会社設立の基礎知識

個人事業主が法人化するメリット・デメリットについて解説

最終更新日:2023/09/27

個人事業主が法人化するメリット・デメリットについて解説

個人事業主として事業規模の拡大を考えたり、税負担の増加に悩むとき、選択肢に挙がるのが事業の法人化です。

個人事業主と法人では税制面などで異なる点が多くあり、これらを理解することでさまざまなメリットを得られる可能性があります。本記事では、個人事業主が法人化することで生じるメリット・デメリット、法人化をする最適なタイミングについて具体的にご紹介していきます。

目次

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個人事業主と法人の違いとは?

個人事業主と法人の大きな違いは、個人事業主には「所得税」、法人には「法人税」と、課される税負担の種類が異なることです。開業届の提出のみで事業を開始できる個人事業主とは異なり、法人の設立には登記が必要となり、手続きのためにお金を支払うことになります。

ですが、経費として計上できる範囲や保険の負担など異なる点も多く、法人化することによるメリットも多数あります。法人化することのメリット・デメリットを見極め、適切なタイミングで法人化(法人成り)することが大切です。

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法人化するメリット

個人事業主が法人化するメリットはさまざまにありますが、ここでは代表的なメリットを5つ紹介します。節税以外にも多くのメリットがあるため、法人化のメリットを最大限活用しましょう。

社会的な信用度が高まる

個人事業を法人化して得られるメリットのひとつに、事業における社会的な信用が高まることが挙げられます。これはビジネスを行っていくうえで欠かせない要素です。

法人登記には費用と労力が必要なので、発注元など取引先から本気で事業に取り組んでいると判断されやすくなります。取引先を法人に限定している企業もあり、法人化することで受注先が増え、事業の幅が広がることも考えられます。

登記の内容は誰でも閲覧可能ですから「誰が責任者でどのような事業を行っているか」が一目瞭然です。このような理由から、法人として経営体制を整えることで社会的な信用度が上がると期待できます。

また、免許の取得や入札が法人に限られる場合もあります。法人化に伴い事業が拡大しやすくなれば、金融機関の融資を受けやすくなることも想定できます。

さらに、法人化によって優秀な人を集めやすくなるという側面にも期待できます。これは求職者が個人事業よりも法人のほうに信用度が高いと感じている場合が多く、優秀な人材の多くが法人を選ぶためです。

個人事業の場合は、事業主本人の信用がすべてといっても過言ではありません。一方、法人では、事業主の死亡など個人に由来する廃業もなくなりますから、外部からの安心感を得ることにもつながるでしょう。

節税ができる可能性がある

法人化することによって節税につながる可能性のある主なポイントは4つあります。

所得税と法人税の税率の違い

1つ目は所得税と法人税の税率の違いです。前述のとおり個人事業主には所得税、法人には法人税が課されます。所得税は累進課税制度が適用されているので、所得が増えれば増えるほど負担税率が上がります。

事業所得に対する最高税率は45%です。一方、比例課税方式が採用されている法人税の税率は15%〜20%前半となっており、所得金額によっては税負担が減少します。

給与や退職金の扱いの違い

2つ目は、給与や退職金の扱いの違いです。法人化することで、事業主本人の報酬に対する給与所得控除分や家族従業員、また事業主本人への退職金分について所得を減らすことができるようになります。

保険料の違い

3つ目は保険料です。個人事業の場合は原則として生命保険料などを必要経費とすることはできず、所得控除の生命保険料控除を活用して少額の節税が許されているのみとなります。

しかし、法人化して法人契約で掛け捨て保険などに加入すれば、基本的には保険料の分だけ法人所得を減らすことが可能です。

欠損金(赤字)の繰越の違い

4つ目は欠損金(赤字)の繰越です。個人事業の場合、赤字は3年しか繰り越せません。一方で、法人の場合は欠損金が生じた翌年度以降10年に及び欠損金を繰り越すことができます。

(平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年)

