会社設立の基礎知識

はじめての起業と会社設立。10年つづく株式会社のつくりかた

ビル街

世は空前の起業ブーム。起業に憧れる方、サラリーマンを辞め会社を設立し社長になる方も多いはず。事実、2012年から2014年の2年間で7.2万者が開業しています(個人・法人を含む。中小企業の動向, 経済産業省

その一方、倒産などによる廃業者数は4.8万者。起業ブームの影には、事業を畳む人が多いことを忘れてはいけません。なぜ会社は潰れてしまうのでしょうか。

起業の生存率

設立後、年月が経つほど企業生存率(企業が残っている確率)は下がります(中小企業白書2011「企業生存率」をもとに作成)。ちなみに国の調査にはなっていませんが、このグラフは商店など、個人事業事業も含む数字のため、ITベンチャーやスタートアップの起業を含めるともっと数字は下がるものと推測されます。

起業・会社設立のためにWebを調べてみても、小手先だけのハウツーやテクニックに頼ったもの、ビジョナリーではない(やりたいことが明確ではない)ベンチャー論があふれています。結局「会社の設立方法」はわかっても、どんな思いで起業を決意すればいいのか踏み込んで解説した記事は少ないもの。

今回は、「なぜ会社をつくるのか」「何をするのか」「誰と会社を設立すればいいか」「どうやって会社をつくるのか」「いつ・どこで起業するか」10年先を見据えた会社のつくりかたをまとめてご紹介。

せっかくつくったあなたの会社。10年後、会社が潰れないために、小手先だけの方法論に頼らない「10年つづく株式会社のつくり方」を完全網羅します。

目次

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会社設立 freee

会社設立 freeeを使えば、設立書類の準備は簡単にできます。会社を長く続けるために、書類手続きや書類の提出以外に集中したいという方は、ぜひご利用ください。

なぜ会社をつくるのか

先輩起業家たちが会社を立ち上げた理由はさまざま。

  • - 世の中にインパクトを与えたい
  • - 社長になりたい

など動機は多種多様です。

お金儲けのために会社を設立する方もいるでしょう。

たとえば法人化することで、個人事業主よりも信用が上がり、事業所や店舗の契約、金融機関から融資を受ける際、有利に運びます。

節税の面でも大きな恩恵が受けられ、役員の生命保険やベンツでさえも経費にすることができます。

車を持つなんて考えられない時代。個人であれば賢くカーシェアリングを利用する方は多いでしょう。しかし法人であれば、4年落ちの中古ベンツを買うことで会計上大きなメリットとなるだけでなく、むしろなぜベンツを買わないのか分からない場合さえあるのです。

なぜベンツを買うと得するのか

たとえば400万円のベンツを法人名義で、 A. 新品 で購入する場合。一度に経費とできないため、6年間にわたり少しずつ経費にするしかありません。しかし、 B. 中古のベンツ を購入する場合は特殊なスキームが働きます。1年でほぼすべてを経費にすることができるのです。基本的に会社は利益を残すと法人税が課税される仕組みですが、経費で償却の終わったベンツは価値がゼロになるわけではありません。帳簿上、価値がゼロのベンツでも、売却すれば多少のお金にはなるでしょう。合法的に会社が持てるヘソクリのようなもの。これを含み資産と言います。

お金儲けのために会社設立しても持続可能な会社はつくれない

このような、個人がちょっと考えられないようなおかしな会計の仕組み・節税スキームが法人にはたくさんあります。

賢く節税すれば大きくお金儲けをすることもできるでしょう。しかし10年続く企業を考えた場合、本当に大切なのはビジョン。設立時点で会社をどうしたいか、というあなたの思いです。

コラム:ホリエモン「お金よりも信頼が大事」

かつて時代の寵児だったホリエモン。Livedoorショックを経てもなお復活するその姿に憧れる起業家も多いはず。ホリエモンは様々なインタビューや本で「信頼は打ち出の小槌。信頼さえあればお金がなくてもやっていける」と語っています(『夢をかなえる「打ち出の小槌」』堀江貴文 著、青志社)。お金儲けのために起業するのも悪くないですが、お金は信頼さえあれば後からついてくるものです。

会社の種類

そもそも会社にする必要はあるのでしょうか。起業しようと心に決めたなら、主に株式会社、合同会社、個人事業主、3つの形態から選ぶことが考えられます。

株式会社

「会社」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは株式会社でしょう。株式会社は株式を元手に会社運営資金を集め、事業を運営する組織形態です。株式会社の出資者は株主であり、社員とは限りません。

ビジネスを展開していくうえで、社会的信用度が最も高いのが株式会社です。融資や助成金を受けやすいため、事業拡大し人材を集めるのに適した組織形態といえるでしょう。上場ができるのも株式会社だけです。

ほかにも法人特有のメリットとして、厚生年金に加入できて老後に受け取れる年金額が増えることや、最高税率が個人事業主より低いことが挙げられます。

株式会社のデメリットは設立・維持コストです。開業届を出すだけで始められる個人事業主とは違い、必要な書類や登記費用を準備しなければなりません。開業後も、帳簿の制作や決算公告などが義務づけられているため、個人事業主より経理関係の負担が増えてしまいます。さらに会社を畳むときにも費用がかかります。

合同会社

合同会社も法人の一種です。出資者イコール社員となり、株式を発行しないので上場はできません。株式会社より社会的信用度は低くなりますが、決算公告の義務がないためランニングコストが低いのが特徴です。

合同会社ならではの最大のメリットは、経営者間で利益分配を自由に決められること。株主総会を行う必要がないため、スピーディーに意志決定ができます。また株式会社と同様に、厚生年金や税制の優遇も受けられます。

詳しくはこちらの記事を参照してください。 個人事業主より節税できて株式会社よりお得!「合同会社」の設立方法・費用・メリットを説明します

個人事業主

昨今では「フリーランス」と呼ばれることも多い個人事業主。すぐに開業でき、経理関係も簡易申告で済むなど、法人に比べ各種手続きが簡単になっています。

開業のハードルが低い反面、株式会社や合同会社にあるような社会的信用は低くなります。融資が受けづらいだけでなく「法人としか取引をしない」企業もあるほどです。

個人事業主の最大のデメリットは累進課税が適用されること。法人税が最大22.5%なのに対し、課税所得900万円以上では40%の所得税が課せられます。

無限責任であるという点もデメリットになり得ます。株式会社や合同会社は有限責任のため、出資分以上の損失を負うことはありません。一方で個人事業主は、事業の負債のすべてを個人が負わなければいけないため、金額によっては個人の資産を処分するケースもあるでしょう。

