会社設立の基礎知識

【資本金】いくら必要? 会社設立時の資本金額の決め方

最終更新日:2021/08/26

監修 司法書士事務所TOTAL

会社設立時の資本金額を決めるポイント

2006年に最低資本金制度が撤廃されて以来、資本金額には下限はなく、1円以上で会社を設立することができます。その一方で、資本金は会社の運転資金であり、会社の社会的信用度にも関わる重要な事項のひとつです。

この記事では、資本金についての基礎情報や資本金額を決める際に知っておくべきポイントを解説します。資本金額をすでに決定している方も払込方法などを確認しておきましょう。

目次

資本金とは?

資本金とは、会社設立あるいは増資によって出資者から払い込まれたお金を指し、創業当初においては、これが運転資金の基礎となります。

株式会社の場合、貸借対照表上で見ると、資本金は「資産の部」から借り入れなどの「負債の部」を除いた「純資産の部」の「株主資本」に含まれます。

負債とは異なり、誰にも返済する義務のない資金であることから、資本金の金額が大きければ大きいほど、会社に財務上の余力があるといえます。

出資者からの払込金が資本金となりますので、たとえば、株式会社設立時に1株500円で1万株発行し、すべて払い込みがなされた場合、資本金は500万円(=500円×1万株)となります。また、創業時と同時に第三者から出資を受けることは稀なため、創業者が用意した自己資金がそのまま資本金となるのが一般的です。

資本金の特徴

資本金に下限はない

以前は会社形態によって資本金の下限額が定められていましたが、2006年に会社法が改正され、会社を設立するときの資本金の最低金額に関する決まりが撤廃されました。そのため、現在は資本金が1円でも株式会社を設立することができます。

資本金の大きさが、会社の信用力に影響する可能性がある

資本金は「会社の体力」ともいわれ、会社の社会的信用度に関わる重要な指標の一つです。実務においては資本金の金額が多いほど、会社の信用力が得られやすい傾向にあります。

具体的には、会社が金融機関に取引口座の開設を行ったり、融資を申し込んだりするような状況が例として挙げられます。さらに、会社によっては取引先候補となる相手会社の資本金を定款等で確認し、一定の金額基準を決めて取引をするかどうか判断しているケースもあります。

運転資金などを考慮したうえで相応の金額を設立時の資本金として用意し、一定の信用力確保を目指しましょう。

会社に限定してすべてのことに利用することができる

資本金は、会社名義の物品購入や従業員への給与支払いなど、さまざまな用途で利用することができますが、個人の生活などには使用できません。

逆に、個人のお金を資本金にすることは可能ですが、その場合は金額をよく考えて決めましょう。

個人資産のすべてを会社の資本金に充てたために生活するお金がなくなり、会社からお金を借りるような状況になってしまうと、国や銀行から「会社と個人のお金を混同している」と判断され、信用度が低下する恐れがあります。

会社が資本金以上のお金を必要としたときに個人からお金を借りることはできるので、個人の生活資金は少し多めに手元に残しておくと安心です。

資本金額を決めるときのポイント

会社設立には登録免許税や定款の認証などの法定費用がかかるほか、事務所費用や備品代、事業によっては必要な設備投資や仕入代が発生します。これらをベースに運転資金を算出し、必要な資本金の金額を決めるのが一般的です。

ただ資本金の理想的な具体額は、ビジネスモデルや設備投資の有無によっても大きく左右されるため、一概には言えません。

たとえば、在庫を持つ必要がなく、大掛かりな機械設備も持たずに起業できる業種であれば、比較的少ない資本金で株式会社の運営を継続することも可能でしょう。一方、製造業などであれば、業務用器材や設備、倉庫・工場などの確保も必要となり、初期投資だけでも数百万円単位で資本金が必要なケースもあります。

上記を踏まえて、資本金額を決める際に気をつけておくポイントをまとめました。

3ヶ月から半年先までの運転資金を資本金として用意する

運転資金という面からみると、資本金は初期費用にプラスして、おおよそ3ヶ月間は一切売り上げがなくても事業を続けられる金額に設定することが一般的と言われています。仕入れや設備投資におおよそいくらかかるかなど、業界や業態に応じた見積もりが必要です。

