会社設立の基礎知識

個人事業主より節税でき、株式会社より費用が安い「合同会社(LLC)」の設立手続き・費用・メリットまとめ

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起業といえば株式会社の設立をイメージされる方もいると思いますが、合同会社(LLC)の設立にも独自のメリットがあります。ランニングコストの低さや意志決定スピードの早さなどはスタートアップと好相性です。

 この記事では、合同会社設立のメリットから実際に設立するまでの流れを解説します。

目次

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合同会社(LLC)とは?

合同会社は日本の法律で認められた法人の一種。2006年の会社法の改正により登場した新しいカテゴリーの会社です。個人事業主から法人になる場合や、比較的小規模な事業を法人化する際の新たな選択肢として誕生しました。

近年では、アマゾン・ジャパンが株式会社から合同会社に移行するなど、合同会社の知名度も向上してきている傾向にあります。

こんな会社も合同会社

2006年の登場以来、合同会社で登記する会社が急増中。2014年は20,000件近い合同会社が設立されました。

合同会社(LLC)の登記件数

2015年には2万社以上の合同会社が登記している

いまや、合同会社の形態をとるのはスモールスタートの企業だけではありません。有名企業も合同会社化しています。

  • ・Apple Japan:2011年に合同会社化
  • ・Cisco:2007年に合同会社化
  • ・アマゾンジャパン:2016年に合同会社化
  • ・デロイト トーマツ コンサルティング:2008年に合同会社化
  • ・西友:2009年に合同会社化※ウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社の100%子会社に伴い改組


 外資系の企業の場合は株式会社のブランドが必要ないため、会社運営のフットワークや節税を重視して合同会社が選ばれることが多いようです。

特にアメリカでは「パス・スルー課税」という特殊な課税方式があります。これは日本の合同会社に相当するLLCが、法人課税の代わりに選択できる課税方法。株式会社の利益が発生した場合は法人税と出資者への課税(所得税)の二重課税になりますが、LLCの場合は出資者個人に課税されるだけ。

 アメリカに本社がある企業が日本に子会社を作る場合はアメリカの税制に従うため、日本法人を合同会社にするとパス・スルー課税を利用することができます。

 アメリカではこうした節税の一環として合同会社が選択されることもあるようですが、日本で設立した合同会社には法人税が課されるため、パス・スルー課税の対象にはなりません。

合同会社(LLC)はスタートアップやBtoCビジネスに最適

合同会社はどんな企業や業種に向いているかをみていきます。

年商1,000万円以下のスタートアップに向く

迅速な意思決定、利益分配などが自由に行えることからスタートアップには最適でしょう。社員数が数人の小規模な会社なら合同会社の恩恵は大きいものになります。

 個人事業主から法人化する場合は、先ほども挙げた2年間の消費税納税免除を活用するため、消費税の納税義務が発生する年商1,000万円以上からがオススメです。

カフェやサロン、ITなど消費者向けサービスと好相性

合同会社は株式会社と比べると知名度が低いという欠点があります。そのため社会的な信頼度という意味では、個人事業主よりは優るものの株式会社には劣ります。ひょっとすると株式会社でないと取引してくれない企業もあるかもしれません。

 しかしBtoCのビジネスならば、これらのデメリットは関係ありません。顧客は合同会社か株式会社気にしていないケースが多いからです。そのためサービス名を全面に押し出すITサービスはもちろん、カフェやサロン、学習塾やペットショップなどは合同会社で設立するメリットの大きい業種と言えるでしょう。

合同会社(LLC)のおもなメリット

合同会社のメリットをひとつずつ見ていきましょう。

メリット1. 設立コスト・ランニングコストが低い

株式会社設立にかかるコストは登録免許税15万円+公証人手数料5万円+収入印紙4万円+定款の謄本手数料(約2,000円)=合計約24.2万円です。

一方、合同会社(LLC)の場合は登録免許税6万円+収入印紙4万円+定款の謄本手数料(約2,000円)=合計10.2万円と半額以下で設立ができます。設立後も決算公告の義務がないため、株式会社に比べるとランニングコストも低くなります。

また、株式会社では2年間と決まっている役員の任期が合同会社では無制限となります。株式会社の場合、役員の任期が切れたときには変更や留任などの手続きが必要です。手続きに対する時間的コストもそうですが、重任登記費として1万円かかります。このコストと合同会社では削減できるためコストが削減できるというわけです。

会社は、1年に1回決算の義務があります。決算とは、その年の収益などを税務署に報告することを指します。株式会社の場合、この決算を公告する義務があります。通常官報に掲載する方法を取りますが、その場合、6万円程度の費用の負担が必要です。合同会社は、公告の義務がないため、6万円かかる費用の負担がありません。

メリット2. 経営の自由度が高く、フットワークが軽くなる

株式会社の場合は必ず出資比率に応じて利益を配分します。つまり、出資金が多い人が多く利益をもらえ、出資金が少ない人は利益が出ても恩恵が少なくなります。しかし合同会社(LLC)は出資比率に関係なく社員間で自由に利益の配分を行えます。

