会社設立の基礎知識

会社を設立したら法人青色申告を!メリット・提出方法・期限・申請書の書き方を解説

会社を設立したら法人青色申告を!メリット・提出方法・期限・申請書の書き方を解説

法人にも、個人事業主と同様に「青色申告制度」があります。法人の青色申告では、赤字を翌期以降に繰り越せる欠損金の繰越控除や繰戻還付、少額減価償却資産の特例など、税負担の軽減につながるさまざまな優遇措置を利用できます。

特に会社設立直後は、設備投資や広告費などの支出が先行し、赤字になるケースも少なくありません。そのため、青色申告による税制メリットを活用することで、資金繰りの改善につながる可能性があります。

一方で、青色申告を利用するには、事前に「青色申告の承認申請書」の提出が必要です。

本記事では、法人が青色申告を行うメリット・デメリット、申請方法や提出期限から青色申告の承認申請書の項目別の書き方まで詳しく解説します。

なお、個人事業主の青色申告について詳しく知りたい方は「青色申告とは?個人事業主で向いている人や確定申告のやり方をわかりやすく解説」をご覧ください。

目次

法人の青色申告とは

法人の青色申告は、税務署の承認を受け、正規の簿記の原則(主に複式簿記)に基づいて記帳し、法人税を申告する方法です。

青色申告を行うには、事前の承認申請や一定の記帳が必要ですが、白色申告に比べて税務上のメリットを受けやすくなります。

法人の青色申告と白色申告の違い

青色申告では、要件を満たすことで、欠損金の繰越控除・繰戻還付・少額減価償却資産の特例・中小企業投資促進税制などの税務上のメリットを受けられます。法人の青色申告と白色申告の違いは、次のとおりです。

青色申告白色申告
事前の届出青色申告の承認申請書の提出が必要事前の届出は不要
確定申告書類貸借対照表・損益計算書・確定申告書貸借対照表・損益計算書・確定申告書
欠損金の扱い繰越控除・繰戻還付が可能繰り越し・繰り戻しは不可、災害損失欠損金のみ繰越控除が可能
40万円未満の資産事業供用時に全額損金算入が可能原則として減価償却が必要

法人の白色申告では、青色申告のような承認申請は不要ですが、帳簿書類の作成・保存や、貸借対照表・損益計算書などの作成が必要です。

なお、法人の青色申告では、個人の青色申告で適用される青色申告特別控除はありません。個人事業主の場合は、帳簿の付け方や申告方法などの要件に応じて、10万円・55万円・65万円の青色申告特別控除が適用されます。

なお、2027年分以後は、一定の要件を満たす場合、青色申告特別控除の上限額が75万円に引き上げられます。

法人で青色申告をするメリット

法人で青色申告をする場合の具体的なメリットは、以下のとおりです。

法人で青色申告をするメリット

  • 欠損金の繰越控除
  • 欠損金の繰戻還付
  • 少額減価償却資産の特例
  • 中小企業投資促進税制

欠損金の繰越控除

欠損金が生じた場合、その欠損金を翌年度以降に繰り越し、所得金額から控除できます。以下のケースで青色申告のメリットを考えてみましょう。

例)
2025年度:赤字50万円
2026年度:黒字10万円

2026年度は、黒字が出ているため、黒字分の10万円が課税所得となり、10万円に税率をかけた金額を法人税として納付する必要があります。

しかし、「欠損金の繰越控除」を適用できれば、2025年度の赤字50万円を2026年度に繰り越すことができます。黒字10万円より赤字が上回っているため、2026年度も課税所得は0円となり、このケースでは法人税を支払う必要はありません。

繰越期間の上限は10年です。適用の要件は、以下のとおりです。

欠損金繰越控除の適用要件

  • 欠損金が生じた事業年度に青色申告書で確定申告をしていること
  • その後の事業年度も確定申告をしていること
  • 帳簿書類を保存していること

欠損金を繰り越すには、赤字が生じた事業年度に青色申告書で確定申告をしている必要があります。そのため、白色申告をしていた事業年度に生じた通常の赤字は、その後に青色申告の承認を受けても繰越控除の対象にはなりません。

会社設立当初は、事業の立ち上げにさまざまな経費がかかり、顧客獲得までに時間がかかるケースも少なくありません。欠損金の繰越控除を視野に入れる場合は、設立後、提出期限までに青色申告の承認申請書を提出しておきましょう。

欠損金の繰戻還付

当該年度で欠損金が生じた場合、将来の事業年度に繰り越す方法が繰越控除であるのに対し、過去の事業年度に繰り戻して法人税の還付を受ける方法が「繰戻還付」です。たとえば、前期黒字で法人税を支払って、今期赤字の場合、要件を満たせば繰戻還付を請求できます。

