監修 松浦 絢子(弁護士)
会社設立時に資本金を1000万円未満にすると、設立当初の消費税の納税が原則免除され、法人住民税の均等割も7万円に抑えられることがあります。
ただし、取引先や金融機関から信用を得にくくなり、融資審査に影響する可能性もあります。
そのため、資本金額は税負担だけでなく、事業開始時に必要な運転資金や信用面への影響も踏まえて判断しましょう。
本記事では、資本金を1000万円未満にするメリット・デメリット、1000万円を超える場合の注意点を解説します。
目次
- 資本金とは
- 資本金1000万円未満の節税メリット
- 資本金1000万円未満なら新設法人は消費税の納税義務が免除される
- 法人住民税の均等割が7万円に抑えられることがある
- 資本金1000万円未満の場合のデメリット・注意点
- 信用度が低いと判断される可能性がある
- 融資を受ける際に不利になることがある
- 資本金1000万円未満でも適格請求書発行事業者は課税事業者になる
- 資本金1000万円を超える場合の注意点
- 取適法(旧下請法)で委託事業者になることがある
- 消費税・法人住民税の税負担が増える
- 資本金2143万円超なら登録免許税の税額が増える
- 資本金が1億円超なら中小法人に対する各種優遇税制が適用されない
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
- よくある質問
資本金とは
資本金とは、会社設立時に株主が出資した、会社の事業の元手となるお金です。
会社は、設立直後から十分な利益を上げられるとは限りません。そのため、設立時に資本金を確保し、オフィスの賃料・設備投資費・従業員の給料などの運転資金に充てます。
なお、2006年5月施行の会社法により最低資本金制度が撤廃され、現在は資本金1円から株式会社を設立可能です。法改正前は1000万円以上の資本金が必要とされていました。
資本金と混同されやすい言葉に「借入金」があります。資本金は返済義務のない自己資本である一方、借入金は返済義務のある他人資本です。
会社の財務状況をまとめる貸借対照表では、資本金は純資産の部に表示されます。一方、借入金は未払金や買掛金などと同じく、負債の部に表示されます。
出典:e-Gov法令検索「会社法 第四百四十五条」
資本金についてさらに詳しくは、別記事「資本金とは?会社設立時に必要な金額の決め方や注意点をわかりやすく解説」をご覧ください。
資本金1000万円未満の節税メリット
資本金1000万円未満の節税メリットは以下の点が挙げられます。
資本金1000万円未満の節税メリット
- 資本金1000万円未満なら新設法人は消費税の納税義務が免除される
- 法人住民税の均等割が7万円に抑えられることがある
資本金1000万円未満なら新設法人は消費税の納税義務が免除される
消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者であれば、原則として免除されます。基準期間とは、その事業年度の前々事業年度のことです。
ただし、新設法人の場合は、設立1期目と2期目には基準期間が存在せず、条件を満たす場合に消費税の納税義務が免除されます。
1期目・2期目の免除条件をまとめると、以下のとおりです。
| 期数 | 消費税の納税義務が免除される条件 |
|---|---|
| 1期目 | 事業年度開始日の資本金が1000万円未満 |
| 2期目 | 事業年度開始日の資本金が1000万円未満、かつ特定期間の課税売上高(または給与等支払額)が1000万円以下 |
出典:国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
出典:国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」
事業年度開始日の資本金または出資金が1000万円以上の場合、原則として設立1期目・2期目は免税対象外となります。
1期目は資本金1000万円未満であれば免除
設立1期目は基準期間が存在しないため、事業年度開始日の資本金が1000万円未満であれば、原則として消費税の納税義務が免除されます。
ただし、特定新規設立法人に該当する場合や、適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)の登録を受けている場合は、1期目から課税事業者となり消費税の納税が必要です。
2期目は資本金1000万円未満で条件を満たすと免除
設立2期目に消費税の納税義務が免除されるためには、以下の両方を満たす必要があります。
- 事業年度開始日の資本金が1000万円未満
- 特定期間の課税売上高または給与等支払額が1000万円以下
特定期間とは、原則として前事業年度開始日から6ヶ月間のことです。設立2期目の場合は、1期目の開始日から6ヶ月間、つまり会社設立から6ヶ月間が該当します。
