
会社の設立時に必要な定款は、紙または電子データで作成することができます。紙で作成する場合は収入印紙代が必要になりますが、電子データで作成する電子定款であれば収入印紙代が不要となり、会社設立時にかかるコストを削減できるというメリットがあります。
本記事では、電子定款の作成に必要なものや作成方法、電子定款で作成するメリットとデメリットについて詳しく解説します。
目次
- 電子定款(でんしていかん)とは
- 電子定款の作成に必要なもの
- 電子証明書付きのマイナンバーカード
- 電子署名ソフト
- ICカードリーダライタ
- 電子署名プラグインソフト
- 電子定款の作成手順
- 定款を電子データで作成する
- 定款を電子化する
- ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
- PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する
- 株式会社は電子定款の認証が必要
- 電子定款の認証とは
- 電子定款の認証手続きを行う
- 公証役場で認証された定款を受け取り登記する
- 電子定款で作成するメリット
- 紙の定款よりも早く作成できる
- 紙の定款よりも低いコストで作成できる
- 電子定款で作成するデメリット
- 機器やソフトの準備費用がかかる
- 申請後はデータの修正ができない
- まとめ
- 定款(ていかん)を簡単に作成する方法
- よくある質問
電子定款(でんしていかん)とは
定款(ていかん)とは、会社設立時に発起人全員の同意のもとで定める企業の根本原則が記載された書類で「会社の憲法」とも呼ばれています。
この定款を電子ファイル形式で作成したものが電子定款です。従来の紙定款では収入印紙代に4万円が発生するのに対し、電子定款では収入印紙が不要となり会社設立にかかる費用を削減できるメリットがあります。
しかし、電子定款を作成するために必要な機器やソフトをいちからすべて揃えると収入印紙代と同等の費用がかかる可能性があるため、注意が必要です。
【関連記事】
会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説
電子定款の作成に必要なもの
電子定款を作成するために必要なものは以下の4点です。
電子定款の作成に必要なもの
- 電子証明書付きのマイナンバーカード
- 電子署名ソフト
- ICカードリーダライタ
- 電子署名プラグインソフト
電子証明書付きのマイナンバーカード
マイナンバーカードは、事前に郵送されるマイナンバーが書かれた紙(通知カード)ではなく、プラスチック製のICカードで、郵便やパソコン・スマートフォンから交付申請が可能です。
マイナンバーカードの申し込みから発行までは時間がかかる可能性があるため、電子定款の申請を考えている場合は早めに申請を済ませておきましょう。
出典:マイナンバーカード総合サイト
電子署名ソフト
作成した定款をPDFに変換して「電子署名」を挿入するためには、対応するソフトが必要になります。代表的なソフトとして「Adobe Acrobat」がおすすめです。
Adobe Acrobatには法人向けプランとして「Acrobatグループ版」があり、月額1,890円〜2,400円程度の費用が発生します。
電子署名とは「その電子文書が正式なものであり、かつ改ざんされていないことを証明するもの」で、紙の文書における押印やサインと同等の役割を果たすものです。
ICカードリーダライタ
マイナンバーカードを読み込むためには、ICカードリーダライタが必要になります。購入の際は、マイナンバーカードに対応しているICカードリーダライタかどうかきちんと確認しましょう。
マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタには、接触型と非接触型の2種類があり、1,000〜4,000円程度と機能により値段は異なります。
出典:地方公共団体情報システム機構「マイナンバーに対応したICカードリーダライタの一覧表」
電子署名プラグインソフト
PDF化した定款に電子署名を付与するためのソフトウェアです。上述のAdobe Acrobatを利用している場合は、登記・供託オンライン申請システムが提供するPDF署名プラグインソフトを使ってPDFに電子署名を付与することができます。
出典:登記・供託オンライン申請システム「PDF署名プラグインについて」
電子定款の作成手順
電子定款の作成手順は以下のとおりです。それぞれについて詳しく解説します。
電子定款の作成手順
- 定款を電子データで作成する
- 定款を電子化する
- ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
- PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する
定款を電子データで作成する
紙定款と同じプロセスで定款文章をパソコンなどで作成します。
