
現物出資とは、通常現金で行われる会社設立の際や会社の増資時の投資を、現金以外の資産で行うことをいいます。また、現金による出資がなくとも、現物出資だけでも1円以上あれば資本金として会社設立が可能です。
本記事では、現物出資とはどのようなものか、手続きの流れやメリットデメリットについて解説します。
目次
現物出資とは
現物出資とは、現金ではなく、現金以外の資産に出資することを指します。
現物出資は、会社設立時および資本の増資時に可能ですが、会社設立時は手続きを行う発起人のみが現物出資を認められています。資本金として、現物出資だけを用いることも可能なため、手元に現金の資金がない人でも会社を設立することが可能です。
また現物出資として認められるのは、譲渡可能で、貸借対照表に資産計上が可能なものに限定されます。現物出資が認められる資産としては以下のようなものが挙げられます。
現物出資が認められている資産
- 自動車、パソコン、OA機器、商品、原材料などの動産
- 市場価値のある有価証券
- 土地、マンションなど不動産
- 営業権・商標権などの知的財産権など無形固定資産
会社法第93条および207条にて、現物出資される財産について、検査役の選任、資産価格を定款へ記載すること、またその価格が正確であるかの調査が義務付けられています。
ただし、会社法第33条にて以下の要件に該当する場合には、監査役の選任は不要とされています。
現物出資で検査役選任が不要になるケース
- 現物出資の合計額が500万円以下
- 現物出資する資産が市場価格のある有価証券であり、記録された価額が市場価格以下
- 現物出資する資産について、定款に記載された価額が相当であることが弁護士や公認会計士により証明されている(不動産に関しては不動産鑑定士の鑑定評価が必要)
現物出資で会社設立する際の手順
検査役の選任が不要となる500万円以下の現物出資を株式会社に行う場合の流れを解説します。
現物出資の過程は一連の手続きが必要となります。500万円以下の現物出資を株式会社に行う場合、検査役の選任が不要です。以下ではその具体的な流れを説明します。
現物出資する資産の価格調査
現物出資では、出資額を提示する際、購入額ではなく時価(市場価格)で計上します。車であれば、車種や年式から中古市場価格をインターネット上で調べておきましょう。
定款に必要事項を記載する
続いて、定款に現物出資に関する必要事項を記載します。定款とは、会社の名前(商号)や事業内容、本社の所在地、出資者の名前などが記載されている書類で、現物出資をする場合は以下の内容を記載する必要があります。
定款記載する必要事項
- 現物出資する人の氏名と住所
- 資産の詳細情報(名称・製造会社など)
- 資産の価格
- 出資者に割り当てる株式数
調査報告書、財産引継書、資本金の額の計上に関する証明書を作成する
現物出資による会社設立は、「調査報告書」、「財産引継書」、「資本金の額の計上に関する証明書」を作成する必要があります。
「調査報告書」とは現物出資する資産の価額が適切であるかどうか調査した結果をまとめた書類、「財産引継書」は資産が会社側に渡ったことを示す書類、「資本金の額の計上に関する証明書」とは金銭以外の現物出資がある場合には、添付が必要となる書類です。
法務局に必要書類を提出する
作成した「調査報告書」および「財産引継書」を株式会社設立登記申請書に添付して、管轄の法務局に提出します。このとき、現物出資について記載した定款の添付も必要です。
名義変更手続きを行う
パソコンや商品など動産の現物出資では、会社に現物を渡した段階で出資が完了したと見なされます。しかし、不動産や自動車、有価証券など、出資される現物に保有者名義がある場合は名義変更の手続きを行う必要があるのです。
この手続きは、原則会社設立登記の前に行いますが、すべての発起人の同意がある場合や会社の登記事項証明書が必要な場合は、会社の設立登記後に手続きを進めます。
現物出資のメリットとデメリット
現物出資は、現金の資金が少なくても出資額を増やすことができるなどのメリットがありますが、現金のみでの出資に比べて手間がかかるなどのデメリットがあります。
現物出資のメリット
現物出資のメリットは、資本金の増額や節税対策、そして資金がなくても会社設立ができるなどのメリットがあります。現物出資のそれぞれのメリットは主に以下の3点です。
資本金を増やすことができる
資本金は「会社の体力」ともいわれ、社会的信用に大きく関わります。取引するかどうかの判断材料にしている企業も少なくありません。
