監修 麻田 雄人 司法書士、行政書士

会社設立時には定款(ていかん)のほかにも提出が必要な書類が約10種類あります。本記事では、書類別の書き方や提出方法について解説します。
また、記事の最後で紹介しているfreee会社設立を利用すれば、無料で必要な書類を一括ダウンロードできます。必要事項の入力も1度だけで大幅に手間を削減できるため、書類作成の準備をしている方はぜひご活用ください。
目次
会社設立に必要な提出書類とは
会社を設立するにあたり、以下の10種類の書類が必要になります。なお、ここでは株式会社設立に必要な書類を解説します。
合同会社の設立に必要な書類について詳しく知りたい方は、別記事「合同会社の設立方法がわかる!必要書類や設立の流れについて解説」をご覧ください。
書類 | 内容 |
---|---|
登記申請書 | 法務局に申請する書類 |
登録免許税納付用台紙 | 収入印紙を貼り付けた用紙 |
定款 | 会社の根本原則を記載した書類 |
発起人の決定書 | 本店所在地が決定されたことを証明する書類 |
取締役の就任承諾書 | 取締役に就任したことを承諾した証明証 |
代表取締役の就任承諾書 | 設立時に代表取締役に就任することを承諾した書類 |
設立時取締役の印鑑証明書 | 設立時の取締役全員分の印鑑証明書 |
資本金の払込みがあったことを証する書面 | 資本金を支払ったことが証明できる書類 |
印鑑届出書 | 会社が使用する印鑑を届け出るための書類 |
「登記すべき事項」を記載した書面 もしくは 保存したCD-R | 会社設立時に登記簿に登録するために提出する書類 (PDFなどで保存したCD-Rでも可) |
それぞれの内容や意味などについて、以下で詳しく紹介します。
1. 登記申請書
登記申請書は、法務局に提出する会社の登記手続きを行うために必要な書類です。この書類には、主に以下のような内容が含まれます。
登記申請書に記載する主な項目
- 会社名(商号)
- 本店所在地
- 公告をする方法
- 目的
- 発行可能株式総数
- 発行済株式の総数並びに種類及び数
- 資本金の額
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 役員に関する事項
- 添付書類の一覧
- 登録免許税 など
出典:法務省「商業・法人登記の申請書様式」
設立する会社の企業形態によって記載すべき内容は異なります。もし不備があった場合、登記が遅れるだけでなく登記拒否の対象にもなるため、正確に記入することが重要です。
2. 登録免許税納付用台紙
登録免許税納付用台紙とは、株式会社の登記手続きの際に法務局に必要な免許税を納付するために使用する書類です。
この書類には会社の名称や設立日、資本金の額などを記載する必要があり、同時に会社設立時の資本金額に応じた免許税を納付します。
株式会社 | 合同会社 | |
登録免許税 | 資本金の額 × 0.7% または 150,000円 どちらか高いほう | 資本金の額 × 0.7% または 60,000円 どちらか高いほう |
郵便局、または法務局に行って登録免許税分の収入印紙を購入し、A4サイズの用紙の中央に貼り付けます。
【関連記事】
会社設立にかかる登録免許税とは?費用を半額にできる制度や納税方法について解説
3. 定款
定款(ていかん)とは、会社設立時に発起人全員の同意のもとで定める企業の根本原則が記載された「会社の憲法」とも呼ばれている書類で、会社を設立するときに必要な書類のひとつです。
また昨今では、電子定款も普及しています。紙で定款を作成すると、収入印紙代として約4万円がかかりますが、電子定款ではこの収入印紙代が不要になります。
定款は企業形態などによって記載すべき項目は変わりますが、以下の「絶対的記載事項」は必ず記載しなければなりません。記載がないと定款自体が無効になるので注意しましょう。
定款の絶対的記載事項
- 事業の目的
- 商号(会社名)
- 本社所在地
- 資本金額(出資財産額)
- 発起人の氏名と住所
定款は設立者(発起人)が作成し、登記申請の際に1部(電子定款の場合はCD-R)提出します。
また、定款を作成した後に内容を変更することも可能ですが、変更の際には株主総会での承認や変更登記の手続きが必要になります。
【関連記事】
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電子定款は紙より安く作成できる?作成・認証方法についてまとめました
4. 発起人の決定書
発起人の決定書とは、定款で発起人全員の合意で本店所在地が決定されたことを証明するための書類です。
定款で設立時代表取締役を定めていない場合は、この発起人の決定書で、誰が設立時代表取締役になるのかを明らかにします。
なお、以下の条件両方を満たす場合、もしくは1.を満たす場合は発起人の決定書は不要です。
- 定款で本店所在地を番地まで含めて記載している
- 公告方法に電子公告以外を選択している
2. の条件のみの場合は本店所在地を番地まで含めて決定したことを証明できないため、発起人の決定所を提出しなければなりません。
【関連記事】
会社設立時によく目にする「発起人」って何のこと? 意味と役割を説明
5. 設立時取締役の就任承諾書
取締役の就任承諾書とは、設立する会社の取締役として就任する者が、その就任に関して同意する旨を記載した書類です。
