監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
会社設立には、資本金が必要です。会社法上は資本金1円からでも会社の設立は可能です。
一方で、あらかじめある程度の資本金を用意することで、会社経営に重要な「会社の信用度」を高めることが可能です。
本記事では、会社設立の資本金を1,000万円未満にするメリット・デメリット、1,000万円以上の金額を資本金とする際の注意点などについて解説します。会社設立を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
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無料で始めてみる資本金とは
資本金とは、会社設立時に株主が出資した、その会社の事業の元手となるお金のことです。創業直後から利益をあげられる会社ばかりではないため、設立時にある程度の資金を調達しておき、オフィスの賃料や設備投資費、従業員の給料などの運転資金に回します。
資本金と混同されがちな言葉に「借入金」がありますが、この2つは違うものであるため、区別して覚えておく必要があります。資本金は返済義務のない自己資本であり、借入金は返済しなければならない他人資本であることを覚えておきましょう。
会社の財務状況をまとめる貸借対照表では、資本金は純資産の部に、借入金は未払い金や買掛金などと同じく負債の部に表示されます。
出典:e-Gov法令検索「会社法 第四百四十五条」
資本金についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「資本金とは?基本情報から会社設立時に必要な金額の設定方法までわかりやすく解説」を参考にしてください。
資本金1000万円未満で消費税の納税義務が免除
会社設立時において資本金1,000万円が目安になっているのは、消費税の納税義務が発生するかどうかのボーダーラインだからという理由もあります。
消費税の納税義務が免除されるケースと免除期間については、資本金と消費税の関係についてまとめた下のフローチャートで確認できます。あわせて、免除における注意点も見ていきましょう。
消費税の納税義務が免除されるケース
消費税の納税義務が免除されるケースをまとめると、以下のとおりです。
<消費税の納税義務が免除されるケース>
1期目 | 会社設立時の資本金が1,000万円未満 |
---|---|
2期目 | 以下のいずれかの場合 1.資本金が1,000万円未満で、会社設立から6ヶ月間の課税売上が1,000万円以下 2.資本金が1,000万円未満で、会社設立から6ヶ月間の給与支払額が1,000万円以下 |
消費税の納税義務は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者だと免除されると定められています。基準期間とは、課税事業者か免税事業者かを判断する基準となる期間のことで、法人の場合は「前々事業年度」を指します。
こうした期間が設けられているのは、規模の小さな中小事業者の事務負担などを軽くするためです。
設立したばかりの会社(資本金1,000万円未満の会社のみ)にはそもそも基準期間が存在しないため、1期目については納税義務が免除されます。2期目については、上記のケースのうち1か2の条件を満たすと免除になります。
このケースに当てはまると、設立時から最大で2年間は消費税を納める必要がありません。
なお、インボイス登録(適格請求書発行)事業者については消費税の納税義務が免除されないため、注意が必要です。
出典:国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」
出典:国税庁「No.6501 納税義務の免除」
資本金と消費税の納税義務免除における注意点
大前提として、資本金1,000万円以上の法人は、設立1期と2期について消費税の納税義務を免除されることはありません。
例えば、設立時の資本金が1,000万円未満であった会社は、本来なら最大2年間は消費税の納税義務が免除されます。
しかし、設立2期目の事業年度開始日の資本金あるいは出資金が1,000万円以上であるなら、その年は消費税の納税義務が発生します。
出典:国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」
また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、前事業年度開始日から6ヶ月(特定期間)の間に課税売上高が1,000万円を超えた時点で課税事業者として扱われます。
出典:国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
出典:国税庁「消費税法改正のお知らせ(平成23年9月)」
なお、消費税の納税義務が発生する場合は、消費税の新設法人に該当する旨の届出書」の提出が必要となります。
出典:国税庁「[手続名]消費税の新設法人に該当する旨の届出手続」
資本金1000万円未満で得られる他の節税メリット
会社の資本金を1,000万円未満にする主なメリットは消費税の納税義務の免除ですが、そのほかにも節税できる部分があります。
法人住民税は最大7万円の節税が可能
法人住民税とは登記をした自治体(都道府県や市区町村)へ支払う必要がある税金です。
この法人住民税には所得金額に関係なく一定に課せられる均等割と、法人の所得によって決まる法人税に基づいて計算される法人税割があります。
資本金額に連動するのが、均等割です。均等割の税額は各自治体によって多少金額が異なりますが、標準額は下表のようになっています。
従業員数 | 資本金額 | 法人住民税額 |
---|---|---|
50人以下 | 1,000万円以下 | 7万円 ※都道府県の法人住民税2万円 + 市町村の法人住民税5万円 |
1,000万円超1億円以下 | 18万円 ※都道府県の法人住民税5万円 + 市町村の法人住民税13万円 | |
50人超 | 1,000万円以下 | 14万円 ※都道府県の法人住民税2万円 + 市町村の法人住民税12万円 |
1,000万円超1億円以下 | 20万円 ※都道府県の法人住民税5万円 + 市町村の法人住民税15万円 |
