人事労務の基礎知識

給与計算とは? 概要や計算方法、知っておきたいリスクもわかりやすく解説

最終更新日:2021/07/01

監修 飯塚 知世 社会保険労務士

給与計算とは? 概要や準備・計算方法、知っておきたいリスクも解説

従業員の雇用にあたり、必ず行わなければならないのが、給与計算です。

本記事では、初めて従業員を雇った方でも簡単にわかるよう、給与計算とはなにか、何から始めたら良いのか、給与計算のための準備から計算方法、注意したいリスクまで解説します。

目次

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給与計算とは

給与計算とは文字の通り、社員や契約社員などの毎月の給料を計算する業務のことです。毎月同じ額の支給にみえるかもしれませんが、給与を構成する項目ごとに毎月変動があったり、項目ごとの計算方法が複雑であったりするため、その計算は意外と大変です。

まずは、給与を構成する項目について概要を把握しましょう。給与は、下記のように「支給額」から「控除項目」を差し引くことで計算できます。


給与明細サンプル

給与明細サンプル:人事労務 freeeで作成

①支給額: [基本給と残業代、各種手当など] - ②控除項目:[ 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税など] = ③差引後支給額

①支給額は大きく分けて3つあります。

  1. 基本給
  2. 残業代
  3. 通勤手当などの各種手当
基本給にプラスして、残業代や通勤手当、出張手当などの各種手当を合計したものが支給額になります。

②控除項目は大きく分けて4つあります。
  1. 社会保険料
  2. 雇用保険料
  3. 所得税
  4. 住民税
保険料や税金が含まれ、この控除した金額を年金事務所や税務署などに納めます。

つまり給与計算では、社員への正しい給与額を計算すると同時に、国に納める正しい税額・保険料額を計算することになるのです。

給与計算にまつわるリスク

給与計算は、労務や情報漏えいなど、いくつかのリスクを含んでいるのはご存知でしょうか? この項目では、給与計算担当者なら必ずおさえておきたい代表的なリスクを3つご紹介します。

労務リスク

労務リスクの代表的な例として、残業代の未払いがあります。勤怠の打刻漏れや集計ミスがあった場合、正しい残業代が支払われない可能性があります。

このような人的ミスは、従業員に不信感を与えたり、残業代未払いによる法違反のリスクがあります。

情報漏えいリスク

給与計算の際に必要となる従業員や、扶養家族の個人情報は、適正な管理を行って社内外ともに情報漏えいを防止する必要があります。万が一情報漏えいをした場合、個人情報保護法違反から刑事罰や従業員からの訴訟リスクが発生します。

税務リスク

所得税に計算ミスがあったり納付漏れがあった場合は、税務リスクを引き起こしているといえます。

給与計算の準備

給与計算する前に、前提として準備しておくものを4つ紹介します。

就業規則・給与規程の作成

就業規則とは、従業員が働く上でのルールや、労働条件を定めたものです。従業員が10人以上の企業は、就業規則を作成して必ず労基署に届け出ることが法律で義務づけられています。従業員10人未満の場合は、作成や届け出の義務はありませんが、前もって作成しておくことで従業員と会社でスムーズにやりとりができるでしょう。

【関連記事】
就業規則の作成で業種別に気をつけたいポイント

給与は、就業規則の中で定められていますが、詳細な取り決めが求められることから、「給与規程」として別途定められているケースが多く見られます。この給与規程にもとづいて、毎月給与計算を行なうことになります。

【関連記事】
給与規程(賃金規程)とは?記載するべき事項を解説

就業規則・給与規程に含めるべき事項には、必ず記載しなければいけない項目(絶対的必要記載事項)と、定められていれば記載する必要がある項目(相対的必要記載事項)、その他の項目(任意的事項)の3種類があります。

必ず記載しなければならない項目は、次の通りです。

労働時間関係 始業・終業時刻や休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項などの労働時間に関する情報
賃金関係 給与の決定、計算・支払い方法、締め日や支払日、昇給などに関する情報
退職関係 退職(解雇の事由を含む)に関する情報

参考:厚生労働省 モデル就業規則 令和2年11月版

さらに詳しい就業規則についての情報は、厚生労働省のサイトでダウンロード可能な「モデル就業規則」 を参照してください。

従業員情報の収集・更新

給与計算には、従業員の情報が必要となります。勤続年数や職種、役職などによって基本給や手当が変わることが多いためです。

また家族の増減がある場合、扶養状況によっては家族手当や所得の控除額が変わり、勤務地の変更・転居があれば通勤手当が変わります。給与に関わる従業員情報については、毎月の給与計算前に収集・更新しておきましょう。

社会保険の加入の有無

保険料は給与計算にかかせない項目です。法律で定められた条件に当てはまる場合、従業員は各保険に加入する義務があります。正社員・パートタイムなどの雇用形態にかかわらず、条件に当てはまれば加入する義務があるので注意が必要です。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

