株式会社とは、株式を発行して集めたお金で運営する会社のことを指します。株式会社は、現在新設できる会社形態のなかで、国内で最も数が多い会社形態です。
社会的信頼度も高く、将来的に上場や事業拡大を目指している場合におすすめの会社形態である一方で、設立や運営していく上でのルールが厳格な側面もあります。
本記事では、株式会社の特徴や設立するメリット・デメリットについて解説します。株式会社の設立方法や必要書類について知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について」をご覧ください。
目次
株式会社とは?仕組みをわかりやすく解説
株式会社とは、株式を発行して集めたお金で運営する会社のことです。
株式会社の「株式」とは、出資した人に対して発行する証券のことで、出資をして株式を保有する人を「株主」といいます。株主は会社の利益の分配を受けられるだけでなく、会社の経営に間接的に参加する権利を有します。
株式会社の仕組み① 所有と経営の分離
株式会社の特徴のひとつとして、会社設立の際に出資した人(株主)と、実際に会社経営を行う人(取締役)が分離していることが挙げられます。これを所有と経営の分離といいます。
取締役は株主による集会「株主総会」での選出により決定され、取締役の中で会社を代表する人が代表取締役となります。
なお、株主が取締役になることも可能で、小規模の会社では創業メンバーが出資者兼経営者であるケースも多く見られます。
株式会社の仕組み② 株式上場ができる
株式上場すると、株式会社が発行した株式を証券取引所で自由に売買できるようになります。株式上場することで資金はより集めやすくなり、信用度や知名度向上につながります。
ただし、上場するには証券取引所に申請し、証券取引所が定める基準に応じた審査をクリアしなければなりません。また、株式上場した後も、法律や証券取引所のルールにもとづく情報開示の義務などが生じ、社会的な責任も重くなります。
【関連記事】
上場とは?株式上場するメリット・デメリットや非上場との違いについて解説
株式会社と合同会社の違い
会社形態は大きく「株式会社」と「持分会社」のふたつに分けられます。持分会社は合同会社・合名会社・合資会社が該当します。なかでも合同会社は株式会社に次いで設立数の多い会社形態です。
上述したように株式会社は所有と経営の分離されているのに対し、合同会社は出資者が経営に関する権限をもっているため業務も執行します。
株式会社と合同会社の違いをまとめると以下のとおりです。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
意思決定 | 株主総会 | 総社員の同意 |
所有と経営 | 原則完全分離 | 原則同一 |
出資者責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
役員・役職の任期 | 最長10年 | 任期なし |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
定款 | 認証必要 | 認証不要 |
利益配分 | 出資比率に応じる | 定款で自由に規定 |
設立費用 | 約25万円〜 | 約10万円〜 |
【関連記事】
会社設立時に知っておくべき「株式会社」と「合同会社」の違いとメリット・デメリット
また、合同会社以外に現在新設できる合名会社や合資会社との違いについても詳しく知りたい方は別記事「新設できる会社は4種類!会社形態ごとの特徴を10項目で比較」をあわせてご確認ください。
株式会社のメリット
株式会社が国内で最も設立数の多い会社形態である理由のひとつとして、設立した際のメリットの多さが挙げられます。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 社会的信用度が高い
- 資金調達がしやすい
- 万が一のときにも有限責任が適用される
- 法人の節税メリットを受けられる
それぞれについて詳しく解説します。
社会的信用度が高い
株式会社は、国内の会社設立数のうち約92.8%を占めており、社会的にも認知度が高い会社形態です。合同会社などの持分会社と比べて順守するべき法律や規制が多いのも社会的信用度が高い理由のひとつでしょう。
出典:国税庁「令和元年度分 会社標本調査」
資金調達がしやすい
株式会社は、株式を発行することで投資家から幅広く出資を募ることができます。出資者は間接有限責任であるため、出資金額を超えて損失を負うことがなく、投資がしやすいことも出資を得やすい要因のひとつとなっています。
上述したように、その社会的信用の高さから銀行などからの融資を受けやすいこともメリットのひとつといえます。
【関連記事】
会社設立時に活用できる助成金・補助金は4種類!条件や金額、申請時の注意点を解説
万が一のときにも有限責任が適用される
有限責任とは、出資者が会社の債権者に対して負うべき責任の限度をその出資額とすることをいいます。
会社が倒産した際には、出資したお金の分が債権への返済として失った場合でも、その金額以上に債権への責任を問われることはありません。
株式会社の株主は、債権者に直接責任を負う必要はなく、出資した会社に出資額の分だけの責任を負う間接有限責任が適用されます。
法人の節税メリットを受けられる
