会社設立の基礎知識

役員報酬の決め方とは?従業員の給与との違いや相場・注意点などを徹底解説!

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

役員報酬の決め方とは?従業員の給与との違いや相場・注意点などを徹底解説!

役員報酬は、定款または株主総会の決議によって決定されます。ただし、税務上は一定の条件を満たさないと損金算入ができません。

損金算入できる役員報酬は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかです。これらを適切に設定することで、会社の法人税や個人の所得税の負担軽減につながる場合があります。

役員報酬は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に決める必要があります。また、期中の変更には制限があり、変更する場合は税務上の要件を満たさなければなりません。

本記事では、役員報酬の決め方として守るべき4つのルールや、従業員の給与との違い、注意点を紹介します。


【関連記事】
役員報酬とは?会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説

目次

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損金算入できる役員報酬の種類

役員報酬とは、取締役・監査役・執行役などの会社役員に対して支払われる報酬のことです。

役員報酬は、支給方法や一定の要件を満たすかどうかによって、法人税の計算上「損金」として認められる場合があります。なお、損金とは、法人税を計算する際に所得額から差し引ける費用や損失のことです。

損金算入できる役員報酬は以下の3種類で、所得額から差し引くことで法人の税負担の軽減につながります。

損金算入できる役員報酬の種類

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

役員報酬は、会社法第361条の規定により、定款または株主総会の決議によって定められます。中小企業では役員報酬に関して定款で定めていないことが多く、株主総会の決議によって決定されることが一般的です。

また、役員報酬の金額を決める際は、株主総会の決議や税務上の損金算入要件を踏まえる必要があります。適切な報酬額を設定しないと、役員個人や法人の税負担が増えたり、資金繰りに影響したりするリスクが生じます。

たとえば、役員報酬を高く設定しすぎると、役員個人の所得税・住民税の負担が大きくなり、社会保険料も上がります。また、高額な役員報酬が資金繰りを圧迫する原因になる可能性もあるでしょう。一方、役員報酬が低すぎると、損金算入額が減ることで法人の利益が増え、法人税の負担が増えます。

このようなリスクを抑えるためには、役員個人の所得税・住民税や社会保険料への影響、会社の手元資金などを踏まえた最適な報酬額の検討が必要です。

以下では、損金算入が可能な役員報酬である定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の特徴を解説します。


出典:e-Gov法令検索「会社法|第三百六十一条」

定期同額給与

定期同額給与とは、役員に対して定期的に支払われ、支給額が毎回同額である役員報酬のことです。「定期的」とは「1ヶ月以下の一定期間ごと」を指します。

この役員報酬を損金算入するには、支給時期・支給額・報酬額の決定時期に関する要件を満たす必要があります。新設法人の場合は「会社設立後3ヶ月以内」に支給額を決定し、定款または株主総会の決議で決定しなければなりません。

また、役員報酬額は事業年度ごとに見直せますが、通常の金額改定は原則として事業年度開始から3ヶ月以内に行う必要があります。なお、臨時改定事由や業績悪化改定事由に該当する場合は、期中の改定が認められることもあります。

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、あらかじめ税務署に届け出たうえで、決められた時期と金額で支払う役員報酬のことです。定期同額給与のように毎月一定額を支給するのではなく、たとえば「年2回の支給」「特定の月にまとめて支給」などの形で支給することが可能です。

事前確定届出給与を損金算入するには、支給額・支給日を事前に決定し、税務署へ期限内に届け出る必要があります。届け出の期限は、以下のとおりです。

事前確定届出給与の届け出期限

<既存法人の場合>
①と②のいずれか早い日まで
①株主総会等で報酬額を決議した日(または職務執行開始日)から1ヶ月を経過する日
②会計期間(事業年度)開始日から4ヶ月を経過する日


<新設法人の場合>
設立日から2ヶ月以内まで

業績連動給与

業績連動給与とは、会社の利益や株価などの業績指標に基づいて金額が決まる役員報酬のことです。一定の要件を満たす場合、業務を執行する役員に支給する業績連動給与は、損金算入が認められます。

