人事労務の基礎知識

労災保険とは?加入条件と労災保険料の計算方法を解説

最終更新日:2021/03/30

労働者が加入する労災保険。労災保険とは、労働者が労災にあたる業務上のけがや就業による病気などになった場合に、労働者の生活を保障する社会保険制度のひとつです。

この記事では、労災保険の加入条件や加入手続きの方法、労災保険料の計算方法、労災保険料率などについて説明します。

[監修:山本 務(特定社会保険労務士)]

労災保険とは?加入条件と労災保険料の計算方法を解説

目次

労働保険の手続きや保険料の計算がラクに

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労災保険とは

人を雇うときには、「労働保険」に加入する必要があります。労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の総称です。「労災保険」は正式には「労働者災害補償保険」といいます。労災とは就業中や通勤途中など、業務上の事故や災害によるけが、仕事が原因の病気などを指し、労災保険はこのような場合の補償する保険です。

労災保険の補償範囲は、病気で欠勤した場合の休業補償、体に障害が残った場合の障害補償、死亡した場合の遺族補償などが含まれます。また、被保険者の社会復帰や遺族への援助にも労災保険が適用されます。

労災保険給付金の一覧

保険給付の種類 こういうときは 保険給付の内容 特別支給金の内容
療養(補償)給付
注 1
業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災指定医療機関等で療養を受けるとき) 必要な療養の給付※
業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災指 定医療機関等以外で療養を受けるとき) 必要な療養の費用の支給※
休業(補償)給付 業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働することができず賃金を受けられないとき 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当 休業特別支給金)
休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額







障害(補償)年金 業務災害または通勤災害による傷病が治癒(症状固定)した後に障害等級 第1級から第 7級までに該当する障害が残ったとき 障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から131日分の年金
第1級313日分 第6級156日分
第2級277日分 第7級131日分
第3級245日分 第4級213日分
第5級184日分
(障害特別支給金)
障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金

(障害特別年金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金
障害(補償) 一時金 業務災害または通勤災害による傷病が治癒(症状固定)した後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったとき 障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56 日分の一時金
第8級503日分 第13級101日分
第9級391日分 第14級56日分
第10級302日分 第11級223日分
第12級156日分
(障害特別支給金)
障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金

(障害特別一時金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額に503日分から56日分の一時金







遺族(補償)年金 業務災害または通勤災害により死亡し たとき 遺族の数等に応じ、給付基礎日額
245日分から153日分の年金
1人153日分
2人201日分
3人223日分
4人以上245日分
(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず一律300万円

(遺族特別年金)
遺族の数等に応じ、算定基礎日額の
245日分から153日分の年金
遺族(補償)一時金 (1)遺族(補償)年金を受け得る遺族がないとき
(2)遺族(補償)年金を受けている人が失権し、かつ、他に遺族(補償)年金を受け得る人がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき
給付基礎日額の1000日分の一時金
((2)の場合は、すでに支給した年金の合計額を差し引いた額)
(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず一律300万円
((1)の場合のみ)
(遺族特別一時金)
算定基礎日額の1000日分の一時金((2)の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額)
葬祭料
葬祭給付
業務災害または通勤災害により死亡した人の葬祭を行うとき 315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付金60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)
傷病(補償)年金 業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日または同日後において次の各号のいずれにも該当するとき

(1)傷病が治癒(症状固定していないこと)
(2)傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること
障害程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分の年金

第1級313日分
第2級277日分
第3級245日分
(傷病特別支給金)
障害の程度により114万円から100万円までの一時金
(障害特別年金)
障害の程度により算定基礎日額の313日分から245日分の年金
介護(補償)給付 障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者または第2級の精神・神経の障害および胸腹部臓器の障害の者であって、現に介護を受けているとき
注3
常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、165,150円[166,950円]]を上限とする)。
親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合、または支出した額が70,790円[72,990円]を下回る場合は70,790円[72,990円]。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、82,580円[83,480円]]を上限とする)。
親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合または支出した額が35,400円[36,500円]を下回る場合は35,400円[36,500円]。
労災保険二次健康診断等給付
※船員法の適用を受ける船員については対象外
事業主が行なった直近の定期検診等(一次健康診断)において、次の(1)(2)のいずれにも該当するとき
(1)血圧検査、血中脂質検査、血糖検査、腹囲またはBMI(肥満度)の測定のすべての検査において以上の所見があると判断されていること
(2)脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していないと認められること
二次健康診断および特定保健指導の給付
[(1)二次健康診断
脳血管および心臓の状態を把握するために必要な、以下の検査
①空腹時血中脂質検査
②空腹時血糖検査
③ヘモグロビンA₁c検査
(一次健康診断で行なった場合は行わない)
④負荷心電図検査または心エコー検査
⑤頸部エコー検査
⑥微量アルブミン尿検査
(一次健康診断において尿蛋白検査の所見が疑陽性(±)または弱陽性(+)である者に限り行う)
(2)特定保健指導
脳・心臓疾患の発生の予防を図るため、医師等により行われる栄養指導、運動指導、生活指導