定款は事業目的や商号など、かならず記載しなければいけない「絶対的記載事項」と、取締役会の設置や公告の方法など、定款に記載することで効力を発揮する「相対的記載事項」、また、それらに該当せず違法性がない事柄の「任意的記載事項」に分けられています。
絶対的記載事項
絶対的記載事項は定款に必ず記載しなければならない事項で、記載されていない場合は定款自体が無効となります。
具体的な内容は以下のとおりです。
- 事業の目的
- 商号(会社名)
- 本社所在地
- 資本金額(出資財産額)
- 発起人の氏名と住所
相対的記載事項
相対的記載事項とは、「法的には記載しなくても問題ないものの、記載がないとその事項について効力が認められない」事項を指します。
例としては、株式会社の「株券を発行する旨の定め(株券を発行しますという表明)」があります。ほかにも、主要な相対的記載事項として以下の項目があります。
- 変態設立事項(会社法28条)
- 設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除(会社法89条、342条)
- 株主名簿管理人(会社法123条)
- 譲渡制限株式の指定買取人の指定を株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)以外の者の権限とする定め(会社法140条5項)
- 相続人等に対する売渡請求(会社法174条)
- 単元株式数(会社法188条1項)
- 株券発行(会社法214条)
- 株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮(会社法299条1項、368条1項、376条2項、392条1項)
- 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置(会社法326条2項)
- 取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除(会社法426条)
- 社外取締役、会計参与、社外監査役及び会計監査人の責任限定契約(会社法427条)
- 取締役会設置会社における中間配当の定め(会社法454条5項)
出典:日本公証人連合会「定款認証」
任意的記載事項
任意的記載事項とは、「絶対的記載事項と相対的記載事項に該当せず、かつ違法性のない内容を記載する項目」をいいます。相対的記載事項との違いは、定款に記載しなくてもほかの文書などで明確にすることで、効力が認められる点です。
具体的な内容は以下のとおりです。
- 株主総会の開催規定
- 役員報酬に関する事項
- 配当金に関する事項
定款には会社法によって一定の基準が設けられており、法に準じていないものは無効となってしまいます。作成したら事前に公証役場で内容に問題ないかチェックしてもらいましょう。事前にメールやFAXなどでデータを送ると内容を確認してもらえます。
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定款を電子化する
公証役場で定款の中身を確認してもらったあと、PDF変換ソフトを使って電子化します。
ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
PDF化した定款に電子署名をつけるための電子証明書はマイナンバーカードのICチップの中に保管されているため、ICカードリーダライタを使用して電子証明書を読み込みます。
PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する
ICカードリーダライタで電子証明書を読み込んだら、署名プラグインソフトを使って電子定款のPDFデータに挿入します。これで電子定款の完成です。
電子定款を作成するために必要なソフトや機器を一から揃えるのが面倒な方や、簡単に作成したい方は電子定款にも対応しているfreee会社設立がおすすめです。
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株式会社は電子定款の認証が必要
株式会社を設立する場合は、電子定款の作成とあわせて電子定款の認証をする必要がありますが、定款認証が必要になる会社形態は株式会社のみであり、合同会社などでは必要ありません。
電子定款の認証とは
法人設立や定款変更の際に、定款を電子化してインターネット上で申請します。その申請書類が本人や代理人によって申請されたものであることを確認する手続きのことを電子定款の認証といいます。
電子定款の認証は、電子的に作成された定款を保証するために必要な手続きであり、認証された電子定款は、紙の定款と同様に法的な効力をもっています。
また、電子定款の作成が完了しても、公証役場より電子定款の認証がされなければ効力を発揮しないので注意が必要です。
電子定款の認証手続きを行う
株式会社を設立する場合は、電子定款を作成したあと、電子定款の認証手続きを行う必要があります。
この手続きは、法務省のオンライン申請システムを利用して承認作業を行うため、オンライン申請システムを利用する際は、利用者情報の登録を事前に済ませておかなければなりません。
申請後には、法務省のサイトより申請用のソフトをダウンロードすることで電子定款を送信できるようになります。
