監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士
不動産業界での独立・開業は個人で行うこともできますが、不動産という比較的高価な商材を扱う以上、個人より信用度が高い法人として行ったほうが事業を展開させやすい傾向にあります。
本記事では、不動産会社に関する基礎知識や設立するメリット・デメリット、具体的な設立の流れなどを解説します。
目次
不動産会社の業態
不動産会社の業態は、事業内容によって大きく以下の6つに分けられます。不動産会社を設立する前に、自身の事業の方針を明確にしておきましょう。
不動産会社の業態と事業内容 | |
---|---|
売買仲介 | 不動産を買いたい人と売りたい人をマッチングする |
賃貸仲介 | 不動産を借りたい人と貸したい人をマッチングする |
買取販売 | 不動産会社が買主となって直接不動産を買い取り、再販する |
賃貸管理 | 賃貸物件に関する管理業務を代行する |
コンサルティング | 不動産に関する顧客の悩みを聞き取り、解決につながる提案を出す |
デベロッパー(開発) | 土地や街などの企画・開発を行う |
宅地建物取引業免許が必要なケース
業態や事業内容によっては、会社設立にあたって「宅地建物取引業免許」が必要になるケースがあります。
そもそも「宅地建物取引業免許」とは、宅地建物取引業法に基づいた宅地や建物の売買・交換などができるようになる資格のことです。
1つの都道府県内に事務所を設置する場合は「都道府県知事免許」、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合は「国土交通大臣免許」が必要です。申請書類を、主たる事務所がある場所を管轄する都道府県庁に提出し、審査を通ると免許が交付されます。
先述の6つの不動産会社の業態のうち、宅地建物取引業免許が必要な業態・不要な業態は下表のとおりです。
宅地建物取引業免許が必要 | 宅地建物取引業免許が不要 |
---|---|
・売買仲介 ・賃貸仲介 ・買取販売 ・デベロッパー(開発) | ・賃貸管理 ・コンサルティング |
なお、自身が所有している不動産を、自身が大家などになって貸す場合は、宅地建物取引業免許がなくても問題ありません。
【関連記事】
宅地建物取引業(宅建業)とは?免許の必要性と申請について詳しく解説
賃貸管理の業務形態
不動産会社の6つの業態のうち、「賃貸管理」はさらに以下の3つの業態に分かれます。もし、賃貸管理を事業内容とする不動産会社の設立を目指す場合は、こちらの3つについても確認しておきましょう。
業務形態 | 内容 |
---|---|
管理委託方式 | 賃貸不動産の所有権はオーナーがもっており、管理業務だけを不動産会社が委託される方式 |
サブリース(一括借上)方式 | 賃貸不動産の所有権はオーナーがもったまま、不動産会社が物件を一括で借り上げて第三者に貸す方式 |
所有型方式 | 賃貸不動産の所有権は不動産会社がもっており、物件を人に貸す方式 |
不動産会社設立に必要な資金
実際に不動産会社を設立するにあたって、具体的にどのくらいの資金がかかるのかは業態によって異なります。
特に、事業で動く金額が大きい「買取販売」や「デベロッパー(開発)」は、かなりのまとまった資金が必要です。ほかの4つの業態であれば、会社設立にかかる資金は比較的抑えられます。
なお、先述した「宅地建物取引業免許」をもつ宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法(宅建業法)により、営業保証金1,000万円を法務局に供託しなければなりません。これは、取引によって事故などが起きた際の損害賠償にあてる資金を確保しておくためです。宅地建物取引業者が必要な業態を選択する場合は、この点も留意しておきましょう。
不動産会社を設立するメリット
不動産業界で独立・開業するだけなら、個人で行うことも可能です。しかし、不動産会社という法人格をもつことには、以下のようなメリットがあります。
不動産会社を設立するメリット
- 社会的信用が高い
- 有限責任で個人に及ぶリスクが少ない
- 税制上の優遇が大きい
- 経費計上できる範囲が広がる
不動産会社を設立するにはコストがかかるため、法人化している時点で事業への熱意を評価されることがあります。さらに、法人は所在地や資本金などが公開されており、その分だけ社会的信用が個人事業主より高いといえるでしょう。
また、無限責任を負う個人事業主とは違って株式会社や合同会社の出資者は有限責任であるため、会社が倒産しても、返済責任は出資した範囲内のみに限られます。税制上では、法人のみに認められている各種税額控除など、特に中小企業に対してさまざまな優遇措置が用意されています。
経費に関しては、個人より法人のほうが範囲を広く解釈されているので有利です。たとえば、生命保険料は個人事業主では控除しか適用されませんが、法人であれば一部または全額を経費にできます。
不動産会社を設立するデメリット