参考・引用元:厚生労働省「労災保険給付等一覧

労災保険は、仕事中のけがや病気にのみ適用され、国から保険金が支給されます。それ以外のけがや病気、出産などは健康保険が適用されます。

労災保険は、従業員が個別で加入するのではなく、事業所が加入し、事業所で働く従業員に適用されます。そのため、労災保険の保険料は、従業員ではなく事業所が全額負担しています。

労災保険の加入条件と加入対象

労災保険の加入条件

従業員を1人でも雇用している事業所は、労災保険に加入しなければなりません。

ただし、以下の事業所および従業員については、他の法律で補償されるため、労災保険の対象とはなりません。

  • 官公署の事業のうち非現業のもの(地方公務員で現業部門における非常勤職員は適用対象)
  • 国の直営事業所
  • 船員保険被保険者(疾病任意継続被保険者以外))

労災保険の加入対象になるのは?

労災保険に加入対象は、正社員、パート、アルバイト、日雇など労働や雇用形態に関わらず、すべての労働者です。派遣労働者も労災保険に加入します。派遣労働者の場合は、派遣元の事業所が加入します。

一方、「請負」として働く人や、代表権や業務執行権を持つ役員などは、労災保険の対象外です。ただし、代表者の下で働き、賃金を受け取っている役員の場合は労災の対象となります。また、代表者であっても、中小企業の事業主を対象とした特別加入制度があります。

労災保険の加入手続き

労災保険に加入を申請する場合、すなわち前述した労働保険の対象事業になる場合には、労働保険に加入するために提出しなければならない「保険関係成立届」、労働保険に加入した場合に支払うべき労働保険料について申告する「労働保険概算保険料申告書」、「履歴事項全部証明書(写)」1通を、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

提出期限は、保険関係が成立した翌日から10日以内です。忘れずに申請しましょう。「労働保険概算保険料申告書」は50日以内に提出することができますが、一般的には他の書類と一緒に提出し、50日以内に納付することをお勧めします。

労災保険料の計算方法

労災保険料は、従業員に支払われる賃金の総額に労災保険料率(下記参照)を乗じて算出します。賃金には、毎月の給与や賞与(ボーナス)が含まれています。

賃金の総額は従業員の平均給与×従業員数求められます。

労災保険料率

労災保険の保険料率は、88/1000~2.5/1000まで細分化され、業種ごとに決められています。例えば、食料品製造業では6/1000、卸売・小売業・飲食店などは3/1000がそれぞれ保険料率として定められています。

労災保険率表(平成30年度~)
画像引用元:厚生労働省「労災保険率表(平成30年度~)

※令和3年度の労災保険率については令和3年度から変更ありません。

業種によって保険料率が異なるのは、事業内容によって労働災害のリスクが異なるからです。

労災保険料の計算式

労災保険料は、前年度1年間の全従業員の賃金総額に、事業ごとに定められた保険料率を乗じて算出されます。

従業員の賃金総額×労災保険料率=労災保険料

従業員数10人、平均年収が460万円(退職金・一時金を除く)の通信業、放送業、新聞業又は出版業(労災保険率:2.5/1000)の場合例として計算すると、以下のようになります。

460万円 × 10 × 0.25% = 115,000円
労災保険料は115,000円となります。

従業員の賃金総額は、毎月支給される賃金と賞与を支給月ごとに集計し、これを労災保険料率を乗じて、1年間の剛健を算出します。

集計については、厚生労働省「労働保険関係各種様式」ページの「令和元年度 確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」などを使用して行います。

労災保険料は、年1回、4月から翌年3月までの分が報告され、雇用保険料と合わせて事業所から支払われます。

継続事業の場合、その年度に支払う予定の賃金総額に保険料率を乗じて算出した金額を概算保険料として一旦納付し、実際の保険料との差額(確定保険料)を年度終了後に清算します。

年度の途中から雇用または退職した場合、保険関係の成立または消滅から50日以内に申告を行わなければなりません。この場合、概算保険料が実際の保険料を上回っていればその差額が還付され、不足していれば翌年に納付します。

また、従業員が100名以上の事業所では、労災利用率に応じ労災保険料が変更になる制度(メリット制)もありますが、この制度を適用した場合には、労働局から通知がありますので、事業所から申告する必要はありません。 保険料の申告・納付のための様式は労働保険情報センターのページでご確認いただけます。

まとめ

労災保険は従業員個人が加入するものではなく、事業所単位で加入するものです。従業員の健康とや生活を守ることを目的とした保険で、正社員だけでなく、派遣社員や1日だけのアルバイトなども加入対象になります。万が一、労働災害が起こってしまった場合に備えて、労災保険料の正しい計算方法を理解しておくことが大切です。

監修:山本務 <やまもと つとむ>
(特定社会保険労務士)

やまもと社会保険労務士事務所、代表の山本です。労働相談、あっせん代理、労務環境調査、行政調査対応、人事労務管理、就業規則の作成・見直し、労働保険・社会保険の電子申請、給与計算、助成金申請支援など幅広く展開しています。

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