株式会社・合同会社・個人事業主の比較

事業の成長、社会的信用が欲しいと考えるなら株式会社。本稿でも、株式会社の設立方法にフォーカスします。

こんな人は会社設立する必要がある

ここまで法人・個人事業主それぞれのメリットに触れていきましたが、法人化、とくに株式会社化したほうが良いケースもあります。

1. 会社をどんどん大きくしたい人

「事業規模を大きくし、人を雇ってゆくゆくは上場を目指したい」と考える人は、法人化し仕事の幅を広げましょう。「法人としか取引をしない」という大手企業も少なくありません。

2. 将来的に「事業承継」を考えている人

個人事業主が事業承継をする場合には手続きが煩雑になります。承継する人は廃業届、承継される人は開業届を出さねばなりません。また事業用資産を承継する時には贈与税が発生しますし、借入金がある場合は承継する人が廃業するタイミングで返済の義務が生じます。法人のほうが事業の承継が簡単です。

3. 継続的な仕事が期待できる人

継続的な受託契約を見込める場合は、法人化すると節税につながるケースがあります。まっさらな状態から新規事業をスタートするよりも低リスクですし、事業も安定しやすくなります。

4. 許認可の問題で「法人化」が必要な人

業種によっては、法人化していなければ事業を始められない場合があります。

たとえば、ヘルパー派遣やデイサービスなどの介護サービス業(介護保険法や障害者総合支援法で定められたサービス)は法人化して指定申請書を役所に提出しなければいけません。

株式会社にすれば長期にわたる経済的メリットが多いことがわかりました。お金儲けのために会社を設立する方もいるでしょう。しかし10年先まで続く企業を考えた場合、本当に大切なのはビジョン。設立時点で会社をどうしたいか、というあなたの思いです。ここからは多くの人が実施する、株式会社の設立に絞り、10年つづく会社づくりを紐解きます。

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何をする会社をつくるのか

なぜ株式会社をつくるのか、解決できた方は、具体的なビジョン(何をする会社をつくるのか)を決めましょう。

会社の設立方法だけわかっても、実際にビジョン策定をおろそかにしていたため数年で会社を畳むことになった例は数多くあります。

ビジョンは本当に必要なのか

「とはいえ今は受託制作の仕事で食べていけるし、ビジョンを考えている時間ももったいない(から考えない)」
と言う人もいます。しかし、以下のような場面でビジョンがあったほうがうまく進められるケースが存在します。

  • - 人を採用するとき
  • - 新規事業をはじめるとき
  • - 会社の意思決定を行うとき

こうした場合にビジョンがなくては会社として一貫性を欠いてしまうため、持続可能なビジネスとなりにくくなってしまうのです。

ここまで読んでいて「誰か別の人にビジョンを考えてもらおう」と考えている人がいるかもしれません。しかし企業を引っ張っていけるのは、これから経営者になるあなたにしかできない仕事です。目先のお金を追い求めるのではなく、ビジョンを持って仕事をするため、トップがビジョンを語らなければなりません。

先輩起業家たちも口をすっぱくしてビジョンの重要性を説いています。ビジョンをつくるうえではクラウドワークスCEOの吉田浩一郎さんや元Gunosy経営者の木村新司さんなど、数多くの起業家が参考にしている書籍、『ビジョナリーカンパニー2』が参考になるでしょう。

大事なのはハリネズミの概念を理解し、「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」を整理することです。

コラム:ハリネズミの概念

偉大な企業に共通する戦略を「ハリネズミの概念」と呼びます(『ビジョナリーカンパニー2』より)。

  • - 情熱を持って取り組めること(やりたいこと)
  • - 自社が世界一になれる部分(できること)
  • - 経済的原動力になるもの(やるべきこと)

この3つの円が重なる部分(図の青色)を明確にし、全ての活動の指針とすること。同書ではこれが企業活動の根本と説きます。

ハリネズミの概念

「ハリネズミの概念」のもととなったのはイギリスの哲学者、アイザイア・バーリンの随筆『ハリネズミと狐』。寓話の中では「あの手この手を使ってハリネズミに襲いかかっても、毎回負ける狐」と、「丸くなって身を守るだけでキツネを退け続けるハリネズミ」が登場します。ハリネズミを襲うために ”何か” をしようと意識が分散している狐に対して「体を丸める」だけで敵を追い払えると理解しているハリネズミ。狐は賢くても、自分を守るためにやることを知っているハリネズミに勝てません。

バーリンは人間も「狐型」「ハリネズミ型」の2種類に分けられると述べています。

歴史に残る偉人はみなハリネズミ型です。アインシュタインが相対性理論に、アダム・スミスが「神の見えざる手」のみに集中したように、彼らは「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」に意識を集中させ、複雑な物事を単純化できたから偉人となったのです。

企業も例外ではありません。

ビジネスには「速やかで確信ある決断」が求められます。偉大な企業になれるのは、成長だけを追い求めて右往左往する狐型ではなく、自分の強みや世の中の基本概念を深く理解し、すばやく行動できるハリネズミ型だといえるでしょう。

まず大事なのは情熱

会社を設立するときは「何を事業にするか?」を考える必要があります。そのときに考えたいひとつめの要素は情熱を持って取り組めるかどうかです。

『ビジョナリーカンパニー2』によると、偉大な企業はみな単純ではっきりとした戦略を持っています。その戦略は「自分たちが世界一になれる部分」「経済的原動力になるもの」「情熱をもって取り組める」を満たす必要があります。

何か得意なことがあって、人より高い報酬を得られたら成功者にはなれるかもしれません。しかし世界一にはなり得ないでしょう。自然と熱が入り、心の底から好きで楽しめるものを自ら見つけ出さなければならないのです。

