起業後にやるべきことはいくつもありますが、その一つが金融機関での法人口座開設です。金融機関といっても種類はさまざまで、振込手数料や口座維持手数料、サービス内容はそれぞれ異なります。
本記事では、金融機関ごとのメリットやデメリットを踏まえて、法人口座をつくる金融機関の選び方を紹介します。
※ 本記事は、東京都内に事務所を構えることを想定しています。
目次
法人口座とは
法人口座とはその名のとおり、法人名義で開設できる銀行口座のことです。
事業を営んでいれば融資を受けることもあるでしょう。その審査や融資金額の交渉をするとき、対法人相手と個人相手では融資してもらえる額に差が生じます。そのため、個人事業主ではなく、会社として口座を開設しておいたほうが融資交渉において有利と言えます。
また、会社のお金を個人の口座で管理している場合、法人と個人を混同していると受け取られ、取引先からの信頼度に関わることがあるうえ、税務署に脱税を疑われるおそれもあります。
法人口座を開設するメリットとは?
法人口座を開設するメリットはお金の流れがわかりやすくなることです。銀行を介して支払いや振り込みを行うことにより、お金の動きがすべて通帳で把握できるだけでなく、資金の流れも明確になるので、削減すべき経費を考えやすくなります。また、手元残高も把握しやすく、資金繰りを楽におこなえるでしょう。
口座開設時に必要な書類
株式会社の最低資本金制度が撤廃されたため、起業しやすい時代となりました。一方で「振り込め詐欺」など、社会的倫理に反する会社も目立ってきています。銀行はそういった不審な会社とのやりとりをシャットアウトするべく、口座開設に慎重になっています。そのため、口座を開設する際に不審な会社ではないか判断するために次の書類や資料などの提出を求められます。
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 印鑑登録証明書
- 本人の公的身分証明書(運転免許証など)
- 本社の賃貸借契約書
- 事業内容を確認できるもの(ホームページや商品説明のチラシなど)
なお、金融機関によって必要な書類や資料は変わります。詳細は口座開設を検討している金融機関のWebサイトをご覧ください。
法人口座をつくれる金融機関の種類
法人口座を開設できる金融機関の種類は以下となります。
- 都市銀行(メガバンク)
- 地方銀行
- 信用金庫
- ゆうちょ銀行
- ネット銀行
次は、それぞれの銀行の概要やメリット、デメリットを見ていきましょう。
1. 都市銀行(メガバンク)
いわゆる「メガバンク」とよばれる銀行です。全国的な支店展開はもちろん、アジアをはじめ欧米に支店や提携銀行を持ち、グローバルなネットワークを持つ銀行もあります。代表的な銀行はこちら。
- 三菱UFJ銀行
- みずほ銀行
- 三井住友銀行
- りそな銀行
メリット
全国的な支店を展開している都市銀行にはネームバリューがあります。取引先銀行にするメリットは下記が挙げられます。
- 会社の信用力があがる
- 高額な融資にも対応できる
- 全国に支店がある
- 海外への振り込みに対応している
デメリット
都市銀行は信用力が高い一方で、口座開設の審査が厳しいなどのデメリットもあります。
- 法人口座開設の審査が厳しい
- 担当者が転勤する可能性があり、長期的な関係を築きにくい
- 口座維持手数料が比較的高額
- 融資取引には、一定の企業規模が求められる
- 一部の都市銀行では、銀行口座での振込手数料が高い
2. 地方銀行
地域密着型の銀行です。ほとんどの銀行が、ある地域に限定して店舗を展開しています。都内に住んでいる、あるいは都内に事業所がある場合は「きらぼし銀行」がおすすめです。都内に支店が点在しているため事業所の近くに支店がある可能性が高く、法人口座開設の手続きをしやすいでしょう。
メリット
特定の地域を中心に事業を展開している地方銀行。地域密着型のビジネスには嬉しいメリットがあります。
- 近隣地域の事業者やコミュニティを把握している
- 特定の地域では信用度がある
- 都市銀行に比べて親身に相談にのってもらえる
デメリット
