株式会社とは、株式を発行して資金を集めて運営される「会社」の代表的な形態です。
会社形態の選択は、会社を設立する際に最初に考えるべき項目のひとつです。現在、設立可能な会社形態は4つありますが、その中でも本記事で紹介する株式会社と、近年設立数が増加している合同会社を選択することが一般的です。
特に、株式会社は国内で最も数が多い会社形態です。社会的信頼度も高く、将来的に上場や事業拡大を目指している場合におすすめの会社形態である一方で、設立や運営していく上でのルールが厳格な側面もあります。
本記事では、株式会社の仕組みや設立するメリット・デメリットについて解説します。
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目次
株式会社とは?仕組みや特徴
株式会社とは、株式を発行し、その株式を出資者に販売することで資金を集めて経営を行う会社のことです。
株式会社の「株式」とは出資した人に対して発行する証券のことで、出資をして株式を保有する人を「株主」といいます。株主は会社の利益の分配を受けられるだけでなく、会社の経営に間接的に参加する権利があります。
株式会社の特徴のひとつとして、会社設立の際に出資した人(株主)と、実際に会社経営を行う人(取締役)が分離していることが挙げられます。
取締役は株主による集会「株主総会」での選出により決定され、取締役の中で会社を代表する人が代表取締役となります。
このように、出資者と経営者が異なることを「所有と経営の分離」といいます。なお、株主が取締役になることも可能で、小規模の会社では創業メンバーが出資者兼経営者であるケースも多く見られます。
出資者と経営者が異なるケースが多い株式会社に対して、合同会社は「出資者=会社の経営者」が原則であり、出資したすべての人に会社の経営や業務に関する決定権があります。
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株主の権利
株主は経営や事業の運営に直接参加しなくとも、会社の所有者として以下の権利が与えられています。
株主の権利
- 株主総会で経営者である取締役を選出できる(議決権がある)
- 株主総会で重要な経営方針を決定できる(議決権がある)
- 利益が出れば、配当をもらうことができる
- 会社を清算するときに残余財産があれば、分配される
- 取締役の違法行為の差し止めを請求できる
- 株主代表訴訟を提起できる
- 帳簿の閲覧請求ができる
株主総会での議決権は、株式数に応じて原則1株あたり1票とされています。配当や残余財産も株式数に応じて決定・分配されます。
また、株主は配当金をもらえるだけでなく、株主優待を受け取れるメリットもあり、株主優待の内容は会社によって異なります。
株式会社を設立するメリット
株式会社が国内で最も設立数の多い会社形態である理由のひとつとして、設立した際のメリットの多さが挙げられます。株式会社を設立した場合の代表的なメリットについて解説していきます。
社会的信用度が高い
株式会社は、国内の会社設立数のうち約92.8%を占めるため社会的にも認知度が高い会社形態です。 また、合同会社などの持分会社と比べて順守するべき法律や規制が多いため、必然的に信用度が高くなります。
出典:国税庁「令和元年度分 会社標本調査」
資金調達がしやすい
株式会社は、株式を発行することで投資家から幅広く出資を募ることができます。出資者は間接有限責任であるため、出資金額を超えて損失を負うことがなく、投資がしやすいことも出資を得やすい要因のひとつとなっています。
上述したように、その社会的信用の高さから銀行などからの融資を受けやすいこともメリットのひとつといえます。
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万が一のときにも有限責任が適用される
「有限責任」とは、出資者が会社の債権者に対して負うべき責任の限度をその出資額とすることをいいます。
会社が倒産した際には、出資したお金の分が債権への返済として失った場合でも、その金額以上に債権への責任を問われることはありません。
株式会社の株主は、債権者に直接責任を負う必要はなく、出資した会社に出資額の分だけの責任を負う「間接有限責任」が適用されます。
法人の節税メリットを受けられる
法人は個人事業主よりも経費として認められる範囲が広いため、高い節税効果があります。たとえば、役員報酬を損金として計上したり、自宅を社宅とすることで家賃を経費として計上したりすることが可能です。
個人事業主の所得税が累進課税なのに対し、法人税の場合、800万円以下の所得へは15%、800万円を超える所得へは23.2%と一定税率(資本金が1億円超の場合は一律23.2%)が適用されます。
また、株式会社を含めた法人は、設立から2期の期間、消費税納税免除(*)を受けられます。