それは自分の「趣味を仕事にしたもの」でしょうか? 「社会的意義を感じるもの」でしょうか。

会社設立の前にまずは情熱を持って取り組める事業であることを確認しましょう。

コラム:なぜフィリップモリスは偉大な企業になれたのか

加熱式タバコiQOSを開発・販売しているフィリップモリスの例を挙げてみましょう。

年々紙タバコ産業が衰退を続けるなか、同社は2,000億円をかけて開発した加熱式タバコのiQOSを、2015年に日本で発売開始。1万円弱という高価格帯商材ながら、副流煙が出にくい、においがつきにくいなどの理由から好評を得ています。2016年4月には販売台数100万台を突破し大ヒット商品となりました。iQOSのヒットを受け、フィリップモリスは2017年3月、紙タバコから撤退を表明したほど。

フィリップモリスの経営陣は自社に愛情を持ち、自社の事業に情熱を傾けています。1979年、フィリップモリスの副会長であるロス・ミルハイザーはニューヨークタイムスにて「わたしはタバコが好きだ。人生を、生きる価値があるものにしてくれる」と語っています。タバコ販売という本業に集中し、世界一になろうとしているのです。

フィリップモリスのハリネズミの概念は以下の通り。

  • - 情熱を持って取り組めること……社員のほとんどが自社製品(タバコ、ビール、コーヒー、チョコレートなど)の熱心な愛好家であり、事業に情熱がある
  • - 自社が世界一になれる部分……タバコで、後にはその他の消費財で、ブランド・ロイヤルティを築く
  • - 経済的原動力になるもの(指標)……世界的なブランド・カテゴリー当たりの利益

このように、どうすれば熱意を刺激できるのかではなく、どのような事業になら情熱を持って取り組めるかを見つけ出すことがカギとなります。

機能会社と事業会社

事業の形態によって、会社の特性を2つに分けることができます。

自分が何に情熱が持てそうかわかったら、次は具体的にどのような形態の会社をつくれば良いのか考えましょう。

たとえばあなたが情熱を持てることは「ラーメン」かもしれません。

ラーメン屋

ラーメン好きならば自らラーメン会社を経営したり、腕組みをした自分のポスターを作ったりしたいですよね。

しかし、ラーメン好きのあなたが会社を設立するとしても、「ラーメン店を自ら運営(事業)するのか」「ラーメン店のコンサルティング(機能)をするのか」、どういう事業をするのかにより、会社の立ち位置はまったく異なります。

機能会社

機能会社

受託制作やコンサルティングなど、何らかの機能を提供する会社は機能会社と呼ばれています。機能会社は、他の企業(主に事業会社)から依頼を受けて制作物の納品や人材資源を提供しています。事業会社を支援することで収益を得ており、ほとんどの機能会社は自社にサービスやプロダクトを持ちません。

営業や制作など、一定の機能に特化していることが多いです。企画・提案・運営など、企業の得意分野によってプロダクトや事業に関わるフェーズはさまざま。

ハリネズミの概念で言うならば、機能会社を作ってうまくいくためには、自分たちは何が強みなのか(デザインが得意なのか、経営コンサルティングが得意なのか etc.)考えます。

事業会社

事業会社

一方、事業会社とは自社名でサービスを運営し、プロダクトの製造販売を手がけて収益を得る企業のこと。顧客は事業会社のみならず、一般消費者も対象です。事業の立ち上げから運営、成長などのすべてのフェーズに責任を持ちながら経営します。

事業会社はフィリップモリスが紙タバコをやめiOQSに経営資源を集中した事例を見習いましょう(2,000億円の投資って尋常じゃないです)。

どちらのほうが収益は安定するのか

収入面から機能会社・事業会社を比べてみましょう。

機能会社は他企業や個人に対して、依頼された制作物やサービスを提供して報酬を得ます(受託)。そのため仕事を請けているクライアントが倒産するなどの例外を除けば、ほぼ確実に収益を生めます。事業会社と比べるとリスクが低く、かつ利益を回収できる期間が短いのが特徴。

しかし依頼が発生しないと収入が得られない(フロー収入)ため、自分で一定の収益をコントロールするのが難しいという側面もあります。単発の依頼を受けるだけでなく、継続収入(ストック収入)をいかに得るか考えることが大切です。

一方、事業会社は自社名で最終製品を作ったりブランドをつくり上げサービスを運営しています。製品やサービスの価値は市場トレンドに左右されるほか、マーケティング視点も必要で、確実に利益を生み出せるとはいえず、赤字や事業撤退、倒産のリスクもつきまといます。

受託に比べて投資から利益が得られるまでの期間も長いですが、事業が成長し安定すれば継続収入が得られやすいといえます。定期収入という安心感があることで、財政基盤が強くなり将来の見通しも立てやすくなります。

機能会社と事業会社、どっちを選べば良いのか

目的と収益の両面から機能会社・事業会社の違いに触れていきました。では10年つづく会社を目指すにはどちらを選ぶべきか?

答えはケースバイケースです。

創業当時から形を変えるケースもあります。 機能会社としてスタートし、ゆくゆくは事業会社を目指す企業もあれば、業務の専門性を高めて機能会社として価値を提供する企業もあります。

特にWebサービスで事業を起こす人は、機能会社から事業会社へ移行する(しようとする)パターンが多く見られます。「ラーメン代稼ぎ」とも呼ばれ、Web制作の受託をしつつ、生まれた利益を新規事業開発に充てる方法です。最低限の利益を上げるために、自分の持っているスキルを活かしてお金に換えます。

コラム:デットファイナンスとエクイティファイナンス

起業ブームの流れに乗って、株式の第三者割当により数億円の資金調達をし、華麗に事業をヒットさせる——起業未経験の方は起業に対してそのようなイメージを持っている方も少なくないはず。

しかし機能会社・事業会社のような自分たちの該当区分・適性を整理していけば、起業することのイメージが持てるはず。何も株式譲渡と数億円の資金調達するだけがベンチャーではないのです。

