会社設立の基礎知識

一人で会社を作る時に必要な費用は?会社設立や事業開始にかかる費用一覧

一人で会社を作る費用とは?法人化に伴う設立・事業開始費用を解説

一人で会社を作るための費用について考える際は、資本金、定款作成、登記費用などさまざまな要素を考慮する必要があります。会社設立にはの際の資本金は、1円でも会社を設立できることから起業のハードルは下がっているといえます。

しかし一人で会社を作るための費用は、会社設立にかかる費用はもちろん、設立後に必要となる設備投資や事業運営費用なども含めて計算する必要があります。

本記事では、一人で「株式会社」と「合同会社」を設立する際の各費用、また個人事業主と法人としての運営における費用の違いについて詳しく解説します。

会社設立の流れや具体的な手続きについて知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説 | 株式会社を設立するメリットや注意点についてもまとめています」をあわせてご確認ください。

目次

一人で会社を作る際(法人化)にかかる費用相場

一人で会社を作るには2つの方法があります。「株式会社設立」そして、「合同会社設立」という方法です。株式会社と合同会社のどちらでも、設立に伴い、会社の登記をする必要があります。

株式会社と合同会社の登記にかかる費用相場は、下記のようになります。

株式会社と合同会社の費用相場

  • 株式会社
    約250,000円
  • 合同会社
    約110,000円

株式会社を設立する際にかかる費用相場

「株式会社」を設立する場合の相場は、約250,000円です。内訳は下記のとおりとなります。

  • 認証手数料
  • 収入印紙代
  • 謄本手数料
  • 登録免許税
  • 資本金
  • その他費用

株式会社の法定費用

法定費用とは前項の「認証手数料」「収入印紙代」「謄本手数料」「登録免許税」にあたり、公証役場や法務局に支払う費用のことを指します。

法定費用は資本金の額や定款の作成方法によって、変わってきます。

株式会社を設立する際の法定費用
認証手数料
50,000円
公証役場で定款の認証を受ける際の手数料
資本金の額により変動
・資本金が100万円未満の場合は30,000円
・資本金が100万円~300万円未満の場合は40,000円
・資本金が300万以上の場合は50,000円
収入印紙代
40,000円
定款に貼る収入印紙代
※電子定款の場合は0円
謄本手数料
2,000円
定款の謄本を作成してもらう際の手数料
(1ページ250円×ページ数)
登録免許税
150,000円~
登記申請の際に支払う税金
150,000円 or 資本金額×0.7%を比較して高いほう

※法定費用を抑えたい場合は、電子定款で問題ありません。

株式会社の資本金

資本金1円でも会社を設立することが可能です。しかし資本金1円での会社設立は、会社の運営に影響する可能性があります。

資本金の平均額は、約300万円程度で、会社の運転資金の3ヶ月程度が目安とされています。なお資本金額によって登記費用(認証手数料・登録免許税)が変わるので、注意が必要です。

株式会社の印鑑や謄本などにかかる費用

会社設立にあたって、法定費用と資本金以外の部分で必要な費用は下記のとおりです。

株式会社を設立する際のその他の費用
設立する会社の印鑑作成代約5,000円~
設立時に必要な個人の印鑑証明取得費約300円×必要枚数
会社の登記簿謄本の発行費約500円×必要枚数

会社を設立する際の印鑑は、「実印」「角印」「銀行印」の3種類です。印鑑にかかる費用は、購入するお店によって異なります。

ここまで解説した内容により、株式会社の登記までにかかる費用は約250,000円となります。

ただし、会社設立を専門家に依頼した場合は、別途費用が発生するため250,000円よりも設立費用が上がります。

また会社設立登記の代行手数料は依頼する事務所によってさまざまですが、一般的には60,000円~100,000円くらいが相場とされており、事務作業の多さから株式会社設立の費用の方が高めとなるでしょう。

また、資本金額や定款を電子定款にするか否かで、会社の設立費用は異なります。

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合同会社を設立する際にかかる費用相場

一方、「合同会社」を設立する場合の費用相場は、約110,000円です。

その内訳は下記のとおりです。

合同会社の設立費用の内訳

  • 収入印紙代
  • 謄本手数料
  • 登録免許税
  • 資本金
  • その他費用

合同会社の法定費用

合同会社を設立する場合に発生する法定費用は、下記のとおりです。

合同会社を設立する際の法定費用
収入印紙代
40,000円
定款に貼る収入印紙代
※電子定款の場合は0円
謄本手数料
約2,000円
定款の謄本を作成してもらう際の手数料
(1ページ250円×ページ数)
登録免許税
60,000円~
登記申請の際に支払う税金
60,000円 or 資本金額×0.7%を比較して高いほう