法人は個人事業主よりも経費として認められる範囲が広いため、高い節税効果があります。たとえば、役員報酬を損金として計上したり、自宅を社宅とすることで家賃を経費として計上したりすることが可能です。
また、個人事業主に係る所得税が累進課税なのに対し、法人に係る法人税は、所得の金額にかかわらず一律の税率が適用される「比例課税制度」が採用されています。
具体的には、800万円以下の所得へは15%、800万円を超える所得へは23.2%の税率(資本金が1億円超の場合は一律23.2%)が適用されます。
さらに株式会社を含めた法人は、設立から2期の期間は消費税納税免除(*)を受けることができます。
(*)資本金1,000万円未満且つ、特定期間の課税売上高が1,000万円以下または給与等の支払合計額が1,000万円以下の場合に適用されます。
出典:国税庁「特定期間の判定」
出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
【関連記事】
法人にかかる税金の種類は?税率や計算方法を個人事業主と比較
株式会社の設立には、freee会社設立の活用がおすすめです。freee会社設立は会社設立に必要な約10種類の書類を無料で一括作成ができます。
株式会社のデメリット
上述したように、株式会社は社会的信用度が高い分、合同会社などの持分会社と比べて順守するべき法律や規制が多い会社形態です。
以下のデメリットについても把握した上で、設立するか検討するようにしましょう。
- 設立費用が高い
- 決算公告の義務がある
- 赤字でも納税しなければならない
- 役員に任期がある
設立費用が高い
上述したように、株式会社は順守すべき法律や規制が多いため、設立時に必要な法定費用がほかの会社形態よりも高くなってしまいます。
たとえば、株式会社と合同会社の設立時にかかる法定費用を比較すると以下のようになります。
株式会社 | 合同会社 | |
定款用収入印紙代 (電子定款では不要) | 4万円 | 4万円 |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 (250円/1ページ) | 0円 |
定款の認証料 (公証人に支払う手数料) | 資本金100万円未満:3万円 資本金100万円以上300万円未満:4万円 資本金300万円以上:5万円 | 0円 |
登記免許税 (設立) | 15万円 または 資本金額×0.7% どちらか高いほう | 6万円 または 資本金額×0.7% どちらか高いほう |
合計 | 約25万円〜 | 約10万円〜 |
さらに設立後も役員の変更や本店の移転が発生した際は、変更するたびに登録免許税が発生します。
役員の選任や変更の登記を行う場合、資本金額1億円以上の会社であれば1件につき3万円、資本金額が1億円以下の会社であれば、1件につき1万円の登録免許税が発生します。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
会社設立時にかかる費用について詳しく知りたい方は、別記事「会社設立にはいくら必要?会社形態ごとの費用について解説」をあわせてご確認ください。
決算公告の義務がある
株式会社には毎年決算期ごとに決算の数字を公表することが義務づけられています。具体的には、決算資料(貸借対照表)を官報・日刊新聞紙・ホームビデオのいずれかへの掲載に掲載しなくてはなりません。
官報や日刊新聞紙に掲載する場合、掲載料の支払いが必要になります。また、官報に掲載する場合、その掲載料は最低でも約8万円です。
なお、合同会社などの持分会社には決算公告の義務はありません。
赤字でも納税しなければならない税金がある
法人である株式会社には、経営が赤字になってしまったとしても支払わなければならない税金があります。なお、これは株式会社だけでなく、法人に共通して課せられるものです。
株式会社に課せられる税金には、個人税でいう所得税に該当する法人税をはじめとして、大きく6種類に分けられます。
そのうち、地方税である法人市民税の「均等割分」は、会社が赤字の場合でも、あらかじめ定められた一定の税額を支払う必要があります。均等割分の金額は会社の規模によって変動しますが、最低でも7万円かかります。
資本金等の額 | 都道府県民税の均等割 | 市町村民税の均等割 (従業者50人以下) | 市町村民税の均等割 (従業者50人超) |
1,000万円以下 | 2万円 | 5万円 | 12万円 |
1,000万円超〜1億円以下 | 5万円 | 13万円 | 15万円 |
1億円超〜10億円以下 | 13万円 | 16万円 | 40万円 |
10億円超〜50億円以下 | 54万円 | 41万円 | 175万円 |
50億円超 | 80万円 | 41万円 | 300万円 |
役員に任期がある
株式会社の役員の任期は最長10年です。役員の任期が終了する場合、同じ役員を再任(重任)する場合でも、改めて登記しなくてはなりません。
役員が再任された人の場合でも、役員の選任や変更の登記のため、上述した金額の登録免許税の支払いが必要です。役員の種類やそれぞれの任期については、後述します。
株式会社のメリット・デメリットについては、別記事「株式会社のメリット・デメリットについて分かりやすく解説」でも詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