社会保険へ加入できる

法人化すると社会保険の加入が義務付けられ、法人の支払い負担が発生します。社会保険の支払額は、国民健康保険に比べて高くなりますが、老後に受け取れる年金額は高くなります。

支出が増える社会保険への加入は、法人側からすれば一見デメリットとも感じられますが、従業員側からすれば社会保険に加入するメリットが大きく、優秀な人材の確保、さらには事業拡大の観点からもメリットであると言えます。

決算期を変更できる

個人事業主の事業年度は1月1日〜12月31日と決められており、変更することはできません。一方、法人の場合は事業年度を自由に決められるので、繁忙期を避けて決算期を設定することが可能です。

書類作成や手続きに時間を使いやすい時期に決算期を設定し、通常業務への支障を軽減することは仕事環境を整えるという意味でも大きなメリットとなるでしょう。

事業が継続しやすくなる

前述のとおり、個人事業では、事業主が死亡すると相続人が事業承継しなければ事業は廃業となります。これは、取引先側から見れば、個人事業主と取引をするリスクともなり得るということです。

法人化することで、オーナーとなる社長の死亡が事業の存続に直接的な影響を与えることがなくなるのもメリットのひとつです。

また、個人事業の相続よりも法人の株式を相続する方が、支配権の維持や遺産分割対策がしやすいというメリットもあります。個人事業の場合は、相続手続きが遅れると事業用の口座が凍結されることもありますが、法人の場合はそういったリスクもありません。

法人化するデメリット

次に法人化のデメリットを解説します。事業内容、事業フェイズなどと照らし合わせ、メリット・デメリットのバランスを確認してみてください。

法人化にあたり費用がかかる

会社設立のためには、登録免許税が15万円から、定款認証手数料が3万円から、専門家に手続きを委託する場合には5万円程度の報酬、資本金といった費用が掛かります。

資本金1円でも会社設立は可能ですが、取引先や金融機関からの信用を考慮すると現実的ではないと考える方が無難でしょう。

また、設立にあたって環境を整える費用や運転資金も必要ですから、それなりにまとまった金額を用意しなければなりません。

社会保険の加入によるコストがかかる

法人化すると、従業員が1名でも社会保険への加入が義務付けられています。従業員が1名には代表者本人も該当すると解釈されていますから、社長ひとりだけの会社であっても社会保険に加入する義務は変わりません。

また、健康保険や厚生年金といった社会保険料は、会社と従業員の折半と決められており、従業員が多くなれば多くなるほど会社のコストは増加します。

しかし、このコストは、前述の人材確保や社会的信用などのメリットとのトレードオフです。収入額や事業拡大のタイミングなど、多角的な視点で判断する必要があるでしょう。

事務作業の量が増加する

法人化により、法人税申告書(年間の利益に対して支払う法人税を計算するための書類)や決算書(企業の年間収益と費用をまとめた書類)などが義務付けられるため、事務作業が増加します。

全て自身で行うと負担が大きく、税理士など専門家に委託すれば当然ながら費用が掛かります。コストカットのために事務作業に時間と体力を費やせば、本業がおろそかになってしまう可能性があるので、コスト、時間、工数などバランスをしっかりと掴んでおきましょう。

法人化の適切なタイミングは?

ここまで法人化のメリット・デメリットを見てきました。個人事業主から法人へをうまく移行するには、利益や売上、前述のメリット・デメリットのバランスを踏まえて検討する必要があります。

法人化のメリットを最大限活用するには、以下の3つのタイミングを目安にするとよいでしょう。

法人化のメリットを最大限活用する3つのタイミング

  • 年間所得が700〜800万円を超えたとき
  • 年間売上が1000万円を超えたとき
  • 資金調達が必要なとき

ここでは、それぞれのタイミングを目安とする理由について記していきます。法人化の適切なタイミングを確認していきましょう。

年間所得が700〜800万円の場合

個人事業主で年間所得が700〜800万円の場合、所得税率は23%です。法人であれば15%(資本金1億円以下と想定)となり、法人の方が税率が低くなります。

これは、個人事業主に課される所得税に累進課税制度が適用されているためです。累進課税制度では、所得が上がれば上がるほど税率が高くなります。一方、比例課税制度を採用する法人税は、一部の例外を除いて所得の金額にかかわらず一律の税率が適用されます。

