
現在、日本での会社設立時には「株式会社」「合名会社」「合資会社」「LLC(合同会社)」の4つの会社形態を選択することができます。LLCは日本語で合同会社のことで、2006年の会社法改正によって誕生してからメジャーな会社形態の一つとして広がりました。
LLCの会社が増えた要因としては、会社の設立費用が抑えられることや会社の所有者と経営者が同一のため意思決定のスピードが速いというメリットにあります。本記事では、LLC(合同会社)の特徴や株式会社・LLP(有限責任事業組合)との違い、LLCのメリット・デメリットについて解説していきます。
目次
LLC(合同会社)とは
LLCとは「Limited Liability Company」の略で、合同会社と呼ばれる会社形態の一つです。LLCは、会社法が施行された2006年5月1日に誕生しました。
日本で設立されたLLCは2006年には3,392件でしたが、その後右肩上がりで増加しており、2022年の総数は10万件を超えるほどにまで増加しています。

出典:e-Stat「登記統計 商業・法人 種類別 合同会社の登記の件数」
LLCは、資金を出資し会社の経営も行う「社員」で構成され、出資した金額の範囲でのみ責任を負う「間接有限責任」という形式の法人です。一方、定款では出資比率に関係なく利益配分を自由に決めることができ、社員一人ひとりが一票の議決権を持っています。
一般的にLLCは中小企業に向いていると言われていますが、西友・アマゾンジャパン・アップルジャパン・グーグルなどの大企業でも合同会社のかたちをとる場合もあります。
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LLCと株式会社との違い
LLCと株式会社の大きな違いは、株式会社は利益配分や意思決定のプロセスが出資比率によって決定されるのに対し、LLCは前述したように出資比率に関係なく自由に利益配分を決めることができる点です。
そのほかの主な違いについては、以下に表のとおりです。
株式会社 | LLC(合同会社) | |
---|---|---|
意思決定 | 株主総会 | 社員総会 |
所有と経営 | 原則完全分離 | 原則同一 |
出資者責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
役員の任期 | 原則2年 | 任期なし |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
定款 | 認証必要 | 認証不要 |
利益配分 | 出資比率に応じる | 定款で自由に規定 |
設立費用 | 約20万円〜 | 6万円〜 |
このように、共通しているところもありますが、会社の所有と経営の面や設立費用等で、株式会社とLLC(合同会社)には違いがあります。
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会社の所有者と経営者
LLCの場合、会社の所有者と経営者は原則同一とされています。そのため、経営の自由度が高く、意思決定のスピードが早いことがLLCの大きな特徴です。
一方の株式会社では、資本を出資する株主が会社の所有者となり、経営者には株主によって選ばれた取締役が選任されることが基本です。これを「所有と経営の分離」と呼び、広い範囲での資金調達が可能であったり、幅広い人材の登用ができたりする特徴があります。
役員の任期の有無
LLCには、役員の任期がありません。これは、所有者と経営者が同一であることから、そもそも任期を設ける必要がないのが理由です。また、厳密に言えばLLCには「役員」という役職が法律上存在せず、出資者兼役員のことを「社員」と呼んでいます。
一方の株式会社では、役員の任期設定が必要です。任期は最長で10年まで設定できますが、多くの株式会社は2年間と設定しています。任期満了時には、役員の変更がない場合であっても登記手続きを行わなければいけません。登記手続きには登録免許税等の費用が発生するため、覚えておきましょう。
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設立費用
LLCを設立するためにかかる費用は、登録免許税の6万円のみで比較的安価です。その他資本金や運営にかかるコストはもちろん発生しますが、会社の設立自体は安く済みます。
一方の株式会社は、登録免許税が15万円とLLCより高額である他、定款認証に5万の費用がかかります。そのため、総額では約20万円かかると覚えておきましょう。
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決算公告の有無
LLCは、決算公告を行う必要がありません。資本金の減少や吸収合併などの組織再編、解散などの際は公示が必要ですが、毎年確実に行わなければいけない公告がないことはメリットになるでしょう。
一方の株式会社は、定時株主総会の終了後、定款によって定めた方法にて行う決算公告が必要です。万が一決算公告を怠った場合には、100万円以下の過料が課せられることがあります。
決算公告には煩雑な手続きがあるほか公告掲載に費用がかかるため、LLCは時間とお金の負担を軽減できるといえます。
LLCとLLPの違い
LLPとは「Limited Liability Partnership」のことで、日本語では有限責任事業組合と呼びます。LLCと似た形態を持つ組織で、有限責任であったり、出資比率に関わらず自由に分配を決められたりするなど多くの共通点があります。
ただし、LLPは個人同士の契約関係であり、法人格を有していないただの組合です。LLCは法人の一つであり、株式会社への組織変更を行えますが、LLPは組織変更ができません。
LLC設立のメリット
LLCを設立するには、以下のようなメリットがあります。
- 間接有限責任がある
- 経営の自由度が高い
- スピード感のある意思決定ができる
- 設立費用が安い
近年では多くのLLCが設立されていますが、その大きな要因が上記のようなメリットによるものだと言えるでしょう。
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間接有限責任がある
LLCのメリットの一つは、無限責任が生じる合名会社や合資会社とは異なり、株式会社と同様の「間接有限責任」であることです。会社が倒産した場合でも、自己の財産を弁済にあてる義務はありません。
経営の自由度が高い
LLCは一人でも会社の設立が可能ですが、出資比率に関係なく利益の配分ができ、経営の自由度が高いこともメリットの一つです。そのため、優秀な社員の利益配分比率を高めることもできます。
