人事労務の基礎知識

給与計算のやり方まとめ!手順・計算式・注意点を初心者向けにわかりやすく解説

給与計算のやり方まとめ!手順・計算式・注意点を初心者向けにわかりやすく解説

給与計算とは、総支給額から各種控除を差し引き、実際に従業員へ支払う手取り額を計算するまでのフローです。

給与計算はまず総支給額を算出し、次に控除額を計算、その後に差引総支給額を求めるという順序で進めます。

本記事では、2025年4月からの雇用保険料率改定や最新の税額表に基づき、はじめてでも給与計算が確実にできるように順序別にわかりやすく解説します。

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目次

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給与計算の基本フローと計算式

給与計算とは、総支給額から各種控除を差し引き、実際に従業員へ支払う手取り額を計算するまでのフローです。

給与計算の計算式

総支給額 - 控除額 = 差引総支給額(手取り額)

総支給額・控除額の計算は、各項目ごとにルールや法律が異なります。大きく分けて、以下の3ステップで進めていきます。

  1. 総支給額の計算(基本給 + 諸手当 + 残業代など)
  2. 控除額の計算(社会保険料 + 税金など)
  3. 差引総支給額(手取り額)の確定

ここからは、給与計算の各手順で何を算出するのか、どのような計算式を利用するのかについて詳しく解説していきます。

1. 総支給額の計算

まずは、従業員に支払う額面の金額を算出します。

勤怠データの集計

基本給などが設定されている場合は、タイムカードや管理システムから以下の数値を確定させます。有給休暇の使用時間も総労働時間に含めるので注意しましょう。

勤怠データの集計

  • 所定労働日数・時間
  • 実際の出勤日数・時間
  • 欠勤・遅刻・早退の時間
  • 時間外(残業)・深夜・休日労働の時間

なお、所定労働時間とは企業で決められている勤務時間のことで、法定労働時間とは1日8時間・週40時間までの勤務時間のことを指します。

所定労働時間が法定労働時間より少ない場合、残業代を支払う範囲やその額は雇用契約に則って計算します。法定労働時間を超えた分は、必ず規定の割増賃金を支払わなくてはなりません。

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割増賃金の計算

1時間あたりの賃金を算出し、法定の割増率を掛け合わせます。

1時間あたりの賃金の計算式

1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間

1ヶ月の平均所定労働時間の計算式

月給 = 基本給 + 役職手当 + 資格手当など


※住居手当や通勤手当などは原則含まない

1ヶ月の平均所定労働時間の計算式

1ヶ月の平均所定労働時間 = { (365日 - 年間所定休日数) × 1日の所定労働時間数 } ÷ 12(ヶ月)

1時間あたりの賃金が算出できたら、その賃金をもとに次のように割増賃金を計算します。

割増賃金の計算式

割増賃金 = 時間外労働時間数 × 1時間あたりの賃金 × 割増率

それぞれの割増率は、以下の表を参考にしてください。

種類割増対象となる時間割増率
法定時間外労働法定労働時間である1日8時間
週40時間を超えた労働時間
25%以上
1ヶ月60時間を超える分の時間外労働
(2023年4月1日から適用)
50%以上
法定内残業会社で定められた労働時間を超えているが、労働基準法で定められた法定労働時間は超えていない分の残業0%以上
深夜22時から5時までの間の労働時間25%以上
休日(法定)法定休日(週1日)における労働時間35%以上
休日(法定外)会社で定めた休日(所定)における労働時間0%以上
(法定時間外に及ぶときは25%以上)

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各種手当の計算

役職手当や資格手当などを加算します。ここで解説する各種手当は、残業代などの法律で定めている時間外手当ではなく、企業が任意で用意する手当です。

各種手当は会社によって内容や金額が異なりますが、代表的なものとして以下が挙げられます。

各種手当の代表例

  • 通勤手当
  • 出張手当
  • 転勤手当
  • 役職手当
  • 資格手当

通勤手当は、月15万円までは非課税(出張手当や転勤手当も必要であれば非課税)となります。役職手当や資格手当は、課税対象です。

2. 控除額の計算

次に、給与から差し引く控除額を計算します。ここがもっとも法改正の影響を受けやすい部分です。

なお、各種保険料は会社が負担するものと従業員が負担するものに分かれますが、ここでは従業員の給与から控除する分のみについて解説します。

社会保険料の計算

社会保険には「健康保険」と「厚生年金保険」の2種類があり、保険料は会社と従業員で折半するのが一般的です。また、健康保険は会社によって保険料が異なります。ここでは協会けんぽを例にして紹介します。

健康保険と厚生年金保険はどちらも次のように計算します。

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の計算式

社会保険料 = 標準月額報酬 × 保険料率 ÷ 2

標準月額報酬は、その年の4〜6月の給与の平均額です。この計算には基本給・役職手当・残業代・通勤手当・家族手当などが含まれます。年3回以下の賞与や臨時ボーナス、祝い金などは対象外となります。

健康保険料の計算例(標準月額報酬32万円、東京の事業所で保険料率9.98%の場合)