株式会社の役員の種類
会社法における株式会社の役員は、「取締役」「監査役(および会計監査人)」「会計参与」です。役員は株主総会で選出および解任されます。
それぞれの役割や任期について解説していきます。
取締役
取締役とは、会社の業務遂行に関する意思決定を行う者のことです。任期は会社法で2年と定められていますが、譲渡制限会社の場合は、定款(ていかん)で定めることにより、1〜10年の範囲内で自由に設定できます。
取締役は最低1名以上の選出が必要で、さらに「取締役会」を設置したい場合は、取締役が3名以上必要になります。
取締役会と株主総会の違い
株主総会は会社の最高意思決定機関であり、会社経営に直接関係する重要事項を決定します。一方、業務執行に関する決定機関が取締役会です。
株主総会 | 取締役会 | |
役割 | 会社の最高意思決定機関 | 会社経営に関わる事項の意思決定 |
開催頻度 | 年に1回以上 (必要がある場合) | 3ヶ月に1回以上 |
決議内容 | ・定款の内容変更に関すること ・役員の選任、解任 ・役員報酬について ・組織形態に関わる重要事項 (合併・解散など) ・株主への剰余金や配当金に関わる事項 | ・会社経営に関わる事項全般 ・代表取締役の選定、解職 ・取締役の活動執行の監督 |
監査役(および会計監査人)
監査役とは、取締役の職務遂行を監査する役員のことです。大会社かつ公開会社の場合は、監査役会および会計監査人の設置義務があります。
監査役会の人数は3名以上で構成し、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。また、会計監査人は1名以上必要です。
会社法改正前は設置が義務付けられていましたが、現在では以下の条件を満たしている場合であれば監査役を選出しなくても問題ありません。
監査役を選出しなくてもよい条件
- 株式譲渡制限会社(*)である
- 取締役会を設置しない
- 取締役会と会計参与の両方をを設置している
(*)株式譲渡制限会社:「株式を譲渡する際は会社の承認が必要」と定款に記載している会社
出典:中小企業庁「監査役を置かなくてもよい条件について教えてください。
なお、監査役の任期は会社法で4年、定款に記載した場合(※譲渡制限会社のみ)は4〜10年の間で自由に設定ができます。会計監査人の場合は1年です。
会計参与
会計参与とは、取締役と共同で計算書類等を作成する役員のことです。
基本的に会計参与の設置は任意で、人数にも規定はありません。ただし取締役会を設置している非公開会社において監査役がいない場合は会計参与の設置義務があります。
会計参与になれるのは会計の専門家である税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のいずれかに限られます。
会計参与の任期は会社法で2年、定款に記載した場合(※譲渡制限会社のみ)は1〜10年の間で自由に設定が可能です。
【関連記事】
役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説
株式会社の設立方法
株式会社の設立手順は以下のとおりです。
株式会社設立の流れ
- 会社の印鑑購入と基本情報の決定
- 資本金を準備する
- 定款を作成する
- 公証役場で定款認証を受ける
- 資本金の払込
- 法務局で登記申請をする
- 登記申請後に法務局で確認・手続きをする
- 各種届出など事業開始前にしておくべき手続きをする
それぞれの詳しい方法や必要書類について知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について」をあわせてご確認ください。
株式会社を設立したいならfreee会社設立がおすすめ
上述したように、株式会社はほかの会社形態よりも順守すべき法律が多いため、設立にも一定の費用と手間がかかります。初めての設立で不安な人や、忙しくて設立準備が進まない人はfreee会社設立の活用をおすすめします。
freee会社設立を活用すれば、設立前後に必要な書類を無料で一括作成が可能です。また、専門家へ無料相談ができるので、不安なことやわからないことは都度問い合わせることができます。
まとめ
株式会社は社会的な信用度や認知度を高めやすく、多くの資金を調達できるため、BtoBの事業を行う場合や事業の拡大を目指している場合に適している会社の形態です。
その一方で、法律による規制や守るべきルールが他の会社形態に比べて多いことや会社を設立するためのコストが高いことなど、一定のリスクがあることも理解しなくてはなりません。
株式会社の設立を検討している場合は、事業を成功させるためにも必要事項を適切に把握し、入念に事前準備をしておきましょう。
自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
会社設立の準備から事業開始までには、多くの書類や手続きが必要になります。書類の転記をするだけでもかなりの時間がかかってしまいます。
freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。設立件数30,000社以上の実績をもつfreee会社設立なら、初めての方もあんしんしてご利用いただけます。
起業ダンドリコーディネーターが完了までサポートしてくれるからあんしん!
