監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

合同会社をインターネット検索すると「やばい・やめとけ」といった検索候補が表示されます。
合同会社は社会的信用度の低さから「やばい」といわれることがあります。しかし、合同会社は、他の会社形態と比べ歴史が浅く認知度が低いものの、設立費用の安さや経営の自由度が高く、近年では設立件数が増加傾向です。
本記事では、合同会社が「やばい」といわれる理由やよくあるトラブル、合同会社のメリット、設立に向いている事業などを詳しく解説します。
目次
- 合同会社がやばい・やめとけと言われる理由
- 社会的信用度が株式会社よりも低い
- 資金調達が株式会社より難しい
- 株式市場への上場ができない
- 合同会社でよくあるトラブル
- 出資者同士で対立すると経営が困難になる可能性がある
- 利益配分でもめることがある
- 合同会社の特徴
- 合同会社と株式会社の違い
- 合同会社のメリット
- 会社設立費用が株式会社より安い
- 所有と経営が一致していて経営の自由度が高い
- 定款の認証や決算公告が不要で手続き負担が少ない
- 近年は合同会社の設立件数が増えている
- 合同会社に向いている事業
- 一般消費者向け事業の場合
- 小規模事業の場合
- 出資比率に基づかない利益配分をしたい場合
- まとめ
- 合同会社の設立をかんたん・あんしんにできるのはfreee会社設立
- よくある質問
合同会社がやばい・やめとけと言われる理由
インターネット検索で合同会社と入力すると、「合同会社 やばい」「合同会社 やめとけ」などの検索候補が表示されます。合同会社はやばいといわれる理由として考えられるのは主に次の3つです。
合同会社がやばい・やめとけと言われる理由
- 社会的信用度が株式会社よりも低い
- 資金調達が株式会社より難しい
- 株式市場への上場ができない
以下でそれぞれ詳しく解説します。
社会的信用度が株式会社よりも低い
株式会社とは違い、合同会社には会社法上の決算公告の義務がありません。株式会社のように所有と経営が分離しておらず、閉鎖的な会社形態であることから、株式会社と比べると社会的信用度が低いのが現状です。
株式会社は日本に古くからある会社形態であるのに対し、合同会社は2006年5月1日の会社法改正で新しく設けられた会社形態であることから、一般的な認知度がまだ低いことも信頼度に関係していると考えられます。
ただし、近年では合同会社の設立も増加しており、一律に「合同会社だから信用度は低い」ということはありません。ただし金融機関からの高額融資や、大口の取引などではまだ株式会社のほうが有利になる場面もあるでしょう。
資金調達が株式会社より難しい
株式会社の場合、株式の発行や増資により資金調達が可能ですが、合同会社は株式による資金調達ができません。増資は可能ですが、出資者が社員のみとなるため、出資してもらう相手先も限定されるでしょう。
増資以外の資金調達の方法は、国や自治体の補助金・助成金・借入(融資)が中心となります。
株式市場への上場ができない
株式会社は、株式市場へ上場することで更なる事業拡大を目指せますが、合同会社は上場することができません。上場するためには、合同会社から株式会社へ組織変更する必要があります。
【関連記事】
上場とは?株式上場するメリット・デメリットや非上場との違いについて解説
合同会社でよくあるトラブル
合同会社は経営の自由度が高い反面、その仕組み上、社員(出資者)間で以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
合同会社でよくあるトラブル
- 出資者同士で対立すると経営が困難になる可能性がある
- 利益配分でもめることがある
特に複数人で設立・運営する場合には注意が必要です。以下でそれぞれ詳しく解説します。
出資者同士で対立すると経営が困難になる可能性がある
株式会社の場合は保有株数に応じて議決権が与えられ、保有株数が多いほど議決権割合が多くなる仕組みです。しかし、議決権がひとり1票の合同会社では、株式会社に比べると意思決定が難しくなるリスクがあります。
特に人数が「偶数」であり、意見が半分に分かれた場合は、意思決定が停滞する可能性があります。
ただし、合同会社でも定款を定めることで、ひとり1票とは異なる議決権割合にすることが可能です。複数人で設立する場合は、将来の意見対立の可能性も考慮し、設立時に定款で意思決定ルールを明確に定めておくことが、トラブル回避のために非常に重要です。
利益配分でもめることがある
株式会社では、基本的に出資額に応じて利益が配分されますが、合同会社では特に規定がなく利益配分を自由に決めることができます。
そのため、利益配分を決める際に、社員同士で意見が分かれたり不公平感が生まれたりする可能性があります。
