会社設立の基礎知識

会社設立時に必要な印鑑とは?種類や選び方・購入方法を解説

監修 松浦 絢子(弁護士)

会社設立時に必要な印鑑とは?種類や選び方・購入方法を解説

会社設立の際には、設立登記・銀行口座開設・契約書への押印など、さまざまな場面で法人用印鑑を使用します。2021年の法改正により、オンラインで会社設立を申請する場合の印鑑届出は任意となりましたが、実務上は現在でも印鑑が必要になるケースが少なくありません。

法人用印鑑には代表者印・銀行印・角印・ゴム印など複数の種類があり、それぞれ役割や用途が異なります。

本記事では、会社設立での印鑑の必要性から、法人用印鑑4種類の役割・特徴、選び方のポイント、購入方法までをわかりやすく解説します。

目次

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会社設立・起業時における印鑑の必要性

会社設立時には、法務局で設立登記を行う必要があります。

従来は、商業登記の際に、会社の代表者印を法務局に届け出る必要がありました。しかし、業務効率化や電子化を進めることなどを目的として、政府は対面での押印を求める手続きを見直し、2021年の法改正によって多くの行政手続きや税務手続きでの押印義務が廃止されました。

また、現在はオンラインで会社の設立登記を申請する場合、印鑑届出書の提出は任意です。

手続き上の押印義務が廃止されたことを受けて、会社の設立登記時における印鑑の必要性は変化しつつありますが、実際に事業を行ううえでは押印が必要になるケースも依然として少なくありません。そのため、実務上は、会社設立時に従来どおり印鑑を用意しておくほうがよいでしょう。

出典:内閣府「書面規制、押印、対面規制の見直し・電子署名の活用促進について」 出典:国税庁「税務署窓口における押印の取扱いについて」

設立登記では印鑑届出書の提出が必要な場合がある

法務局窓口や郵送など、書面で会社の設立登記を申請する場合、印鑑が関わる書類として以下の提出が必要です。

  • 印鑑届出書
  • 設立時取締役の印鑑登録証明書

印鑑届出書とは、会社の実印となる代表者印を法務局に届け出るための書類です。法務局のWebサイトから様式をダウンロードし、必要事項を記入して提出します。

印鑑届出書

出典:法務局「印鑑(改印)届書」

また、設立時取締役または設立時代表取締役の印鑑登録証明書は、その個人の実印が市区町村で印鑑登録されていることを証明する公的な書類です。市区町村役場や行政サービスセンターなどで発行を受けられます。

一方、オンラインで設立登記を申請する場合、印鑑届出書の提出は任意です。ただし、設立後に会社の印鑑証明書が必要な場合などは、オンライン申請でも印鑑届出書を提出できます。

出典:法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」

法人用印鑑の種類・役割

法人用印鑑には、主に代表者印(実印)・銀行印・角印・ゴム印の4種類があります。

会社設立時は、少なくともゴム印を除く代表者印(実印)・銀行印・角印を作成するケースが一般的です。なお、ゴム印まで作成しておくと、書類・封筒への社名や住所などの記載を効率的に行えます。

それぞれの法人用印鑑の役割は、以下のとおりです。

印鑑の種類役割(用途)
代表者印(実印)・登記申請書への押印
・各種契約書への押印
・委任状への押印
・官公庁への入札など公的機関に提出する書類への押印
銀行印・法人用銀行口座の開設届出書への押印
・銀行取引に関する書類への押印
角印・社内文書への押印
・請求書・発注書・見積書などへの押印
・郵便物の受取印
ゴム印社名・代表者名・住所・電話番号などの記載が必要な書類や封筒への押印

代表者印(実印)

印鑑の中でも、もっとも重要な役割を果たすのが代表者印です。代表者印は、会社設立登記時に法務局へ届け出る、会社の実印にあたる印鑑です。

代表者印には規定があり、1辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形の中に収まるものを使用しなければなりません。

出典:e-Gov法令検索「商業登記規則 第9条3項」

銀行印

銀行印は、法人口座の開設時や銀行取引で用いる印鑑です。代表者印と銀行印は同じものを使うこともできますが、紛失・悪用のリスクや摩耗による印影の劣化を避けるため、別々に作成するケースが大半です。