例)
【前期】2025年度 黒字100万円で、法人税 20万円を納付
【当期】2026年度 赤字80万円

このケースで、繰戻還付が請求できる法人税は以下のとおりです。

前期納付した法人税20万円 × 当期の赤字80万円 ÷ 前期の黒字100万円 = 還付請求できる法人税:16万円

注意点は、同じ事業年度に生じた欠損金を、繰越控除と繰戻還付の両方に使うことはできない点です。

どちらを選択するかは、資金繰りや将来の利益見込みによって異なりますが、繰戻還付の大きな特徴は、納付済みの法人税の還付を受けられる点です。会社設立直後は資金計画どおりに進まないケースもあるため、繰戻還付は、借り入れ以外で資金を確保する手段のひとつとなります。

また、適用できる赤字(欠損金)の上限は、前期の黒字分です。たとえば、2025年度が黒字100万円、2026年度が赤字200万円の場合、繰戻還付に使える欠損金は100万円までです。残りの100万円は、要件を満たせば欠損金の繰越控除により将来の事業年度へ繰り越せます。

少額減価償却資産の特例

10万円以上の資産を購入した場合は、原則として固定資産として計上し、減価償却を行います。減価償却は、耐用年数にわたって分割して経費計上する会計処理です。

青色申告をする中小企業者等は、少額減価償却資産の特例により、一定額未満の減価償却資産について、事業供用時に取得価額の全額を損金算入できます。白色申告では、少額減価償却資産の特例は適用できません。

2026年度税制改正により、少額減価償却資産の特例は、対象となる取得価額が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。2026年4月1日以降に取得し事業の用に供した場合、取得価額40万円未満の資産について、取得した事業年度に一括して損金算入できます。1事業年度あたりの上限額は300万円です。

改正前改正後
取得時期2026年3月31日までに取得2026年4月1日から2029年3月31日までに取得
取得価額30万円未満40万円未満
出典:中小企業庁「少額減価償却資産の特例を拡充しました」

少額減価償却資産の特例を活用することで、固定資産を取得した事業年度の課税所得を圧縮し、税負担を軽減できる可能性があります。

中小企業投資促進税制

青色申告をしている対象の中小企業者等は、対象設備や対象ソフトウェアを取得・製作した場合に「中小企業投資促進税制」による税制優遇を受けられることがあります。

資本金3,000万円以下の法人または個人事業主は、30%特別償却または7%税額控除を選択できます。一方、資本金3,000万円超の中小企業は、30%特別償却のみが対象です。

項目概要
優遇措置特別償却:通常の減価償却に30%の償却を追加
税額控除:取得価額の7%相当額を法人税額から直接控除(資本金3,000万円以下の中小企業または個人事業主)
対象者中小企業者等(資本金額1億円以下の法人・農業協同組合・商店街振興組合等)
従業員数1,000人以下の個人事業主
対象業種製造業・建設業・農業・林業・漁業・水産養殖業・鉱業・卸売業・小売業など特定の業種
対象設備機械および装置・測定工具および検査工具・一定のソフトウェア・貨物自動車・内航船舶
適用期限2027年3月31日まで
出典:中小企業庁「中小企業投資促進税制」

対象の資産は、70万円以上の一定のソフトウェア、160万円以上の機械装置、貨物運送用3.5トン以上の普通貨物自動車などです。小売業や卸売業のほか、不動産業や物品賃貸業も対象業種に含まれます。ただし、貸付の用に供する設備など、制度の対象外となる資産もあります。

法人青色申告のデメリット

法人青色申告にはデメリットは少ないものの、以下のような点が挙げられます。


  • 青色申告の承認申請書の提出が必要
  • 帳簿・書類を適切に作成、保存する体制が必要

青色申告をするためには、事前に青色申告の承認申請書の提出が必要です。提出期限を過ぎると、その事業年度から青色申告を適用できない場合があるため、会社設立後や事業年度開始前に忘れずに手続きしましょう。

また、法人は青色申告・白色申告にかかわらず、貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成し、法人税を正しく申告するために、日々の取引を正確に記録する必要があります。そのため、複式簿記での記帳自体は、青色申告特有のデメリットとはいえません。

ただし、青色申告のメリットを受けるには、帳簿に基づいて正しく申告できる経理体制を整えることが前提です。経理業務に慣れていない場合は、記帳や書類管理に手間がかかる可能性があるため、会計ソフトや税理士の活用も検討しましょう。

法人青色申告の申請方法・流れ

確定申告時に「青色申告をします」と申し出ても、事前の承認を受けていなければ、青色申告として申告することはできません。青色申告を開始するには、事前に「青色申告の承認申請書」を提出する必要があります。

提出時期

会社を設立した初年度に提出する場合は、設立の日以後3ヶ月を経過した日と、その事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までに提出します。

例)3月決算の会社を、3月1日に設立した場合
→事業年度終了日の前日:3月30日まで

すでに設立している法人の場合は、青色申告を適用しようとする事業年度開始の日の前日までに提出します。2026年4月1日から事業年度開始の場合は、2026年3月31日までに提出します。