ここでお金の話をしておきましょう。どんな事業を始めるにもお金は必要です。企業の資金調達は大きく2つに分類できます。

  • - デットファイナンス……銀行や投資機関から借り入れることで資金を調達すること
  • - エクイティファイナンス……株式を発行して資金を調達すること

自分たちの事業が機能会社か事業会社か見極めたならば、その事業をやりきるのにいくらかかるのか。最初から数億円の資本調達をする方はかなり少数派だと思いますが、スモールスタートにおすすめなのは、キャッシュフロー計算書(C/F)。1〜2年先を見据えキャッシュフロー計算書をつくり、見通しを立てると良いでしょう。

幸い、今は政策金融公庫や銀行などがお金を貸したがっている時期です。政策金融公庫の新創業融資制度という制度を利用すれば、無担保無保証で運転資金・設備投資含め3,000万円までお金を借りられます。ほぼノーリスクでいろんな挑戦ができる時代です。自分が何をやりたいのか見極め、お金に対しても真摯に向き合うことが大切です。

経済的原動力は何か

機能会社でも事業会社でもどちらでも良いのですが、法人としては「経済的な原動力は何かを早めに探すのが重要です。

事業である以上、十分な利益とキャッシュフローを生み出せるような仕組みがなければ長続きしません。需要が大きい市場でも、必ずしも自分たちが活躍できるとは限りませんし、反面、知る人ぞ知るニッチな業界で頂点に立ち業績を残す企業もいます。

コラム:できること、やるべきことはいつ考えれば良いのか

自分が何をやりたいのか。情熱が大事だという話をしました。この記事では触れませんが、『ビジョナリー・カンパニー2』の中ではこの2点も大事と書かれています。

  • - 自社が世界一になれる部分(できること)
  • - 経済的原動力になるもの(やるべきこと)

これらの考えを確立できるまで、創業から平均4年かかるといわれています。多くの企業が、経済的にうまく回すために必要なことと、自社が世界一になれる部分を見つけ出すまでに時間を要するのです。ベンチャーであれば4年以内に見つけられれば大変早いほうといえるでしょう。

新規事業のトライアンドエラーも必要でしょうし、どうすれば自社の利益を最大化できるのか、創業時点でわかっているはずもありません。 ゆっくり見つけていきましょう。

誰と会社をつくるべきか

一人で会社設立するケースも増えてきていますが、創業時に共同創業者・株主を入れる場合もありますし、事業を拡大する上で社員を雇うケースが増えてきています。

そもそも社員を雇うべきか

これもケースバイケースですが、あなたの達成したいビジョンに従えば、一人社長でいる(もしくは自分に足りないスキルを持った人材を業務委託で回す)べきなのか、社員を雇うのか、雇うなら何人雇うのか、判断できるはずです。

複数人で創業する場合、共同創業者をどうするか

取締役は必ずしも必要ではありません。しかし複数人で創業する場合、後で揉めないよう、契約回りでしっかりと進める必要があります。ここでは「創業株主間契約書」を結び、リバースベスティングを設定しておくことをおすすめします。

リバースべスティング(reverse vesting)とは、勤続年数に応じて保有できる株式比率が変化していく仕組みのことです。1年未満で辞めた場合はその人が持っている株の割合のうち、100%を返還しなければいけませんが、1年以上、2年未満の期間働いているのならば25%の株を保持できる(以後、1年ごとに所持比率が25%増加)……というように、年々保有できる株式の比率が増えていく仕組みです。

リバースべスティング

共同創業者や取締役が会社を離れるパターンは、ビジネス方向性の不一致や仲違いだけに限りません。結婚・出産などによるライフスタイルの変化や、病気など何らかの事情で働けなくなってしまったりすることもあるでしょう。

創業当時では株の価値はほぼゼロに等しいですが、ビジネスの成長や資金調達によって、企業の価値は上昇していきます。共同創業者が「いざ会社を去る」となったときに株の配分や株価で揉め、貴重な時間を失うのは避けたいものです。

創業時にはきちんとした契約書を交わすヒマもないと思いますが、さまざまな場合を想定し、個人間同士で覚書を結んでおくと良いでしょう。

社員を雇いたい場合、どうやって仲間を見つけるのか

社員を雇う場合、社員はどうやって見つけるのが良いのでしょうか。

一昔前は企業側が求人サイトに掲載したり、人材紹介会社からの紹介を待ったりするなど、採用候補者が来るのを待つ受け身の姿勢が主流でした。
しかし、会社設立したばかりの会社に来てくれる人はいるのでしょうか。昨今では企業側が直接求職者へアプローチできるWebサービスが登場しており、積極的に接点を持つことが重要です。ここでは仲間づくりの方法をいくつかご紹介します。

  • - Wantedly:採用面接ではなく「話を聞きに行く」というスタンスで求職者と採用担当者がマッチングされる。求人媒体に出稿するより安価で利用可能
  • - ビズリーチ:人材データベースをもとに、企業担当者自身がハイクラス層にスカウト、アプローチできる
  • - LinkedIn:個人の経歴・キャリアを共有するビジネスSNS。転職潜在層へもアプローチできる。欧米ではLinkedInを利用したダイレクトリクルーティング(直接声をかける)が主流

ここに挙げた以外にも、サービスは続々と登場しています。数ある求人媒体のなかからどれを選ぶべきか迷う人もいるでしょう。もちろん、予算との兼ね合いがあるので掲載価格やサービス利用価格は大事なものさしのひとつですが、採用したい人材要件や人数、自社の規模や業態、知名度などによっても変化します。

まずは採用要件を明確にしたあと、いくつかの求人媒体の営業担当者に採用ポジションに該当する登録者数や、自社の条件と近い過去の採用事例などを尋ね、その回答を比較検討することをおすすめします。

掲載する媒体が決まったら、いよいよ採用候補者にアプローチする番です。現在あるサービスでは、主にスカウトのメールを送ることがアプローチの手段となります。スカウトメールには、以下の種類があることが多いです。
  • - 通常のスカウトメール:一定の条件を満たした人にテンプレート文面を送る
  • - プレミアメール:ぜひ面接に進んでほしい人材に送る。送り相手の心に響く文面となるよう工夫をこらす必要がある

プレミアメールで返信が来るコツは、スカウトした人の心を動かすラブレターのようなつもりで書くこと。メール文に明記したいのは、テンプレではなく「あなたにスカウトした理由」です。スカウト対象者のプロフィールや経歴をよく読み込み、長所となる部分や自分の会社で活かして欲しいことなどを記載するとよいでしょう。