合同会社を設立する場合は、定款の認証は不要です。その理由としては、合同会社は例外なく出資者と経営者が同一のため、運営に関しての争いが発生する可能性が低く第三者の認証がなくとも会社の設立が認められていると考えられます。

合同会社の資本金

合同会社を設立する場合の資本金は、株式会社を設立する場合と基本的には同様です。また資本金は、実際に事業を進めていく上で必要となる金額を設定しておくことが大切になります。

設立した会社が、軌道に乗るまでに3か月程度かかると仮定して、運転資金を3ヶ月程度に設定する場合が多いようです。

合同会社の印鑑や謄本などにかかる費用

合同会社を設立する際の印鑑や謄本の費用も、株式会社を設立する場合と同様です。

前述のとおり、合同会社の登記までにかかる費用は約110,000円となります。

ただし、合同会社の場合も、会社設立を専門家に依頼した場合はこの限りではありません。また電子定款の場合は、設立費用を40,000円削減することが可能です。

さらに一定の条件を満たすことで、「株式会社」と「合同会社」共に市区町村による創業支援等事業計画の支援を受けられます。創業支援等事業計画が承認されれば、登記にかかる費用を大幅にカットできるでしょう。

一人で会社設立手続きした後にかかる開業費・維持費

会社の登記が完了すると、次は「開業費」が必要になります。そして、事業を維持するための「維持費」が発生します。具体的な必要費用の総額について、以下の表を参考にしてみてください。

開業費と維持費の違い

  • 開業費
    事業を開始するための最低限の設備費用
  • 維持費
    事業を運営するうえで継続的にかかる費用
費用の種類特徴必要費用の総額
開業費事業を開始するための環境投資にかかる費用約92〜222万円
維持費事業運営の継続にかかる費用約30万〜

※事業によって大きく異なります

一人で会社設立手続きをした後にかかる開業費

開業費とは、会社の設立を終え、事業を開始するにあたって最低限必要な環境を整えるための費用を指します。

開業するにあたって発生する開業費用は、大きく分けて下記の3つです。

事業開始に必要な費用

  • 事業開始に最低限必要な設備投資
  • オフィスや事業所の契約にかかる初期費用
  • 広告費や雑費などのその他必要費用

事業開始に最低限必要な設備投資

立ち上げた会社の業種や事業形態によってその内容はさまざまですが、設備投資として一般的に最低限必要なものとして、次のものが挙げられます。

  • Wi-Fi環境の整備
  • パソコン
  • ソフト
  • 電話
  • プリンター
  • トナー
  • コピー用紙
  • オフィス用品

上記以外にも業種や事業内容によって、必要となる備品は変わりますが、取引先とのオンラインでのやり取りや、チラシや資料の作成を考えると、パソコンや電話は必須です。全て購入する場合には、発生する費用が増える恐れがあるので、リースやレンタル、サブスクリプションサービスの利用を検討する方法もあります。

オフィスや事業所の契約にかかる初期費用

自宅で会社を設立し運営する場合は、事務所契約は必要ありませんが、オフィスや事業所を構えて会社の運営を行う場合もあります。

オフィスや事業所といったテナントを利用する場合、テナントオーナーとの契約が必要で、契約締結時の初期費用(契約金)は、開業費において大きな比重を占めるでしょう。

たとえば、仮に賃料が1ヶ月10万円のテナントにかかる初期費用は、50万円〜160万円ほどです。おおまかな内訳は下記のとおりとなります。

契約時に発生する初期費用

  • 敷金:賃料の1ヶ月~10ヶ月分
  • 礼金:賃料の1ヶ月~2ヶ月分
  • 仲介手数料:賃料の1ヶ月分
  • 前払い賃料:賃料の1ヶ月~2ヶ月分
  • その他(火災保険料や鍵交換代など)

上記の他に、物件によっては内装や外装のリフォーム代が高額になる場合もあります。もともと内装や設備が整った「居抜き物件」も存在しますが、クリーニング代やリフォーム代が必要になるケースも存在します。

その他の必要費用(販促費や広告費、雑費など)