平成18年5月に最低資本金制度が撤廃され、1円以上の資本金があれば会社設立が可能となりました。しかし、実際に1円で会社を運営することはできません。また、資本金額が少ないことで、金融機関から融資を受けたい場合も返済能力が乏しいと判断され、断られる可能性もあります。
現物出資することで、資本金の総額が増えれば会社の社会的信頼を高めることができます。
減価償却による節税対策が可能になる
1つあたり10万円以上のものは、減価償却資産として扱われます。減価償却資産はその資産ごとに設定された年数で減価償却します。減価償却費として経費にすることができ、節税が可能になります。
10万円以上の備品やOA機器は会社を運営していく上でも必要になります。会社設立時に現物出資して、そのまま使用すれば調達コストも削減できます。
資金(現金)がなくても発起人になれる
現金がなくても、現物出資をすることで発起人になることができます。手元に資金はないけど法人設立をしたい方も所有している資産で会社を設立することが可能です。
現物出資のデメリット
現物出資の主なデメリットは以下の2点です。
書類や定款の作成を含む手続きに手間がかかる
現物出資にすると、会社設立時に作成しなければならない書類が多くなるだけでなく、定款への記載項目が増えるため、手続きに手間がかかります。所有するのに登記が必要な資産はさらに手続きが必要となります。
資本金と比較して現金の割合が少なくなる
会社を設立してすぐは、運営費用や設備購入費用など収入よりも支出が多くなりやすいです。現物出資で会社を設立する場合は、実際に手元にある現金をきちんと把握して、正確な資金繰りの計画を立てる必要があります。
現物出資で気を付けるべきこと
現物出資を行う際は、出資された資産の見積もり額と実態の価値が大きく異なる場合には思わぬ出費に繋がる可能性があります。
また、現物出資をした出資者へ所得税が課される場合もあるため、現物出資を行う際には、これらの注意点を踏まえた上で手続きをすすめる必要があります。
現物出資に不足額が生じた場合は、不足額を支払う義務がある
注意点として、現物出資に不足額があった場合には発起人が責任をもって不足額を支払うルール(会社法52条)があります。「本当は100万円の価値しかない中古車を、わざと多く見積もって200万円として現物出資してしまった」という場合には、あとで会社側に対して100万円払わなくてはなりません。
”株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。”
出典:e-GOV法令検索「会社法 52条」
出資者が所得税の対象となる
出資者が現物出資により資産を手放すことは税法上では「売却」とされるため所得税の対象となります。
現物出資したのが不動産の場合、現物出資した出資額ではなく、出資の対価として受け取った株式や持分の時価が対象となります。ただし、受け取った株式や持分の時価が不動産の時価の2分の1に満たない場合は、不動産の時価が収入金額と見なされます。
現物出資の種類によって計算方法が変わるため、事前に国税庁のホームページや、管轄の税務署などで確認しましょう。
まとめ
現物出資を行えば創業時の資本金を増やすことができるため、会社の信用度を高め、ビジネスチャンスを広げる意味では大いに活用したい手段です。
ただし、会社にまとまった現金資産があるわけでは無いため、創業した後に思わぬ出費があった際に対応できないなどのデメリットもあります。
そのため、現物出資がある場合には、総資産額だけでなく、現金資産額や日々の現金の流れを把握する対策も合わせて行いましょう。
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よくある質問
現物出資とはなにか?
現物出資とは、会社の設立時や増資時に現金以外の資産を出資することをいいます。
詳しくは記事内「現物出資とは」で解説しています。
現物出資は具体的には何がある?
現物出資ができる資産には以下のものなどが挙げられます。
現物出資ができる資産
- 自動車、パソコン、商品、原材料などの動産
- 市場価値のある有価証券
- 土地、マンションなど不動産
- 営業権・商標権などの知的財産権など無形固定資産
詳しくは記事内「現物出資とは」で解説しています。
現物出荷のメリット・デメリットは?
現物出資のメリットおよびデメリットは以下のとおりです。
現物出資のメリット
- 現物出資のメリット
- 資本金を増やせる
- 節税対策が可能になる
- 資金(現金)がなくても発起人になれる
現物出資のデメリット
- 現物出資のデメリット
- 手続きに手間がかかる
- 資本金の額面よりも現金が少ない
詳しくは記事内「現物出資のメリットとデメリット」で解説しています。