また、どこの誰がやっているかわからない会社や、何をやっているのかわからない会社の場合、スカウトした人も良い答えは出しづらいもの。会社の方向性やビジョン、創業者である自分やメンバーがどんな人物なのかを魅力的に伝えることをおこたらないようにしましょう。

サービスだけに頼りきりでもいけません。既にいるメンバー・知り合いなど人脈を駆使したリファラル採用など、自分から直接会いに行くことも重要です。

コラム:リファラル採用のススメ

リファラル採用には、書類選考の手間を省ける、外部サービスにお金を支払う必要がないなどさまざまなメリットがありますが、採用候補者に自分のビジョンを共有しやすいのが嬉しいところ。採用候補者の経歴やスキルはもちろん、人柄や価値観を知ったうえで声をかけられるため、会社に適した人材が集まりやすくなります。

現在つながりがなくても「面白そうな人だな」と思ったら、自分から声をかけて会いに行きましょう。最近ではSNSやブログなどを活用し、積極的に情報発信をしている人もいます。すぐに採用とはならなくても、候補者から学ぶことがあったり、将来の仕事や採用に繋がったりするかもしれません。

『ビジョナリーカンパニー2』でも、「誰をバスに乗せるか(=誰を仲間にするか)」が大切であり、適切な人材こそが会社のもっとも重要な資産だと述べています。

具体的な知識や技能は教育できるが(少なくても学習できるが)、性格や労働感、基礎的な知能、目標達成の熱意、価値観はもっと根深いものだとみているのである。
引用:『ビジョナリーカンパニー2』 p.81
創業期の企業では、採用に割ける時間や人材が限られています。そんな中での人材ミスマッチや、早期離職を招くような行動は致命傷です。

どうやって会社をつくるのか

会社の「中身」が決まったら、いよいよ法人として設立するための手続きに入ります。事前に準備しておかなければいけない書類やお金、役所への届け出など、順番に確認していきましょう。

基本的な流れは以下のとおりです。

会社設立の流れ

1.印鑑を用意する

個人であれば認印1つ、もしくは実印・認印2つの印鑑があれば十分ですが、法人であれば3つの印鑑を用意しておきましょう。

  • - 代表者印(法人実印)
  • - 銀行印
  • - 社印(角印)

の3種類です。法人登記に必須なのは代表者印(法人実印)のみですが、リスク回避や業務効率化のために銀行印と社印(角印)を別途用意するのが一般的です。

代表者印(法人実印)

法務局に届けを出して登録をする印鑑です。会社設立時に必ず必要になります。形状は法律上で特に定められていませんが、一般的には直径18mmの丸印が使われます。大きさは一辺の長さが1cm から3cm の正方形に収まるものでなければいけません。代表印が押されている書類は、その会社が正式な意思決定に基づいて印鑑を押したものとして扱われます。

銀行印

銀行の法人口座開設や手形・小切手の振り出しに使うものです。経理担当者が使用する機会が多いため、代表印とは別に用意しておきましょう。

社印

見積書や請求書・領収書など、代表印を押すほど重要ではない書類の押印に使います。このようなケースには角印が多く使われています。

上記のほか、住所・社名をラクに記載できるゴム印(特に創業期には何度も住所・社名を作る機会がありますので、できれば作っておきましょう)、役職員用の印などを必要に応じて用意していけば良いでしょう。

個人の実印・印鑑証明書

会社を設立するときの書類には、発起人(創業メンバー)の数だけ記名や押印、そして印鑑証明が必要になります。各個人の印鑑登録および印鑑証明書の発行も早めに済ませておきましょう。

代表者印の印鑑登録は後ほど管轄の法務局で行います。

2.必要な書類をつくる

会社設立に必要な書類は以下のとおりです。

  1. 1.登記申請書
  2. 2.登録免許税分の収入印紙を貼り付けたA4用紙
  3. 3.定款
  4. 4.発起人の決定書
  5. 5.取締役の就任承諾書
  6. 6.代表取締役の就任承諾書
  7. 7.監査役の就任承諾書
  8. 8.取締役の印鑑証明書
  9. 9.資本金の払込を証明する書類
  10. 10.印鑑届出書
  11. 11.登記すべきことを保存したCD-RかFD

起業時に登記する場所によっては提出不要な書類もありますので、最大で11種類です。法務省のホームページからテンプレート・作成例をダウンロードして作成していきましょう。

なお、「会社設立freee」ではこれらの書類を作成できます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

会社設立に必要な書類は11種類。作成方法から提出先まですべてお教えします

3.お金を準備する

会社の設立に最低限必要な金額とは、登記にかかる費用です。株式会社設立には、これらの費用はケチることはできません。

  • - 定款に貼る収入印紙代:4万円
  • - 定款の認証時に公証人に払う手数料:5万円
  • - 登記手続きに必要な定款の謄本手数料:約2,000円
  • - 登記手続きの際の登録免許税:最低15万円(厳密には資本金の額×0.7%)

上記を合わせると、約24.2万円となります。

会社を設立するには、登記費用以外にも「資本金」を用意しておかなければいけません。株式会社を設立する際の平均資本金額は約300万円です。資本金は「初期費用+3ヶ月分の運転資金を用意」「取引先や仕入先の企業規模」「創業融資」などを考慮して決めましょう。

資本金が1,000万円以上になると、設立初年度から消費税が課されるほか、機能会社を設立する場合に影響があります。注意しておきましょう。

コラム:資本金が1,000万円以上の機能会社をつくるのは危険

機能会社は親会社・子会社が存在します。創業したての会社は多くが子会社(仕事を請ける会社)でしょう。資本金が1,000万円以上になると、下請法の適用外になってしまいます。1,000万円未満で創業すれば下請法にてさまざまな条件で守られるため、よっぽどの理由がないかぎりは1,000万円未満で創業するほうが無難です。
参考リンク