取引先からの見え方を考慮して金額を決める

上述したとおり、資本金は会社の体力であり信用度にも関わるので、取引先などがある場合にはそれなりの金額が必要な場合があります。

たとえば、個人事業主との取引をしない企業では、実際には個人・法人を問わず、資本金額で取引先を選定している可能性があることを考慮しておきましょう。

上記のような事象が起こりやすいのは対企業で取引を行う、いわゆるBtoBビジネスです。対照的にBtoCビジネスなど、取引先が少なく、個人との取引が多い場合などは資本金が少なくても問題が起きづらいといえるでしょう。

消費税などの税金面を考慮する

詳しくは後述しますが、資本金が1,000万円以上か否かによって、設立1期目における消費税の免税を受けられるかどうかが左右されます。設立時に資本金が1,000万円以上の場合、初年度から消費税が課税されることになるだけでなく、決算時の法人住民税も高額になってしまいます。

許認可などで条件がないか注意する

取り組む事業内容によっては、資本金や純資産(資産ー負債)に一定の要件が設けられていることがあります。

たとえば、人材派遣業では「資本金や資本剰余金などの純資産の合計が2,000万円以上かつ1,500万円は現預金で有する」という要件がありますし、建設業でも「一般建設業で純資産が500万円、特定建設業で資本金2,000万円かつ純資産全体では4,000万円」という要件があります。

上記のようなケースでは、要件を満たした資本金を用意しなければなりません。

資本金額と税金の関係

会社の資本金を決定するにあたり、税金面での対策についても十分に考慮しておくことが重要です。

会社設立時関わる税金について詳しく知りたい方はこちら

消費税

まず、消費税では資本金が1,000万円以上の場合、初年度から課税事業者に認定され、消費税を納めなければなりません。

しかし、資本金が1,000万未満の場合、設立1期目は消費税が免除されます。また、2期目も特定期間(原則前年度の期首から6か月の期間)の課税売上高が1,000万円以下または特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合、消費税が免除されます。


法人の消費税免税期間

法人税

資本金が1億円以下であれば「中小企業」とみなされ、法人税率の一部軽減も認められるため、有利にビジネスを継続することが可能です。令和2年4月時点では、資本金1億円以下・年間所得800万円以下の企業にかかる法人税率は15%です。

参考:国税庁「No.5759 法人税の税率

地方税

都道府県および市町村へ支払う地方税に関して、資本金等が少ない会社は軽減措置の適用を受けられます。

例として、事業利益の有無に関係なく負担する義務を負う法人市町村民税の「均等割」については、資本金等の金額が1,000万円以下の会社は最低限の税負担で済みます。さらに、資本金等の金額が1,000万円超1億円以下の場合をはじめ、段階的に一定の軽減税率が適用されます。

参考:東京都主税局「均等割額の計算に関する明細書

登録免許税

会社設立の登記を行う際に必要な登録免許税は、資本金額によって納める金額が以下のように決定します。

株式会社の場合

  • 150,000円または資本金額×0.7%のどちらか高いほう

およそ2,140万円以下であれば登録免許税は一律150,000円

合同会社の場合

  • 60,000円または資本金額×0.7%のどちらか高いほう

およそ857万円以下であれば登録免許税は一律60,000円

会社設立時の費用を削減したい方は、登録免許税も考慮しておきましょう。

税負担を軽減したい場合は資本準備金でバランスを取る

株主から払い込まれたお金は、その金額の2分の1以下までを資本金とせず、資本準備金として別に分けることも可能です(会社法 第445条第2項)。

運転資金などの観点から自己資金は多めに用意しつつも、税負担の観点から資本金を1,000万円以下にとどめたい場合、資本準備金への振り分けも念頭に置くとよいでしょう。

会社設立時の資本金の払込み方法

資本金額が決定したら払込をします。実際に踏む手順は大きく分けて以下の3ステップです。

1. 発起人の銀行口座を用意する

会社設立時はまだ法人口座がないため、個人の銀行口座を用意します。新しく用意する必要はなく、普段利用している銀行口座でも問題ありませんし、発起人が複数人いる場合は発起人総代の銀行口座でもかまいません。