そして、役員の任期がなく、決算公告の義務もありません。また、定款は必要ですが認証の必要はないため、記載内容は自由に定めることができます。
スピード感のある意思決定が可能
株式会社では、方針や重要な事項を決定するためには「株主総会」を開催しなければなりません。しかし、LLCでは会社の所有者と経営者が一致しており、出資者(社員)=経営者であるため、株主総会を開催する必要がなく迅速な意思決定ができる特徴があります。
設立費用が安い
前述したように、株式会社の設立には約20万円の費用がかかるのに対し、LLCはわずか6万円で設立することができます。(定款の印紙代は4万円ですが、電子定款であれば印紙代は不要です)
株式会社とLLCの主な設立費用については、以下の表にまとめました。
項目 | 株式会社 | LLC |
---|---|---|
定款用収入印紙代 | 40,000円 (電子定款では不要) | 40,000円 (電子定款では不要) |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 (250円/1ページ) | 0円 |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 (250円/1ページ) | 0円 |
定款の認証手数料 (公証人に支払う手数料) | 資本金100万円未満:30,000円 資本金100万円以上300万円未満:40,000円 資本金300万円以上:50,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円 または 資本金額 × 0.7% どちらか高いほう | 60,000円 または 資本金額 × 0.7% どちらか高いほう |
合計 | 約182,000円〜 | 約60,000円〜 |
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LLC設立のデメリット
LLC設立には多くのメリットがありますが、その一方で留意しなければいけない以下のようなデメリットもあります。
- 認知度・信用度が低い
- 出資者の対立リスクがある
- 資金調達の範囲に制限がある
LLCの設立には、これらのデメリットもしっかりと考慮した上で検討しなければいけません。
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認知度・信用度が低い
日本でもLLCの設立数は増えてきていますが、設立が認められるようになってからまだ日が浅いこともあり、一般的にはまだまだ認知されていないのが実情です。
また、LLCというかたちをとっている大企業も実際にありますが、LLCは決算公告の義務がなく、小規模で閉鎖的な会社形態が中心なので、株式会社に比べて信頼性が低いのが現状です。中には「株式会社」でなければ取引しないというルールを設けている会社もあり、信用度の課題も残ります。
さらに、株式会社の代表者は「代表取締役社長」ですが、LLCでは「代表社員」という名称になるため取締役や社長と名乗ることができません。
このように認知度や信用度が低いことにより、採用時に良い人材を確保することが難しいことも考えられます。
出資者の対立リスクがある
LLCでは、代表社員の継承・事業継承・出資者の権利譲渡については社員全員の同意が必要です。経営に関する事項では、社員の過半数、業務執行社員を選出している場合、業務執行社員の過半数の同意が必要です。
そのため、出資者である社員同士で意見の対立が起こると経営や業務に大きな影響を与える可能性があります。
また、出資比率に関係なく利益配分を決めることができると紹介しましたが、見方を変えると利益配分比率に不満が出ると内部対立が生じる可能性もあります。
資金調達の範囲に制限がある
株式会社の場合は、株式を発行することで社外の幅広い投資家からの資金調達が可能ですが、LLCの場合は株式という概念がないため、国や自治体の補助金・助成金や借入(融資)となり、資金調達の範囲が大きく限定されます。
LLCを設立する際の注意点
LLCを設立する注意点には、主に3つが挙げられます。
まず一つ目は、定款の作成段階で事業目的を明確に設定しておくことです。定款には、会社名や本店所在地のほかに事業目的を記載する項目があります。そもそも定款に記載されていない事業を行うことはできず、設立後に追加で記載するには手間がかかってしまうため、設立前の段階で事前に決めておくことが重要です。
二つ目は、出資者になる者(社員)の人選を慎重に行うことです。LLCは資金の出資者がそのまま会社の経営にも携わる会社形態で、会社の意思決定には出資者である社員全員の合意が求められます。そのため、万が一対立が起こってしまった場合には一気に運営体制が崩れてしまう原因にもなるため、慎重な人選を行うことが重要です。
三つ目は、LLCから株式会社に移行することも可能であるという点です。会社設立をする際に選ぶ会社形態として、株式会社にするかLLCにするかは悩ましいポイントでしょう。しかし、開業時はLLCとしていても、経営が軌道に乗ってきたタイミングで株式会社への組織変更をすることができます。
特に事業の規模を拡大したり、さらなる増資を募ったりする場合には株式会社の方が都合が良い場合もあるので、組織変更を視野に入れておくことも大切です。ただし、LLCから株式会社に変更する際は手続きの完了まで2ヶ月近い時間を要する点には、ご注意ください。
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まとめ
LLCは、設立費用が低コストで手続きも少ないことから設立のハードルが低く、現在では株式会社に次いで選択される法人形態となってきました。LLCは設立のハードルが低いことも大きなメリットですが、会社の運営においても経営の自由度が高く意思決定のスピードが早いといったメリットがあります。
ただし、LLCは資金調達の範囲に制限があり事業の拡大がしづらいことがデメリットです。もし、さらなる事業展開や規模の拡大を目指している場合には、株式会社への組織変更を行うと良いでしょう。
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LLCと株式会社の違いは?
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LLCとLLPの違いは?
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