都市銀行は全国に支店がありますが、地方銀行は限られた地域を中心に支店を展開しています。事業規模もやや小さめです。そのため、下記のようなデメリットが発生します。
- 別の地方に行った際に取り扱えない
- 高額の融資の審査期間が長い
3. 信用金庫
信用金庫は、地域繁栄を目的とした特定地域の会員による出資で「協同組織」となった金融機関です。ほとんどの場合、自宅あるいは事業所在地の最寄りにある支店以外では、口座開設の審査に通りません。なお、支店の数は「城北信用金庫」と「城南信用金庫」が二強で、下記の店舗数を保有しています(※2022年3月末時点)。
- 城北信用金庫・・・90店舗
- 城南信用金庫・・・86店舗
また、信用金庫で融資を受ける際は、原則、「信金会員」となる必要があります。
「信金会員」とは、その信用金庫に「出資」している法人を指します。出資は、銀行の預金と似ていますが、すぐに払い戻しができないという特徴があります。
会員となる資格は下記のとおりです。
- 信用金庫の営業地域に住んでいる
- 事業所を所有している
- 従業員300人以下または資本金9億円以下である
メリット
信用金庫のメリットは、手厚く親身な姿勢で信頼関係を築けることが挙げられます。
- 設立間もない企業や規模の小さな企業にも親身に相談に乗ってくれる
- 都市銀行に比べて法人口座を開設しやすい
デメリット
地域の発展を理念に掲げているので都市銀行と比べて事業規模は小さめです。そのため、下記のデメリットがあります。
- 従業員が300人以上または資本金が9億を超えると脱退しなければならない
4. ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は日本郵政公社の民営化に伴って2007年10月に誕生した金融機関です。郵便局で金融商品の手続きが可能なため、全国で利用できます。ゆうちょ銀行は預入額に上限があり、1,300万円を超える金額は預け入れができません。
メリット
ゆうちょ銀行は全国に支店があり、全国に顧客がいる場合の振込口座としての利便性が高いです。2019年から法人専用のインターネットバンキング「ゆうちょBizダイレクト」ができました。
- 口座維持手数料は無料
- ATMでの現金引き出しが無料(※ゆうちょ銀行店舗内や郵便局内に設定しているもの)
- 全国に支店があり、顧客からの振込口座として利用しやすい
- 法人税の電子納税に対応している
デメリット
郵政民営化によって誕生したゆうちょ銀行。銀行としての歴史は浅く、保険や制度に対応していないほか、無料のインターネットバンキングは送金できる金額上限が厳しく、下記がデメリットとして挙げられます。なお、以前は社会保険の引き落としに使えないというデメリットがありましたが、2019年より使えるようになりました。
- 小規模企業共済制度の取引口座に使えない
- 無料のインターネットバンキング「ゆうちょダイレクト」を使った1日当たりの送金限度額が5万円(追加設定により最大1,000万円)
- 法人専用のインターネットバンキング「ゆうちょBizダイレクト」は利用料金がかかる
5. ネット銀行
ネット銀行(ネットバンク)とは、インターネットや電話等の通信手段を使った取り引きがメインとなる銀行です。店舗数が非常に少ない銀行が多く、なかにはまったく店舗のない銀行もあります。
代表的な銀行は下記となります。
- PayPay銀行(旧 ジャパンネット銀行)
- 楽天銀行
- 住信SBIネット銀行
- GMOあおぞらネット銀行
メリット
お金まわりのあらゆる手続きをインターネット上でおこなえるネット銀行。店舗を持たずに人件費を抑えることで、ユーザーには下記のメリットが与えられています。
- 24時間365日インターネット上で振り込みや決済が可能
- インターネットバンキングの画面が分かりやすく、操作がしやすい
- インターネットバンキング手数料、口座維持手数料がかからない
- 振込手数料が安価
- 預金の金利が高い
デメリット
サービスが開始されてから比較的日が浅く、「得体の知れないもの」と認識している方もいるネット銀行。下記のデメリットが挙げられます。
