最終更新日:2023/01/16

給与明細とは、支払われた給与の根拠となる勤怠情報や給与の支払額、控除額など、詳しい内訳が記載されている書類のことです。
従業員に支払われる給与は、総支給額から保険料や税金などを控除をした金額となります。
本記事では給与明細の見方や計算方法について、項目ごとにわけて解説します。
目次
給与明細とは
従業員に支払われる給与は、総支給額から税金などを控除した額になっています。
給与明細とは、その支払われた給与の根拠となる勤怠情報や給与の支払額、控除額など、詳しい内訳が記載されている書類です。給与明細は所得税法231条で、紙、もしくは電子データにて発行を義務付けられています。
「末締め10日払い」や「15日締め25日払い」など、会社によって給与の締め日と支払い日が設定されており、明細には給与の支払い期間分の情報が記載されています。
締め日とは、給与の支払い期間の最終日のことで、末締めであれば毎月1日〜月末まで、15日締めであれば毎月16日〜翌15日までが給与の支払い期間となります。
出典:厚生労働省「第3章 働くときのルール」
給与明細を構成する4つの項目の見方

給与明細書は、主に以下の4つの項目で構成されています。
給与明細の主な構成
- 差引支給額
- 支給
- 控除
- 勤怠
上記画像の給与明細を参考に、各項目の詳細について解説します。
① 差引支給額
差引支給額は、実際に従業員に支払われる給与額です。総支給額から税金などの控除額を差し引いた額で、一般的に「手取り」と呼ばれています。
支払い方法は会社によって異なりますが、銀行振込、または現金支給のどちらかで支払われます。
② 支給
会社から支払われる給与のすべてが項目ごとに明記されています。ここでは、以下の主な記載項目や計算方法について解説します。
- 月給(基本給):給与計算のベースとなる、固定で支払われる賃金
- 残業手当:所定労働時間を超えて働いた分の賃金
- 勤怠控除:欠勤・遅刻・早退などで働けなかった時間分の賃金
月給(基本給)は昇給や降給がないかぎり、毎月同額が支払われます。
残業手当は上述したとおり、所定労働時間を超えた分の賃金が支払われますが、会社によっては「みなし残業」という賃金制度を適用している会社もあります。みなし残業は一定の残業時間が発生する想定で支払われる固定賃金のことで、「固定残業手当」とも呼ばれます。
残業手当の計算方法
残業手当は以下の計算式で算出します。
残業手当の算出方法
・残業手当 = 1時間の単価 × 割増率 × 残業時間
・1時間の単価 =(月額給料-手当*1)÷ 1ヶ月あたりの平均所定労働時間(*2)
(*1)家族手当や通勤手当など、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支払われるものが対象
(*2)1ヶ月あたりの平均所定労働時間 = 年間労働日数 × 所定労働時間 ÷ 12
また、深夜勤務や休日労働など、残業の種類や時間帯により割増率が異なります。残業の種類ごとの割増率は以下をご確認ください。
残業の区分 | 割増率 |
時間外労働 | × 1.25 |
休日労働 | × 1.35 |
深夜(22時~翌5時)労働 | × 1.25 |
時間外労働 + 深夜労働 | × 1.5 |
休日労働 + 深夜労働 | × 1.6 |
勤怠控除
基本的に支給項目はすべてプラスの項目ですが、欠勤や遅刻、早退などで働けなかった時間分の賃金を控除する場合、勤怠控除(欠勤控除)として支給項目からマイナスで表示されます。
各勤怠控除の算出方法は以下のとおりです。なお、欠勤の勤怠控除の計算方法は2通りあります。
勤怠控除の算出方法
(1)欠勤の場合
・月給与額 ÷ 月平均の月所定労働日数(*) × 欠勤日数
(*)月平均の所定労働時間数 =(365 - 年間休日数)÷ 12
・月給与額 ÷(該当月の所定労働日数 × 欠勤日数
(2)遅刻・早退の場合
遅刻・早退控除の対象とする月の給与額 ÷ 月平均所定労働時間数 × 遅刻・早退の時間
会社により計算方法や規定は異なるため、自身の会社の就業規則をご確認ください。
これは民法624条に基づくノーワーク・ノーペイの原則により、欠勤や遅刻、早退などで労働しなかった分の賃金は支払う必要がないとされているためです。
第六百二十四条
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
手当
会社は時間外手当(残業代)以外の手当については支給の義務がありません。そのため、職務や就業条件など、すべて会社独自の規定で支払われます。
以下、代表的な手当の具体例をまとめました。
通勤手当 |
通勤に使用する公共交通機関の定期代や自動車通勤のガソリン代などの手当
月15万円以内であれば非課税 |
役職手当 | 責任の重さや業務の幅など役職に応じた手当 |
役職手当 | 責任の重さや業務の幅など役職に応じた手当 |
資格手当 |
会社が指定する資格を保有している場合の手当
資格を取得した際に一時的な手当など |
家族手当 | 配偶者や子どもへの生活費や教育費の補助を目的とした手当 |
住宅手当 | 家賃や家のローンの補助が目的の手当 |
出張手当 | 出張の際、期間や場所に応じた飛行機やホテル代とは別に支給される手当 |
③ 控除
総支給額から控除されるものとして、以下が挙げられます。
- 社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険)
- 所得税
- 住民税
- 会社独自の控除
社会保険料や税金は法定控除といい、法律で定められている控除項目のため、必ず給与から差し引く必要があります。
また、控除欄にマイナスで金額が記載されている場合は支給の金額となります。多く控除していたものを返金する際に記載されており、原因としては、年末調整で出た所得税の還付や、税金の計算ミスでの返金などが考えられます。
健康保険
社会保険は、狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)と労働保険(労災保険と雇用保険)で構成されています。社会保険料は、会社と従業員で半額ずつ負担しており、従業員負担分の保険料は毎月の給与から天引きされています。
雇用保険料も給与から毎月天引きされていますが、雇用保険料率は毎年変動し、事業によっても異なります。労災保険は事業主が全額負担のため、給料に影響しません。
このうち、大きな怪我や病気に見舞われた際に適用される保険制度が健康保険です。健康保険料の負担額は以下の計算式で求めることができます。
健康保険料の負担額
標準報酬月額×健康保険料率÷ 2
健康保険料率は、加入している健康保険組合(協会けんぽ、組合健保)と住んでいる地域によって異なるため、自身の加入している健康保険組合のホームページを確認してみましょう。
厚生年金保険
労働者の老齢や死亡、障害について保険給付を行う制度です。
20歳から60歳までのすべての国民が加入しなければならない国民年金のほか、働いている人は厚生年金保険へ加入し、厚生年金も支払う必要があります。
厚生年金も支払っている人は、老後に支給される金額も厚生年金と国民年金を支払った分だけ増えるかたちとなります。
介護保険
労働者の怪我や病気、加齢などによる介護サービスについて保険給付を行う制度です。40歳になると健康保険とあわせて自動的に給与から天引きされるようになります。
介護保険料の負担額
標準報酬月額 × 介護保険料率 ÷ 2
雇用保険
労働者の失業や雇用が継続困難となった場合に適用される保険制度です。折半の社会保険と違い、事業主と労働者、事業の種類で雇用保険料率が異なります。
現在の雇用保険料率は以下をご確認ください。
<令和4年度の雇用保険料率(令和4年10月1日~令和5年3月31日)>
自己負担 | 会社負担 | 雇用保険料率 | |
一般事業 | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
農林水産・清酒製造事業 | 0.6% | 0.95% | 1.55% |
建設事業 | 0.6% | 1.05% | 1.65% |
所得税
その年の1月1日から12月31日の間に得た所得に対して課税される国税です。会社員は源泉徴収というかたちで、毎月の給与所得から所得税を概算で算出し、控除しています。
毎月の所得税はあくまで概算のため、12月の年末調整または確定申告で、確定した年収を基に所得税を計算しなおし、差額が還付または追徴されます。
住民税
従業員が住民票のある市町村や、都道府県に納める税金です。住民税は前年の所得に応じて、税額が決定し、翌年の6月から支払いが始まります。すなわち住民税は後払いとなっています。