提出先・提出方法

青色申告の承認申請書の提出先は、納税地を所轄する税務署長です。

提出方法は、以下の3とおりです。税務署に持参する場合は、8時30分から17時までの開庁時間内に窓口へ提出します。開庁時間外や閉庁日は、送付または時間外収受箱への投函により提出できます。

青色申告の承認申請書の提出先

  • 税務署への持参
  • 税務署への郵送
  • e-Tax(電子申請)

申請書を提出しないと白色申告となり、青色申告による各種特典や税務上のメリットは受けられません。会社設立後3ヶ月間は事業の立ち上げや各種手続きで慌ただしい時期ですが、期限内に忘れずに提出しましょう。

出典:国税庁「C1-19 青色申告書の承認の申請」

法人における青色申告の承認申請書の項目と書き方

青色申告の承認申請書
出典:国税庁「青色申告の承認申請書」

以下では、記載する際のポイントを解説します。

①日付

税務署へ持参する日、または送付する日を記入します。

②税務署長殿

「税務署長殿」の前に、会社を設立した本店所在地を管轄する税務署を記入します。

③納税地

会社を設立した本店の所在地と電話番号を記入します。固定電話がなければ、携帯電話番号でも問題ありません。

④法人名等、法人番号、代表者氏名、代表者住所、事業種目、資本金または出資金額

法人登記を行った際の情報を記載します。法人番号は、国税庁の「法人番号公表サイト」でも確認が可能です。事業種目が多い場合は、定款に記載されたもののうち、主なものに絞って記載しても構いません。

⑤自令和年月日〜至令和年月日

青色申告を開始したい事業年度を記載します。

会社設立後、初年度から適用したい場合は、その事業年度を記載します。たとえば、令和8年8月1日に会社を設立し、決算期が9月の場合は、自令和8年8月1日〜至令和8年9月30日です。

⑥「記」1.次に該当するときには(以下略)

会社設立後、初年度から青色申告をしたい場合は、「この申請後、青色申告書を最初に提出しようとする事業年度」欄にチェックを入れます。

日付欄には会社設立年月日を記入します。会社設立年月日は、履歴事項全部証明書で確認しましょう。

⑦-1「記」2.参考事項(1)帳簿組織の状況

伝票または帳簿名には、総勘定元帳と仕訳帳を記入します。これらは、今後の経理処理に伴って作成・保存する帳簿です。別途、現金出納帳、預金出納帳を作成する場合も記入します。

帳簿の形態は、freee会計などのクラウドサービスやソフトウェアを使う場合は「会計ソフト」、自身や税理士が帳票を作成する場合は、実態にあわせて「ノート」「Excel」などと記載します。

記帳の時期に記入するのは、毎月・毎週・随時など、帳簿を記入・更新するタイミングです。これは申請書提出時点の予定であり、その後、業務の実態に応じて変更しても問題ありません。

⑦-2「記」2.参考事項(2)特別な記帳方法の有無

クラウドサービスやソフトウェアを使う場合は、「ロ 電子計算機利用」にチェックを入れます。

⑦-3「記」2.参考事項(3)税理士が関与している場合におけるその関与度合い

税理士に会社の経理を依頼している場合は、どのように記載すべきか確認しましょう。税理士の関与範囲に応じて、「伝票整理からの一切の事務」「総勘定元帳からの記帳から一切の事務」などと記載します。

⑧税理士署名押印

税理士に本申請書の作成を依頼した場合は、「税理士署名」欄に税理士の署名を受けます。自社で作成する場合は、この欄の記入は不要です。

青色申告の承認は取り消される場合がある

法人税法第127条の規定により、以下のいずれかに該当すると、青色申告の承認が取り消される可能性があります。

青色申告の承認は取り消される場合がある

  • 確定申告書を2事業年度連続で期限までに提出しない
  • 法令で定められたとおりに帳簿の作成・保存が実施されていない
  • 取引の全部または一部を隠蔽・仮装しており、真実性を疑うに足りる相当の理由がある
  • 税務署長の指示にしたがわない

青色申告の承認が取り消されると、1年間は再申請できません。「青色申告の承認の取消通知書」に記載されている内容を確認し、処分が不当と考える場合は、所定の手続きにより不服申立てが可能です。

出典:e-Gov法令検索「法人税法(昭和四十年法律第三十四号)」 出典:国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」 出典:国税庁「不服申立て等について」

まとめ

法人の青色申告には、欠損金の繰越控除や繰戻還付、少額減価償却資産の特例など、白色申告にはないさまざまな税制上のメリットがあります。

特に会社設立直後は、設備投資や事業立ち上げに伴う支出が増えやすいため、青色申告を活用することで税負担の軽減や資金繰りの改善につながる可能性があります。

ただし、これらのメリットを受けるためには、期限内に青色申告の承認申請書を提出し、適切な帳簿作成や保存を行うことが必要です。また、期限後申告や帳簿不備などがあると承認が取り消される場合もあります。

会社設立後は提出期限を確認したうえで早めに申請を行い、青色申告のメリットを活用できる体制を整えましょう。

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