就任承諾書には、以下のような内容が含まれます。
- 株主総会によって選任された日付
- 選任される役職名
- 選任された役職に就任することを承諾する旨
- 就任承諾書を作成した日付
- 選任された者の氏名・住所
6. 設立時代表取締役の就任承諾書
代表取締役の就任承諾書は、代表取締役として就任する者が、就任について合意し承諾する旨を書面で表明する書類です。
設立時取締役が1名で、設立時代表取締役と兼務している場合は必要ありません。 設立時に取締役と設立時代表取締役の役割が分かれている場合のみ用意しましょう。
就任承諾書の記載内容は、取締役の就任承諾書と基本的には同じ内容です。
7. 設立時取締役の印鑑証明書
発起人が設立時取締役に就任する場合は、定款の認証を受ける際に発起人が取得したものと同じ印鑑証明書が必要です。設立時取締役が複数人いる場合は、全員分の印鑑証明書を取得しておきましょう。
ただし、取締役会を設置している場合は、設立時代表取締役の印鑑証明書のみで問題ありませんが、その他の設立時取締役と設立時監査役の住民票が必要となります。
【関連記事】
会社設立時に必要不可欠!印鑑証明書を発行してもらう方法と必要な枚数について
8. 資本金の払込みがあったことを証する書面
資本金の払込みがあったことを証する書面とは、会社の設立に必要な資本金が全額払い込まれていることを証明する書類です。
通帳の以下3ヶ所をコピーして、「払い込みに関する事項」を記載した表紙をつけ製本します。各見開きページの綴り部分には会社実印で契印するのを忘れないようにしましょう。
コピーしておく通帳の箇所
- 資本金の払込みが記帳されている欄
- 表紙
- 個人情報欄
(※表紙を開いた裏にある口座番号や口座名義人が記載されている欄)
9. 印鑑届出書
印鑑届出書とは、会社の実印となる代表者印を法務局に届け出るための書類です。会社の代表者印の印鑑登録は、個人の実印を市区町村に印鑑登録するのと同じ意味合いになります。
株式会社の代表取締役や合同会社の代表者などの代表者が2名以上いる場合は、それぞれが代表者印の届け出をすることも、いずれかの代表者が代表者印の届け出をすることも可能です。
ただし、複数の代表者が代表者印の届け出をする場合には、別の印鑑を使用して、代表者ごとに印鑑届出書を作成する必要があります。
法務局のホームページにフォーマットと記載例があるので、参考にしながら記入していきましょう。
【関連記事】
会社設立に必要な印鑑届出書とはどういうもの?
10. 「登記すべき事項」記載した書面もしくは保存したCD-R
会社設立時に必要な「登記すべき事項」を記載した書面もしくは保存したCD-Rを用意します。
この書類は紙媒体でも作成可能ですが、PCで作成したほうが効率的です。作成手順や記載方法については法務省のホームページで確認できます。
登記すべき事項を法務局に電子データとして登録できる「OCR用紙」での提出が主流でしたが、現在ではOCR用紙の配布は中止され、CD-Rでの提出が推奨されています。
特にこだわりがなければA4の用紙に登記すべき事項の内容を印刷するか、CD-Rに登記すべき事項のファイルを入れて登記申請しましょう。
出典:法務局「商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」
会社設立の必要書類の綴じ方と提出方法
会社設立の必要書類は、以下の順番どおりに綴じる必要があります。
登記申請書と登記すべき事項を記載した書面、収入印紙を貼った登録免許税納付用台紙などは会社実印で契印をすることも忘れないようにしましょう。なお印鑑届出書は、一緒に綴じずに、クリップでまとめておきます。
登記書類の綴じ方
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 各就任承諾書
- 印鑑証明書
- 資本金の払い込みを証する書面

登記書類は法務局の窓口で直接提出するのが一般的ですが、郵送でも可能です。
設立登記申請書の郵送先は「本社所在地を管轄する法務局」です。あらかじめ法務局のホームページで確認しておきましょう。
また、書面申請と電子申請の申請方法によって、提出ルートが異なるので注意が必要です。
会社設立(法人登記)の書類の申請方法 | |
---|---|
書面申請 | 法務局の窓口で直接提出 |
法務局へ郵送 | |
電子申請 | オンラインで申請 |
登記書類を郵送する際の注意点
登記書類を郵送する際は以下の点に気を付けましょう。
登記書類を郵送する際の注意点
- 普通郵便でも問題ないが、念のため「書留」で送る
- 会社設立日は書類が法務局に到着し、かつ申請が受理された日となる
- 日中に連絡がつく電話番号を申請書の上部に鉛筆で記載しておく
- 封筒に「登記申請書在中」と明記しておく
なお、法務局は「不動産登記管轄区域」と「商業・法人登記管轄区域」のエリアが異なるケースがあります。また、支局や出張所の多くは商業・法人登記の事務手続きを行っておらず、都道府県の本局や支局などが広域をカバーしている事が多く見られます。
管轄の異なる法務局や、手続きに対応していない支局等に郵送しても申請は受理されないため、注意しましょう。
【関連記事】
会社設立の登記書類は郵送で送ることができる?郵送時の注意事項まとめ
法務局で申請後、10日前後で登記完了!