特定期間の判定は、課税売上高だけでなく給与等支払額の合計額で行うこともでき、どちらを用いるかは事業者が任意で選択できます。
出典:国税庁「個人事業者の法人成りの場合の課税売上高の判定」
個人事業主だったときに1000万円を超える課税売上高があっても、課税売上高は引き継がれません。
法人住民税の均等割が7万円に抑えられることがある
法人住民税とは、事務所や事業所が所在する自治体(都道府県や市区町村)へ納める税金です。
法人住民税には、所得金額に関係なく一定額が課される均等割と、法人税額を基に計算される法人税割があります。
均等割は資本金額や従業員数などに応じて決まり、その金額は各自治体で多少異なりますが、標準額は下表のとおりです。
| 従業員数 | 資本金額 | 法人住民税額の均等割 |
|---|---|---|
| 50人以下 | 1000万円以下 | 7万円 ※都道府県の法人住民税2万円 + 市町村の法人住民税5万円 |
| 1000万円超1億円以下 | 18万円 ※都道府県の法人住民税5万円 + 市町村の法人住民税13万円 | |
| 50人超 | 1000万円以下 | 14万円 ※都道府県の法人住民税2万円 + 市町村の法人住民税12万円 |
| 1000万円超1億円以下 | 20万円 ※都道府県の法人住民税5万円 + 市町村の法人住民税15万円 |
従業員50人以下の会社の場合、資本金が1000万円を超えるかどうかで、法人住民税の均等割額が標準的には11万円変わります。
また、法人住民税の均等割は資本金額や従業員数などに応じて決まりますが、対象となるのは会社設立時の資本金ではなく、事業年度終了日現在です。
そのため、事業年度内に増資するなどして資本金が1000万円を超えた場合は、「資本金が1000万円超1億円以下」の区分が適用され、均等割の税負担額が増加します。
【関連記事】
法人住民税とは?均等割や計算方法についてわかりやすく解説
資本金1000万円未満の場合のデメリット・注意点
会社の資本金を1000万円未満にすると、条件によっては消費税の納税義務が免除されたり、法人住民税の均等割を抑えられたりする一方で、以下のようなデメリットもあります。
資本金を1000万円未満の場合のデメリット・注意点
信用度が低いと判断される可能性がある
2006年5月施行の会社法により、現在は資本金1円から株式会社の設立が可能です。以前は、株式会社の設立には資本金1000万円以上が必要とされていました。
こうした背景から、資本金1000万円に達していない会社は、取引先や金融機関から事業継続性に不安があると判断され、取引で不利になるケースもあります。
融資を受ける際に不利になることがある
資本金は、金融機関が融資審査において財務基盤や事業継続性を判断する材料となるため、金額が少ないと融資を受けにくくなる可能性があります。
法律上は資本金1円から会社設立が可能ですが、十分な資本金を準備しておくほうが、信用や融資の面で有利になります。
資本金1000万円未満でも適格請求書発行事業者は課税事業者になる
設立1期目は、資本金1000万円未満であれば消費税の納税義務が原則として免除されます。
2期目についても、資本金1000万円未満であり、特定期間の課税売上高または給与等支払額が一定の条件を満たす場合は、消費税の納税義務が免除されます。
ただし、インボイス制度の適格請求書発行事業者として登録している場合は、この納税義務免除の特例の対象外です。
適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高や新設法人の納税義務免除特例の適用有無にかかわらず、消費税の納税義務が発生します。
そのため、資本金1000万円未満の新設法人であっても、適格請求書発行事業者として登録した時点で課税事業者となり、消費税の申告・納付が必要です。
資本金1000万円を超える場合の注意点
資本金が1000万円を超える場合、会社設立にあたって注意すべき点が4つあります。
- 取適法(旧下請法)で委託事業者になることがある
- 消費税・法人住民税の税負担が増える
- 資本金2,143万円超なら登録免許税の税額が増える
- 資本金が1億円超なら中小法人に対する各種優遇税制が適用されない
資本金の平均額や決め方については、別記事「中小企業の資本金の平均額はどのくらい?会社設立時の資本金の目安や決め方について解説」をご覧ください。
取適法(旧下請法)で委託事業者になることがある
下請法の見直しに関連して、中小受託取引適正化法(いわゆる取適法)が2026年1月1日に施行されました。
資本金が1000万円を超える場合、取引内容や相手方との関係によっては、取適法の委託事業者に該当することがあります。
該当する可能性のある取引内容・資本金基準・該当時の義務は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引の内容 | ・製造委託 ・修理委託 ・特定運送委託 など ・情報成果物作成委託/役務提供委託の一部 |