会社員であれば、住民税も所得税と同様に給与から天引きされ、会社が代わりに納付するのが一般的です。これを「特別徴収」といいます。
出典:東京都主税局「個人住民税と特別徴収について」
会社独自の控除
このほかに会社独自の控除項目がある場合は、会社と従業員間の労使協定によって書面上で合意した場合のみ、控除ができます。
会社独自の控除項目として代表的なものは以下のとおりです。
社宅費 | 会社が所有する寮や社宅を従業員に貸与している場合の家賃額 |
組合費 | 会社が加入する労働組合 |
従業員持株会 | 会社の持株会に加入した場合の積立金 |
④ 勤怠
勤怠の欄には、実際にその月働いて賃金が発生した時間や日数が記載されます。
労働日数 | 該当月の実際に労働した日数 |
有給取得日数 | 有給休暇を取得した日数 |
有給残日数 | 残りの有給の日数(締め日時点) |
労働時間 | 該当月の勤務時間の合計 |
残業時間 | 所定労働時間または法定労働時間(8時間)を超えて働いた時間 |
深夜時間 | 深夜(22時~翌5時)に働いた時間 |
休日労働時間 | 労働基準法に定められている休日に働いた時間 |
遅刻早退時間 | 遅刻や早退し、働くことができなかった時間 |
なお、ここで記載される実績は「締め日」の期間となります。
有給残数が給与明細に表示される場合、その残数は勤怠締め日時点までの残数になるので注意しましょう。
給与明細の金額が思っていた金額と差がある場合は、勤怠の項目も確認し、誤って控除されている日や、計算されていない残業時間がないか、確認してみましょう。
給与明細は保存しておくこと
給与明細は確定申告書の作成時に必要となります。また、未払いの給与や残業手当がある場合は、給与明細が発行されてから2年以内であれば請求が可能です。
給与明細はその証拠としても利用できるので、わかりやすいよう時系列にまとめ、最低でも2年間は保管しておきましょう。
まとめ
給与明細は、手当や控除、明細のフォーマットなど会社によって異なる要素が多い書類です。会社の就業規則や雇用契約時の書類をよく確認し、自分の給与が正しく計算されているかを確認しましょう。
また、雇用形態がバラバラであったり、従業員数が多く入退職が頻繁にあったりするような会社は、ミスの軽減や業務効率化のため、給与明細電子化への切り替えがおすすめです。
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よくある質問
給与明細とは?
給与明細とは、その支払われた給与の根拠となる勤怠情報や給与の支払額、控除額など、詳しい内訳が記載されている書類です。給与明細は所得税法231条で、紙、もしくは電子データにて発行を義務付けられています。給与明細の見方については、こちらをご覧ください。
給与明細は保管しておくべき?
給与明細は確定申告書の作成時に必要となります。また、未払いの給与や残業手当がある場合は、給与明細が発行されてから2年以内であれば請求が可能です。給与明細はその証拠としても利用できるので、わかりやすいよう時系列にまとめ、最低でも2年間は保管しておきましょう。給与明細の見方については、こちらをご覧ください。