銀行印と代表者印を分ける場合は、異なるサイズにするなど、判別しやすいように工夫しましょう。

角印

一般に「社印」と呼ばれる印鑑は、角印を指します。代表者印や銀行印とは異なり、印鑑の形が四角形になっていることから角印と呼ばれます。

請求書や発注書に押す印鑑は角印が一般的です。実印を使うこともできますが、紛失時の手続き負担が大きいため、多くの場合は別途作成します。

近年は請求書や発注書の受け渡しを電子契約システム上で行う企業も増えているため、企業によっては使用機会が少ないかもしれません。

ゴム印

ゴム印は、社名・住所・代表者名などを簡易的に記載したいときや、各種書類に記名が必要なときに使用します。

会社設立時には代表者印・銀行印・角印の3本のセットを購入するケースが一般的ですが、あわせてゴム印も作成しておくと実務上有効です。

法人用印鑑の選び方のポイント

法人用印鑑を選ぶ際のポイントとしては、以下の4つが挙げられます。

法人用印鑑を選ぶ際のポイント

  • 材質
  • 形状
  • 書体
  • サイズ

印鑑の材質

印鑑の材質として主に用いられるものは、木材・黒水牛・チタンの3種類です。3種類の特徴や、機能面・耐久性・価格の違いは下表のとおりです。

下表の「押印のしやすさ」とは、押印時にかすれや欠けが生じにくいかを基準としています。ただし、かすれや欠けが生じやすい印鑑であっても、押印マットや状態のよい朱肉を使うなどして補うことが可能です。

印鑑の材質押印のしやすさ耐久性価格の安さ
木材(柘など)
黒水牛
チタン

木材(柘など)

一般的に広く使われているのは柘(つげ)という木材を用いた印鑑です。軽く、材質として十分な耐久性をもっています。

コストパフォーマンスに優れているため、価格と実用性のバランスを重視する場合は柘を選ぶとよいでしょう。

黒水牛

黒水牛の印鑑は、落ち着いた質感と高級感が特徴です。柘よりも耐久性が高く、長年の使用が可能です。

チタン

木材や黒水牛と比べると価格は高めですが、チタン製の印鑑もあります。金属製で重厚感があり、摩耗しにくい点が特徴です。

印鑑の材質を選ぶ際の注意点として、材質ごとの価格の差が大きいことが挙げられます。そのため、押印のしやすさをはじめとする機能面だけでなく、使用頻度と耐久性のバランスも考慮して適切な材質を選びましょう。

印鑑の形状

印鑑の代表的な形状は、まっすぐな円柱状の「寸胴」と、中央部分にくびれがある「天丸」の2種類です。法人用印鑑の形状自体に明確な規定はないため、用途や好みにあわせて選ぶとよいでしょう。

寸胴は市販の印鑑ケースの多くに対応でき、比較的価格が安いことが特徴です。また、天丸は、高級感のある見た目で、専用のふたが付くため傷が付きにくいという特徴があります。

できるだけ価格を抑えたい場合は寸胴を、見た目や押印のしやすさにこだわりたい場合は天丸がおすすめです。

印鑑の書体

印鑑でよく使用される書体は、「篆書体」「印相体」「古印体」の3種類です。形状と同様に、法人用印鑑の書体に関する明確な規定はないため、用途や好みにあわせて選べます。

ただし、読み取りやすい書体を使用すると印影を偽造されるリスクがあります。そのため、偽造防止を重視する場合は、上記3つのうちの篆書体または印相体がおすすめです。

なお、偽造防止のため複雑な書体が推奨されるものの、あまりに読み取りにくい書体を使う場合、印の届出時に印影を判別しにくいとして受理されない可能性もあります。そうした事態に備えて、彫り直しサービスがある店で購入する方法もあります。

篆書体(てんしょたい)

篆書体は中国でつくられた書体です。古代中国で使われていた文字をもとに、秦の時代に整備された書体とされています。

複雑な形状をしているため、偽造は困難とされています。現代でも、日本銀行券に使われる印章風の意匠などに見られるように、公的な印象を与えやすい書体です。

印相体(いんそうたい)

