会社設立の基礎知識

個人事業か?会社か?個人事業開業と会社設立の手続き 税金比較

公開日:2020/01/25
最終更新日:2020/03/31

個人事業か会社か!個人事業開業と会社設立の手続きと税金比較

自分で事業を始める方法には、個人事業開業か会社設立の2つのパターンがあります。どちらの方がメリットが多いのか、どちらのパターンで開業すれば良いのか検討する必要があります。

取引先の条件や従業員の雇用、資金調達方法によって、個人事業主として開業するか会社を設立するかを決めるのも一つの方法です。

個人事業で開業するメリットに無料で簡易的に手続きを行える点があります。

会社は一般的に納税額が個人事業よりも少なくなったり、確定申告の控除額が多くなったりします。デメリットは設立に費用が発生し、提出書類が多いことなどでしょう。

この記事では、個人事業の開業と会社設立の手続き、税金、経費計上を比較してご紹介します。

目次

個人事業は無料で開業でき手続きも容易 会社と「設立費用」「手間」を比較

個人事業の開業と会社設立での大きな違いは開業費用です。

個人事業は開業費用が無料で、手続きが簡単ですが、会社を設立するときは株式会社は約24万円、合同会社は約10万円の設立費用が必要で、手続きに手間がかかります。

1.個人事業の開業費用と手続き

個人事業主として開業する場合は、申請費用はゼロ円。手続きは開業届を税務署へ提出するだけなので1日で終了します。

<個人事業の開業費用と手続き>
1)開業費用:無料
2)手続き:税務署へ開業届を提出

2.株式会社と合同会社の設立費用と手続き

法人を設立する場合は株式会社で約24万円、合同会社で約10万円が必要になります。

会社設立時には複雑な手続きが発生します。定款の認証を得るために公証人役場へ出向いたり、登記をするために法務局や税務局へ出向いたり。書類の用意だけでなく、移動も多くすべて自分で行う場合には登記申請まで1週間はかかります。

<株式会社と合同会社の設立費用比較>

株式会社 合同会社
<定款にかかる費用>
収入印紙代 40,000円
※電子定款を作成する場合は無料
40,000円
※電子定款を作成する場合は無料
認証手数料 50,000円
謄本手数料 2,000円 2,000円
<登記にかかる費用>
登録免許税 150,000円〜
※厳密には資本金の額×0.7%
60,000円〜
※厳密には資本金の額×0.7%
合計 242,000円 102,000円

会社は税金の種類は多いが納税額が少ない 個人事業と「会社の税金」を比較

個人事業は4種類の税金の納税義務があるのに対して、法人は6種類。

一見、個人事業主の方が納める税金額が少ないように思いますが、事業の規模によっては法人の方が納税額が少なくなる場合もあります

その特徴が一番に現れているのが個人事業主の所得税と法人の法人税。課税対象の所得が330万円以上になる場合には会社設立をした方が税率が低くなります。
(一部、所得が800万円〜900万円の場合のみ個人事業主の方が税率が低くなりますのでご注意ください。)

また、社員がいる法人は「所得の分散」が可能になることも法人のメリット。一人で多くの所得を得るのではなく、社員何人かに分散して所得を小さくした方がそれぞれの税率が低くなる分、納める税金が少なくなります。

1.個人事業の税金の種類と税率

個人事業主が支払う税金は「所得税」「住民税」「消費税」「個人事業税」の4種類です。

所得税はもうかるほど税率が高く控除が少ない

1年間の「もうけ」に対して課される税金。

もうけとは、1月1日から12月31日までの売上げの合計額(総収入金額)から、必要経費を引いた金額のこと。また必要経費以外にも、配偶者控除や扶養控除などの所得控除額を売上げの合計額から引くことができます。

しかし所得税は法人に比べて必要経費として認められる幅が狭く、もうけが増えれば増えるほど税率が上がってしまいます。高収入の場合は収入の半分が税金として徴収されてしまうということも。

<個人事業の所得税と税率>

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円〜330万円 10%
330万円〜695万円 20%
695万円〜900万円 23%
900万円〜1,800万円 33%
1,800万円〜4,000万円 40%
4,000万円〜 45%
住民税は課税所得から計算されて決まる

住民税は住所のある都道府県と市町村へ納める税金。 所得税の確定申告を行うと、住民税納税額の通知書が送られてきます。住民税は均等割と所得割から構成され、それぞれ各都道府県と各市町村へ納める必要があります。均等割はおよそ5,000円、所得割は所得の10%が標準として定められています。