- 取引先からの信頼度がメガバンクや地方銀行等に比べると高くはない
- 銀行に窓口等での対面による相談ができない
振込手数料・維持手数料の比較表
振込手数料や維持手数料は、銀行や信用金庫によって大きく変わります。そこで、上記で例示した銀行の振込手数料や維持手数料を以下の表にまとめました。
なお、口座開設申込の銀行Webサイトへのリンクは、こちらのページでもご紹介しています。
※手数料は以下のものから変更になっている可能性があります。契約の前に必ずご自身でご確認ください。
名称 | 月額基本料金 | 振込手数料 | ||||||
同一銀行宛 | 他金融機関宛 | |||||||
同一支店内 | 他支店・本店 | |||||||
3万円 未満 | 3万円 以上 | 3万円 未満 | 3万円 以上 | 3万円 未満 | 3万円 以上 | |||
都市銀行 | 三菱UFJ銀行 BizSTATION | 1,760円 | 110円 | 330円 | 110円 | 330円 | 484円 | 660円 |
みずほ銀行 みずほビジネスWEB | 3,300円 | 無料 | 無料 | 220円 | 440円 | 490円 | 660円 | |
三井住友銀行 パソコンバンクweb21ライトタイプ | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 165円 | 330円 | |
りそな銀行 ビジネスダイレクトmini | 3,300円 | 無料 | 無料 | 330円 | 330円 | 605円 | 605円 | |
ゆうちょ銀行 | ゆうちょ銀行 ゆうちょBizダイレクト(スタンダートプラン) | 550円 (別途、契約料金5,500円) | 100円 | 100円 | 100円 | 100円 | 165円 | 165円 |
ネット銀行 | PayPay銀行 | 無料 | 55円 | 55円 | 55円 | 55円 | 160円 | 160円 |
楽天銀行 | 無料 | 52円 | 52円 | 52円 | 52円 | 150円 | 229円 | |
住信SBI ネット銀行 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 145円 | 145円 | |
GMOあおぞら ネット銀行 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 145円 | 145円 | |
地方銀行 | きらぼし銀行 ビジネスネット | 2,200円 | 無料 | 無料 | 110円 | 220円 | 385円 | 550円 |
信用金庫 | 城北信用金庫 | 2,200円 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 275円 | 275円 |
城南信用金庫 | 1,100円 | 無料 | 無料 | 110円 | 220円 | 264円 | 440円 |
※2023年5月時点
振込手数料の安さは、ネット銀行がダントツ。一方、都市銀行はややコストが高い傾向にあります。
インターネットバンキングの利用可能時間
各種払込・振込時の利用可能時間をまとめました。
名称 手続き可能時間帯 都市銀行 三菱UFJ銀行
BizSTATION8:00~23:55
※祝日および祝日の前日/23:55~23:59まで利用不可
※毎月第2土曜日/21:00~翌8:00まで利用不可
※1月1日~3日・5月3日~5日/利用不可みずほ銀行
みずほビジネスWEB月~金/8:00~23:00
土/8:00~22:00
日/9:00~17:00
※祝日・振替休日・1月1日~1月3日/利用不可三井住友銀行
パソコンバンクweb21ライト月/8:00~24:00
火~土・祝/0:00~24:00
日/0:00~19:00
※全日 2:00~4:00を除くりそな銀行
ビジネスダイレクトmini平日/7:00~23:55
土日祝/8:00~22:00
※1月1日~1月3日・5月3日~5月5日/利用不可ゆうちょ銀行 ゆうちょ銀行
ゆうちょBizダイレクト8:00~23:30
