会社設立の基礎知識

資産管理会社とは?設立するメリットや適した会社形態を解説

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

資産管理会社とは?設立するメリットや適した会社形態を解説

資産管理会社とは、個人が保有する不動産や株式などの資産を管理・運用するために設立された法人です。

資産管理会社を設立することで、税負担を軽減できたり、所得を分散できたりするなどのメリットを享受できるケースがあります。

本記事では、資産管理会社の特徴や設立するメリット・デメリット、設立するまでの流れについて解説します。

目次

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資産管理会社とは

資産管理会社とは、不動産や株式などの資産管理を目的として設立された、資産保有型会社と資産運用型会社の総称です。租税特別措置法において、特定資産の保有割合が総資産の70%以上の法人は資産保有型会社、特定資産による収益が総収入金額の75%以上の法人は資産運用型会社といいます。

一般的に資産管理会社と表現される場合には、「資産運用型会社」を指すケースが多いため、本記事では、資産運用型会社としての資産管理会社について解説します。

主に以下に当てはまる個人が資産管理会社を設立するケースが多く、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

  • 自己資金で資産を購入して運用している個人事業主
  • 将来多額の資産相続(相続税)が見込まれる個人

不動産の賃貸収入や保有株式の配当収入など、保有する資産を運用することで得られる収入が、資産管理会社の主な収入源です。

【関連記事】
「投資会社は設立するべき?個人投資家が法人化する目安やメリット・デメリットについて解説」

資産管理会社を設立するメリット

資産管理会社を設立する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 税負担を軽減できる
  • 所得を分散できる
  • 欠損金を繰越控除できる
  • 経費の範囲を拡大できる

ただし、実際に十分なメリットを享受できるかどうかは、所有する資産をはじめ、資産を所有する本人や家族の状況などによって異なることを理解しておきましょう。

税負担を軽減できる

会社設立によって税負担を軽減できるのは、役員報酬に給与所得控除が適用されるためです。

収入の一部を役員報酬として受け取った場合、役員報酬は給与所得とみなされるため、給与所得控除が適用されます。


給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から 6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から 8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

たとえば、本人が受け取る役員報酬を450万円とした場合は450万円の給与収入を得たことになり、134万円の給与所得控除が差し引かれ、課税所得は316万円まで削減できます。


給与所得控除:4,500,000円×20%+440,000=1,340,000円
課税所得:4,500,000円-1,340,000円=3,160,000円

課税所得450万円の所得税率は20%ですが、課税所得が316万円になれば所得税率が10%になるため、さらに税負担を軽減できるわけです。


課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

所得を分散できる

会社を設立した場合、配偶者や親族を役員にし、仕事に従事してもらうことでそれぞれの役務に対して役員報酬を支払い、所得を分散できます。

役員報酬は給与所得のため給与所得控除が適用されますが、それぞれに対して控除が適用されるため、人数分の控除の合計金額分だけ節税効果が得られるのです。

課税所得900万円の個人事業主の場合

所得税:9,000,000円×33%-1,536,000円=1,434,000円

本人・配偶者・親族の3名にそれぞれ300万円の役員報酬を支払った場合

    給与所得控除:3,000,000円×30%+80,000=980,000円
    課税所得:3,000,000円-980,000円=2,020,000円
    所得税:2,020,000円×10%ー97,500円=104,500円

    計:104,500円×3名=313,500円

上記のように3名に対して給与所得控除が適用されるうえに、控除されることで課税所得の額が少なくなり、3名に分散されることで所得税率も低下します。

ただし、不動産所得または事業所得を得ている個人事業主の場合は、青色申告制度を利用すると最大65万円の特別控除が適用されるため、その点も加味して所得分散による節税メリットが大きいかどうかを判断しましょう。

欠損金を繰越控除できる

繰越控除とは、過去の年度に生じた赤字を、翌年以降の黒字の年度で相殺できる制度です。

個人事業主でも繰越控除は可能ですが、赤字が発生した年度から3年までしか赤字を繰り越しできません。

一方、会社を設立すれば最長で10年間、赤字を繰り越せます

経費の範囲を拡大できる

個人事業主は事業に関わる経費と生活費との区別を明確にする必要があります。家賃や電気料金、通信費など、生活費と事業費をはっきりと分けられない費用については、プライベートにおける利用分と事業での利用分への振り分け作業、家事按分(かじあんぶん)を行う必要があります。

一方、会社を設立すれば、プライベートとの区別がつきやすくなります。そのほか、個人事業主が計上できる経費に加え、自身の給与や賞与、退職金も経費として計上できます。

また、法人として契約した生命保険料についても契約内容によっては上限なく経費計上できます。

資産管理会社を設立するデメリット

資産管理会社を設立する主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 会社の設立・維持コストがかかる
  • 移転した資産は自由に使えなくなる
  • 赤字を他の所得と通算できなくなる

