子会社の設立は、リスク分散や事業の効率化に役立つ有効な手段です。
しかし、経営面や税制面で多くのメリットがある一方、業務負担やコストが増えることにも注意が必要です。
本記事では、子会社の種類や設立のメリット・デメリット、手続き方法、注意点について解説します。
目次
子会社とは?
子会社とは、他社(親会社)に経営権を握られ、実質的に支配されている会社のことを指します。
会社法で定められた子会社の定義は、以下のとおりです。
三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
なお、議決権が50%以下であっても、以下のいずれかの要件に当てはまると子会社として判定されます。
子会社として判定される一定の要件
- 取締役会などの構成員総数に対して他社(親会社)の役員などの割合が50%を超える場合
- 他社(親会社)が重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約などが存在する場合
- 他社(親会社)からの融資(資金や技術、仕入などを含む)の割合が50%を超える場合
出典:e-GOV法令検索「会社法施行規則 第三条三項」
子会社の種類
子会社には、完全子会社・連結子会社・非連結子会社の3種があり、違いは以下のとおりです。
種類 | 定義 |
---|---|
完全子会社 | 親会社が議決権の100%を取得している会社のことで、業績は親会社が作成する連結財務諸表に含まれる |
連結子会社 | 親会社が議決権の過半数を取得している会社のことで、業績は親会社が作成する連結財務諸表に含まれる |
非連結子会社 | 子会社には該当するものの、重要性が乏しい、または支配が一時的な会社で、業績は連結対象外 |
子会社設立のメリット
子会社設立には以下のようなメリットがあります。
子会社設立のメリット
- リスク分散ができる
- 節税ができる
- 素早い経営判断が期待できる
リスク分散ができる
自社の各事業を子会社化することで経営リスクを分散することが可能です。
たとえば、子会社化していない状態で業務上のトラブルや不祥事が起こった場合、業務停止を命じられたり風評被害に見舞われたりと会社全体に影響が及ぶ可能性があります。
しかし、各事業を子会社化しておくことで、該当事業の1社が損害を被ることはありますが、親会社や他のグループ会社への影響を最小限に抑えることができます。
節税ができる
子会社を設立するとさまざまな節税効果があります。
法人税率は原則23.2%ですが、資本金1億円以下の法人の800万円以下の所得には15%の軽減税率が適用されます。そのため、子会社を設立して利益を分散させることで法人税を削減できます。
また、課税売上高が1,000万円以下の場合、会社設立から2事業年度(基準期間)は免税事業者となるので、子会社設立により最大2年間は子会社分の消費税が免除されます。
なお、適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高にかかわらず消費税は免除されません。
出典:国税庁「法人税の税率」
出典:国税庁「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
素早い経営判断が期待できる
子会社を設立し、1社あたりの規模を小さくすることで、経営や事業の意思決定を迅速化できます。
会社規模が大きくなると、経営に携わる役員の数も増えるため、経営戦略会議や稟議が通るまでに多くの時間がかかるのが一般的です。
事業を分割して子会社化することで子会社ごとに経営陣を設置でき、意思決定や稟議に関わる人数が減り、より迅速な経営判断が可能になります。
子会社設立のデメリット
一方で子会社設立には以下のようなデメリットもあります。
子会社設立のデメリット
- 業務コストや経済的コストがかかる
- 税負担が増える場合がある
業務コストや経済的コストがかかる
子会社とはいえ、新会社の設立には多大な労力やコストが発生します。
たとえば、人事部や営業部、経理部といった必要部署を作らなくてはならず、設備費や人件費がかかるだけでなく、多大な労力もかかります。
また、親会社と同様に税理士や弁護士と顧問契約を結ぶのであれば、その契約費用も必要です。子会社で新たに人材を採用する場合は、人件費もさらに上乗せされるでしょう。
さらに、子会社設立に伴う初期費用だけでなく運用コストも継続的にかかるため、収益性や将来性もよく加味した上で子会社化を検討する必要があります。
税負担が増える場合がある
子会社設立には節税メリットがある一方で、状況によっては税負担が増えることもあります。
たとえば、住民税の均等割は、赤字・黒字にかかわらず、会社ごとに納付しなければならない税金です。つまり、子会社設立によって会社数が増えれば増えるほど、グループ全体で納める均等割額も増していきます。
また、100%子会社の場合を除き、親会社と子会社の損益通算は認められません。
そのため、グループ全体として赤字であっても、黒字の会社には法人税が課せられます。
子会社設立時の手続き
子会社を設立する方法は、主に以下の2つです。
子会社を設立する方法
- 発起設立:親会社を発起人として新規事業に取り組む際に子会社を設立する
- 新規分割(会社分割):親会社の事業を分割し、新会社に継承する
双方の手続きには異なる部分もありますが、主な流れは以下のとおりです。
子会社設立手続きの主な流れ
- 子会社の基本事項を決める
- 定款の作成および認証手続き
- 資本金の払い込み
- 登記申請
- 設立後手続き
子会社の基本事項を決める
まずは、子会社設立手続きで必要となる基本事項を決定します。
子会社設立手続きで必要となる基本事項
- 事業目的
- 商号(法人名)
- 本店の所在地
- 資本金や出資金の金額
- 事業年度
- 会社設立日 など
会社設立に必要な基本事項について詳しく知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について」をあわせてご確認ください。
定款の作成および認証手続き
基本事項が定まったら定款を作成します。定款は会社の規則が幅広く載っている重要な書類です。
定款の記載事項には種類があり、重要度によって記載する内容が異なります。
記載事項の種類 | 概要 | 記載すべき項目 |
---|---|---|
絶対的記載事項 |
・必ず記載する必要がある事項 ・どれかひとつであっても欠けると定款は無効となる |