(*)資本金1,000万円未満且つ、特定期間の課税売上高が1,000万円以下または給与等の支払合計額が1,000万円以下の場合に適用されます。
出典:国税庁「特定期間の判定」
出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
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無料で始めてみる株式会社を設立するデメリット
上述したように、株式会社は社会的信用度が高い分、合同会社などの持分会社と比べて順守するべき法律や規制が多い会社形態です。以下のデメリットについても把握した上で、設立するか検討するようにしましょう。
設立費用が高い
株式会社は、設立時に必ず発生する法定費用が合同会社などの持分会社よりも高くなります。
株式会社と合同会社の設立時の法定費用の違いは以下のとおりです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
定款用収入印紙代 (電子定款では不要) | 4万円 | 4万円 |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 (250円/1ページ) | 0円 |
定款の認証料 (公証人に支払う手数料) | 資本金100万円未満:3万円 資本金100万円以上300万円未満:4万円 資本金300万円以上:5万円 | 0円 |
登記免許税 (設立) | 15万円 または 資本金額×0.7% どちらか高いほう | 6万円 または 資本金額×0.7% どちらか高いほう |
合計 | 約25万円〜 | 約10万円〜 |
さらに設立後も役員の変更や本店の移転が発生した際は、変更するたびに登録免許税が発生します。
役員の選任や変更の登記を行う場合、資本金額1億円以上の会社であれば1件につき3万円、資本金額が1億円以下の会社であれば、1件につき1万円の登録免許税が発生します。
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出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
決算公告の義務がある
株式会社には毎年決算期ごとに決算の数字を公表することが義務づけられています。
株式会社は、決算資料(貸借対照表)を官報・日刊新聞紙・ホームビデオのいずれかへの掲載に掲載しなくてはなりません。官報や日刊新聞紙に掲載する場合、掲載料の支払いが必要になります。また、官報に掲載する場合、その掲載料は最低でも約8万円です。
なお、合同会社などの持分会社には決算公告の義務はありません。
役員任期がある
株式会社の役員の任期は最長10年です。役員の任期が終了する場合、同じ役員を再任(重任)する場合でも、改めて登記しなくてはなりません。
役員が再任された人の場合でも、役員の選任や変更の登記のため、上述した金額の登録免許税の支払いが必要です。
赤字でも納税しなければならない税金がある
法人である株式会社には、経営が赤字になってしまったとしても支払わなければならない税金があります。なお、これは株式会社だけでなく、法人に共通して課せられるものです。
株式会社に課せられる税金には、個人税でいう所得税に該当する法人税をはじめとして、大きく6種類に分けられます。
そのうち、地方税である法人市民税の「均等割分」は、会社が赤字の場合でも、あらかじめ定められた一定の税額を支払う必要があります。均等割分の金額は会社の規模によって変動しますが、最低でも7万円かかります。
資本金等の額 | 都道府県民税の均等割 | 市町村民税の均等割 (従業者50人以下) | 市町村民税の均等割 (従業者50人超) |
1,000万円以下 | 2万円 | 5万円 | 12万円 |
1,000万円超〜1億円以下 | 5万円 | 13万円 | 15万円 |
1億円超〜10億円以下 | 13万円 | 16万円 | 40万円 |
10億円超〜50億円以下 | 54万円 | 41万円 | 175万円 |
50億円超 | 80万円 | 41万円 | 300万円 |
株式会社の設立に向いている人
より多くの資金を調達し、会社の認知度や社会的信用度を高めたいと考えている人は株式会社の設立に向いています。これは、広く出資を得て事業規模を拡大するために、株式を株式市場に上場できるのは株式会社に限定されているためです。
また、設立する会社で行う事業が法人向けであれば、持分会社や個人事業主よりも社会的信用度の高い株式会社の方が有利といえます。
挑戦的でリスクやリターンが大きい事業を手掛けるスタートアップなどにおいても、資金調達の手段や選択肢が豊富な株式会社が適していると言えます。
株式会社の上場とは
株式会社の上場とは、一定の基準を満たし、証券取引所で株式の公開および売買を行う権利を得ることです。上場することでより多くの資金を獲得しやすくなり、企業としての知名度や信用も向上します。
