会社設立の基礎知識

役員報酬の決め方は?金額変更や支払い方法の注意点とルールを解説

最終更新日:2021/07/28

監修 弁護士法人DREAM

個人事業主と比較した場合の法人のメリットとして挙げられるのが、従業員の給与や退職金なども損金して計上できる点です。また、自身の給与も「役員報酬」として支払うことにより損金にできます。

ただし、節税につながる役員報酬には不正を防ぐためのさまざまなルールが設けられています。この記事では役員報酬を決める際のポイントや基礎知識など詳しく解説します。


会社設立時の役員報酬の決め方と支払いを始める期間について解説

目次

役員報酬とは?

役員報酬とは、取締役・監査役・執行役など役員に対して支給される報酬のことです。役員報酬は事業年度ごとに決定し、期首から3カ月以内に一度だけ改定できます。

従業員給与との違いは、原則的に全額を損金計上できるかどうかです。

損金とは、資本等の取引によるものを除いた、資産の減少の原因となる原価や費用、損失などを指します。損金の算入は利益総額を減らし、法人税額を減らすことにも繋がります。

従業員に対して支払う給与は基本的に全額損金として算入できますが、役員報酬を全額算入するためには一定の条件があります。

報酬を自由に操作できると、会社の利益を不正に操作して税金を減らすことができてしまうため、役員報酬は一定の規定に基づいた場合にのみ損金として認められることになっています。

役員報酬の支払い方法

税務上、損金として認められる役員報酬の支払い方法は以下の3つになります。

(1)定期同額給与

定期同額給与とは、毎月支払われる給与として役員報酬を支払うケースです。会社設立時から3か月以内に決めておかなければ損金に算入できなくなります。設立時に定款で定めておくか、株主総会で決定します。

役員報酬は事業年度ごとに決定し、期首から3ヶ月以内に一度だけ、役員報酬の改定を行うことができます。

例:定期同額給与を100万円に設定した場合

定額同額給を100万円に設定した場合

(2)事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、賞与として役員報酬を支払うケースを指します。会社設立後に知る方も多いかと思いますが、役員に関しては賞与も原則的に経費として認められません。ただし、事前に税務署に届けることで、決めた通りに支払えば賞与の額を経費として認められます。

事前確定届出給与の申請期限

  • 事前確定届出給与を定めた株主総会等の決議をした日
  • 職務の執行を開始する日

上記いずれか早い方から1か月を経過する日

もしくは、会計期間開始日から4カ月を経過する日

のいずれか早い日が期限となります。

(3)業績連動給与

業績連動給与とは、利益に応じて役員報酬を支払うケースです。これは非同族会社か、非同族会社の完全子会社となっている同族会社に認められている支払い方法です。

同族会社とは、発行済株式数のうち、上位3人以下で50%以上の株式を保有している会社のことで、非同族会社は同族会社以外の会社をいいます。

また、取締役のうち専務取締役や常務取締役を除く、平の取締役で部長や課長など従業員としての肩書きも持っている使用人兼務取締役にはほかの従業員と同様に賞与を支払うことができ、全額損金に算入できます。

役員報酬を決める際に気をつけること

役員報酬を決める際には、売上予測をもとにした月々の粗利益や固定費を算出し、利益予想を行ったうえで、役員報酬にまわせる額を算出します。

経営方針やお金の分配に対する考え方によって決め方は変わる

金融機関から融資を受けることを考えている場合や、会社に利益を残して経営の安定化を図りたい場合などにおいては、役員報酬を抑えるべきです。反対に、個人としての取り分を増したい場合は、無理のない範囲内で役員報酬を高めに設定します。

ひとり社長であれば、経営方針やお金の分配の観点において会社と個人の区別がないので、節税などの観点で有利な報酬額にすることも可能です。

役員報酬による納税額も考慮しましょう

定期同額給与を変更できるのは期首の3カ月間だけなので、利益予想が大きく外れた場合に多額の税負担が発生する可能性もあります。

特に、期末に売上が大きく上がり、かつ入金までに期間がある場合には、納税の時期に資金が足りないといった事態になりかねません。損金として算入できる定期同額給与をいくらにするか、慎重に判断する必要があります。