トラブルを避けるためには、設立時に社員全員で十分に話し合い、利益配分に関するルールを明確に定め定款に記載しておくといいでしょう。
合同会社の特徴
会社を設立する際には、会社形態ごとの違いや特徴を理解したうえで会社形態を選択する必要があります。会社法で規定されている会社形態は株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類です。
合同会社では、出資者が社員になり、ひとり1票の議決権を有します。出資者の責任は有限責任であり、仮に会社が倒産した場合には出資者は自身の出資額を限度として責任を負います。合同会社の設立は資本金1円以上、社員1名以上が要件です。
出典:e-Gov法令検索「会社法」
合同会社と株式会社の違い
株式会社と合同会社の主な違いは、以下の通りです。
株式会社 | 合同会社 | |
意思決定 | 株主総会 | 総社員の同意 |
所有と経営 | 原則完全分離 | 原則同一 |
出資者責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
役員の任期 | 最長10年 | 任期なし |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
定款 | 認証必要 | 認証不要 |
利益配分 | 出資比率に応じる | 定款で自由に規定 |
設立費用 | 約200,000円〜 | 約100,000円〜 |
株式会社と合同会社では、出資者の人数や資本金など同じ点がある一方で、特に「意思決定の方法」「資金調達の選択肢」「設立・運営コスト」「社会的信用度」などが、どちらの会社形態を選ぶかの重要な判断ポイントになります。
株式会社と合同会社の違いについて、詳しくは別記事「株式会社と合同会社の違いとは?それぞれのメリットとデメリットまとめ」をご覧ください。
合同会社のメリット
合同会社がやばいといわれる理由はありますが、以下のようなメリットもあります。
合同会社のメリット
- 会社設立費用が株式会社より安い
- 所有と経営が一致していて経営の自由度が高い
- 定款の認証や決算公告が不要で手続き負担が少ない
以下でそれぞれ詳しく解説します。
会社設立費用が株式会社より安い
株式会社の設立費用が約20万〜30万円であるのに対し、合同会社の設立費用は約10万円と、費用を抑えることができます。
なお、合同会社には官報掲載の義務がないことから、官報公告掲載料金(毎年約6万〜7万円)もかかりません。
【関連記事】
会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説
所有と経営が一致していて経営の自由度が高い
合同会社では出資者が社員であり、会社の所有と経営が一致しているので、株主総会の開催などを経ずに、社員(=経営者)自身の判断で迅速かつ柔軟に事業方針を決定・実行しやすいというメリットがあります。
株式会社の場合は、出資者は株主であり、会社経営者以外の第三者が株主であれば所有と経営が分かれる形になります。会社に関する重要事項を決定するには、株主総会を開催して株主から承認を得なければいけません。
定款の認証や決算公告が不要で手続き負担が少ない
株式会社とは違い、合同会社では設立時に定款の認証が不要なため手続きの手間や費用負担が少ないです。また、株式会社では毎年必ず決算公告を行う義務がありますが、合同会社では決算公告の義務はありません。
近年は合同会社の設立件数が増えている
合同会社が増えた背景には、会社の設立費用が株式会社と比較して抑えられることに加え、経営の自由度が高い点などが挙げられます。
近年では合同会社が設立されるケースも多く見られ、2023年の新設法人数のうち、およそ4社に1社が合同会社を選択するなど人気を集めている状況です。
外資系企業の日本法人に合同会社が多く、会社形態が合同会社である代表的な企業としては、Apple Japan・グーグルジャパン・アマゾンジャパンなどが挙げられます。
出典:e-Stat 政府統計の総合窓口「統計表・グラフ表示」
合同会社に向いている事業
合同会社はやばい・やめとけといわれることはあるものの、合同会社の特徴を踏まえると、以下のような事業や状況においては、合同会社での会社設立が適していると考えられます。
合同会社に向いている事業
- 一般消費者向け事業の場合
- 小規模事業の場合
- 出資比率に基づかない利益配分をしたい場合
以下でそれぞれ詳しく解説します。
一般消費者向け事業の場合
企業が商品・サービスを一般消費者へ提供するBtoCのビジネスでは、「ブランド名」や「店舗名」は気にしても、「会社名」や「会社形態」を気にする人は少ないため、社会的信用度への影響はあまりありません。
小規模事業の場合
合同会社の資金調達の方法は、国や自治体の補助金・助成金、借入(融資)が中心です。株式を追加で発行できる株式会社に比べると、資金調達は難しくなります。