法人では、下記に当てはまる従業員や役員は、健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

  • 事業所の規模を問わず1週間の労働時間が30時間以上
  • 従業員501人以上の事業所においては以下の要件をすべて満たすこと
    • ・1週間の労働時間が20時間以上
    • ・月額賃金が8.8万円以上
    • ・継続して1年以上使用される見込み
    • ・学生以外
参考:厚生労働省

社会保険(介護保険)

原則として、社会保険に加入している40歳から64歳までの従業員、役員が加入対象となります。健康保険料に上乗せする形で介護保険料を納付します。

【関連記事】
社会保険とは? 雇用保険はなにが違う?内容と加入条件の違い

労働保険(雇用保険)

下記2つの項目を満たす従業員は雇用保険の加入対象となります。

  • 31日以上続けて雇用される予定
  • 1週間の労働時間が20時間以上の予定
参考:厚生労働省

労働保険(労災保険)

労災保険は、すべての従業員が加入対象となりますが、保険料はすべて会社負担となります。また年1回の納付となるので、毎月の給与計算ではそこまで意識しなくていいでしょう。こちらも雇用保険と同じく、役員は原則対象外となります。

【関連記事】
労働保険とは?労働保険の年度更新と必要な手続き、保険料の計算・申告・納付方法について

勤怠管理

給与計算には、各従業員の労働時間の計算が必要となります。時間外労働に対する割増賃金の計算や、時給制でパートタイムやアルバイトで働く従業員の給与を計算するためです。この計算のためのデータ集めとして、出勤簿をつけたりタイムカードで出退勤を記録することが必要です。

【関連記事】
勤怠管理とは?カンタンに行う方法や目的・重要性を解説

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給与計算の方法

給与計算の準備が済んだら、実際に計算をしていきます。 まずは冒頭でお話した給与を構成する項目について、より詳しく解説していきます。

支給額: [基本給・残業代・各種手当] - ②控除項目:[ 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税] = ③差引後支給額

給与の支給額の計算

給与の支給額には、基本給や職務手当のような固定的なものと、残業代や休日手当、深夜労働手当の割増賃金などの変動的な2種類があります。

給与支給額のうち固定的なものについては、雇用契約書もしくは就業規則の中で定められているため、計算は必要ありません。会社で定められた金額を元に、計算を進めましょう。

一方で変動的な支給額については、毎月の勤務状況や残業時間にもとづいて計算する必要があります。詳しくは次の項目で説明をします。

変動的な給与支給額(残業代・深夜手当・休日手当)の計算

残業代(残業手当)や深夜手当、休日手当といった給与については、下記のように計算します。

残業代 =時間外労働の時間数 × 1時間あたりの賃金 × 割増率

月給制の場合、1時間あたりの賃金は次のように計算します。

1時間あたりの賃金 =月給 ÷ 1ヶ月あたりの平均所定労働時間

月給は、基本給のほか役職手当や資格手当なども含める必要があります。

ただし、家族手当や通勤手当・住宅手当などの手当は、支給条件によってここでの月給として含めなくてもよいとされています。

以下の具体的な例で残業代の計算方法を解説します。

【事例】
・勤務日:平日
・勤務時間:10時〜19時(休憩1時間)
・基礎賃金:25万円
・1ヶ月の平均所定労働時間:160時間
・残業時間(19時〜22時):10時間

【1時間あたりの賃金】
・25万円 ÷ 160時間 = 1,563円

【1ヶ月の残業代】 ・1,563円 × 10時間 × 1.25 = 19,538円

1ヶ月あたりの平均所定労働時間は、次のように計算します。

1ヶ月あたりの平均所定労働時間 = { (365日* - 年間所定休日数) × 1日の所定労働時間数 } ÷ 12(ヶ月)

*暦日数なので、閏年の場合は366日とします。

割増率については下記にもとづいて計算します。

種類 割増対象となる時間 割増率
時間外 法定労働時間である1日8時間
週40時間を超えた労働時間
25%以上
深夜 22時から5時までの間の労働時間 25%以上
休日(法定) 法定休日(週1日)における労働時間 35%以上
休日(法定外) 会社で定めた休日(所定)における労働時間 0%以上
(法定時間外に及ぶときは25%以上)

なお、割増率は足し合わせになることに注意が必要です。

たとえば時間外労働かつ深夜労働の場合、割増率は 50%以上となります。また、時間外・深夜・休日の労働時間については、日々の計算では1分単位から計算に含める必要があり、15分未満は切り捨て等とするのは違法になります。

(例外的に、1ヶ月の労働時間合計において30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げとすることは認められています。)

計算できた変動的な給与支給額(残業代・深夜手当・休日手当)を、固定的な支給額に足して、給与支給額のベースを計算しましょう。

人事労務freeeでは、勤怠を入力すると毎月の給与計算を自動で行い、ワンクリックで給与明細の発行も行います。

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給与の控除額の計算

支給額の計算のほかに、控除の計算も必要です。会社と従業員双方が負担する保険料の従業員負担分と従業員のみが負担する税金を計算していきます。

雇用保険料の計算

雇用保険は、会社と従業員双方で負担します。給与に反映させる従業員負担分の雇用保険料は下記のように計算します。

雇用保険料 = 賃金 × 3 / 1000(一般の事業の場合。令和3年4月1日〜令和3年4月31日までの料率)

