監修 松浦 絢子(弁護士)
定款(ていかん)とは、会社設立時に必ず作成し、会社の基本的な事項を記載する書類です。
事業の目的や商号、本店所在地などの事項は定款に必ず記載しなければなりません。記載漏れがあると、定款そのものが無効になることがあります。
また、近年は紙の定款ではなく電子定款を作成する方法も普及しており、収入印紙代を抑えられる選択肢として利用されています。会社を設立する際は、会社法の規定や定款の作り方を押さえておきましょう。
本記事では、電子定款や定款の写し・原本証明を含めた定款の作り方や作成時の注意点を解説します。
目次
定款は誰がいつ作成する?
株式会社を設立する場合は発起人が、合同会社などの持分会社を設立する場合は社員になろうとする人が、定款を作成しなければなりません。定款は、会社の組織や運営に関する根本規則であり、法人登記より前に作成します。
発起人や社員になろうとする人は、会社の目的・商号・本店所在地・出資に関する事項など、定款に記載すべき事項を検討し、必要に応じて機関設計や役員に関する事項も定めます。
定款の記載事項は3種類
定款作成時に記載すべき内容は会社法によって定められています。定款に記載する項目は大きく分けて以下の3つです。
定款に記載する内容
- ①絶対的記載事項
- ②相対的記載事項
- ③任意的記載事項
①絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。
定款の絶対的記載事項
〈株式会社〉
- 事業目的
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
〈合名会社・合資会社・合同会社〉
- 事業目的
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 社員の氏名または名称および住所
- 社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるかの別
- 社員の出資の目的およびその価額または評価の標準
なお、発行可能株式総数は会社法第27条の絶対的記載事項には含まれませんが、株式会社の成立時までに定款に定める必要があります(会社法第37条)。設立時に定款へ記載しておくことが一般的です。
絶対的記載事項がひとつでも欠けると、定款そのものが無効となります。以下では、株式会社の定款に記載する絶対的記載事項について解説します。
事業目的
事業目的とは、会社が行う事業の範囲を定めたものです。現在行う事業だけでなく、将来的に行う可能性のある事業も含めて記載することがあります。
事業目的の数に明確な制限はありませんが、あまりにも多く記載すると、何をしている会社なのかがわかりにくくなり、取引先や金融機関からの印象に影響するおそれがあります。
また、事業目的は原則として自由に定められますが、犯罪行為や公序良俗に反する内容は認められません。
商号(会社名)
商号とは、会社名(法人名)のことです。会社名として使用できる文字には一定のルールが設けられています。たとえば、株式会社であれば、商号に「株式会社」という文字を含めなければなりません。
また、有名企業の商号やブランド名と同一または類似する名称を使用し、混同を生じさせる場合には、不正競争防止法上の問題となり得ます。場合によっては、損害賠償を求められることもあります。
本店所在地
本店所在地とは、会社の本店として定める所在地のことです。
事業実態がない場所や、賃貸借契約で法人登記・商用利用が制限されている住所を本店所在地にする場合は、契約内容や許認可上の要件を事前に確認する必要があります。本店所在地に指定する物件を契約する際は、貸主と契約内容を十分に確認しましょう。
本店所在地を番地まで記載する場合は、「○丁目○番○号」などの正式な住所表記を用い、定款や登記申請書類で表記を統一します。
また、定款上の本店所在地は、最小行政区画(東京23区内なら区、郡なら町・村、それ以外は市)までの記載とすることも可能です。将来、同じ最小行政区画内で移転する可能性がある場合、定款上の本店所在地を最小行政区画までにしておくと、定款変更を避けられる場合があります。
近年では、本店所在地としてバーチャルオフィスの住所を利用する例も見られます。事業所を借りずに起業する人は、許認可や金融機関の審査への影響も確認したうえで、バーチャルオフィスの利用を選択肢として検討しましょう。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
会社を設立するにあたり出資される財産の価額またはその最低額を定款に記載します。「◯◯万円以上」と、最低額の記載にしておくことも可能です。
