会社設立の基礎知識

法人成りした場合における個人事業からの債務引受のポイント

個人事業から法人成りした場合は、設立した会社に対して資産だけでなく債務も引き継ぐのが一般的です。しかし、債務の移行方法などについてはよくわからないという事業主もいるでしょう。そこで、新会社が債務引受をする場合の処理方法や注意点などについてお伝えします。

法人成りで個人事業から債務を引受する方法

法人成りによって事業を引き継ぐ会社を設立したとしても、個人事業に関わる資産や債務が自動的に引き継がれるわけではありません。資産や負債を引き継ぐためには、それぞれ適切な処理を行う必要があります。

法人成りで個人事業から会社に資産を移行する場合は、売買契約や現物出資などの方法があり、資産を移すことが難しい場合は事業主から会社に貸すという方法もあります。

一方、設立した会社が債務を引受する方法にも種類があります。1つ目は「重畳的債務引受」と呼ばれる方法です。この方法は、設立した会社が事業主個人とともに債務引受します。根抵当権が設定されている場合は債務者に会社が加わることになります。

2つ目は「免責的債務引受」という方法です。この方法の特徴は、会社が単独で債務を引受する形になることです。事業主個人は連帯保証人になるのが一般的です。根抵当権に関しては債務者を個人から会社に切り替えることになります。

3つ目の方法は、事業主が個人事業として借りていた借入金などの債務を返済し、新会社が新たに融資を受ける方法です。担保などについても新たに設定することになります。根抵当権の債務者は個人から会社に変わります。金利などの債務条件が悪化しなければ3つ目の方法が事業主にとってわかりやすいですが、実務的には2つ目の方法で行われるケースが多いといわれています。

役員賞与認定課税には注意が必要

法人成りで設立した会社が債務を引受する場合、気をつける必要がある点は役員賞与の認定課税です。個人事業が債務超過状態になっていない場合、つまり個人事業の資産のほうが債務よりも大きい場合は、債務の引継ぎによる認定課税はほとんど問題になりません。しかし、債務のほうが資産よりも大きい債務超過状態の場合は、資産額を超える債務額について認定課税される可能性があります。

債務のほうが資産よりも大きい場合というのは、実質的にマイナスの出資が行われたことになります。そうなると、個人の借金を法人に付け替えたとみられる可能性があります。設立後の法人が全く同じ事業を継続して行うとしても、個人事業主と法人は別人格ですので、事業主個人が返済免除を受ける代わりに会社が返済義務を負うことになると税法上問題が生じます。具体的には、設立した会社の役員となっている事業主が債務の履行を免れるという得をしていることになるため、その経済的な利益を会社から役員賞与としてもらったとみなされて役員賞与認定課税が行われます。認定課税されると事業主の給与所得が発生し、所得税などの負担が生じることになります。債務の引受に関して税法上の不安がある場合は、税理士などの専門家に相談して進めることをおすすめします。

 債務引受は金融機関との調整が大事

法人成りによって設立された会社が個人事業から債務引受をする場合は、融資をしている金融機関とどのような方法で引受するのがよいのかしっかりと調整しておくことが求められます。銀行などから融資を受けている借入金を個人事業主が一旦全額返済をして、新たな会社に同額の融資をしてもらうことができる状態であれば、新会社への融資条件について不利にならないように交渉することだけ注意すればよいでしょう。

個人債務の一括返済ができない場合は、新会社に引き継いだ資産の分について新会社が融資を受け、その資金を会社が個人に支払い、個人債務を返済する方法などで対処することが考えられます。その場合、新会社の資産額査定などについて調整が必要です。また、信用保証協会の保証付融資を個人事業主が受けていた場合は、融資を実行している金融機関だけでなく信用保証協会との調整も必要になるでしょう。法人成りの検討をしている事業主は、できるだけ早い段階から融資を受けている金融機関との調整を始めておくように心がけるべきです。

まとめ

法人成りによって会社を設立したら、個人事業から資産だけでなく債務も引受することになります。引受の方法は3つあります。債務の引き受けを行う場合には、役員賞与の認定課税を受けて税負担が発生しないように注意することが大切です。また、法人成りをする前に融資を行っている金融機関などとよく調整しておくことも必要です。どのような方法で債務引受を行うのが適しているかわからない場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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