監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ
法人設立届出書とは、会社を設立したことを税務署へ知らせるために、提出しなければならない書類のことです。
法人設立届出書の提出は、法務局で法人登記した後に発生する次の手続きなので、法人登記用の書類と並行して準備しておくとスムーズです。
本記事では、法人設立届出書の書き方を解説します。項目ごとにひとつずつ解説しているので、参考にしてください。
目次
- 法人設立届出書とは
- 法人設立届出書はどこでもらえる?
- 法人設立届出書の提出について
- 提出先
- 提出期限
- 法人設立届出書の提出時の添付書類
- 法人設立届出書の書き方
- ①提出する日付・提出する税務署名
- ②本店又は主たる事務所の所在地・納税地
- ③法人名・法人番号・代表者氏名・代表者住所
- ④設立年月日・事業年度
- ⑤設立時の資本金又は出資金の額
- ⑥消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
- ⑦事業の目的・「支店・出張所・工場等」
- ⑧設立の形態
- ⑨事業開始(見込み)年月日
- ⑩「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
- ⑪添付書類
- ⑫関与税理士・税理士署名
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
- よくある質問
法人設立届出書とは
法人設立届出書とは、会社を設立した事実や会社の概要を税務署に知らせる届出書のことです。法務局で法人登記した後に行う手続きであり、法人税・消費税等の申告などの税務処理に活用されます。
株式会社だけでなく、合同会社や協同組合などを含むすべての内国法人に提出義務があるため、忘れずに手続きしましょう。
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法人設立届出書はどこでもらえる?
法人設立届出書には規定のフォーマットがあります。このフォーマットは税務署で配布していますが、国税庁のWebサイトから無料でダウンロードもできます。
Webサイトからダウンロードした法人設立届出書は、国税電子申告・納税システム「e-Tax」を使いオンライン提出することも可能です。
法人設立の手続きは、最寄りの税務署で相談できます。ただし、税務署の閉庁日(土・日曜日・祝日等)は相談を受け付けていません。
法人設立届出書の提出について
ここでは、法人設立届出書の提出方法について、基本的な概要を解説します。提出する時期や提出先もここで確認できます。
提出先
法人設立届出書の提出先は、下記のとおりです。
- 納税地の所轄税務署
- 都道府県税事務所
- 市町村役場
会社設立後は、まず法人税や消費税の申告のため、法人設立届出書を税務署に提出します。
都道府県税事務所や市町村役場への提出も、併せて手続きが必要となります。
なお、税務署・都道府県税事務所・市町村役場に提出する内容は、基本的に同じです。
本記事では特別な補足をしない限り、税務署へ提出する法人設立届出書を指します。
提出期限
法人設立届出書を税務署に提出するのは、法人設立の日(設立登記の日)から2ヶ月以内と定められています。ただし、都道府県税事務所への提出期限は自治体ごとに異なります。
基本的には法務局での法人設立登記後に法人設立届出書を提出しますが、事業開始日のほうが早い場合は注意が必要です。
たとえば東京都税事務所の場合、会社設立日にかかわらず「事業開始日から15日以内」に提出する必要があります。すでに事業を始めているときは、後から法人設立(設立登記)をする場合であっても15日以内の提出が必須です。
その他の例として、大阪府税事務所や神奈川県川崎市税事務所では「法人設立の日または事務所設置の日から2ヶ月以内」、千葉県税事務所では「法人設立の日から1ヶ月以内」に届出をする必要があります。
このように、自治体によって届出書の提出期限は異なるため、まずは所轄の税事務所の詳細を確認しておきましょう。
法人設立届出書の提出時の添付書類
法人設立届出書を提出するときは、「定款、寄付行為、規則又は規約(以下、定款等)」の写しを添付します。基本的に写しは1部で問題ありませんが、資本金1億円以上の内国普通法人の場合、写しは2部必要です。
また、都道府県税事務所や市町村役場へ提出する法人設立届出書の場合、定款等の写しに加えて登記事項証明書の添付も必要です。
かつては税務署へ法人設立届出書を提出する際も登記事項証明書が必要でしたが、2017年4月1日以降は不要になりました。
法人設立届出書の書き方
ここからは、法人設立届出書の書き方をフォーマットに沿って解説します。なお、法人設立届出書に記載されている項目のうち、記入が求められる項目は下記のとおりです。
法人設立届出書で記入する項目
- ①提出する日付・提出する税務署名
- ②本店又は主たる事務所の所在地・納税地
- ③法人名・法人番号・代表者氏名・代表者住所
- ④設立年月日・事業年度
- ⑤設立時の資本金又は出資金の額
- ⑥消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
- ⑦事業の目的・「支店・出張所・工場等」
- ⑧設立の形態
- ⑨事業開始(見込み)年月日
- ⑩「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
- ⑪添付書類
- ⑫関与税理士・税理士署名
①提出する日付・提出する税務署名
法人設立届出書の左上には提出する日付を和暦で記入し、「〇〇税務署長殿」の欄には納税地の所轄税務署名を記入します。
納税地の所轄税務署名がわからない場合は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」で検索できます。
②本店又は主たる事務所の所在地・納税地