会社に貢献した人に利益配分をしたいと考える場合、株式会社だと出資額といった制約に縛られてしまいますが、合同会社であれば利益の配分が自由にできるので、貢献度に合わせた利益配分ができます。
その他、定款による組織の設計も自由に規定できます。企業の出資者と経営者が一致しているため、株主総会などを経ずに迅速に意思決定ができるフットワークの軽さも、スモールスタートに最適でしょう。

メリット3. 株式会社と同じく節税や社債発行ができる

個人事業主から法人化する場合は、株式会社と同様のメリットが受けられます。

1.節税
2.社債が発行できる…資金調達ができる
3.有限責任になる…自身が出資した範囲内で責任を負えば済む

 特に節税は魅力的です。個人事業主の所得税が累進課税なのに対し、法人税は所得が800万円以下なら22%、800万円以上なら30%と一定税率(資本金が1億円以上の場合は一律30%)。また設立から2年間の消費税納税免除を受けられる点も株式会社と共通しています。

消費税納税免除とは

資本金1000万円以下かつ、特定期間の課税売上高が1,000万円以下もしくは特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合に適用される(消費税法より)

メリット4. 個人事業主よりも社会的な信用度が高い

合同会社を設立することによって、法人として認められることになります。先にも少し述べましたが個人事業主として活動するのと、法人が活動するのでは社会的な信用度が異なります。株式会社よりは劣りますが、合同会社は会社という体裁をなしていることから、取引先として信用される確率が高まるといえるでしょう。

合同会社(LLC)のデメリット

合同会社にはデメリットもあります。事業や成長戦略によっては株式会社の方がフィットする場合も。合同会社を設立する場合は、これらのデメリットも把握しておきましょう。

デメリット1. 知名度が低いため信頼性はやや劣る

合同会社は株式会社ほど知られていないのが実情です。取引先によっては株式会社でないと契約してもらえなかったり、採用の際に人材が集まりにくい可能性もないわけではありません。

デメリット2. 資金調達の方法が限られる

株式会社の場合は株式の増資による資金調達が可能ですが、合同会社の場合はできません。投資家から大規模な資金調達をする予定がある場合は気をつけましょう。

デメリット3. 社員同士が対立する可能性がある

利益配分が自由である反面、社員間でのトラブルも起きやすくなりますし、解決が困難になります。こうした対立が会社の意思決定をストップさせてしまう可能性もあるでしょう。合同会社にする場合は信頼できるパートナーと設立するようにしましょう。

合同会社(LLC)を設立しよう

それでは、実際に合同会社を設立するまでの流れを見ていきます。

設立の流れ

まずは全体のフローを確認しておきましょう。

  1. 1.設立項目を決める
  2. 2.必要書類を揃える
  3. 3.法務局に必要書類を提出する


 基本的には以上の通りですが、注意したいポイントは2つ。設立に必要な書類は本店所在地を管轄する法務局に提出することと、会社設立日は登記を申請した日になるということです。そのため会社の設立を誕生日や記念日にしたい場合は、当日に法務局に提出する必要があります。

 書類さえきちんと揃えば特に審査などはないため、提出したその日に登記完了です。

1. 設立項目を決める

合同会社(LLC)を設立するためには、あらかじめ以下のことを決めておく必要があります。

  • ・商号:会社の名前です。好きな名前をつけましょう。
  • ・事業目的:どのような事業で収益を得るのかを記載します。
  • ・本店所在地:会社の住所を決めておきます。
  • ・資本金の額:基本的には1円から設立できますが、会社としての信用度に関わることを考えて決定しましょう。
  • ・社員構成:代表権を持つのは誰かなど社員の役割を決めます。代表社員1人から設立可能。
  • ・事業年度:合同会社(LLC)は個人事業主と異なり、事業年度を自由に決められます。繁忙期を避けて決算日を設定するとよいでしょう。

商号について

商号は会社の名前となるものですが、いくつかのルールを守って付ける必要があります。使用できるのは、漢字やひらがな、ローマ字のほか、アラビア数字や一部の符号となります。また、有名企業の名前や、銀行など、一部の業種を指し示す商号は付けることができません。

事業目的について

事業目的は、会社の事業内容を示す。複数の事業目的を書くのが一般的で、多い企業になると30個以上の事業目的を書いているケースもあります。

事業目的の変更には手続きと費用の負担が必要となります。そのため、将来的な事業も含めておくことをおすすめします。定款に記載されていない事業を行ってはいけないことになっており、これを防止するために「前各号に付帯関連する一切の事業」という文言を入れておくのが一般的とされています。

本店所在地について

本店所在地は、基本的に会社の所在地を書き記します。一般的な住所では、「1-2-3」のように、ハイフンで省略することができますが、定款に記載する場合は「1丁目2番地3号」という正式な形式で書くこととなっている点に注意が必要です。

資本金について

資本金ですが、最低1円でも会社を設立することが可能です。しかし、資本金は会社が信用できるかどうかの指標や会社の規模感を把握するものとして取引先や金融機関に見られることがあり、そのため少額にせず、なるべく大きい金額とするケースが多いとされています。(300万円程度にすることが多いようです)