4.定款の電子認証を依頼する

定款とは「会社の決まりごと」をまとめたもの。会社設立をするうえで重要な書類のひとつです。定款には以下の6点の記載必須の項目(絶対的記載事項)があります。

  • - 事業目的
  • - 会社の商号
  • - 本店の所在地
  • - 資本金の金額
  • - 発起人の氏名と住所
  • - 発行可能株式総数

記載事項は以下のページでも解説しています。
会社設立時に知っておきたい定款の書き方と記載事項

定款は紙以外に、PDFで提出することも可能です。PDFのような電子データで提出する定款のことを「電子定款」といいます。定款は公証役場による認証が必要となりますが、もし紙の定款であれば収入印紙代として約4万円がかかります。一方、電子定款は紙ベースではなく電子データなので、収入印紙代の費用は無料となります。

しかし電子定款を自分で作成する場合、ICカードリーダー(3000円程度)やPDF編集ソフト Adobe Acrobat Pro DC(6万円程度)などが必要になります。Acrobat Pro DCは月額制のサブスクリプション版(税別1580円/月)という選択肢もありますが、環境を整える手間を考えると、お得とはいえないでしょう。時間と手間を節約したいときは、電子定款を代行するサービスなどの利用をおすすめします。

5.公証役場で定款認証を受ける

事前に公証役場と打ち合わせした日時に、電子媒体(CD-RやUSBメモリなど)を持参して公証役場へ行き公証人の認証に立ち会います。そのとき、持参した電子媒体に認証済みの電子文書を格納してもらいます。同一情報の提供(謄本)の場合も、電子媒体を持参して電子文書を受け取らなければなりません。インターネット経由では受け取れませんので注意してください。申し出れば書面で交付を受けることもできます。

公証役場へ持っていくものは以下のとおりです。

  • - 電子媒体(CD-R、USBメモリなど)
  • - 定款をプリントアウトしたもの2通(会社保存用と登記用)
  • - 発起人(出資者)全員の印鑑証明書
  • - 電子署名をした発起人以外の委任状(発起人が複数いる場合)
  • - 認証手数料50,000円
  • - その他手数料(合計1,700円程度)
  • - 身分証明書
  • - 印鑑

6.銀行口座に資本金を振り込む

「資本金の払込みを証明する書面」を作成します。定款に記載されている資本金が、発起人から口座に振り込まれていることを証明する書面です。まず、各発起人にATMや銀行窓口から出資金を払い込んでもらいましょう。会社の銀行口座は登記完了後でなければ作成できないため、出資金は「代表取締役となる人の預金通帳」に振り込みます。

振込する時の注意点は2つ。

  • - 資本金の払込は必ず定款の認証後に行うこと
  • - 振込金額と氏名が分かるよう、各発起人が個人名で出資金を振り込むこと

できれば代表個人の通帳残高をいったんゼロにできればよりベターです(口座を新規開設すればOKです)。

資本金の払込が終わったら、登記所に提出する証明書を作成します。払込証明書には通帳のコピー(下記の3点)を添付する必要があります。
  • - 通帳の表紙
  • - 裏表紙
  • - 通帳の明細(払込の記録が印字されているページ)

上記をまとめて製本すれば「資本金の払込証明書」が完成します。

7.法務局で登記申請をする

会社登記の申請は、本店所在地を管轄する法務局で行います。もし申請先の法務局を間違えると却下されてしまいます。下記のサイトで管轄となる法務局を確認しておきましょう。

法務局:管轄のご案内

設立登記申請書を法務局の商業登記(法人登記、会社登記)窓口に提出します。申請書受付用の箱に入れるだけで済みますが、その前に窓口で書類の間違いがないか等を確認してもらうと良いでしょう。

後日、登記官が申請書の内容に不備がないかをチェックします。不備がある場合は補正の指示がありますので、期間内に代表印を持って窓口に行き補正しましょう。特に多い間違いは「印鑑や契印の押し忘れ」「住所の記載方法」です。住所は○○一丁目1番1号というように、丁は漢数字、番/号はアラビア数字で記載します。

もし補正箇所が多すぎて再度書類を作成した方が早い場合は、登記の申請を取り下げることもできます。不備がない場合は登記完了です。

郵送での登記やオンライン登記も可能です。ただし郵送の場合は書類が法務局に届き、受付した日が会社設立日になるため、特定の日を会社の設立日にしたい場合は直接足を運びましょう。

オンライン登記についてはこちらのサイトで情報を確認してください。

法務省:会社等の設立登記のオンライン申請について

8.法務局で登記簿謄本を取得する

登記が完了したあとも手続きがありますので、法人の存在を証明する「登記簿謄本」を請求しましょう。

方法1.管轄法務局の窓口で請求

備え付けの請求書に必要事項を記入すれば、その場で作成してもらえます。10~15分程度で受け取ることができますが、窓口の混雑状況によっては前後することもあります。

方法2.郵送で請求

管轄法務局に、封書で「申請書」「登記印紙(手数料)」「返信用の封筒・切手」を郵送します。

方法3.オンラインで請求

インターネットを利用して請求できます。オンライン申請については、下記リンクを参照してください。

法務局:登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です

9.役所へ必要書類を提出する

登記完了後は、速やかに税務署等へ届出をしましょう。提出すべき書類は、届出先ごとに異なります。行くべき役所は主に税務署、都道府県税事務所および市区町村役所、年金事務所の3カ所です。

1. 税務署

届出先の税務署は、定款に記載している本店所在地の管轄税務署です。提出する書類は以下のとおり。

  • - 法人設立届出書
  • - 青色申告書の承認の申請書
  • - 給与支払事務所等の開設届出書
  • - 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • - 減価償却資産の償却方法の届出書(任意提出)
  • - 棚卸資産の評価方法の届出書(任意提出)

それぞれ国税庁のホームページからダウンロードできるので、事前に確認し作成しておきましょう。

上記の他に、棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法、消費税に関する届出などがあります。それぞれの書類に対し、署名・捺印が必要な人や押印する印鑑が異なるので、間違いがないようにチェックしてください。

2. 都道府県税事務所、市区町村役所

地方税を納税するために、法人設立届出書の提出が必要となります。書類の様式は各都道府県、各市区町村によって異なるので提出先に確認しましょう。多くの都道府県、市区町村ではホームページからダウンロードが可能となっています。提出の際は「認証済み定款のコピー」「登記簿謄本(コピー可)」添付が必要となります。