消費税は開業後2年間と3年目以降も売上げ1,000万円以下の場合は免除

売上げた時に買い手から受け取った消費税分から、自分が仕入れや経費で支払った消費税分を差し引いた額を納税します。しかし開業して2年間は納税する必要はなく、また売上が1,000万円以下の場合もかかりません。

個人事業税の控除は290万円

個人が事業を行っていることに対して課せられる地方税。 業種によって税率は違いますが、ほとんどの業種で4%となっています。しかし1年間の事業につき一律290万円が控除されるので、年間事業所得が290万円以下の場合は個人事業税はかかりません。

2.会社の税金の種類と税率

一方の法人の場合は納めるべき税金は「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「地方法人特別税」「消費税」「固定資産税」と最低でも6つ。また会社によっては利子や配当金に対して支払う「所得税」や、「自動車関連税」があります。

法人税は個人事業の所得税より税率が穏やか

法人の所得に対して課せられる税金。個人事業主でいうと所得税にあたります。法人税は所得税よりも税率が穏やかで、最大税率も約24%。例えば所得800万円に対する中小企業の法人税は15%なのに対して、個人事業主の所得税は23%と割高になっています。

<法人税の税率>

課税される所得金額 税率
800万円以下 15%
800万円以上 23.9%
法人住民税は個人事業の住民税より割高

会社が登記してある都道府県、市町村に対して納める税金です。

個人事業主だと住民税のこと。

法人住民税も法人税割と均等割から構成されています。東京都23区内で従業員50名以下の会社の例をあげると、法人税割は約17%、均等割は一律5万円/となりますので個人事業主よりは割高になっていますね。

法人事業税は年間所得が400万円以上だと個人事業税より割高

法人事業税は登記をしている都道府県で事業を営んでいることに対する税金。

税率は所得に応じて3段階に分かれており、年間所得が400万円以下であれば3.4%、400万以上800万以下であれば5.1%、800万円以上であれば6.7%になります。

地方法人特別税は個人事業にはない税金

地域間の税源格差を是正するため、法人事業税の一部を分離して生まれた国税。

平成26年に新設される際には法人税の税率が下がっているので、納付する総額には変更ありません。法人税額の4.4%を納付します。

消費税の納税は出資金1,000万円以下の法人なら個人事業と差はない

会社が消費者から預かって国に納付する消費税。現在は10%です。

出資金が1,000万円以下の場合は創業して2年間は納税が免除されます。また課税対象の期間中の売上高が1,000万円以下の会社も免除になります。

固定資産税

会社で保有している土地や建物など、有価償却資産となる固定資産に対して課せられる税金です。基本的に税率は1.4%と定められています。

個人事業主の方でも、個人で土地や建物を所有している場合、固定資産税を支払います。

これは会社所有ではなく個人所有の固定資産として支払うものです。

確定申告で控除できる費用は個人事業より会社が多い

個人事業よりも法人の方が確定申告で控除を受けられる費用が多くなります。

特に法人は「給与所得」を控除できることがとても大きなメリット。個人事業主の所得は事業所得になりますが、法人のオーナー社長の場合は給与所得となります。つまり自分の給料を利益ではなく費用として計上ができます。また個人事業主が青色申告控除をしても65万円まで。法人の給与所得控除でいかに高額な費用を経費として計上できるかが分かりますね。

社長個人の場合でも給与所得控除が受けられるので、課税対象となる所得額が個人事業主の場合よりも低くなり納める税金が少なくなるメリットもあります。

個人事業と会社の費用計上を比較

事業に関連したものであれば、個人事業でも様々な出費が経費とみなすことができます。事業内容によっては自分の理美容代なども経費として計上できますし、事業に必要であるものであれば図書代や新聞も。インターネット接続にかかるプロバイダ料金や携帯電話代なども計上してOKです。
会社の場合、給与や日当など人件費が経費になります。
個人事業と会社の費用計上を比較しました。

1.個人事業の経費

10万円未満の消耗品

仕事で使用する文房具やコピー用品、PC用品等の消耗品で10万円未満(10万円以上は資産として計上します)もしくは使用可能期間が1年未満のもの。事業で使う自動車のガソリン代も含まれます。