| 資本金基準 | ・製造委託・修理委託・特定運送委託など:委託事業者は資本金1,000万円超3億円以下、中小受託事業者は資本金1000万円以下 ・情報成果物作成委託・役務提供委託の一部:委託事業者は資本金1,000万円超5,000万円以下、中小受託事業者は資本金1000万円以下 |
| 発生する義務 | ・発注内容などを明示する義務 ・書類などを作成・保存する義務 ・支払期日を定める義務 ・遅延利息を支払う義務 |
中小受託取引適正化法の施行に伴い、旧下請法の資本金基準に加えて、従業員数基準(製造委託等は300人、役務提供委託等は100人)が追加されました。
資本金が1000万円以下であっても、従業員数基準を満たす場合は、取適法の適用対象となります。
消費税・法人住民税の税負担が増える
資本金が1000万円以上になると、原則として設立1期目から消費税の納税義務が発生します。設立1期目・2期目の消費税の免除は資本金1000万円未満が条件のため、資本金が1000万円以上の場合は適用対象外です。
また、法人住民税の均等割は、資本金や従業員数の区分に応じて税額が段階的に変わります。従業員数が50人以下の場合、資本金が1000万円を超えると、法人住民税の均等割は標準的には7万円から18万円に増額されます。
資本金2143万円超なら登録免許税の税額が増える
登録免許税は、会社設立の登記を行う際に納める税金です。
株式会社の場合、資本金額を基に登録免許税を計算します。税率は資本金の1000分の7で、計算後の金額が15万円未満の場合には一律15万円です。
そのため、資本金が約2,143万円以下であれば、登録免許税は一律15万円となります。資本金が約2,143万円を超える場合は、登録免許税の税額が増えることも踏まえて設立時の資本金額を検討しましょう。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
会社設立の方法を知りたい方は、別記事「起業するにはどうする?会社起業のやり方や必要な手続きをわかりやすく解説」もご覧ください。
資本金が1億円超なら中小法人に対する各種優遇税制が適用されない
法人税では、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人に対して、中小法人向けの各種優遇税制が設けられています。
主な優遇税制として、以下が挙げられます。
資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小法人向けに設けられている法人税での主な優遇税制
- 所得金額のうち年800万円以下の部分に軽減税率が適用される制度
- 交際費などについて年800万円まで損金算入できる特例
- 少額減価償却資産の取得価額を一定の範囲で損金算入できる特例
ただし、資本金または出資金の額が1億円を超える法人は、原則としてこれらの中小法人向けの優遇税制の対象外です。
たとえば、欠損金の繰越控除は中小法人等に認められる優遇税制のひとつですが、中小法人等は原則として所得金額の全額まで控除できるのに対し、中小法人等以外の法人は控除限度額が所得金額の50%に制限されます。
資本金を1億円超に増資すると、信用力の向上や資金調達面でのメリットがある一方で、税務上は中小法人として受けられていた特例が使えなくなる可能性があります。
出典:国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
【関連記事】
【企業規模別】繰越欠損金とは?控除限度額や適用条件を解説
まとめ
資本金は、会社設立時に株主が出資する事業の元手であり、返済義務のないお金です。資本金額は、税負担だけでなく、会社の信用や融資審査にも影響します。
資本金を1000万円未満にすると、条件を満たす場合に設立当初の消費税の納税義務が免除され、法人住民税の均等割も抑えられることがあります。
一方、資本金が少ない場合、取引先や金融機関からの信用面で不利になる可能性もあるため、メリットとデメリットを踏まえた判断が必要です。
資本金額は、事業開始時に必要な運転資金や取引先・金融機関からの信用への影響を踏まえて、慎重に検討しましょう。
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よくある質問
資本金を1000万円未満にするメリットは?
会社設立時の資本金を1000万円未満にする主なメリットは、条件によっては消費税の納税義務の免除を受けられることや、法人住民税の均等割を低く抑えられることです。
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監修 松浦 絢子弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。