3. 年金事務所

社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入手続きを行います。会社の設立日から5日以内に、以下の書類を提出します。

  • - 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • - 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • - 健康保険被扶養者(異動)届

設立の準備が簡単にできる「会社設立freee」のご案内

会社設立 freee

会社設立freeeを使えば、これらの作業を覚えることなく、一度の記入だけで書類を作成することができます。

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いつ会社をつくるべきか

会社を設立するタイミングは、いつが良いのでしょうか?いろいろな論点があり、起業家それぞれの事情もありますが、共通して注意すべきポイントもあります。

繁忙期に会社を設立すべきではない

まず会社設立時期が事業の繁忙期となると、忙しくて社内体制づくりに手が回りません。そのため、あなたがやりたい事業が繁忙期になるであろう時期設立するのは、あまりおすすめできません。

決算月はのちのち変更することもできますが、創業当初の忙しさを考えるときちんと「いつ会社をつくるべきか」検討したいもの。

お金のことも考えて会社を設立すべき

資金のことも考えておきましょう。設立時期にあなたは資本金を用意できるでしょうか。

会社設立時に十分な資本金がないと「自己資金が少ない」とみなされ、今後、政策金融公庫などから創業融資を受ける際の審査にも影響を与えます。初期費用+最低3ヶ月分の運転資金を用意するのが望ましいでしょう。また資本金が1,000万円未満の場合、第1期目が消費税の免税事業者となります。1年間免税の恩恵を受けるためには「決算日」を慎重に決め、その日から逆算して第1期目が最も長くなるように(4/1創業であれば3/31決算のように)会社設立日を設定するのが良いでしょう

新たに個人事業で開業または会社設立する人に対して、経費の一部を国が補助する創業補助金制度が申請できないか?という点も確認しておきましょう。創業する場所によって異なりますが、時期によって補助金・助成金が厚い時期は変わってきます。

年度によっては、補助金の申請時点ですでに会社設立をしていると「対象外」になってしまうこともあります。要件が発表されるのは、毎年3月くらい。この時期に会社を設立しようと考えている場合は、最新情報に注意しましょう。

コラム:なぜ4月決算を避けるべきか

会社を設立するにあたって、決算日はいつにすれば良いのでしょうか。特に何も考えず、「キリ良く3月31日にしようと思っていた」という人も多いと思います。しかし、よく考えて決算日を決めたほうが経営上好ましいでしょう。

決算の2ヶ月後には法人税や法人住民税、消費税といった税金を確定申告して納めなければいけません。また、決算の8ヶ月後にも中間申告をして納税します。そのため決算月を決めるときは、

  • - 売上の入金が少ない月
  • - 仕入れの支払いが多い月
  • - 従業員にボーナスを支払う月

などの会社の入金が少なく支払いが多い、すなわち資金繰りが厳しい月に納税月がぶつからないようにしましょう。つまり、お金に余裕がない月の2ヶ月前と8ヶ月前は避けたほうが良い、ということになります。

たとえば、冬のボーナスを支払う12月に資金繰りが厳しくなるのであれば、12月の2ヶ月前にあたる10月決算と8ヶ月前にあたる4月決算は避けたほうが良いでしょう。

法人設立は月初がおトク

上場会社では3月決算や12月決算が多いですが、ベンチャー企業では消費税の免税期間を長くするために、1期目がなるべく長くなるよう月初に設立し、その前月末の決算とする会社が多いようです。

会社は赤字でも黒字でも年間70,000円の税金(法人住民税均等割り)がかかります。月初1日の設立ではなく2日設立にすると、1期目は1ヶ月未満切捨てで11ヶ月とカウントされます。その場合、均等割りは61,000円となり、5,900円おトクになります。

どこで会社をつくるべきか

会社の住所が一番影響を与えるのは、社会的信用です。たとえば大手町の名の知れたビルに本社があるのと、名前も聞いたことがないような田舎に本社があるのとでは、印象は違ってきます。港区や千代田区といったオフィス街、ベンチャーであれば渋谷などに本社を構えられれば、それだけで一定の信用ポイントを得られるでしょう。

とはいえ、都心の一等地に会社を設立するのはお金がかかります。東京の例を見てみましょう。

10坪(33.06平方メートル)のオフィス賃料目安(単位:万円)
新築 既存
地域 新築最低域 新築最高域 既存最低域 既存最高域
丸の内〜大手町 40 50 35 55
六本木〜麻布 38 40 10 45
赤坂〜青山 33 38 11 40
八重洲〜京橋〜日本橋 30 40 11 40
四谷〜麹町〜番町 30 33 6 30
日本橋室町〜本町 - - 7 30
八丁堀〜茅場町 - - 7 24
堀留〜小伝馬町〜人形町 - - 7 22
大崎〜五反田 35 35 7 30
渋谷〜原宿 35 35 12 35

参照:2016年6月18日 日経新聞「東京・横浜・大阪のオフィスビル賃貸料」

上記は東京のオフィスビル賃貸料を表にしたものです。やはり「丸の内~大手町」が最も高く、次いで「六本木~麻布」「赤坂~青山」となっています。もし新築にこだわらない、既存でもいいということであれば「四谷~麹町~番町」「日本橋室町~本町」「堀留~小伝馬町~人形町」「八丁堀~茅場町」あたりが比較的安く、狙い目と言えるでしょう。

賃料だけでなく、助成金の有無も創業地を選ぶうえでの、大きなポイントとなります。具体的に検討しているエリアがある場合は、各市区町村役場のWebサイトなどで「創業支援に関する情報」を確認するのが確実です。

主な地域をピックアップして見ていきましょう。

東京都

都内開業率のさらなる向上を図るため、東京都及び東京都中小企業振興公社では平成27年度から「創業活性化特別支援事業」を実施しています。「創業助成事業」では創業予定者に対し審査のうえ、人件費、賃借料、広告費など創業期に必要な経費の一部を助成しています。

東京23区の創業者を対象とした制度融資もあります。その区に事務所を有していなければ利用できないなど対象者は限定されますが、都の制度融資よりも優遇されています。各区によって微妙に優遇措置の内容が違うので、まだ場所を決めていないのであれば優遇の厚い区で創業するというのも理由のひとつとなるでしょう。