年間所得が700万円を超えるあたりで、個人事業でいるよりも法人化した方が税金の負担を抑えられるので、法人化を検討するタイミングのひとつとして覚えておくとよいでしょう。

売上が1000万円を超える場合

年間売上が1000万年を越えると、消費税の納税義務が発生します。消費税は2年前の売上が基準となり、1000万円を超えると発生します。すなわち、個人事業主としての売上が1000万円を超えた2年後から消費税の納税義務が発生するということです。

このタイミングで法人成りした場合、法人化した年が開業1年目とカウントされ、2年前の売上高が存在しないことになります。

これを利用し、売上が1000万円を超えたタイミングで法人化すれば、2年後から発生する消費税の納税義務を回避し節税につながります。

ただし資本金1,000万円未満かつ、以下の条件を満たしての法人化に限ります。

法人設立1年目:

  • 資本金が1,000万円未満であること

法人設立2年目:

  • 資本金が1,000万円未満であること
  • 以下の1.2のいずれかの条件を満たしていること
    (1)事業開始後1期目の前半6ヶ月における課税売上高が1,000万円以下であること
    (2)事業開始後1期目の前半6ヶ月における給与等の支払総額が1,000万円以下であること

資金調達が必要な場合

事業を拡大し規模を大きくするために外部からの資金調達を検討する場合も、法人化の絶好のタイミングです。

売上額や継続年数に関わらず、個人事業主は法人と比べて社会的信用を低く見積もられがちなので、金融機関からの借入や外部からの出資といった資金調達の面で不利となるシーンが多くなります。

また、法人化することで、法人のみが活用できる補助金や助成金を利用することも可能です。個人事業では事業の規模にも限界があるので、事業拡大を目指す場合は法人化をおすすめします。

【関連記事】
法人成りに適したタイミングとは?利益額と売上高がポイント

まとめ

個人事業主が法人化を検討するときに大切なのは、どんなメリットがあるかを十分に理解することです。メリットだけでなくデメリットも理解し、デメリットを上回る効果を感じられるかを検証しましょう。

特に節税に関するメリットは、事業規模や経費の状況によってはイメージするほどの効果が得られない可能性もあるので注意が必要です。所得税、法人税それぞれの税負担をシミュレーションして判断することをおすすめします。

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よくある質問

法人化のメリットは?

個人事業主が法人化するメリットは様々にありますが、「社会的な信用度が高まる」「節税ができる可能性がある」「社会保険へ加入できる」「決算期を変更できる」「事業が継続しやすくなる」などが挙げられます。特に、節税と事業拡大に有利に働くと捉えるとメリットを感じやすいでしょう。

具体的な内容は、本記事内「法人化するメリット」をご覧ください。

法人化するデメリットは?

「費用がかかる」「社会保険の加入によるコストがかかる」「事務作業の量が増加する」などのデメリットが考えられますが、事業拡大や社会的信用を得ることとのトレードオフとなる場合がほとんどです。手間や費用を掛けることで社会的信用を得るために法人化すると考えて、バランスを見極めましょう。

詳細は、本記事内「法人化するデメリット」をご覧ください。

法人化するベストなタイミングは?

一般的に「個人事業主として年間所得が700〜800万円を超える頃」「売上が1000万円を超える頃」に法人化するのがベストなタイミングとされています。これは所得税と法人税の税率を鑑みてのことです。加えて「資金調達が必要な場合」にも、法人化を検討するとよいでしょう。

詳細は、本記事内「法人化の適切なタイミングは?」をご参考ください。

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