そのため、合同会社に向いているのは、事業展開の規模が小さく、資金調達があまり必要ない小規模事業といえます。
出資比率に基づかない利益配分をしたい場合
株式会社では出資額に応じて利益配分されるため、資金力がある出資者に多くの利益を配分することになります。
しかし、合同会社であれば出資比率に基づかない割合で利益配分できるため、貢献度が高い社員に利益を多く配分することなどが可能です。
まとめ
合同会社がやばい・やめとけといわれる理由には、社会的信用度の低さや資金調達の難しさが挙げられます。また、合同会社は出資比率に関係なく、ひとり1票の議決権があることから、意見が割れた場合は対立してしまう可能性があります。
しかし、株式会社に比べると設立費用が安く、経営における意思決定がスムーズに行えるなど、メリットも多いため、近年では合同会社の設立件数が増えているのも事実です。
合同会社で発生しうるトラブルや特徴などを正しく理解したうえで設立しましょう。
合同会社の設立をかんたん・あんしんにできるのはfreee会社設立
会社設立の準備から事業開始までには、多くの書類や手続きが必要です。書類の種類は約10種類あり、転記をするだけでもかなりの時間がかかってしまいます。書類作成の手間を軽減したい方には、freee会社設立がおすすめです。
freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。設立件数30,000社以上の実績をもつfreee会社設立なら、初めての方もあんしんしてご利用いただけます。
起業ダンドリコーディネーターが完了までサポートしてくれるからあんしん!
初めての会社設立では、書類の書き方や提出先、設立後の手続きなどさまざまな場面で不安を抱えてしまうこともあるでしょう。
freee会社設立では、会社設立に詳しい起業ダンドリコーディネーターが常駐しており、設立準備から登記後に必要な手続きまでを完全無料で並走・サポートします。
相談方法はオンライン面談、LINE相談、電話、メールなどから選べます。まずお気軽に問い合わせフォームからおためし相談(最大30分)の予約をして、ご自身のスケジュールや設立手続きに関する疑問や不安を解消しましょう。
合同会社設立に必要な書類を無料で作成・出力できる
freee会社設立では、必要項目を記入していくだけで会社設立に必要な書類を作成できます。各書類に入力した内容が反映されるので、転記の必要もありません。

会社名や資本金額など必要項目を入力すると、定款(ていかん)をはじめとする会社設立に必要な約10種類の書類を自動で作成します。
<freee会社設立で出力できる書類の一例>
- ・定款
- ・登記申請書
- ・印鑑届出書 など
ほかにも、会社設立後に役所へ提出が必要な「法人設立届出書」の作成や法人口座の開設、法人用クレジットカードの申請にも対応しています。
freee会社設立で設立コストをさらに削減できる
合同会社を設立するメリットとして、設立にかかる法定費用が安いことが挙げられます。さらに、定款を紙ではなく、電子定款にすることで収入印紙代40,000円も不要となります。
しかし、電子定款を作成するためには専用の機器やソフトが必要になり、ご自身で一から揃えると収入印紙代と同等の費用がかかってしまいます。
freee会社設立は電子定款にも対応しており、電子定款作成に必要な機器やソフトの準備も必要ありません。そのため、ご自身で作成するよりもコストを抑えることができます。
自分で手続きする時間のない方には「登記おまかせプラン」がおすすめ!
「初めての会社設立で不安」、「自分で手続きする時間がない」という方には、司法書士が手続きまで代行してくれる登記おまかせプランがおすすめです。
設立代行の費用相場は10万円前後ですが、freeeの登記おまかせプランは一律5万円で利用できます。※海外在留者が出資者・役員の場合等の特殊ケースを除く
登記おまかせプランの利用方法等の詳細は、freee会社設立の無料登録が完了後にメールにてご案内します。
会社設立の準備をお考えの方は、ぜひ登録無料のfreee会社設立をお試しください。
よくある質問
合同会社のメリットは?
合同会社は株式会社と比較すると設立費用が安く、経営の自由度が高い点がメリットです。ほかにも、定款の認証や決算公告が不要な点も挙げられます。
合同会社のメリットについて、詳しくは記事内「合同会社がやばい・やめとけと言われる理由」をご覧ください。
合同会社でよくあるトラブルは?
合同会社は、出資比率に関係なくひとり1票の議決権があることから、意見が割れて対立し意思決定が停滞する可能性があります。また、利益配分に関する規定も特になく自由に決められることから、不公平感が生まれるなどのトラブルになることもあります。
合同会社でよくあるトラブルについて、詳しくは記事内「合同会社でよくあるトラブル」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