対象となるのは、主に同族会社以外の法人です。また、非同族会社の完全子会社である同族会社も対象に含まれます。

ここでいう同族会社とは、上位3グループの株主とその関係者が、発行済株式や議決権の50%超を保有している会社を指します。

役員報酬と従業員の給与は異なる

役員報酬の定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与には、それぞれ「給与」という言葉が含まれています。ただし、役員報酬と従業員の給与は、決定方法・変更ルール・税務上の取り扱いが大きく異なります。

たとえば、従業員の給与は就業規則や労働契約に基づいて比較的柔軟な変更が可能です。一方、役員報酬を変更する場合は、原則として株主総会や取締役会の決議が必要となります。また、従業員の給与は原則として損金に算入できる一方で、役員報酬は要件を満たさなければ損金に算入できません。

下表は、役員報酬と従業員の給与の主な相違点です。


項目役員報酬従業員の給与
支給対象取締役・監査役・執行役などの役員一般社員・契約社員・アルバイトなど
決定方法株主総会や取締役会の決議などが必要労働契約・就業規則・賃金規程に基づく
支給額の変更原則として期首から3ヶ月以内に改定(臨時改定事由などを除く)就業規則や人事評価に基づき、一定の範囲内で変更可能
損金算入条件「定期同額給与」などの税務要件を満たす場合に損金算入可能原則として損金算入可能

役員報酬の決定・変更時に守るべき4つのルール

役員報酬を決定・変更する際の流れや期間は、明確にルール化されています。守るべきルールは、主に以下の4つです。

①役員報酬は会社設立後3ヶ月以内に決定する

新設法人の場合、役員報酬は原則として会社設立後3ヶ月以内の決定が必要です。会社設立後3ヶ月以内に決定し、定期同額給与などの要件を満たした役員報酬は、損金算入が認められます。

4ヶ月目以降に役員報酬を決定した場合は、定期同額給与としての要件を満たさず、原則として損金算入が認められません。

②役員報酬の金額は毎月同額(定期同額)にする

役員報酬を定期同額給与として損金算入するには、原則として1ヶ月以下の間隔で、毎回同じ金額を支給する必要があります。ただし、役員報酬のうち「事前確定届出給与」については、毎月支給ではなく、あらかじめ決めた時期に定めた金額を支給します。

決定した役員報酬額に応じて、役員個人の社会保険料・所得税・住民税、および会社に課される法人税などの額が変わるため、税負担や資金繰りを考慮し、慎重に設定することが重要です。

③役員報酬額の変更可能期間は期首から3ヶ月以内

役員報酬の通常改定は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に行う必要があります。新設法人の場合は、会社設立後3ヶ月以内に役員報酬を決定します。これは、役員報酬をいつでも変更可能にしてしまうと、業績に応じて法人の利益や税額を操作できてしまうためです。

以下に具体的な事例を2つ示します。

事業年度開始から4ヶ月後に、例外事由がないまま月額の役員報酬額を30万円から40万円に増額し、残りの8ヶ月分の役員報酬を支払った。


100,000円(差額分)× 8ヶ月(支払った月)= 800,000円

この増額分80万円は損金算入できず、その分だけ法人の課税所得が増加します。

事業年度開始から4ヶ月後に、例外事由がないまま月額の役員報酬額を30万円から25万円に減額し、残りの8ヶ月分の役員報酬を支払った。

この場合、25万円が定期同額給与になるため、事業年度開始から4ヶ月間払われた30万円のうち、5万円が損金不算入となります。

50,000円(差額分)× 4ヶ月(支払った月)= 200,000円

このように、事業年度途中で例外事由なく役員報酬を変更すると、定期同額給与の要件を満たさず、損金算入が認められない可能性があります。

ただし、以下のように、期首から3ヶ月を超えた後も役員報酬を増額・減額できる例外があります。


例外的に増額できる場合例外的に減額できる場合
・職責変更によって役員の昇格があった

※増額により全体の役員報酬額が株主総会で決議された上限額を超える場合は、新たに株主総会の決議を行う必要がある
・役員の降格があった
・役員が懲戒処分を受けた
・病気・怪我などで業務を遂行できない状態に陥った
・会社の経営状況が著しく悪化した