会社法では、資本金の下限額が定められていないため、資本金1円でも会社を設立することはできます。ただし、資本金額が極端に少ないと社会的信用が得られにくく、創業融資の審査などに影響する可能性があります。
融資による資金調達を検討している場合は、その点も考慮して資本金額を設定しましょう。
発起人の氏名・住所
会社を設立するうえで必要となる発起人全員の氏名または名称、および住所を記載します。
発起人とは、設立時発行株式を引き受け、定款の作成など会社設立に関する事務を行う人のことです。複数の発起人がいる場合は、発起人全員の情報を記載します。
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株式会社設立時の「発起人」とは?意味や役割について解説
②相対的記載事項
相対的記載事項とは、法的には記載しなくても問題はないものの、定款に記載がないとその事項について効力が認められない事項です。
定款の相対的記載事項
- 現物出資
- 財産引受
- 発起人の報酬・特別利益
- 設立費用
- 株主名簿管理人
- 株券発行
- 株主総会、取締役会および監査役会の招集通知期間短縮
- 取締役会の設置
- 役員の任期の伸長 など
株券は、株主としての権利を表章する有価証券です。株券を発行する旨を定款に明記しないと、株券不発行会社(株券を発行しない会社)となります。
会社法上、役員の任期は、原則として取締役が2年、監査役が4年です。ただし、非公開会社(株式譲渡制限会社)では、定款で定めることにより、役員の任期を最長10年まで伸長することが可能です(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)。
また、株主総会を招集するには、通常2週間前までに通知を出す必要がありますが、定款に明記すると短縮できます。
そのほか、以下の4項目は、会社の財産に大きな影響を及ぼす重要なものとして変態設立事項と呼ばれます。これらを定款で定める場合は、原則として裁判所に検査役の選任を申し立て、調査を受けなければなりません。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 現物出資 | お金以外の出資(土地や車など) |
| 財産引受 | 設立成功を条件として会社が受け取る、または買う予定の財産 |
| 発起人の報酬・特別利益 | 設立成功時の発起人に対する報酬・利益 |
| 設立費用 | 設立後に会社が負担する例外的な設立費用 |
ただし、現物出資の評価額が500万円以下の場合や、弁護士・公認会計士・税理士等が相当性を証明した場合など、一定の要件を満たす場合は検査役の調査が不要となります。
③任意的記載事項
任意的記載事項とは、絶対的記載事項と相対的記載事項に該当せず、会社法の規定に違反しない事項を定款に記載するものです。
任意的記載事項は、定款に記載しなくても効力に影響しない点が、相対的記載事項とは異なります。
定款に記載した場合、内容を変更するには定款変更の手続きが必要です。そのため、内容によっては別の文書に定めておく方法もあります。
任意的記載事項の記載例は、「役員報酬に関する事項」「株主総会の開催規定」「事業年度」「配当金に関する事項」などです。
定款の作り方
定款に記載する内容が決まったら、日本公証人連合会のサイトに掲載されている定款記載例などを参考に、定款を作成します。
定款の条文の作成方法
定款に記載すべき事項(絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項)が確定したら、内容をまとめて定款の条文を作成します。
取締役会や監査役を設置しない株式会社であれば、一般的には以下の全6章の構成でまとめます。ただし、会社の機関設計や株式の内容などによって、章や条文が追加されることもあります。
- 第1章総則:事業目的・本店所在地・公告の方法など会社の基本情報を記載
- 第2章株式:発行可能株数などの株式に関する取り決めについて記載
- 第3章株主総会:株主の招集方法や決議など株主総会の規定について記載
- 第4章取締役及び代表取締役:取締役および代表取締役の規定について記載
- 第5章計算:事業年度や決算などに関わる規定について記載
- 第6章附則:会社設立に際して1~5章に書かれた内容以外の規定について記載
出典:日本公証人連合会「定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)」
定款のフォーマット
