
出典:国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」


まとめ

家族従業者とは、事業主と生計を一にする親族で、事業主が経営する事業を手伝っている人です。

家族従業者は一般的な従業員とは異なり、原則として労働者とみなされないため、雇用保険や労災保険の対象となりません。ただし、就業実態などによっては労働者とみなされる場合もあります。また、家族従業者に支払った給与は、税務上の要件を満たす場合に限り、必要経費への算入が認められます。

事業を手伝っている家族が「家族従業者」に該当するかどうかは、税金や社会保険の取り扱いに大きく関わるため、正しい知識を身に付けましょう。

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よくある質問

家族従業者の範囲は?

家族従業者は、事業主が経営する事業を手伝っている親族で、配偶者・子ども・孫・父母・祖父母・兄弟姉妹・従兄弟姉妹(いとこ)などが含まれます。

詳しくは「家族従業者の範囲」をご覧ください。

家族従業者は労働者ですか?

家族従業者は、原則として労働者とみなされないため、労災保険や雇用保険の対象となりません。ただし、労災保険には特別加入制度があります。

詳しくは「家族従業者の社会保険」をご覧ください。

参考文献

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史

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