会社を運営する場所と最低限の設備投資を終えたら、事業の広告費や税理士などとの契約費などのその他費用が必要になります。

どのような業種で会社を設立したかによって必要なものは異なりますが、一般的に共通して発生すると考えられるその他の費用は次のとおりです。

会社設立後に必要となる費用

  • ホームページの制作
  • 名刺の作成
  • チラシの制作
  • 税理士への顧問契約料や保険代
  • コンサルタントへの費用
  • 仕入れ費用

このように、会社を設立し事業を開始するまでには、膨大な費用が発生します。そのため、会社運営に関わる必要経費を細かく洗い出し、発生する費用を明確にしておくことが重要です。

具体的には不動産会社や専門家などへの見積もり請求をするなど、費用に関する情報を細かく収集することです。

一人で会社設立手続きした後にかかる維持費

会社設立後、法人として継続的に支払う義務のある費用は以下の2つです。

会社設立後に義務となる費用

  • 各種税金
  • 社会保険料

各種税金

法人として、継続的に発生する各種税金は以下の5種類です。

項目概要
法人税法人の所得に対して課せられる国税
法人の種類や資本金額、年間所得金額で税率が変動
法人住民税会社を登記している都道府県、市町村に対して納める税金
法人事業税事業所等を有する都道府県で事業を営んでいることに対する地方税
(特別法人事業税と併せて申告・納付)
固定資産税所得税や法人税を計算する時に、減価償却をしている資産にかかる税金
消費税個人事業主と同じ計算方法で求められる

これらは基本的にどの会社にも共通してかかりますが、場合によっては上記に加えて法定外の税金や費用もかかる場合があります。

また、このなかでも法人住民税は、運営する会社がたとえ赤字でも均等割として約7万円を納税する決まりになっています。

また、税金の総額は業種や事業内容によって異なるため、専門家への相談がおすすめです。

社会保険料

社会保険料は、社長一人だけの法人であっても、会社を立ち上げた瞬間から売上や利益に関わらず発生する固定費です。

社員を雇う場合は継続的に人数分の社会保険料がかかってきますが、一人で会社を運営するなら加入するのは自分だけでよく、維持費を安く抑えられます。

また、社員を雇う場合は社員一人に対して会社が負担する社会保険料額の目安は、給料の約15%程度と覚えておくとよいでしょう。社会保険料の最低額は約1万2000円とされています。

その他の必要費用

会社を運営する際に発生する固定費用についても、事前に把握しておきましょう。最低限必要とされる固定費用は以下のとおりです。

固定費として発生する費用

  • オフィスや事業所の賃貸料
  • オフィスや事業所の光熱費
  • ドメイン・サーバーの月額
  • パソコン等のメンテナンス費
  • 税理士など仕業への報酬

上記の「税理士など仕業への報酬」についてですが、会社を設立した場合、自分で経理を全て行うのは不可能でしょう。

会計ソフトにより決算書の作成はできても、法人税の申告は難しく専門家の手を借りる必要があるからです。

コストはかかりますが、会社を健全に運営する上で必要な経費として捉えましょう。

株式会社設立の場合のみ発生する費用

株式会社を設立した場合にのみ発生する費用もあります。


株式会社の設立時のみ発生する費用

なお、決算の公表は義務付けられており、実施しない場合の罰則規定も設けられています。しかし現実的には、決算の公表をしていない会社が多く、罰則の適用例もないのが実状です。

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一人または複数人で会社を設立した場合の費用の違い

会社を設立する場合、一人で会社を設立するか複数人で設立するかにより、費用が変わります。それぞれについての会社設立費用を比較してみましょう。

一人でスモールスタートを行う場合の会社設立費用

会社の登記費用については、企業規模に限らず必要となります。コストを削減したい場合は、一人で自宅で開業することが重要となります。

仮に、インターネットを中心とした小規模な事業運営を行う場合の費用は、次のとおりです。

項目費用
パソコン100,000円~
ネット環境5,000円~
各種ツール、ソフト5,000円~
名刺作成2,000円~
文具5,000円~
合計約120,000円

パソコンを使用したインターネットビジネスの場合は、設備投資や仕入れが必要ありません。上記の例では、約120,000円程度で開業できてしまいます。

ただし、業種によってはさらに費用がかかる場合もあるでしょう。スモールビジネスの詳細については以下の記事をあわせてご覧ください。

【関連記事】
スモールビジネスとは?起業後に成功するポイントやメリット・デメリットを解説

複数人で起業する場合の会社設立費用

最初からある程度の成長を見越して、複数人で起業する場合は出資の分散ができるので、一人あたりの金銭的な負担は少なくなります。

しかし、会社を設立した後に発生する費用がかさむ可能性があります。ここでは、レンタルオフィスを借り、3人で起業した場合を仮定してコストをまとめました。

項目費用
レンタルオフィス840,000円/年~
ホームページ作成200,000円~
パソコン購入代×3300,000円~
ネット環境10,000円~
各種ツール、ソフト×315,000円~
企業ロゴ50,000円~
広告宣伝300,000円
サーバー代20,000円~
名刺作成×36,000円~
文具購入×315,000円~
デスク・椅子×3120,000円~
合計約1,900,000円