参考:TOKYO創業ステーション

埼玉県

埼玉県には「創業・ベンチャー支援センター埼玉」があります。埼玉県が地域経済の活性化を進めるため設置した、公的な創業支援の総合相談機関です。創業前だけでなく創業後も事業計画や販路開拓、資金調達、IT、福祉などの相談が可能です。また、創業までの準備状況やステージに合わせたセミナー・イベントも開催しています。

参考:創業・ベンチャー支援センター埼玉

さいたま市が設立した中小企業支援センター、「さいたま市産業創造財団」でも経営・創業に関する相談をすることができます。

参考:さいたま市産業創造財団

神奈川県

神奈川県では、「創業者、中小企業者のための支援施策活用ガイド」を作成しています。創業支援はもちろん、金融支援や立地支援など、「どんな支援があるのか」「どこに聞けばいいのか」といった疑問に応える冊子となっています。PDF版は下記よりダウンロード可能です。

参考:創業者、中小企業者のための支援施策活用ガイド(平成28年度版)

横浜市では、「横浜市創業促進助成金の募集」を行っています。平成28年度の募集では、創業時に必要となる経費の一部を最大30万円まで助成しています(すでに募集締め切り)。
申し込み期間は8月1日(月)~11月30日(水)となっていましたので、次年度の募集について気になった方は問い合わせてみましょう。

参考:横浜市・創業促進助成金

川崎市では、創業者を対象とした融資制度があります。「アーリーステージ対応資金」「新製品開発・新分野進出支援資金」の2つがあり、それぞれ条件が異なります。

参考:川崎市・創業支援資金

大阪府

大阪市では、市が交付する「特定創業支援事業を受けたことの証明書」により以下の支援を受けることができます。

  • - 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社を設立する際の登録免許税を2分の1軽減

【株式会社の場合】資本金の0.7% → 0.35%(最低税額15万円の場合は7.5万円)
  • - 無担保、第三者保証人なしの創業関連保証の枠が1,000万円から1,500万円に拡充
  • - 創業1~2カ月前から対象となる創業関連保証が事業開始6ヵ月前から対象
  • - 日本政策金融公庫の新創業融資制度の自己資金要件が充足しているものとみなされます

参考:大阪市

オール大阪起業支援プロジェクト「START UPPER」では、大阪での起業支援セミナー・交流会、ビジネスプランコンテストなどの情報を提供しています。コンテストで認定された起業家には、支援金として「目標達成型補助金」が3年間(100万円/年を上限)支給されます。

参考:START UPPER

福岡県

福岡市には「福岡市ステップアップ助成事業」という、創業者が持つビジネスプランを審査し、成長性が高い事業と判断された企業に対して補助金が交付される事業があります。審査員は、福岡を拠点に事業を展開する経営者たちが中心。
補助金を受けられることになった企業には、専門家が無料で派遣され、創業者の成長を支援します。

参考:福岡市ステップアップ助成事業

また、「フクオカベンチャーマーケット」のホームページには、創業支援情報とともに県内各市の融資・補助金制度の一覧が掲載されています。

参考:フクオカベンチャーマーケット



国の補助金には「創業・第二創業促進補助金」がありますが、利用できるのは「産業競争力強化法に基づく認定市区町村」と認定された自治体のみです。注意しましょう。

参考:第1回〜7回の「創業・第二創業促進補助金」の認定自治体一覧

参考:平成28年度創業・第二創業促進補助金

海外

ITベンチャーを創業する人の場合、海外、とりわけアメリカに進出することを考えている方も多いはず。アメリカに進出する際の会社設立形態は、

  • - 現地法人
  • - 支店
  • - 駐在員事務所

の3種類に分けられます。ただし「駐在員事務所」は営利目的の行為が禁止されているため、「現地法人」か「支店」を選ぶ企業がほとんどとなっています。
ニューヨーク州での会社設立手続きについては、日本貿易振興機構(ジェトロ)のホームページに記載されています。

参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外によっても事情は異なり、たとえばシンガポールにおける会社設立は日本より簡単で、外国人にも広く門戸が開かれています。各国の企業がシンガポールへ進出する際、政府がさまざまな税金面での優遇策を打ち出しているのも特徴です。シンガポールは日本との時差も少なく、発展性と進出するリスクの天秤を考えた場合にもかなりオススメです。

ほかにも香港は税率が低く金融インフラが整っているため、多くの国から起業する人がやってきます。事業利益を生み出すために掛かった経費は全額損金算入できることや、キャピタルゲイン課税がない、赤字の永久繰越、香港に源泉が無い収益に対しての課税の免除など、さまざまなメリットがあります。

日本からは少し離れますが、中東、ドバイは石油資源への依存状態から脱却し、金融と貿易のハブに転身することで繁栄した国です。世界中から企業が集まっている理由は、なんといっても法人税・所得税が50年間免除であること。ヨーロッパ・アジア・アフリカのちょうど真ん中に位置し、巨大貿易港が運営されているという立地条件も人気のポイントです。

法人実効税率の国際比較

2016年現在(出典:財務省「法人実効税率の国際比較」)。法人所得に対する税率(国税・地方税)を表したものです。地方税の計算に関しては、日本は標準税率、アメリカはカルフォルニア州、ドイツは全国平均、韓国はソウル市で算出。なお、法人所得に対する税負担の一部が損金算入される場合は、調整後の税率を表示しています。

まとめ

会社を設立するにあたり、考えるべき要素は多岐に渡ります。「やりたいこと」「会社で実現したいこと」のイメージは重要ですが起業への熱意が先行するあまり、考えなしに起業してしまってもどこかでつまずく可能性は高いもの。焦らずじっくり考えることが大切です。

小手先のテクニックだけに頼らず、ビジョンから事業計画まで会社の指標を明確にすることで、軸がぶれず堅牢な企業に近づくはず。「ハリネズミの概念」など、起業した後に獲得する考え方もありますが、トライアンドエラーを繰り返しながら答えを探し、10年以上つづく会社経営を目指しましょう。

(制作:株式会社ZINE)

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