公証役場で認証された定款を受け取り登記する
電子定款の提出が完了した場合、定款のデータを直接公証役場で受け取ります。受け取りは、電話による事前予約が必要なため注意しなければなりません。また、以下の持ち物が必要となります。
定款の認証に必要なもの
- USBメモリ
- 定款プリントアウトしたもの
- 発起人の印鑑証明書
- 電子署名した発起人以外の委任状
- 認証手数料など(約5万円)
- 印鑑
電子定款で作成するメリット
電子定款は、紙の定款よりも効率的に手間やコストを削減できるメリットがあります。
紙の定款よりも早く作成できる
メールや申請フォームによるオンラインでやり取りを行うため、公証役場に直接出向く必要がありません。また、紙の定款のように書類を用意する必要もないことから、よりスピーディーに定款を作成・認証することができます。
ただし、認証をもらった電子定款のデータは、公証役場で直接受け取らなければならないので注意しましょう。
紙の定款よりも低いコストで作成できる
電子定款は電子情報であり印紙税法の対象外となるため、印紙代4万円がかかりません。会社設立時の法定費用を抑えることができます。
電子定款で作成するデメリット
電子定款は、紙の定款と比べて多くのメリットがありますが、機器購入の準備費用などいくつかのデメリットも存在します。
機器やソフトの準備費用がかかる
電子定款の作成は、文書を作成しPDF化したファイルに電子署名を入れることで有効とされます。そのため、Microsoft WordやAdobe Acrobatのようなソフトウェア・ICカードリーダライタなどの周辺機器を用意する準備費用が発生します。
ソフトウェアやICカードリーダライタを既に持っている場合は電子定款で作成する方が費用を抑えることができますが、持っていない場合は周辺機器の準備費用が印紙代4万円を超えてしまう可能性があるため、注意が必要です。
自身の環境にあわせて紙の定款にするか、電子定款にするか判断しましょう。
申請後はデータの修正ができない
一度オンライン申請してしまうと修正・変更をすることができません。修正が必要な場合は再申請することとなり、再電子定款認証を受けるための手数料5万円、保存手数料300円が再度発生してしまいます。
まとめ
定款とは、企業の根本原則が記載された書類で、この定款を電子ファイル形式(PDF)で作成したものが電子定款です。
従来の紙の定款と比べ手間やコストを削減できるメリットに対し、文書作成ソフトや周辺機器購入などの準備費用がかかります。定款を作成する際は、どちらの作成方法が自身にあっているか、メリットとデメリットを理解した上で作成するようにしましょう。
また、電子定款については動画でも詳しく紹介していますので、以下の動画もあわせてご覧ください。
定款(ていかん)を簡単に作成する方法
定款とは、会社のルールブックであり、会社設立時に必ず必要な書類の一つです。
テンプレートはほぼ決まっていますが、事業目的などの記載内容は会社によって異なるため、自分で作成すると時間がかかってしまいます。また、ほかにも設立時には約10種類の書類を準備しなければなりません。
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会社名や資本金額など必要項目を入力すると、定款(ていかん)をはじめ、会社設立に必要な約10種類の書類を自動で作成します。
<freee会社設立で作成できる書類の一例>
- ・定款(ていかん)
- ・登記申請書
- ・印鑑届出書 など
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さらに設立費用を削減したい方には電子定款がおすすめです。紙の定款では収入印紙代40,000円がかかりますが、電子定款ではこれが不要となります。freee会社設立は電子定款にも対応しており、電子定款作成に必要な機器やソフトの準備なども必要がないため、自分で作成するよりもコストを抑えることができます。
<設立にかかる費用の比較例>

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(2)紙定款の印紙代4万円が発生します。
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よくある質問
電子定款とは?
電子ファイル形式で作成された定款を電子定款と言い、従来の紙定款と比べ収入印紙が不要となり、会社設立にかかる費用を削減できるメリットがあります。詳しくは記事内「電子定款とは」をご覧ください。
定款を電子定款で作成するメリットは?
電子定款は、紙の定款よりも効率的に手間やコストを削減することができます。詳しくは記事内「電子定款で作成するメリット」をご覧ください。
電子定款を自分で作成できる?
電子定款は、テンプレートがほぼ決まっているため自分で作成することは可能です。事業目的などの定款に記載する内容は会社によって異なるため、設立時には約10種類の書類を準備する必要があります。詳しくは記事内「電子定款の作成手順」をご覧ください。