日本公証人連合会のサイトで公開されている定款のフォーマットのうち、中小企業の会社設立時に使えるフォーマットは以下の3つです。
定款のフォーマット
- 小規模な会社(取締役1人・監査役・会計参与非設置・株式非公開)
- 中小規模の会社(取締役1人以上・取締役会非設置・監査役非設置会社・株式非公開)
- 中規模な会社(取締役3人以上・取締役会設置会社・監査役設置会社・株式非公開)
どのフォーマットを利用するかは、以下の点を参考に判断します。
①公開会社か非公開会社か
公開会社と非公開会社の違いは、発行する全ての株式に譲渡制限があるかどうかです。全株式について定款で譲渡制限している株式会社が非公開会社、それ以外の株式会社が公開会社です。
譲渡制限を設けていない場合、共同創業者が退任する際などに、会社の承認なく第三者へ株式が譲渡される可能性があります。保有割合によっては、経営への影響が生じるおそれもあります。
このような経営リスクを抑えるため、設立直後の段階では、株式に譲渡制限を設けることが一般的です。
②取締役の人数
非公開会社では取締役が最低1人、公開会社では取締役が3人以上必要です。取締役の人数が1人、1人以上3人未満、3人以上で定款のフォーマットが変わります。
また、取締役の人数やそれぞれの任期は、会社の機関設計に応じて定款に定めることが一般的です。
③取締役会の設置の有無
公開会社では、取締役会を設置する必要があります。非公開会社では、原則として取締役会の設置義務はありません。取締役会を設置しない場合、会社の重要事項は株主総会で決議し、日常的な業務執行は取締役が行います。
取締役会を設置すると、一定の業務執行に関する意思決定を取締役会で行えるため、機動的な経営判断につながる場合があります。
④監査役の有無
取締役会を設置する場合は、原則として監査役を設ける必要があります。
取締役会を設置しない場合、監査役を置くかどうかは任意です。小規模会社では、監査役を置かない設計も多く見られます。
電子定款の作り方
定款は紙ではなく、電子ファイル形式(PDF)の電子定款として作成することも可能です。電子定款で作成すれば、紙の定款で必要となる収入印紙代4万円の支払いが不要になります。
電子定款を作成する際の流れは、以下のとおりです。
電子定款を作成する流れ
- ①定款を電子データで作成する
- ②定款を電子化する
- ③ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
- ④PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する
上記の方法のほか、freee会社設立のようなサービスを活用して電子定款を作成する方法もあります。必要項目を入力するだけで、会社設立に必要な定款が作成可能です。会社設立に必要な書類も、画面のガイドに沿って入力すれば作成できます。
定款の写し・原本証明の作り方
登記手続きで定款などの添付書面の原本還付を希望する場合は、原本とあわせて、原本証明を付した写しを提出します。
定款の写しとは、紙の定款をコピーしたもの、または電子定款を印刷したものです。一方、原本証明は、定款の写しが原本と相違ないことを証明するためのものです。原本証明は、定款の写しの末尾や余白に記載する方法、または別紙として添付する方法があります。
定款の写し・原本証明を作成する一般的な手順は、以下のとおりです。なお、原本証明に決まったフォーマットはありません。
定款の写し・原本証明の作り方
- ①定款の表紙を含む全ページをコピーする(電子定款の場合は印刷する)
- ②紙を順番にそろえて左側を2ヶ所ほどホチキスで留める
- ③全ての綴じ目に会社の代表者印で契印する
- ④最後のページの余白、もしくは裏面に以下を記載する
・定款原本と相違ない旨
・原本証明作成日の日付
・本店所在地・会社名・代表者名 - ⑤代表者名の右横に代表者印を押す
A4サイズで白黒コピーまたは印刷するのが一般的ですが、提出先で指定がある場合はそれにしたがいます。
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定款の原本証明とは? 書き方や使う場面をわかりやすく解説
定款を作る際の注意点
定款を作成する際の注意点は、主に以下の4つです。
定款を作成する際の注意点
- 定款は正しい表記で記載する
- 事業目的はわかりやすく記載する
- 株式会社では作成した定款の認証が必要
- 株式会社では公告方法も定款に記載することが多い
定款は正しい表記で記載する
定款を作成する際は、正しい表記で記載しましょう。