印相体(いんそうたい)は、「吉相体(きっそうたい)」とも呼ばれる書体で、篆書体をベースにつくられた書体です。文字の線が四方八方に広がっていることが特徴です。

篆書体をもとにしていることから複雑で読み取りにくく、偽造防止に効果的な書体といえます。また、文字が印鑑の枠に接している部分が多いため、印面が欠けにくいとされています。

古印体(こいんたい)

複雑な篆書体を簡略化した「隷書体(れいしょたい)」を変化させた書体です。丸みのある柔らかな雰囲気で、篆書体・印相体と比べて読み取りやすくなっています。

一方で、文字の線の太さが均一ではないため、完全な複製は難しいとされています。読み取りやすさと偽造防止の効果をバランス良く兼ね備えた書体です。

印鑑のサイズ

印鑑のサイズの目安は、次のとおりです。

  • 代表者印(実印):18mm/21mm
  • 銀行印:16.5mm/18mm/21mm
  • 角印:21mm/24mm
  • ゴム印:20mm×60mm

法務局に届け出る代表者印は、1辺が1cmを超え、3cm以内の正方形の中に収まることが必要ですが、そのほかの印鑑にはサイズの規定がありません。

法人用印鑑の購入方法

法人用印鑑は、印鑑を扱う実店舗やインターネット通販で購入できます。

印鑑の書体や印影のデザインなどを相談しながら購入したい場合は、実店舗での購入が向いています。コストを抑えたい場合や早めに受け取りたい場合は、インターネット通販がおすすめです。

法人用印鑑のセット購入とは

法人用印鑑は、代表者印・銀行印・角印の3点セットや、ゴム印を加えた4点セットとしてセットで購入することも可能です。会社設立時や設立後の実務で使う印鑑をまとめてそろえられ、一般的に1本ずつ単体で購入するよりも費用を抑えやすいです。

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会社設立後は印鑑証明書の発行が可能

会社設立時に印鑑届出書を提出して代表者印を法務局に届け出ておくと、設立登記の完了後に会社の印鑑証明書を取得できるようになります。印鑑証明書とは、法務局に届け出た会社の代表者印が、正式な印鑑であることを証明する公的な書類です。

会社の印鑑証明書は、たとえば以下のような場面で提出を求められることがあります。

印鑑証明が必要な場面

  • 法人口座開設時
  • 資金借入時
  • 不動産登記時

会社設立後すぐに法人口座を開設したり、融資を申し込んだりする予定がある場合は、設立登記の手続きとあわせて代表者印を届け出ておくと、その後の手続きを進めやすくなります。

まとめ

会社設立時に使用する法人用印鑑には、代表者印・銀行印・角印・ゴム印など複数の種類があり、それぞれ役割や用途が異なります。設立登記・法人口座開設・契約書への押印など、会社運営において使用する機会があるため、事前に適切な印鑑を準備しておきましょう。

法人用印鑑を選ぶ際は「材質」「形状」「書体」を確認し、使用頻度や予算にあわせて選びましょう。購入方法としては実店舗とインターネット通販がありますが、コストや納期を重視する場合は通販も有力な選択肢です。

また、印鑑の作成には一定の時間がかかるため、会社設立のスケジュールにあわせて早めに準備を進めておきましょう。

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よくある質問

会社設立時には実印が必要?

2021年の法改正により多くの行政手続き・税務手続きで押印義務は廃止され、会社設立における実印を含めた印鑑の必要性は変わりつつあります。また、現在はオンラインで設立登記をする際の印鑑の提出は任意です。

ただし、実際の事業で押印が必要になるケースは少なくないため、印鑑は用意しておいたほうがよいでしょう。詳しくは記事内「会社設立・起業時における印鑑の必要性」をご覧ください。

電子定款に押印は必要?

電子定款の場合、電子署名が押印の役割を果たすため押印は不要です。詳しくは「会社設立・起業時における印鑑の必要性」をご覧ください。

法人ハンコの3種類は何ですか?

法人用印鑑には代表者印(実印)・銀行印・角印・ゴム印の4種類があり、会社設立時は少なくともゴム印を除く3本をつくるケースが一般的です。

詳しくは記事内「法人用印鑑の種類・役割」をご覧ください。

監修 松浦 絢子弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

松浦 絢子弁護士

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