上記の事由に該当しないまま役員報酬を増額・減額した場合は、定期同額給与の要件を満たさず、損金算入が認められない可能性があります。そのため、期首から3ヶ月経過後に報酬額の変更が生じないよう、事業年度の損益を予測したうえで適切な役員報酬額を決定しましょう。

④役員に賞与を支給する場合は事前の届出が必要

役員にも賞与を支給することは認められていますが、損金算入するには、事前確定届出給与に関する届出書を税務署へ提出する必要があります。届出書の提出期限は、原則として以下のうちいずれか早い日です。

事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

  • 会社設立の日から2ヶ月を経過する日
  • 事業年度開始または株主総会・取締役会決議の日から4ヶ月を経過する日
  • 役員賞与に関して決議した株主総会等の日から1ヶ月を経過する日

出典:国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」

役員賞与は事前確定届出給与として扱われるため、届け出た支給額や支給日と異なる内容で支給した場合は、原則として損金算入できません。また、届け出た役員賞与を支給しなかった場合は、事前確定届出給与としての要件を満たさず、税務上の取り扱いに影響する可能性があります。

これらのリスクも考慮したうえで、役員賞与は届け出た支給日・支給額どおりに支払えるよう、事前に資金計画を立てましょう。

役員報酬額を決める手順

株式会社の場合、役員報酬額は以下の流れに沿って決められます。

なお、上記は株式会社のケースであり、合同会社では「定款」や「総社員の同意」によって役員報酬額を決めるのが一般的です。以下では、株式会社の役員報酬を決める実務上の手順を紹介します。

①株主総会で役員報酬の総額を決める

役員報酬は、原則として株主総会の決議によって決められます。株主総会では役員報酬の総額のみ決定する場合が多く、各役員への配分は取締役会や代表取締役へ一任するケースが一般的です。

合同会社の場合、役員報酬は定款で定めるか、総社員の同意(定款に別段の定めがある場合を除く)によって決定します。一度定款で定めると、報酬額を変更する際は定款自体を変更しなければなりません。


【関連記事】
合同会社の役員報酬とは?決め方・相場・注意点を解説

②取締役会で各役員の報酬額を決める

株主総会で役員報酬の総額を決めた後は、取締役会で各役員に支給する役員報酬の具体的な金額を決めます。取締役会を設置していない会社では、株主総会で決議した報酬総額の範囲内で、取締役の過半数の同意によって各役員の報酬額を決定します。

また、取締役会を開かず、株主総会のみで役員報酬の総額・各役員の報酬額を両方決めることも可能です。ただし、株主総会のみで報酬額の決定まで行う場合は、報酬額を変更するたびに株主総会の開催が必要となり運用が煩雑になります。そのため、一般的には取締役会で個別の報酬額を決めます。

なお、株主総会・取締役会の内容は税務調査でチェックされる場合があるため、必ず議事録を作成・保存しましょう。

役員報酬額を決めるポイントと注意点

役員報酬の決定は、会社経営において重要なポイントです。法人税・所得税・社会保険料・会社の手元資金などを考慮したうえで、適切な役員報酬を設計しましょう。

損益と手元資金を予測する

新設法人の場合は会社設立後3ヶ月以内、既存法人の場合は事業年度開始から3ヶ月以内に、その事業年度の役員報酬額を決定する必要があります。

通常の役員報酬改定は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に行います。なお、臨時改定事由や業績悪化改定事由に該当する場合は、期中改定が認められることもあります。ただし、役員報酬額は原則として期中に変更しにくいため、事前に会社の損益や手元資金を予測したうえで検討することが重要です。

たとえば、会社の損益や手元資金を考慮せずに高額な役員報酬を設定すると、資金繰りを圧迫する可能性があります。また、役員報酬が高額だと、役員個人の所得税・住民税や社会保険料の負担が大きくなる場合もあるでしょう。