たとえば、定款の事業目的や内容を記載する際に、「または」や「および」といった接続詞を使うことがあります。「または」は、複数の選択肢からいずれかひとつを選ぶことを意味し、「および」は、複数の事項を全て含むことを意味します。
定款に記載した内容が本来意図した内容と異なる意味にならないようにしましょう。
事業目的はわかりやすく記載する
定款には、会社が行う事業目的を明確に記載する必要があります。事業目的に記載されていない事業を行うことについて、会社法上の罰則が直ちに設けられているわけではありません。ただし、許認可や金融機関の審査、取引先との確認などで支障が生じる可能性があります。
事業目的は、第三者が理解しやすい表現でわかりやすく書くことが重要です。専門用語や難解な表現を避け、具体的で明瞭な表現を使いましょう。
株式会社では作成した定款の認証が必要
定款の認証とは、公証人が、発起人によって作成された定款であることなどを確認し、認証する手続きです。
定款の認証を行い「会社設立時に発起人全員の同意のもとで作成した定款(原始定款)である」と公的に証明することで、定款の改ざんや社内紛争などのリスクを抑止できます。
定款の認証では、一般的に以下のものが必要です。
定款の認証に必要なもの
- 定款:3通
- 発起人の印鑑証明書:全員分
- 収入印紙(紙の場合):4万円分
- 認証手数料:1万5,000円〜5万円※資本金額や条件によって異なる
- 定款の謄本交付手数料:1ページにつき250円
- 委任状(代理人が定款の認証に出向く場合)
なお、定款の認証が必要な法人形態は「株式会社」「一般社団法人」「一般財団法人」で、持分会社である合同会社・合資会社・合名会社では定款の認証は不要です。
定款の認証手続きについて詳しく知りたい方は、別記事「定款認証とは?手続きの流れや必要な書類・費用を解説」をあわせてご覧ください。
株式会社では公告方法も定款に記載することが多い
公告とは、決算や合併の情報など会社の運営に関わる事項を開示することです。株式会社では、原則として毎年決算公告を行うことが義務付けられています。
定款に定めることができる公告方法は、「官報に掲載する方法」「日刊新聞紙に掲載する方法」「電子公告」の3つです。公告方法に関する規定が定款にない場合は、官報に掲載して公告を行います。
公告方法は定款の絶対的記載事項ではありませんが、定款で定めることが一般的です。なお、官報への掲載は費用がかかりますが、自社ホームページ上で公告する電子公告であれば、経費削減につながります。
定款の作成・認証を含む会社設立の流れ
会社を設立するための基本的な流れは、以下のとおりです。
会社を設立する際は、商号・事業目的・本店所在地・出資額・役員構成などの基本情報を決定します。また、必要に応じて、登記の手続きに備えて会社用の実印を作成します。
株式会社は、作成した定款について公証人の認証を受けなければなりません(合同会社などの持分会社では認証は不要です)。定款認証は、会社の本店所在地を管轄する法務局または地方法務局に属する公証人に依頼します。公証役場によっては、電話やWebなどから事前予約が必要です。
認証完了後は、発起人が定めた銀行口座などに出資金を払い込み、払込証明書類などの書類をそろえて法務局で設立登記を申請します。登記申請後、不備がなければおよそ10日前後で登記手続きは完了です。
まとめ
会社を設立する際は、法人登記の前に定款を作成する必要があります。
定款には、事業目的・商号・本店所在地などの絶対的記載事項を必ず記載し、相対的記載事項や任意的記載事項についても会社の運営方針に応じて検討しましょう。
株式会社の場合は、作成した定款について公証人の認証を受ける必要があります。なお、電子定款を利用すれば、紙の定款で必要となる収入印紙代を抑えることが可能です。
定款のフォーマットや記載例を参考にしながら、記載漏れや表記の誤りがないように確認し、会社設立の手続きを進めましょう。
定款(ていかん)を簡単に作成する方法
定款とは、会社のルールブックであり、会社設立時に必ず必要な書類の一つです。
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よくある質問
定款とは?
定款(ていかん)とは、会社設立の際に必ず作成しなければならない書類で、会社の基本的な事項を記載するものです。
定款について詳しくは「定款は誰がいつ作成する?」をご覧ください。
定款は自分で作成できる?
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監修 松浦 絢子弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。