不動産会社の設立には大きなメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
不動産会社を設立するデメリット
- 会社設立に費用がかかる
- 従業員の社会保険加入が義務付けられている
- 事務負担が個人より大きい
不動産会社を設立するにあたっては、まず登記の時点で数万から数十万円のコストがかかります。会社の形態や電子定款の使用などで金額は変わってきますが、最低でも6万円程度は必要です。
法人化する場合、役員報酬や従業員への給与を払うなら社会保険への加入が義務付けられます。国民健康保険・国民年金と違い、社会保険では会社が保険料の半分を負担しなければなりません。そのため、従業員の数が増えるほど、社会保険料として支払う金額も増えることになります。
以上のような金銭面での負担を避け、少ない資金で開業したい場合は、個人事業主でいるほうがよいでしょう。
さらに、上記で挙げた社会保険に関係する手続き、所得税申告よりも複雑な法人税申告をはじめとする決算の取りまとめなど、事務作業の負担が増えるのもデメリットといえます。
不動産会社設立の流れ
不動産会社の6つの業態や設立に必要な資金、設立のメリット・デメリットについて把握したところで、ここからは具体的な不動産会社設立の流れを説明します。
事務所の設置
はじめに、設立する会社の本拠地となる事務所を、どこに・どのように構えるかを決めます。場所選定の基準となるのは、「賃料」と「ターゲットになる顧客層」です。
まず、事務所の賃料は固定費で、事業の売上に関係なく毎月発生します。そのため、会社を設立したばかりのうちは、できるだけ抑えたい部分です。
次に、どのような顧客をターゲットにするかで、事務所の最適な立地条件が変わってきます。たとえば、賃貸仲介の業態で事業を展開するのであれば、飛び込み客の来訪も想定し、人通りが多い1階の物件がよいと判断できます。
初期費用を抑えたい場合は、自宅(戸建て)の一部を事務所とすることも可能です。ただし、事務所専用の入口を用意すること、壁などで生活空間と事務所を仕切るなどの対応が求められます。
会社の設立
事務所の場所について固まったら、実際に会社設立の手続きを行います。手続きの際に提出する書類に記入したり、申請に必要な書類を用意したり、資本金を払ったりなどの対応が必要です。
詳しくは別記事「会社設立の流れを解説! 株式会社の作り方や必要書類、手続きを紹介」で解説しているため、あわせてご覧ください。
宅地建物取引士の設置
不動産業における会社設立にあたって、宅地建物取引業法(宅建業法)では、事務所で業務に従事している者のうち5人に1人以上の割合で「宅地建物取引士」を置くことを義務付けています。
「宅地建物取引士」とは、不動産取引が公正・公平に行われているかをチェックできる国家資格です。この資格をもっている人でなければできない業務もあるため、会社設立の際には必ず設置しましょう。
宅地建物取引業免許の申請
先述のとおり、不動産業界の6つの業態のうち、売買仲介・賃貸仲介・買取販売・デベロッパー(開発)では「宅地建物取引業免許」が必要です。
さらに、事務所を設置するのが1つの都道府県だけなら都道府県知事免許、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣免許と、状況に応じて異なる免許を申請しなければなりません。
免許取得の手続きの窓口は、主たる事務所がある場所を管轄する都道府県庁です。必要書類を提出し、審査を通れば免許が交付されます。スムーズに申請できるよう、必要な免許の種類や手続き方法、審査基準などを事前に確認しておきましょう。
保証協会への加入
不動産会社の設立にかかる費用の部分でも触れましたが、「宅地建物取引業免許」をもつ宅地建物取引業者には、営業保証金1,000万円を法務局に供託する義務があります。とはいえ、1,000万円をすぐに用意するのが難しいケースもあるでしょう。
そのようなときでも、「全日本不動産協会」や「全国宅地建物取引業保証協会」などに加入していれば、営業保証金が免除されます。それ以外にも、営業や実務などさまざまな方面でのサービスを受けられるため、加入しておいたほうが何かと便利です。
まとめ
不動産業界で独立・開業し、顧客からの信用を得ながら事業を展開していきたいのであれば、個人よりも不動産会社を設立したほうが有利な面は多くあります。
会社設立時に資金が必要になる、事務的負担が増えるというデメリットもありますが、それでも社会的信用の高さや費用計上の範囲が広いなどのメリットは魅力的でしょう。
実際に不動産会社を設立する際には、事業内容を定め、どのような手順で設立するのかを確認しておくことが重要です。本記事の内容を参考にして、理想的な経営が叶う不動産会社の設立を目指してください。
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詳しくは記事内「不動産会社を設立するメリット」をご覧ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。