監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP
監修 松浦 絢子(弁護士)
会社の役員が役職を離れる場面では、「辞任」や「退任」という言葉が使われます。ただし、両者は同じ意味ではなく、辞任は本人の意思による退任を指す一方で、退任は任期満了や解任などを含めて役職を離れること全般を意味します。
取締役が辞任や退任をする場合は、役員変更登記の手続きが必要です。また、辞任・任期満了・解任などの退任事由によって必要書類や手続きの内容が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
本記事では、辞任と退任の違いや取締役が辞任・退任する場合に必要となる手続き、手続きの際に必要となる書類などを解説します。
目次
辞任と退任の違い
退任は役員が役職を離れること全般を指し、辞任は本人の意思によって役職を離れる場合に使われる言葉です。いずれも役職を離れる場面で使われますが、指す範囲や使われる場面が異なります。
辞任とは
「辞任」は、役員が自分の意思で役職を辞めることを指す言葉です。一般的には、役員が個人的な理由で任期途中に役職を辞める場合に使われます。
辞任は役員本人の意思表示で成立するため、辞任そのものについて株主総会の承認は不要です。ただし、後任者の選任が必要な場合には、株主総会決議などの手続きが必要になることがあります。
辞任は口頭による意思表示でも成立しますが、変更登記手続きを行う際には、辞任の事実を証明する書類として辞任届が必要です。そのため、実際に辞任をする際は辞任届を作成・提出するのが一般的です。
なお、自分の意思ではなく株主総会の決議によって役職を解かれる場合は、辞任ではなく「解任」と表現します。
退任とは
「退任」は、任期満了・辞任・解任などにより、役員が役職を離れること全般を指す言葉です。株式会社の役員にはそれぞれ任期が定められており、任期満了によって役職を離れる場合も退任に含まれます。
なお、任期満了後に同じ人が再び同じ役職の役員に就任することは「重任」と表現します。
取締役が辞任・退任する場合は役員変更登記の手続きが必要
変更登記とは、登記簿に記載された内容を変更する手続きのことです。役員は登記簿の記載事項となっているため、役員が辞任・任期満了・解任などにより退任した場合は、法務局に役員変更登記の申請を行う必要があります。
役員変更登記の期限は、登記の事由が発生した日から2週間以内です。期限を過ぎると代表取締役など役員に過料が科される場合があるため、役員が辞任・任期満了・解任などにより退任した際は、忘れずに手続きを行いましょう。
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変更登記とは?費用・必要なケースや手続き方法を解説
取締役の辞任・退任で役員変更登記を行う場合の必要書類
役員が辞任・任期満了・解任などにより退任し、役員変更登記を行う場合は、「役員変更登記申請書」の作成・提出が必要です。役員変更登記申請書は法務局のWebサイトからダウンロードできます。
そのほかの必要書類は、辞任する場合と退任する場合でやや異なります。以下は、辞任・退任する場合の必要書類です。
辞任する場合
役員の辞任によって役員変更登記を行う場合の必要書類は、以下のとおりです。
辞任による役員変更登記を行う場合の必要書類
- 役員変更登記申請書
- 辞任届
- 委任状(代理人が申請する場合)
辞任届には、辞任する旨・会社名・辞任する役職・辞任の日付・辞任する人の氏名・辞任届の作成日などを記入し、最後に押印します。
また、登記所に印鑑を提出している代表取締役が取締役を辞任する場合、辞任届への押印は、登記所に提出済みの印鑑または市町村に登録済みの個人の実印で行います。個人の実印を使う場合は、上記の書類に加えて印鑑登録証明書の添付が必要です。
なお、辞任届に決まった書式はありません。インターネット上で公開されているテンプレートを使って作成することも可能ですが、記載内容や押印方法が登記手続きに適しているか確認する必要があります。
退任する場合
続いて、役員が任期満了により退任する場合の必要書類を紹介します。
退任による役員変更登記を行う場合の必要書類
- 役員変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 委任状(代理人が申請する場合)
株主総会議事録で任期満了を確認できない場合は、役員の任期を確認するために定款の提出が必要となることがあります。
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役員変更登記とは?必要な書類や自分で申請する方法を解説
役員変更登記の手続きにかかる費用
役員変更登記の手続きをする際は、登録免許税の納付が必要です。
役員変更登記にかかる登録免許税の金額は資本金によって異なり、資本金1億円以下の場合は1万円、1億円を超える場合は3万円です。登録免許税は、収入印紙または領収証書により納付します。
また、司法書士に登記申請を依頼する場合は、報酬の費用もかかります。報酬額は依頼内容や司法書士事務所によって異なりますが、数万円程度が目安です。登録免許税などの実費は別途必要となる場合があります。
同時に複数の役員変更登記を行っても登録免許税は1回分しかかからない
役員が辞任・任期満了などにより退任し、会社に必要な役員数を満たせなくなる場合は、新たな役員の就任手続きも行わなければなりません。
辞任・退任の場合と同様に、役員が就任する際も役員変更登記の手続きを行う必要があり、資本金に応じた登録免許税がかかります。
なお、登録免許税は1件あたりの登記申請に対して発生する税金です。そのため、辞任や任期満了による退任と後任者の就任を1件の申請としてまとめて登記申請すれば、役員変更登記の登録免許税は1回分で済みます。
登記期限や必要書類を確認したうえで、同時に申請できる変更がある場合は、まとめて手続きすることも検討しましょう。
まとめ
退任は役員が役職を離れること全般を指し、辞任は本人の意思によって役職を離れる場合に使われる言葉です。辞任と退任は混同されやすいため、それぞれの意味や使われる場面を理解しておくことが重要です。
また、取締役が辞任・任期満了・解任などにより退任する場合は、役員変更登記の手続きが必要となります。必要書類は退任事由によって異なり、登記申請は原則として事由発生日から2週間以内に行わなければなりません。
手続きをスムーズに進めるためにも、必要書類や費用、申請期限を事前に確認し、状況に応じて適切に役員変更登記を行いましょう。
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辞任と退任の違いは?
辞任は、役員が自分の意思で役職を辞めることを意味する言葉です。一方で、任期満了・辞任・解任などにより役職を離れる場合は退任と表現します。詳しくは、記事内「辞任と退任の違い」をご覧ください。
辞任届の書き方は?
辞任届には、辞任する旨・会社名・辞任する役職・辞任の日付・辞任する人の氏名・辞任届の作成日などを記入し、必要に応じて押印します。詳しくは、記事内「辞任する場合」をご覧ください。
監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。
監修 松浦 絢子弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。