上場するために必要な基準は証券取引所や各取引所が提供している市場によって異なりますが、主に株主数・流通株式・売買代金の時価総額・会社の運営体制をもとに判断されます。
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株式会社の設立の方法と費用
株式会社を設立する流れは以下のとおりです。
株式会社設立の基本的な流れ
- 会社の印鑑購入と基本情報の決定
- 資本金を準備する
- 定款を作成する
- 公証役場で定款認証を受ける
- 資本金の払込
- 法務局で登記申請をする
- 登記申請後に法務局で確認・手続きをする
- 各種届出など事業開始前にしておくべき手続きをする
株式会社の設立には書類や費用の用意も必要であるため、これら一連の流れや必要事項を事前に把握しておくことで手続きをよりスムーズにすすめられます。
詳しい株式会社設立の手順については以下の記事で解説しています。
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株式会社の役員の種類と任期
会社法における役員は「取締役」「監査役(および会計監査人)」「会計参与」です。役員は株主総会で選出および解任されます。
取締役
取締役とは、会社の業務遂行に関する意思決定を行う者のことです。
取締役は最低1名以上の選出が必要で、さらに「取締役会」を設置したい場合は取締役が3名以上必要になります。
取締役会と株主総会の違い
株主総会は会社の最高意思決定機関であり、会社経営に直接関係する重要事項を決定します。一方、業務執行に関する決定機関が取締役会です。
株主総会 | 取締役会 | |
役割 | 会社の最高意思決定機関 | 会社経営に関わる事項の意思決定 |
開催頻度 | 年に1回以上 (必要がある場合) | 3ヶ月に1回以上 |
決議内容 | ・定款の内容変更に関すること ・役員の選任、解任 ・役員報酬について ・組織形態に関わる重要事項 (合併・解散など) ・株主への剰余金や配当金に関わる事項 | ・会社経営に関わる事項全般 ・代表取締役の選定、解職 ・取締役の活動執行の監督 |
監査役(および会計監査人)
監査役とは、取締役の職務遂行を監査する役員のことです。
大会社かつ公開会社の場合は、監査役会および会計監査人の設置義務があります。監査役会の人数は3名以上で構成し、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。また、会計監査人は1名以上必要です。
2006年の会社法改正前は設置が義務付けられていましたが、現在では以下の条件を満たしている場合であれば監査役を選出しなくても問題ありません。
監査役を選出しなくてもよい条件
- 株式譲渡制限会社(*)である
- 取締役会を設置しない
- 取締役会と会計参与の両方をを設置している
(*)株式譲渡制限会社とは、「株式を譲渡する際は会社の承認が必要」と定款に記載している会社のことです。
出典:中小企業庁「監査役を置かなくてもよい条件について教えてください。
会計参与
会計参与とは、取締役と共同で計算書類等を作成する役員のことです。
基本的に会計参与の設置は任意で、人数にも規定はありません。ただし取締役会を設置している非公開会社において監査役がいない場合は会計参与の設置義務があります。
会計参与になれるのは会計の専門家である税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のいずれかに限られます。
役員の任期
取締役・監査役・会計参与の任期は、会社法で定められていますが、株式会社の譲渡制限会社の場合は、定款(ていかん)で定めることにより、一定の範囲内で独自に任期を設定できます。
会計監査人の任期は1年で決まっていますが、株主総会で別段の決議がされない限り原則再任されます。
役職 | 会社法で定めている任期 | 定款に記載した場合 ※譲渡制限会社のみ |
取締役 | 2年 | 1〜10年 |
監査役 | 4年 | 4〜10年 |
会計監査人 | 1年 | - |
会計参与 | 2年 | 1〜10年 |
まとめ
株式会社は社会的な信用度や認知度を高めやすく、多くの資金を調達できるため、BtoBの事業を行う場合や事業の拡大を目指している場合に適している会社の形態です。
その一方で、法律による規制や守るべきルールが他の会社形態に比べて多いことや会社を設立するためのコストが高いことなど、一定のリスクがあることも理解しなくてはなりません。
株式会社の設立を検討している場合は、事業を成功させるためにも必要事項を適切に把握し、入念に事前準備をしておきましょう。
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