・目的 ・商号 ・本店の所在地 ・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 ・発起人の氏名または名称および住所 |
相対的記載事項 | ・効力を生じさせるために必要となる事項 |
・会社設立費用についての情報や規定 ・現物出資に関する情報や規定 ・会社設立後の財産引受に関する情報や規定 ・株式譲渡に関する情報や規定 ・発起人の報酬に関する情報や規定 など |
任意的記載事項 |
・記載するかどうかを任意で決められる事項 ・記載すると定款の拘束力を高められる |
・取締役・監査役の人数 ・役員報酬の決定方法 ・株主総会の招集時期 など |
定款作成後は、設立する子会社の本店(本社)所在地を管轄している公証役場にて認証を受けます。管轄区域外の公証人によって認証された定款は無効となるため、注意が必要です。
なお、定款の認証時には以下の書類が必要です。
定款認証に必要な書類
- 定款3通
- 発起人全員の印鑑証明書
- 収入印紙(4万円分)
- 認証手数料(5万円)
- 定款の謄本交付手数料(1ページ250円)
- 代理人が認証手続きを行う場合は委任状
なお、合同会社は定款作成のみで、認証手続きは必要ありません。
定款の作成方法について詳しく知りたい方は、別記事「定款の作り方とは?起業時に作成する際の記載事項や注意点を解説」をあわせてご確認ください。
資本金の払い込み
定款の手続きが完了したあとは、資本金を払い込みます。
子会社設立前で会社名義の口座がないため、発起人が保有している株式数の相当額を発起人の口座へ振り込みます。
完全子会社を設立するのであれば、すべての株式を親会社が保有し、その相当額を発起人の口座へ振り込みます。また、設立する子会社が合同会社の場合は出資金の額が振込額になります。
登記申請
子会社を設立するには、登記申請を行わなければなりません。
子会社の本店(本社)所在地を管轄している法務局へ登記に必要な書類を提出します。
設立する会社の種類や役員構成によって異なるものの、登記申請に必要な書類には主に以下が挙げられます。
登記申請に必要な主な書類
- 登記申請書
- 定款
- 発起人の決定書
- 代表取締役就任承諾書
- 取締役就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑証明書
- 登録免許税の納付用台紙(収入印紙を貼り付ける)
- 資本金の払い込みを証する書類(通帳の表紙、表紙裏、振込記録のあるページのコピー)
- 印鑑届出書
- 登記すべき事項を記載した書面やCD-R
- 代表取締役の委任状(司法書士に依頼する場合)
会社設立日は書類を提出した日となるため、希望の設立日がある場合は提出する日に注意が必要です。
登記申請に必要な書類について詳しく知りたい方は、別記事「商業・法人登記とは?会社設立の登記で必要な書類や流れをわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
設立後の手続き
会社設立後に行う手続きは、手続き先によって異なります。
手続き先 | 手続きの概要 | 主な提出書類 |
---|---|---|
税務署 | 法人税・消費税に関する届出 |
・法人設立届出書 ・青色申告の承認申請書 ・給与支払事務所等の開設届出書 ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 ・適格請求書発行事業者の登録申請書 |
各都道府県税事務所 および 市町村役場 | 住民税・法人事業税に関する届出 | 法人設立届出書 (名称は事務所によって異なる) |
年金事務所 | 健康保険・厚生年金の加入に関する届出 |
・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 ・健康保険被扶養者(異動)届 |
労働基準監督署 | 労働保険に関する届出 |
・労働保険保険関係成立届 ・労働保険概算保険料申告書 ・就業規則(変更)届 ・適用事業報告書 |
ハローワーク | 雇用保険に関する届出 |
・雇用保険適用事業所設置届 ・雇用保険被保険者資格届 |
金融機関 | 法人口座開設 | 法人口座新規開設届 (名称は金融機関によって異なる) |
会社設立後の手続きについて詳しく知りたい方は、別記事「【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは?」をあわせてご確認ください。
子会社設立時の注意点
子会社を設立する際には、前述したメリット・デメリット以外にも注意すべきことがあります。
定款の内容と事業目的を確認する
定款に記載する事業内容や目的は、発起人である親会社と子会社でそれぞれ同一性が認められなければなりません。親会社の目的と大きく異なる場合は定款に違反する可能性があります。
ただし、同一性を表現するにあたって、親子間で全く同じ文言を定款に記載する必要はありません。
適切な節税対策を行う
節税効果を高めるために、適切な節税対策を事前に把握しておく必要があります。
たとえば、子会社を設立することでグループとしての交際費の経費算入限度額を増加させたり、親会社から子会社へ転籍した従業員へ退職金を支給したりして、利益を少なくする方法があります。
ただし、過度な利益調整や節税対策は税務署から否認される可能性もあるため、注意が必要です。
労使間のトラブルへの対策を行う
子会社の設立時には、労使間でトラブルが起こることも珍しくありません。
たとえば、従業員の転籍時に勤続年数をリセットしたことで、子会社の退職時に受け取る退職金が減ってしまうトラブルがあります。
ほかにも、出向先で問題を起こした従業員に対して親会社が責任を負うため、子会社側で対処できないといったトラブルもありえます。
これらの問題を避けるためには、会社と従業員間であらかじめ契約書を交わしておく必要があります。
まとめ
子会社を設立することで、業務上のトラブル発生時のリスク分散ができるだけでなく、節税や経営判断の迅速化にもつながります。
一方、子会社設立における手続きや業務の負担、コストの増加、状況によっては税額が増える可能性がある点には注意が必要です。
これらのメリット・デメリットのほか、親会社との事業目的の親和性、適切な節税対策、労使間トラブルの対処についてもよく考慮したうえで、子会社設立の是非を判断することが重要です。
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