一人当たりの出資負担は減るものの、人数分だけ費用がかかるので最低200万円程度は必要です。また、業種によっては設備投資や仕入れで、さらに費用がかかる場合もあります。

個人事業主と法人における費用のメリット・デメリット

株式会社や合同会社、複数での起業や一人で起業の場合の会社設立にかかる費用を解説してきました。ここからは、個人事業主と法人における費用のメリットやデメリットを解説します。

個人事業主の費用に関するメリット・デメリット

個人事業主の費用に関するメリット、デメリットは下記のとおりです。

個人事業主の費用
メリットデメリット
・0円で事業をはじめられる
・従業員5人未満なら社会保険の加入が不要
(一定の業種を除く)
・利益によっては無税の場合がある
・経理が安易なので専門家を雇う必要がない
・自分の給与を経費に計上できない
・ボーナスや退職金がない
・制限が多く節税しづらい
・国からの補助金などが法人の半分
・金融機関からの融資が受けづらい

費用をかけず小さな規模で事業を展開したいという場合は、個人事業主としての活動がおすすめです。

法人の費用に関するメリット・デメリット

法人化すれば節税できる場合があります。ただし、それにはデメリットもあり、法人化によって損をしてしまう場合もあります。

法人化した場合の費用についてのメリット、デメリットは下記のとおりです。

法人の費用
メリットデメリット
・資金調達がしやすい
・経費に計上できる項目が多い
・家族を非常勤役員に登記できる
・国からの給付金など支援が手厚い
・役員の賞与やボーナスを設定できる
・会社の負債を個人で払う必要がない
・会社を設立する費用がかかる
・赤字でも税金を払う義務がある
・社長一人でも社会保険の加入が必要
・支払う税金の種類が増える
・経理が複雑なので専門家の手を借りる必要がある

個人事業主と法人、それぞれにメリットとデメリットがありますが、節税目的だけで安易に法人化すべきではありません。

法人化の検討を始めても良いタイミングを見計うことが重要です。

一般的には、個人事業主として年間700万円程度の利益が出せるようになった時が、法人化するタイミングだといわれています。

【関連記事】
「個人事業主と法人の違いは?10項目で比較したそれぞれの特徴と事業開始時の選び方」

まとめ

会社の設立には、ランニングコストと固定費、変動費などの費用が発生します。会社の経営方法や業種、会社設立の方法によって発生する費用は異なりますが、事業を円滑に進めるためには一定金額のまとまった資金が必要です。

また法改正や市区町村の事業支援により、誰でも会社を設立しやすい時代となりました。しかし起業前には、登記するための費用や開業後に必要な費用も十分調査し準備する必要があります。

これから自分が起業する事業の規模、売り上げの見込み、粗利の想定などの事業計画を把握し、最適な方法を選択し会社を設立することが大切です。

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よくある質問

一人で会社を作るメリット・デメリットは?

会社を作るメリットは、法人化することで信用度が上がり、スムーズな取引ができる可能性が高いことです。法人口座の開設により、融資や補助を受けやすく節税しやすくなる場合があります。

メリット

  • 法人化により社会的な信用度の向上
  • 法人口座の開設により、融資が受けや水
  • 節税効果

デメリット

  • 会社の設立時に初期費用が発生する
  • 社会保険の加入が義務付けられている
  • 赤字でも税金を支払う必要がある

事業内容や利益により、会社を設立した方が良い場合とそうでない場合があるため、現状の把握とタイミングが重要です。

詳しくは記事内「個人事業主の費用に関するメリット・デメリット」をご覧ください。

一人で会社を作る場合には、株式会社と合同会社はどちらが良い?

どちらの形態で会社を設立するべきかの判断基準は、どんな将来をイメージするかによるでしょう。大規模な事業展開や、それに伴う資金調達が必要であれば信用度の高い「株式会社」。

一方、起業に費用をかけたくない場合や会社の規模を拡大する予定がない場合は「合同会社」が良いといえます。起業による将来のイメージによって自身の運営方法に適切な法人形態を選択しましょう。

詳しくは記事内「一人または複数人で会社を設立した場合の費用の違い」をご覧ください。

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