従業員50人以下の会社の場合、資本金が1,000万円を超えるか否かで税負担額が11万円も異なります。毎年必要な費用となるため、節税を考えている方は考慮すべきポイントです。
なお、前述の消費税では「資本金1,000万円未満」が納税免除になる基準でしたが、法人住民税の均等割が安く済む基準は「資本金1,000万円以下」という違いがあるため、1,000万円ちょうどの場合は注意しましょう。
出典:総務省「法人住民税」
以上のように、法人住民税の均等割は資本金額と連動して決まりますが、対象となるのは会社設立時の資本金ではなく事業年度末の資本金です。
そのため、事業年度内に増資するなどして資本金が1,000万円を超えた場合は、「資本金が1,000万円超1億円以下」で計算され、税負担額が増えることになります。
資本金を1000万円未満にするデメリット
会社の資本金を1,000万円未満にすることには、消費税や法人住民税の節税を図れるというメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 対外的に信用度が低いと判断される可能性がある
- 融資を受ける際に不利になることがある
2005年の会社法改正により、現在は資本金1円から株式会社の設立が可能です。
しかし、以前は資本金1,000万円以上でなければ会社設立はできませんでした。その名残からか、資本金1,000万円に達していない会社は「事業を継続できるか不安だ」と思われ、取引で不利になるケースもあります。
また、資本金が少ないと、金融機関からの融資を受けにくくなることも考えられます。
例えば、日本政策金融公庫の創業融資の要件は、「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」です。この場合の自己資金は、事業に使用される予定の資金を指します。
出典:日本政策金融公庫「新創業融資制度」
このように、法律上では資本金1円から会社設立が可能であっても、対外的な信用や融資のことを考えると、十分な資本金を準備しておくことが望ましいでしょう。
資本金1000万円を超えるの場合の注意点
1,000万円超えの資本金で会社設立をする場合、気を付けたほうがよい点があります。ここでは、主に3つの注意点について解説します。
別記事「資本金の平均額は300万円。資本金を決めるポイント5つ」で資本金の平均額や決める際のポイントをまとめています。興味のある方はぜひご覧ください。
下請法で親会社の対象になる
資本金が1,000万円を超えると、下請け会社を保護する下請法(下請代金支払遅延等防止法)における親会社となり、下請け会社に対するさまざまな義務が発生します。
発生する義務の例は以下のとおりです。
- 書類の作成・保存義務
- 書面の交付義務
- 支払期日を定める義務
- 遅延利息の支払義務
これらの義務によって事務作業の負担が増えるだけでなく、義務違反ともなれば罰則を科される可能性もあるため、資本金を1,000万円超えに設定するかは慎重に判断しましょう。
下請法や親会社(親事業者)などについて詳しく知りたい方は、別記事「下請法の対象取引は?親事業者・下請事業者の定義や禁止事項を解説」を参考にしてください。
法人住民税の均等割が増える
「法人住民税は最大7万円の節税が可能」で前述したとおり、法人住民税の均等割の税額は、資本金が1,000万円を超えるか否かで大きく変わってきます。
例えば、東京23区における資本金額別の均等割額は以下のとおりです。
資本金額 | 従業員数 | 均等割額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 50人以下 | 7万円 |
50人超 | 14万円 | |
1,000万円超~1億円以下 | 50人以下 | 18万円 |
50人超 | 20万円 | |
1億円超~10億円以下 | 50人以下 | 29万円 |
50人超 | 53万円 | |
10億円超~50億円以下 | 50人以下 | 95万円 |
50人超 | 229万円 | |
50億円超 | 50人以下 | 121万円 |
50人超 | 380万円 |
上表より、資本金額が増えるほど均等割額も増えていることがわかります。法人住民税を最大限抑えたいのであれば、資本金は1,000万円を超えないように設定したほうがよいでしょう。
資本金2143万超なら登録免許税の税額が増える
会社設立の登記を行う際に必要となるのが、登録免許税です。
株式会社の場合、資本金額が基準となり登録免許税の税額が決まります。税率は資本金の1,000分の7ですが、計算後の金額が15万円以下の場合には一律15万円です。
つまり、資本金が2,143万円以下の会社の税額は一律15万円となります。それ以上の資本金での設立を考えている場合には、登録免許税の税額が増える点も頭に入れておきましょう。
一方で、1,000万円前後だと数万円〜数十万円を節税できます。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
会社設立の方法を知りたい方は、別記事「起業するにはどうしたらいい?会社を起業する方法や手続きについてわかりやすく解説」も参考にしてください。
まとめ
資本金とは、会社設立時に株主が出資し、その会社の事業の元手となる返済不要のお金です。資本金をいくらに設定するかは、その後の会社運営に大きな影響をおよぼします。
資本金を設定する際には、事業の運転資金を確保できるか、社会からの信頼を得られるかという観点が重要です。
資本金を1,000万円未満にすることには節税をはじめとするメリットがありますが、融資を受けづらくなるときがあるといったデメリットもあります。
そのため、現状や環境などを考慮したうえで、金額を設定するようにしましょう。
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会社の資本金が1,000万円を超えると、下請法における親会社(親事業者)扱いになって下請け会社に対する義務が発生したり、法人住民税の均等割額が増えたり、登録免許税額が増えたり(資本金2,143万円超の場合)します。
詳しくは記事内「資本金1000万円以上の場合の注意点」をご覧ください。
監修 税理士・CFP® 宮川真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。