法務局で申請後、書類に記載漏れなどの不備がなければ最短10日ほどで登記が完了します。登記完了の際、法務局から特に連絡はありません。
会社設立後、事業開始までに必要な手続きがあるのでそちらも忘れずに行いましょう。
会社設立後に必要な手続きや書類、提出先について詳しく知りたい方は、別記事「【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは?」をあわせてご確認ください。
まとめ
会社設立に必要な書類は約10種類です。書類の提出先や必要条件は地域や法律によって異なるため、事前に管轄の各機関に相談しておくとスムーズです。
また、必要な書類は早めに準備し、提出期限は遵守しましょう。そうすることで、申請が通らないことを心配せず、スムーズな会社設立ができます。また、年末年始や夏季休暇など担当官庁の休業期間があるため、審査期間には余裕を持って手続きを進めることが重要です。
会社設立に必要な書類をカンタンに作成する方法
会社設立から事業開始までには多くの書類の準備が必要になります。内容を転記するだけでもかなりの工数がかかってしまい、他の業務が煩雑化してしまう可能性があります。
freee会社設立を利用すると、会社設立前後に必要な書類を自動で作成することができます。初めて会社設立をする方でも設立にかかる工数を大幅に削減でき、スムーズに会社設立を行うことができます。
freee会社設立なら必要項目を入力するだけ!
会社設立時には定款(ていかん)をはじめとする約10種類の書類が必要です。freee会社設立では、最初に会社名や資本金などの必要事項を入力することで必要書類を自動で作成することができます。
<freee会社設立で出力できる書類例>
- 定款
- 登記申請書
- 印鑑届出書
- 発起人決議書
- 登録免許税納付用台紙
- 就任承諾書
- 払込を証する書面 など
事業開始までに提出が必要な書類も作成可能!
また、会社を設立したあとも、事業開始までに必要な手続きが複数あります。
freee会社設立では、役所へ提出が必要な「法人設立届出書」をはじめとする書類も作成することができます。他にも、法人口座の開設や法人用クレジットカードの作成の申請も同時に行うことができます。
会社設立の準備をお考えの方は、ぜひ登録無料のfreee会社設立をお試しください。
よくある質問
株式会社を設立する際に必要な書類は?
株式会社を設立する際には以下10種類の書類が必要になります。
- 1. 登記申請書
- 2. 登録免許税納付用台紙
- 3. 定款
- 4. 発起人の決定書
- 5. 設立時取締役の就任承諾書
- 6. 設立時代表取締役の就任承諾書
- 7. 設立時取締役全員の印鑑証明書
- 8. 資本金の払込みがあったことを証する書面
- 9. 印鑑届出書
- 10. 「登記すべき事項」を記載した書面・保存したCD-R
詳しくは記事内「会社設立に必要な提出書類とは」をご覧ください。
合同会社を設立する際に必要な書類は?
合同会社を設立する際に必要な書類は、以下のとおりです。
- 1. 登記申請書
- 2. 登録免許税納付用台紙
- 3. 定款
- 4. 発起人の決定書
- 5. 設立時取締役の就任承諾書
- 6. 設立時代表取締役の就任承諾書
- 7. 資本金の払込みがあったことを証する書面
- 8. 印鑑届出書
- 9. 「登記すべき事項」を記載した書面・保存したCD-R
合同会社の場合は株式会社よりも少ない書類数で手続きができるため、会社設立に伴う時間と工数の負担は抑えられます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
会社設立の登記申請はどのくらいの期間で完了しますか?
登記申請の完了期間は、地域や申請内容によって異なります。一般的には、法務局に申請後から10日前後で完了することが多いです。詳しくは記事内「法務局で申請後、10日前後で登記完了!」をご覧ください。
監修 麻田 雄人 司法書士、行政書士
Bridgeグループではそれぞれ専門性に特化した強みを活かし、お客様に寄り添った様々なサービスを展開・提供し続ける事務所運営を行っております。「何でも相談出来る」をキーワードに一人でも多くの人に頼りにされる法務事務所を目指しております。精一杯の気持ちを込めてサービス提供し、一切妥協はいたしません。プロフェッショナルとしての自覚を持って行動しクライアント様を家族だと思い、共に成長してまいります。