また、業種によっては最低資本金額が1円ではなく、もっと高いケースも存在することがあります。例えば、一般建設業の場合は自己資本が500万円以上ないと許認可を受けることができません。

2. 必要書類を揃える

登記のために必要な書類は以下の通り。ひとつずつ解説していきます。

  • ・定款
  • ・印鑑届書
  • ・社員の印鑑登録証明書
  • ・払込証明書
  • ・本店所在地決定書
  • ・代表社員就任承諾書
  • ・登記用紙と同一の用紙
  • ・収入印紙
  • ・合同会社設立登記申請書

定款

 まずは定款を作成しましょう。定款とは会社組織を成立させるための規約をまとめた書類です。この定款を根拠にして、合同会社は設立されます。定款は必ず記載しなければならない項目などが事細かに決められており、ゼロから作るのはなかなか大変です。専門家に依頼するか、設立書類を作成できるサービスを使用するのがよいでしょう。会社に保存するものと、法務局に提出するものの2部を作ります。

コラム・電子定款ってホントにお得?

電子定款を利用することによって手数料の4万円を節約することもできます。電子定款は作成代行業者に頼むこともできますし、自分で作成することもできます。

ただし自分で行う場合には

  • ・ICカードリーダー(3000円程度)
  • ・PDF編集ソフト Adobe Acrobat Pro DC(6万円程度)
  • ・住基カード(500円)
  • ・電子証明書(500円)


がそれぞれ必要になります。Acrobat Pro DCは月額制のサブスクリプション版(税別1580円/月)という選択肢もありますが、定款作成のためだけに道具を揃えて作成する手間を考えると、あまりお得といえないかもしれません。専門家などに頼むと、これよりも安く電子定款の作成ができる場合もあり、いろいろな選択肢の中から安いものを選ぶことをおすすめします。

印鑑届出書

合同会社の実印となる印鑑に効力を持たせるためには、印鑑を届け出る必要があります。会社の実印をあらかじめ作っておきましょう。設立は実印があればできますが、銀行印と角印も必要なため、セットで購入することをオススメします。

 申請用紙は法務局でも用意されていますが、ダウンロードも可能です。

社員の印鑑登録証明書

合同会社では資本金を出す出資者のことを「社員」と呼びます。そのため代表も、株式会社のような代表取締役ではなく「代表社員」という名前になっています。出資する社員全員の実印の印鑑登録証明書を市区町村の役場で取得しておきましょう。

払込証明書

資本金が払い込まれていることを証明する書類です。こちらも既存のフォーマットを使うと便利です。各社員が出資金を代表社員の口座に振り込んだことがわかるように、通帳のコピーを添付します。

本店所在地決定書

定款に本店所在地が記載されていない場合は、本店所在地決定書が必要になります。

代表社員就任承諾書

本店所在地決定書と同様、定款に代表社員が実名で定められていない場合は用意しましょう。

登記用紙と同一の用紙

「OCR用紙」という専用の用紙に記入します。CD-Rやフロッピーディスクで提出することもできますので、その場合は法務局のこちらのページを参考に提出しましょう。法務省:商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について

合同会社での入力項目・例はこちらです。

収入印紙

収入印紙を法務局で購入しましょう。金額は資本金の0.7%になりますが、資本金の額が857万円1428円未満(1000分の7が6万円に満たない)の場合は一律6万円になります。

合同会社設立登記申請書

以上の全ての書類をまとめたうえで登記申請書を添えて提出します。こちらも既存のフォーマットを使うと簡単です。法務省のサイトに合同会社設立登記申請書と申請書の記載例が用意されています。

3. 法務局に提出する

書類が揃ったら、法務局に提出するために書類をとじてまとめていきましょう。

登記申請書、収入印紙貼付台紙をとじる

登記申請書→収入印紙貼り付け台紙の順番でホチキスで左とじにします。見開き部分に会社実印を捺印します。

払込証明書、通帳のコピーをとじる

払込証明書に会社実印を捺印して、通帳のコピーとまとめてホチキスでとじます。こちらも見開き部分の全てに会社実印を捺印します。

登記申請書類をひとつにまとめる

上記の書類をホチキスで左とじにします。ホチキスの上からホチキスでとじてしまって構いません。順番は以下のとおり。

  • ・登記申請書
  • ・本店所在地決定書
  • ・代表社員の就任承諾書
  • ・代表社員の印鑑証明書
  • ・払込証明書

登記申請書類、印鑑届出書、登記用紙と同一の書類をまとめて提出

これらを法務局の担当窓口に提出すれば登記手続きは完了です。書類に不備がなければ、法務局から連絡が来ることはありません。

まとめ

合同会社が設けられてから、小規模な会社がより一層設立しやすくなりました。合同会社の最大の特徴は設立コストの低さと経営の自由度の高さ。特にスピーディな意志決定が求められる創業期には、合同会社のメリットを大いに享受できるでしょう。事業が軌道に乗り、事業拡大や資金調達を考える場合は合同会社から株式会社への組織変更も可能です。

 各種メリットやデメリットを理解したうえで、合同会社という形態も検討してみてください。

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