役員報酬が高額になるほど、会社側の健康保険や厚生年金などの社会保険料の負担も増加する点にも注意が必要です。個人の所得税は累進課税なので、役員報酬を受け取る側としても所得額が増えることで税務上は不利になります。

全額損金できるように支払開始するのがおすすめ

役員報酬は会社設立後3カ月以内に決める必要があるため、はじめの2カ月は役員報酬をゼロとし、3カ月目から支払うこともできます。一方、利益が安定するのを待って、会社設立の半年後から役員報酬を支払うことにすると、全額が損金に算入できなくなります。


役員報酬の支払方法

また、役員報酬には日割りという概念はありません。月の途中で会社設立した場合であっても、当月分の役員報酬は全額支払わないと損金算入できる金額が変わってしまいます。

例:4月12日に会社を設立、役員報酬を100万円とした場合

4月分の役員報酬として日割計算した40万円を支払った場合、5月以降に支払う月100万円の役員報酬のうち差額60万円は「増額分」として扱われ、40万円しか損金に算入できなくなってしまうのです。


役員報酬を日割計算で算出した場合

上述したように、設立月から2ヶ月は役員報酬がゼロでも問題ないので、初月に全額支払うのが難しい場合は、次月もしくは3ヶ月目から役員報酬を支払えば全額損金参入できます。

役員報酬を決定した後に必要な手続き

会社設立時に自分や他の役員の報酬を決めたら、事前確定届出給与に関する届出を所轄の税務署に提出します。この届出どおりに支払いされたお金が損金として認められます。

また、役員報酬を決めたことを株主総会の議事録にも残しておきましょう。

参考:国税庁「事前確定届出給与に関する届出

役員報酬を変更したいときはどうする?

役員報酬の変更が自由にできると、企業側が期末に役員報酬を変更して、納税額をコントロールすることが懸念されます。そのため、前述のように期首から3カ月以内を除くと、原則として役員報酬を変更することはできません。

ただし、例外的に事業年度の途中で、役員報酬額の変更ができる場合があります。

  1. 取締役から代表取締役になるなど職制上の地位に変更があった場合
  2. 経営状況が著しく悪化した場合

ただし、以下のように例外的に事業年度の途中で役員報酬の減額や増額を行えるケースがあります。

役員報酬が減額できる場合

役員報酬が減額できるのは、売上が予測を大きく下回り、経営状態が悪化している場合です。定期同額給与として定めた額の役員報酬を支払えない月があると、当期の役員報酬は全額損金不算入になり、法人税の税額がアップしてしまいます。

役員報酬の減額が認められるケースは以下の4つです。

役員報酬の減額が認められるケース

  1. 業績や財務状況の悪化によって、役員が株主との関係性によって、経営責任をとるために役員報酬の減額がやむを得ない場合
  2. 融資を受けている取引銀行と借入金予定協議を行った結果、役員報酬の減額がやむを得ない場合
  3. 業績や財務状況が悪化した際に、取引先などからの信用維持のために、役員報酬の減額を行うことが経営状況の改善を図る方法として計画された場合
  4. 特定の役員が不祥事を起こしたときに、会社の秩序に維持を図り、社会的評価の低下を抑えるため、一時的に役員報酬を減額する場合

役員報酬が増額できる場合

役員報酬の増額ができるケースは常務取締役が専務取締役に昇格するなど、仕事の責務が増えた場合に限られます。定款で定められた役員報酬総額の支給限度額内であり、不当に高額な報酬額ではないことが要件です。

役員報酬を変更する手続き

株式会社で役員報酬の変更を行う場合には臨時株主総会を開催するなど、株主総会で決議を行って議事録に残すことが必要です。

議事録がなかったり、役員報酬の変更の理由に妥当性が認められなかったりする場合には、税務調査を受けた際に、役員報酬が損金不算入になり、追徴課税を受けることになります。

役員報酬は節税につながる重要事項のひとつ

役員報酬のポイント

  • 役員報酬額を変更できるのは原則期首から3ヶ月以内
  • 一定の条件を満たすことで全額損金に算入できる
  • 定期同額給与とは、毎月決まった金額を役員報酬として支払うこと
  • 事前確定届出給与とは、事前に税務署に届け出ることで賞与も役員報酬にできる
  • 業績連動給与とは、利益に応じて役員報酬を支払う方法

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