【事例】賃金総額40万円の一般の事業に従事する労働者負担分の計算方法
・40万円 × 3/1000 = 1,200円

賃金額には基本給のほか、残業手当、通勤手当(非課税分含む)や家族手当、住宅手当なども含みます。また保険料率は事業の種類によって異なりますので、詳細は厚生労働省のWebサイトにてご確認ください。

【関連記事】
雇用保険とは? 概要から加入対象、手当の種類まで解説

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の計算

健康保険料・厚生年金保険料は、会社と従業員でそれぞれ負担します。ただし、健康保険組合にによっては折半とならない場合もありますので加入している組合に確認しましょう。

会社と折半になる場合に、従業員が負担する保険料は以下で求めます。

保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

【事例(健康保険)】
東京都の事務所に従事して、協会けんぽに加入する標準報酬月額41万円の従業員負担分の計算方法
・41万円 × 9.84% ÷ 2 = 20,172円

【事例(厚生年金保険)】
標準報酬月額41万円の従業員負担分の計算方法
・41万円 × 18.300% ÷ 2 = 37,515円

標準報酬月額とは、おおよその賃金額のことで、健康保険なら賃金額を50の等級にわけたもの、厚生年金保険なら32の等級に賃金をわけたものになります。なお等級に分ける前の賃金額には、基本給のほかに残業手当、家族手当、住宅手当、役職手当、通勤手当などが含まれます。社会保険料の計算について、詳しくは下記のページをご覧ください。

【関連記事】
社会保険料の計算方法とは? 給与計算時の注意点や基礎知識

介護保険料の計算

介護保険料は、会社と従業員で折半します。40歳以上65歳未満の従業員負担分の保険料の計算は、下記のように行います。

介護保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

【事例】
協会けんぽに加入(令和3年3月分の保険料率「1.80%」)して標準報酬月額41万円の従業員負担分の計算方法
・41万円 × 1.80% ÷ 2 = 3,690円

介護保険料の計算は保険者によって料率が異なります。詳細は各健康保険組合もしくは全国健康保険協会のWebサイトでご確認ください。

【関連記事】
介護保険とは?計算方法や第1号・第2号被保険者など徹底解説

所得税の計算

所得税とは、従業員の所得にかかる税金のことをいいます。所得税は、従業員が税務署に納付するのではなく、会社が給与から差し引いて徴収(源泉徴収)し、従業員の代わりに税務署に納付します。1年間の正確な所得税額は年末調整で計算し調整することになるので、毎月の給与計算と納付では、おおよその額を計算・納付することとなります。

所得税の計算は源泉徴収税額表をもとに計算されます。

また、また、社会保険料控除後の給与金額は、以下の式で計算します。

社会保険料控除後の給与金額 = 支給額(基本給・残業代・課税対象の手当)- (社会保険料や雇用保険料)

【事例】
東京都の飲食店で働く支給額40万円の従業員(40歳未満・甲欄・扶養なし)負担分の計算方法

  • 社会保険料控除後の給与金額:40万円 - (57,687円(社会保険料) + 1,200円(雇用保険料)) = 341,113円
  • 所得税:11,850円※税額表参照
支給額を計算する際には、手当から非課税の手当額を除外する必要があります。非課税の手当額としては、通勤手当(一定額以下)や転勤・出張のための必要と認められたもの、宿直や日直手当(一定額以下)があります。

なお、税額表によらず、電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法を定める財務省告示により源泉徴収税額を求めることができるという特例があります。

【関連記事】
所得税とは?毎月の給与における源泉所得税の計算方法

住民税の計算

従業員が市区町村に納付する税金が住民税となります。住民税は、所得税と同様、会社が給与から差し引いて徴収し、従業員の代わりに市区町村に納付します。

住民税は、該当する従業員の前年の所得をベースに計算され、1年間の住民税額を12回分に分けた額を毎月徴収して支払うことになります。

住民税額は、毎年5月に市区町村からまとめて届く6月〜5月の12ヶ月分の納付書に、毎月納付すべき住民税額が記載されています。したがって、給与計算時に計算をする必要がなく、納付書に記載された額を、毎月従業員の給与から差し引くことになります。

【関連記事】
給与計算における住民税の計算・更新・納付について解説

給与計算や給与明細発行をカンタンに行う方法

毎月の給与の計算と給与明細の作成をラクに

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まとめ

給与計算では、社員への正しい給与額を計算すると同時に、国に納める正しい税額・保険料額を計算することになります。上記の流れから計算した保険料や税金を支給額から差し引けば、毎月の給与計算が完了します。計算ができたら、給与明細の作成と給与振込、保険料や税金の納付を行いましょう。

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監修 飯塚 知世 社会保険労務士

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