初めての会社設立では、書類の書き方や提出先、設立後の手続きなどさまざまな場面で不安を抱えてしまうこともあるでしょう。
freee会社設立では、会社設立に詳しい起業ダンドリコーディネーターが常駐しており、設立準備から登記後に必要な手続きまでを完全無料で並走・サポートします。
相談方法はオンライン面談、LINE相談、電話、メールなどから選べます。まずお気軽に問い合わせフォームからおためし相談(最大30分)の予約をして、ご自身のスケジュールや設立手続きに関する疑問や不安を解消しましょう。
入力項目・次にやること、すべて画面上で把握できる
freee会社設立では、必要項目を記入していくだけで会社設立に必要な書類を作成することができます。また、登記の際に必要となる会社印も同時に購入が可能です。
freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。
会社名や資本金額など必要項目を入力すると、定款(ていかん)をはじめとする会社設立に必要な約10種類の書類を自動で作成します。
<freee会社設立で出力できる書類の一例>
- 定款
- 登記申請書
- 印鑑届出書 など
設立にかかるコストを削減できる
設立費用を削減したい方には電子定款がおすすめです。紙の定款では、収入印紙代40,000円がかかりますが、電子定款ではこれが不要となります。
freee会社設立は電子定款にも対応しており、電子定款作成に必要な機器やソフトの準備なども必要がないため、自分で作成するよりもコストを抑えることができます。
<設立にかかる費用の比較例>
(1)freee会計を年間契約すると、無料になります。
(2)紙定款の印紙代(40,000円)
会社設立の準備を進めながら、バーチャルオフィスの申し込みが可能!
会社設立するためにオフィスの住所が必要になります。
自宅をオフィス代わりにしている場合は、自宅の住所でも問題ありませんが、公開情報となってしまうので注意が必要です。
自宅兼オフィスのように実際の住所を公開したくない場合や、管理者や所有者に物件の法人登記が認められていない場合は、バーチャルオフィスを利用するのがおすすめです。
freee会社設立では、会社設立に必要な書類を無料で作りながら、バーチャルオフィスの申し込みもできます!
まずはこちらからfreee会社設立に無料で登録してみてください!
自分で手続きする時間のない方には「登記おまかせプラン」がおすすめ!
「初めての会社設立で不安」、「自分で手続きする時間がない」という方には、司法書士が手続きまで代行してくれる登記おまかせプランがおすすめです。
設立代行の費用相場は10万円前後ですが、freeeの登記おまかせプランは一律5万円で利用できます。※海外在留者が出資者・役員の場合等の特殊ケースを除く
登記おまかせプランの利用方法等の詳細は、freee会社設立の無料登録が完了後にメールにてご案内します。
会社設立の準備をお考えの方は、ぜひ登録無料のfreee会社設立をお試しください。
よくある質問
株式会社はどんな会社?
株式会社とは、株式を発行しその株式を出資者に販売することで資金を集めて事業を行う会社のことです。
詳しくは「株式会社とは?仕組みをわかりやすく解説」で解説しています。
株式会社を設立するメリットは?
株式会社を設立するメリットは主に以下の4つが挙げられます。
- 社会的信用度が高い
- 資金調達がしやすい
- 万が一のときにも有限責任が適用される
- 法人の節税メリットを受けられる
詳しくは記事内「株式会社のメリット」をご覧ください。
株主にはどんな権利が与えられる?
株主は経営や事業の運営に直接参加しなくとも、会社の所有者として以下の権利が与えられています。
- 株主総会で経営者である取締役を選出できる(議決権がある)
- 株主総会で重要な経営方針を決定できる(議決権がある)
- 利益が出れば、配当をもらうことができる
- 会社を清算するときに残余財産があれば、分配される
- 取締役の違法行為の差し止めを請求できる
- 株主代表訴訟を提起できる
- 帳簿の閲覧請求ができる
株主総会での議決権は、株式数に応じて原則1株あたり1票とされています。配当や残余財産も株式数に応じて決定・分配されます。
また、株主は配当金をもらえるだけでなく、株主優待を受け取れるメリットもあり、株主優待の内容は会社によって異なります。