旅費交通費は電車やバスだけではなく自動車移動も経費になる

取引先との打ち合わせにかかる交通費や通勤費、出張旅費など。高速道路を使った場合やコインパーキングに駐車した場合の出費も経費としてOK。

ちなみに事業に使う自動車の自賠責保険や任意保険、海外出張時の傷害保険なども経費として認められます。

個人事業に接待交際費の限度額はない

打ち合わせの時の飲食代や新年会・忘年会等の会食代も経費として認められます。仕事関連でお付き合いしている方の冠婚葬祭に支払った慶弔費なども含まれます。法人と違い経費として認められる交際費の限度額はありません。

事業用なら水道光熱費も経費になる

事務所の水道光熱費はもちろんのこと、自宅を仕事場として使っている場合は事業用に使う割合に応じて経費とみなしてOKです。

事務所の引っ越し費用やセミナー参加費はその他経費になる

事務所の引っ越し費用(敷金除く)、事業促進のためのセミナー参加費なども経費として計上することができます。

2.会社の経費を個人事業の経費と比較

法人は基本的には個人事業主が計上できる経費をすべて計上できる上、プラスアルファでさらに幅広い出費も経費として計上することができます。

会社は自分の給料も経費になる

個人事業主との一番の違いは自分や家族従業員への給料が経費と認められていること。また退職金も経費になるのでかなりの節税になります。

会社なら保険料も経費になる

個人事業主は生命保険料は所得控除として所得額から引かれる事はありますが、経費としては認めらません。また12万円が限度です。一方、法人の場合は生命保険は経費として上限なく計上できます。

会社名義の物件なら住宅費も経費になる

法人の場合は自宅の賃料も必要経費として計上することが可能になる場合も。

法人になると会社名義で物件を借り、社宅として経営者に貸し出せるので、家賃の8割程度を経費とすることができます。また自宅を会社名義で購入した場合は、その住宅を社宅として住宅にかかる借入金の利息、不動産所得税や固定資産税、修繕費などの費用が経費として計上する方法も。

一方の個人事業主の場合は、賃貸マンション等を自宅兼事務所としても、事業で使用する割合の家賃しか経費で落ちません。

会社は日当も経費になる

長距離の移動や宿泊が伴う出張など、通常業務以上の肉体的・精神的の疲労がある場合にその労をねぎらう意味で支給される日当。個人事業主は経費として認められませんが、法人の場合は事業主の分も経費として認められます。

個人事業か会社か!個人事業開業と会社設立の手続きと税金比較

取引先の条件や従業員の雇用、資金調達方法で個人事業か会社かを決める

設立にかかる費用や税金、計上できる経費を個人事業と会社で比較しました。

個人事業と会社のどちらで事業を始めるかを考えたとき、手続きや税金、控除だけではなく、どのように事業を運営していくかも重要です。

1.見込み取引先の条件で決める

事業を開始するとき、見込み取引先がある場合、営業や販売代理店として事業を行う場合は、取引や契約条件を確認をしてから個人事業か会社か決めるのをおすすめします。

  • 個人事業との取引可→個人事業開業
  • 法人取引のみ→会社設立

2.資金調達の方法で決める

開業資金の調達方法での検討も重要です。

金融機関から融資を受けようとする場合、個人事業でも融資可能かを確認しましょう。日本政策金融公庫の一般貸付は、個人でも会社でも融資限度額は変わりません。

事業の立ち上げに協力してくれる人がいる場合は、出資のかたちがとれる会社設立がおすすめです。

  • 個人で金融機関から融資可能→個人事業
  • 出資で資金調達→会社設立

3.スタートから従業員を雇用するかどうかで決める

事業内容によって、スタートから従業員を雇用する場合があります。

給与を経費に計上するほうが利益が高くなるかどうかで決めましょう。

  • スタートは家族が従業員→個人事業で青色申告
  • 開始から複数従業員を雇用→会社設立し給与を経費計上

取引先の見込みがある方や自己資金の心配が少ない方には、早期のビジネス拡大を目指して、会社を設立し法人として事業をスタートさせることをおすすめします。

取引先の条件や従業員の雇用、資金調達方法で個人事業か法人かを決める

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まとめ

個人事業と会社を開業手続きと設立の手続き、税金、控除、経費計上、設立時の取引先の条件などで比較しました。

どちらにもメリット、デメリットがあります。
個人事業も会社も、事業をスタートした時点から節税を意識して、控除が受けられるよう売上や経費の処理が必要です。

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