「本店又は主たる事務所の所在地」には、登記事項証明書に記載されている方式で本店または主たる事務所の住所を記入します。「納税地」も基本的に本店所在地と同じ場所になることが多いため、「同上」で対応可能です。
なお、記載する電話番号は、固定電話でも携帯電話でも問題ありません。
③法人名・法人番号・代表者氏名・代表者住所
「法人名」の欄では省略・通称を使わず、登記してあるとおりの正式名称をフリガナとともに記入します。
「法人番号」は国税庁の「法人番号公表サイト」から商号・名称・所在地などで検索できます。似た名称の会社が同時に表示される可能性がありますが、所在地や変更履歴を見て自社の番号で間違いないか確認しながら転記します。
なお、「法人番号公表サイト」に法人番号が掲載されるのは、設立登記の手続きが無事に通った日の16時以降または国税庁の翌営業日11時以降です。掲載後に「法人番号指定通知書」が発送されるので、そこでも確認できます。法人設立届出書を提出するタイミングで法人番号が掲載されていない場合、空欄でも問題ありません。
「代表者氏名・代表者住所」欄にはその名のとおり、会社代表者の氏名・住所・電話番号を記入します。記入する電話番号は「本店又は主たる事務所の所在地」と同様に、固定電話と携帯電話のどちらでも構いません。
④設立年月日・事業年度
「設立年月日」には、登記事項証明書に記載されている「会社を設立した年月日」を、そのまま和暦で転記します。会社を設立した年月日は、法人登記を申請した日となるのが一般的です。
「事業年度」には、定款で定めた会計期間を記入します。
⑤設立時の資本金又は出資金の額
「設立時の資本金又は出資金の額」には、法人登記申請時に定めた資本金(出資金)をそのまま転記します。
⑥消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」欄を記入するかどうかは、会社ごとに異なります。
資本金が1,000万円以上の新設法人は、消費税の新設法人に該当します。
消費税の新設法人に該当する場合は、「設立年月日」欄に記載したのと同じく、登記事項証明書に記載されている「会社を設立した年月日」を和暦で転記する必要があります。
資本金が1,000万円未満の法人は消費税の新設法人に該当しないため、空欄で問題ありません。
⑦事業の目的・「支店・出張所・工場等」
「事業の目的」欄のうち、上部の「定款等に記載しているもの」の欄には、そのとおり定款に記載している事業目的を記載します。なお、法人設立届出書を提出する際に定款等の写しを添付するため、書ききれない場合は概要を簡潔に記載するだけで問題ありません。
「現に営んでいる又は営む予定のあるもの」の欄には、「定款等に記載されているもの」と同じなら「同上」といった記入で足ります。「定款等に記載されているもの」以外の事業も行う予定の場合は、追記が必要です。
「支店・出張所・工場等」の欄には、本店以外に支店・出張所・工場などがあれば、その名称と住所を記入します。特にない場合は空欄のままにします。
⑧設立の形態
「設立の形態」欄では、下記から当てはまる部分に○を付けます。
- 1.個人企業を法人組織とした法人である場合
- 2.合併により設立した法人である場合
- 3.新設分割により設立した法人である場合(分割型・分社型・その他)
- 4.現物出資により設立した法人である場合
- 5.その他
個人事業主が法人成りした場合は、「1.個人企業を法人組織とした法人である場合」を選択します。個人事業主だったときの所轄税務署や整理番号も書き添えておきましょう。
それ以外の新設法人の場合は「5.その他」を選択し、「新設法人」と記入すれば問題ありません。
⑨事業開始(見込み)年月日
「事業開始(見込み)年月日」には、すでに事業を開始している場合は基本的に会社設立年月日と同じ日を和暦で記入します。まだ事業を始めていない場合は開始予定日を記載します。
⑩「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
「給与支払事務所等の開設届出書」とは、会社から従業員へ給与を支払う場合に必要となる書類です。給与支払いが発生する場合は、選択肢の「有」に○を付けた法人設立届出書とあわせて、給与支払事務所等の開設届出書を提出しなければなりません。
なお、支払い給与には従業員へ支払うものだけでなく、「会社から社長へ支払う役員報酬」も含まれます。
⑪添付書類
「添付書類」の欄には、法人設立届出書に添付する書類の有無を記入します。
定款等の写しである「定款、寄付行為、規則又は規約」は必須書類なので、「1.定款等の写し」に○を付けることを忘れないようにしましょう。
定款、寄付行為、規則または規約とは、会社設立時に作成が義務付けられている書類のひとつで、会社の基本的な事項を記載します。定款については、「定款の作り方とは?起業時に作成する際の記載事項や注意点を解説」で詳しく説明しています。
⑫関与税理士・税理士署名
「関与税理士」欄には、会社設立時点で関与税理士や顧問税理士がいれば記入します。
「関与税理士」欄に署名した税理士がこの届出書の作成を代行した場合は、「税理士署名」欄にも署名が必要です。
以前は「税理士署名」欄には税理士の署名に加えて押印も必要でしたが、2021年4月からは押印欄が廃止され原則不要となりました(押印しても問題ありません)。
なお、法人設立届出書を自身で作成した場合や、関与税理士・顧問税理士ともに不在の場合は空欄とします。
まとめ
法人設立届出書は、法人設立に伴って税務署や都道府県税事務所に提出する書類であり、法人税・消費税など各種税金の申告手続きに必要なものです。
税務署への届出は法人設立から2ヶ月以内と期限が設けられているほか、都道府県税事務所は独自の提出期限が定められているため、遅れないよう準備を進めましょう。
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監修 税理士・CFP® 宮川真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。