2. 通帳のコピーを作成する

振込の際に注意すべきなのが、通帳のコピーを用意しなくてはいけない点です。通帳のなかでコピーすべきなのは、表紙の裏表(銀行名と支店名、銀行印が判別できる場所)と振込内容が記載されたページになります。

インターネットバンキングなどを通じて資本金を振り込む場合は、通帳に記載される内容(振込日・口座名義人・口座番号・取引銀行情報・振込金額・振込人名義)が記載されたページを印刷しましょう。

3. 払込証明書を作成する

払込証明書とは、発起人から会社に対する払込がなされたことを証明する書類です。払込証明書に記載する項目は以下の通りです。

  • 払込の総額
  • 払込があった株式数
  • 1株あたりの払込金額
  • 払込があった日付
  • 会社の所在地
  • 会社名
  • 代表取締役の名前

払込総額と株式数に関しては定款に記載した内容と同じもの、1株あたりの払込額は総額を株式数で割ったものを利用します。

また、払込証明書の左上と代表取締役の名前の右横には会社の代表印を押印する必要があります。

こんなときどうする? よくある質問と回答

Q.手元に現金がない場合はどうしたらいい?

会社設立の際、現金以外のものでも出資することができます。これを「現物出資」と呼び、現物出資によって資本金額を増やすことも可能です。

現物出資の対象として主に以下のような資産が挙げられます。

  • 車(ローン支払い中のものは不可)
  • パソコンやOA機器などの機械類
  • 有価証券(上場株式や非上場株式、債権など)
  • ゴルフ会員権やリゾート会員権
  • 不動産(土地や建物) など

現物出資の総額が500万円以上となる場合、裁判所に検査役を申し立てることになっています。ほかにも必要な手続きがありますので、確認しておきましょう。

現物出資について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】
資産の現物出資を利用して会社設立する方法を解説!対象資産・メリットや注意点も

Q.資本金が入金されたときの仕訳はどうしたらいい?

上述したように、会社設立時はまだ法人口座がない状態なので、資本金の払込は発起人の個人口座にするのが一般的です。

発起人名義の口座に預け入れたときは「預け金」で処理します。そのほか、「現金」や「仮払金」などで代用しても問題ないでしょう。

例:発起人名義の口座に資本金3,000,000円を預け入れた

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
預け金 3,000,000円 資本金 3,000,000円 資本金の払込

ここから会社設立時に必要となる費用「創立費」は預入金から処理をします。

例:設立費500,000円を、発起人名義の口座にある資本金から支払った

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
創立費 500,000円 預け金 500,000円 創立費の支払い

法人口座が開設されたら資本金の残高をそちらに移しましょう。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 2,500,000円 預け金 2,500,000円 普通預金に預け入れ

Q.資本金は増額できる?

もし、仮に資本金1円で会社を設立後、金融機関や取引先から資本金が低いことを理由に取引を断られた場合、資本金を増やす「増資」の実施も可能です。

ただし、増資に関する法的手続きにはそれなりの費用が伴いますので、慎重な判断が求められます。実際、増資をするためには登録免許税(最低3万円で、増加資本の1,000分の7)のほか、司法書士など専門家への諸手続きに関する報酬がかかります。

Q.ネット銀行しか口座を持っていないが問題ない?

ネット銀行で資本金の払込も可能ですが、ネット銀行には通帳がないため、払込履歴を証明するために必要な項目をネット上の取引画面から探して印刷しなければなりません。

ネット銀行の取引画面では、こうした口座情報が一括して表示されるページがないのが一般的のため、必要な情報が表示されている画面を同じ口座の情報と分かるように何回かに分けて印刷するため、手間がかかります。

ほかにも1日の振込上限額が決まっていることが多いため、資本金の払込は各銀行の窓口で行うことをおすすめします。

初期費用や創業後の事業運営費を考慮して資本金額を決めよう

最低資本金制度が撤廃されても、会社設立後の資金繰りや初期投資を考慮すれば資本金にはある程度の余裕が必要です。創業後数カ月間が収入がなくとも、自分の活動費となる役員報酬を捻出できなかったり、資金繰り面で苦しくなったりしないように金額を決めましょう。

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