役員報酬の決め方

役員報酬額は法人税への影響だけで決めるのではなく、法人と個人の税負担・社会保険料・会社の手元資金などを総合的に考慮して決める必要があります。事業計画の段階から、利益率や必要経費の見通しを立て、無理のない役員報酬額を設定しましょう。

役員報酬額の相場を理解する

役員報酬額が同業他社と比較して不相当に高すぎると税務署に判断されると、その超過分について損金算入が認められない可能性があります。

以下は、国税庁による資本金別の平均役員報酬額の年間データです。平均額を参考に、相場を把握し、適正な役員報酬額を決めましょう。


資本金年間役員報酬額
2,000万円未満約665万円
2,000万円以上約906万6,000円
5,000万円以上約1,196万9,000円
1億円以上約1,425万1,000円
10億円以上約1,665万7,000円
出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

なお、上記の相場はあくまで目安です。適切な役員報酬額は、業種や企業規模、利益見込みなどによって異なります。どの程度の金額にするべきか判断できない場合は、税理士などに相談しましょう。



親族に支払った役員報酬は税務調査で指摘を受けやすい

役員報酬は「この金額が適切」と明確に決められているわけではありません。そのため、親族に支払う役員報酬額が、経営者の意向で高めに設定されてしまう場合があります。

ただし、同業他社の水準や職務内容に比べて不相当に高額であると税務上判断された場合、その超過部分は損金算入が認められず、税務調査で指摘を受ける可能性があります。

法人税法では、役員に対して支給する給与のうち不相当に高額な部分の金額は、損金算入できません。また、不相当に高額であるかどうかは、以下の項目を踏まえて総合的に判断されます。

不相当に高額であるかどうかを判断する際に考慮される要素

  • 職務内容
  • 法人の収益状況
  • ほかの役員にどの程度の給与が支払われているか
  • 同規模の同業他社で、どの程度の給与が役員に支払われているか

出典:e-Gov法令検索「法人税法(昭和四十年法律第三十四号)」
出典:e-Gov法令検索「法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)」

毎月同額の役員報酬を支払っていても、親族役員に実際の業務実態や職務内容が伴っていない場合は、不相当に高額な役員報酬と判断される可能性があります。親族に役員報酬を支払う場合は、職務内容や報酬水準の妥当性を説明できるようにしておきましょう。

まとめ

役員報酬は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の要件を満たすことで損金算入することが可能です。法人税や役員個人の所得税・社会保険料を踏まえて適切な報酬額を設定することで、税負担の調整につながる場合があります。

ただし、役員報酬は会社設立または事業年度開始から3ヶ月以内に決める必要があり、3ヶ月経過後に変更する場合は税務上の要件を満たす必要があります。

また、親族に役員報酬を支払う場合は、職務内容や報酬額の妥当性を十分に検討しましょう。親族役員に実際の業務実態や職務内容が伴っていない場合は、不相当に高額な役員報酬と判断される可能性があります。適切な役員報酬額の設定に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に相談しましょう。

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役員報酬は誰が決める?

役員報酬は、一般的に定款または株主総会の決議によって年間の役員報酬の総額が決定されます。各役員の個別報酬額は、株主総会の決議後に、取締役会や代表取締役へ一任して決定されるケースが一般的です。

詳しくは、記事内「役員報酬額を決める手順」をご覧ください。

役員報酬の妥当な金額は?

役員報酬の水準は、業種や企業規模、資本金額などによって異なります。年間500万円程度の場合もあれば、2,000万円を超える場合もあります。

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詳しくは、記事内「役員報酬額の相場を理解する」をご覧ください。

役員報酬が高すぎるとどうなる?

高すぎる役員報酬を設定すると、役員個人の所得税・住民税の負担が大きくなり、社会保険料も上がります。また、役員報酬が同業他社と比べて不相当に高額であると税務上判断された場合、その超過部分は損金算入が認められない可能性があります。

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参考文献

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

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