会社の設立・維持コストがかかる

個人事業主として働くだけであれば開業届を提出するだけでよく、維持費もかかりません。

一方、資産管理会社を設立する場合には、一定の費用が必要です。

個人で手続きをすべて行うとしても、株式会社を設立する場合は25万円程度、合同会社の場合は10万円程度の費用がかかります。

株式会社・合同会社設立時の費用目安


費用株式会社の場合合同会社の場合
定款認証費用5万円0円
登録免許税15万円6万円
定款印紙代4万円4万円
印鑑作成、謄本手数料他数千円数千円

設立に関する手続きを行政書士などに依頼する場合は、報酬としてさらに数万円を支払う必要があります。

さらに、赤字の場合であっても法人住民税は支払う必要があり、経理手続きや法人税の確定申告を税理士へ依頼する場合には報酬も用意しなければいけません。

個人の事情によっても大きく差が出るため、各人の条件で税制上のメリットを算出して、会社設立が最適かどうかを判断する必要があります。

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移転した資産は自由に使えなくなる

資産管理会社を設立することで、個人で保有していた不動産や株式、現金を会社へ移転してしまうと、個人で自由に使用することはできなくなります。

急きょ通常の役員報酬を超えた金額を会社から個人へ移動したくなっても、超過分を損金として計上できなくなったり、高額な所得税が発生したりする恐れがあります。

赤字を他の所得と通算できなくなる

個人の場合、不動産所得における赤字は給与所得や事業所得の黒字から差し引くことが可能です。これを「損益通算」といいます。赤字が出た際に損益通算を行うことで、給与所得や事業所得にかかる税金を安くできます。

資産管理会社を設立した場合、法人の不動産所得に赤字が出てもこの損益通算が行えません。


出典:国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

資産管理会社に適した会社形態

会社を設立する場合、形態として以下の4つから選択することになります。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合資会社
  • 合名会社

上記のうち、資産管理会社の選択肢として考えられるのは「株式会社」と「合同会社」の2つです。

有限責任の株式会社と合同会社であれば、無限責任を負う合資会社・合名会社のように、出資した額以上の責任を問われることはありません。

さらに以下の2点を考慮すると、株式会社より合同会社を設立したほうが、法人化のメリットが高くなります。

合同会社のメリット

  • 設立・維持コストが低い
  • 自由度が高い

「個人の資産を運用する」という資産管理会社の性質上、大量の従業員を雇うケースは稀ですし、会社の規模を大きくする必要もありません。

したがって資産管理会社を設立する場合は、株主総会の開催や毎年の決算公告などの手間がかかる株式会社より、運営コストを最小限に抑えられる合同会社のほうが一般的に適しているといえます。

資産管理会社(合同会社)設立までの流れ

合同会社として資産管理会社を設立する流れは以下のとおりです。

  1. 会社の基本情報の決定
  2. 法人用の実印の作成
  3. 定款の作成
  4. 出資金の払い込み
  5. 法務局への登記申請

上記の手順を順番に進めていくことで、資産管理会社を設立できます。

1.会社の基本情報の決定

まずは、以下のような会社の基本情報を決定します。

会社の基本情報

  • 商号(会社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金(出資財産額)
  • 発起人の氏名と住所
  • 社員構成の決定
  • 会計年度(任意的記載事項)

2.法人用の実印の作成

会社設立時の登記申請や契約締結時に必要な、法人用の実印を作成しましょう。

実印を作成したら、代表者印を法務局に届け出るための印鑑届出書を作成します。

3.定款の作成

会社の基本情報や規則などが記載された定款(ていかん)を作成します。

定款には、事前に決めた会社の基本情報も記入します。なお、紙で作成すると40,000円の収入印紙代がかかりますが、電子定款だと収入印紙代は不要です。

4.出資金の払い込み

個人の口座へ会社の資本金を払い込みます。

「通帳の表紙と1ページ目」と「振り込み内容が記載されているページ」をコピーし、登記申請の際に必要な払込証明書を作成しましょう。

5.法務局への登記申請

合同会社設立に必要な書類を所在地を管轄している法務局に提出すれば、登記手続きは完了です。

合同会社の設立の流れについて詳しく知りたい方は、別記事「自分で合同会社を設立するには?用意する書類から必要手続きまで解説」をあわせてご確認ください。

まとめ

個人で家賃収入や株式配当を得ている場合、資産管理会社を設立することで、個人事業主のままでいるより節税できる可能性があります。

資産管理会社を設立する場合は、一般的に運営コストを最小限にすることが望ましいため、株式会社ではなく合同会社のほうが適しているといえます。設立のメリット・デメリットをしっかりと把握し、資産管理会社の設立を検討しましょう。

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よくある質問

資産管理会社とは?

資産管理会社とは、保有する資産を管理・運用することで収益を上げる法人です。

不動産の賃貸収入や保有株式の配当収入などが主な収入源の会社であり、不動産や株式の売買で利益を上げている場合については、基本的に資産管理会社とは呼びません。

近年では個人で資産を運用している事業主が法人化するケースがあり、「プライベートカンパニー」とも呼ばれています。

詳しくは記事内「資産管理会社とは」をご覧ください。

資産管理会社を設立するメリットは?

資産管理会社を設立する主なメリットとして、「税負担の軽減」「所得の分散」などが挙げられます。ただし、実際に資産管理会社の設立によるメリットが大きいかどうかは、所有資産や個人の状況などによって異なります。

詳しくは記事内「資産管理会社を設立するメリット」で解説しています。

監修 税理士・CFP® 宮川真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。

税理士・CFP® 宮川真一

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