※第2、第3日曜日の各種サービス利用可能時間/8:00~20:00
※12月31日の利用可能時間/8:00~15:00
※1月1~3日・5月3~5日/サービスを停止ネット銀行 PayPay銀行 24時間365日(システムメンテナンスの時間帯を除く) 楽天銀行 24時間365日(システムメンテナンスの時間帯を除く) 住信SBIネット銀行 24時間365日(システムメンテナンスの時間帯を除く) GMOあおぞらネット銀行 24時間365日(システムメンテナンスの時間帯を除く) 地方銀行 きらぼし銀行
ビジネスネット0:00~24:00
※1月1日~3日・5月3日~5日・ハッピーマンデー(成人の日・海の日・敬老の日・スポーツの日)の前日21:00~当日6:00、第1・第3月曜日の2:00〜6:00は利用不可信用金庫 城北信用金庫 月~金/7:00~23:00
土/7:00~22:00
日・祝/8:00~21:00城南信用金庫 月/7:00〜23:50
火〜日祝/0:30~23:50※2023年5月時点
利用可能な時間の長さも、ネット銀行に軍配があがっています。
法人口座の選び方・ポイント
振込手数料や口座維持費、受けられるサービスなどの違いがある金融機関。選び方のポイントを、企業の状態や目的などからみていきましょう。
起業して間もない場合
起業してまもない時期は、ネット専業銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行がおすすめです。
ネット専業銀行はインターネトバンキングの手数料が無料で、口座維持手数料もかかりません。また、都市銀行・地方銀行・信用金庫などと比べて、安い振込手数料で取引が可能です。加えて、インターネットバンキングの画面が分かりやすく、ストレスなく、利用することができます。
信用金庫の場合はお金に関する相談にも親身にのってもらえ、経営に慣れていない場合の相談役として活用できます。ゆうちょ銀行は口座維持費がかからないため、ランニングコストを抑えられます。
ハクを付けたい、または大きな融資が必要な場合
会社にハクをつけたい、または大きな融資が必要な場合には、都市銀行がおすすめです。都市銀行のブランド力は、企業を相手にする際に信頼感を与えることができます。高額な融資が必要な場合でも、事業規模の大きな都市銀行の方が大口の融資を受けられるでしょう。
2つ目の口座を開設したい場合
2つ目の口座を開設したい場合、メインバンクの種類によっておすすめの金融機関は異なります。メインバンクが都市銀行や信用金庫の場合は、ネット銀行やゆうちょ銀行がおすすめ。口座維持手数料がかからずに、安価な振込手数料でお金まわりを動かせます。あわせてネットバンキングのサービスを利用すれば、24時間振り込みや決済をおこなえます。
一方、ネット銀行やゆうちょ銀行をメインバンクとしている場合は、都市銀行や信用金庫がおすすめです。都市銀行の口座を開設すればクライアントへの信頼度が増すだけでなく、融資を受けられる金額も高くなります。また、信用金庫に口座を開設すれば、銀行側とお金まわりの相談も行うことができるでしょう。
ネットショップを開業する場合
オンラインでの決算が多いネットショップを開業する場合、ネットバンキングの利用がおすすめです。海外にいる顧客を相手にした振り込みや入金受け取りでも、24時間365日決済が可能。時差や利用可能時間帯にわずらわされることなく、スピーディな取引をおこなえます。
取引先がオフィス近郊に限定されている場合
取引先がオフィス近郊に限定されている場合は地方銀行がおすすめです。地域によっては同じ地方銀行を使用している企業もあり、振込手数料を節約することできます。また、相手先にも馴染みの深い銀行名であるため、信頼感を与えられるでしょう。
まとめ
おすすめの金融機関は企業によって異なります。「取引先の数が多く、振込手数料がかさんでしまった」「事業の相談ができずに困った」といった後悔をしないためにも、自分の会社の状態を把握して法人口座を開設する金融機関を選ぶと良いでしょう。
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