健康保険料:320,000円 × 9.98% ÷ 2 = 15,968円

健康保険料率は都道府県ごとに毎年3月に見直されます。また、協会けんぽの場合は保険料率は各都道府県によって異なるため、協会けんぽのホームページを参考に事業所のある各都道府県の保険料率を確認しましょう。

厚生年金保険料の計算例(標準月額報酬32万円、保険料率18.3%の場合)

320,000円 × 18.3% ÷ 2 = 29,280円

社会保険料の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
社会保険料の計算方法とは?シミュレーションや内訳、注意点を解説

介護保険料の計算

介護保険料は40歳から64歳に課税される社会保険で、保険料は会社と従業員で折半となります。

介護保険料の計算式

介護保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

以下の計算例は、協会けんぽの保険料率をもとに算出しています。

介護保険料の計算例(標準月額報酬32万円、保険料率1.60%の場合)

320,000円 × 1.60% = 5,120円

介護保険料の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
介護保険料の計算方法まとめ!制度の概要や計算例を解説

雇用保険料の計算

雇用保険料は事業内容によって変動しますが、一般企業の場合、労働者負担は1,000分の6です。

雇用保険料の計算式

雇用保険料 = 賃金 × 雇用保険料率

なお、2025年4月1日から2026年3月31日までの雇用保険料率は前年度よりも引き下げられています。2026年4月1日からの雇用保険料率についても、引き下げられる見込みのため、自社の事業内容に対して雇用保険料率が正しく反映されているかを必ず確認しましょう。

雇用保険料の計算例(標準月額報酬32万円、一般企業で保険料率5.5 / 1,000の場合)

320,000円 × 5.5 / 1,000 = 1,760円

所得税の計算

所得税とは、1月1日~12月31日の所得にかかる税金のことです。会社員の場合、毎月源泉徴収をして会社側が個人に代わって納税しますが、これはあくまでおおよその金額です。そのため、1年間の所得税額が確定する12月に年末調整を行い、正確な所得税を算出します。

所得税を算出するためには、まず所得税のかかる課税所得を計算する必要があります。課税所得は、以下の計算式で求めます。

課税所得額の計算式

課税所得額 = 給与(基本給 + 残業代など)-(社会保険料 + 雇用保険料)

上記の計算で求めた課税所得を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に照らし合わせて、源泉徴収額を算出します。

所得税の計算例(給与32万円、社会保険料45,248円、雇用保険料1,920円の場合)

課税所得額 = 320,000円 -(45,248円 + 1,920円)= 272,832円
所得税(源泉徴収)= 7,390円

住民税の計算

住民税は、前年の所得をもとに計算します。

住民税の計算式

1ヶ月の住民税額 = 通知された住民税額 ÷ 12

毎年5月に各市町村長から届く住民税決定通知書に記載された1年分の住民税額を12ヶ月で割って、毎月の給与から差し引きます。徴収対象期間は、6月から翌年5月までを1サイクルとするのが通常です。

1ヶ月の住民税の計算例(住民税額6万円の場合)

60,000円 ÷ 12 = 5,000円

従業員の住民税の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
住民税の計算方法とは?税率や計算シミュレーションを紹介

3. 差引総支給額の計算

上述の「1. 総支給額」から「2. 控除額」を差し引いた額が「差引総支給額」となり、従業員に実際に支払う給与(手取り額)です。

差引総支給額の計算式

差引総支給額 = 総支給額 - 控除額

ここでは、前述した総支給額と控除計算方法を含めて、実際の計算例をご紹介します。

条件


  • 35歳、独身、20日勤務、1日8時間勤務(所定勤務時間160時間)
  • 基本給23万円、標準月額報酬28万円、東京の会社
1. 総支給額
基本給230,000円
残業16時間28,740円
(1,437円 × 25% ×16時間)
深夜残業2時間4,311円
(1,437円 × 50% × 2時間)
役職手当10,000円
通勤手当(非課税)13,000円
合計286,051円
2. 控除額
健康保険料13,972円
(28万円 × 9.98% ÷ 2)
厚生年金保険料25,620円
(28万円 × 18.3% ÷ 2)
介護保険料0円
雇用保険料1,716円
(286,051円 × 6 / 1,000)
所得税5,890円
(課税所得※が231,743円のため)
住民税(仮)5,000円
合計52,198円

※ 所得税は総支給額から非課税手当や社会保険料等を差し引いた額に課税する

3. 差引総支給額
総支給額 - 控除額233,853円
(286,051円 - 52,198円)

所得税の計算式 = 286,051円(総支給額)- 13,000円(非課税手当) - 41,308円(社会保険料など) = 231,743円(課税所得額)

算出した課税所得額を「給与所得の源泉徴収税額表(令和7年分)」と照らし合わせると、扶養親族等の数が0人であることから、課税所得額は5,890円となります。

給与計算を始める前におさえたい4つのポイント

給与計算を初めて行う人がおさえたい、4つのポイントを解説します。毎月の給与計算を適切に行うため、定期的にルールや法律の改正を確認するなど、情報をアップデートしましょう。

賃金支払いの五原則の遵守

給与の支払い方は労働基準法第24条で定められており、通称「賃金支払いの五原則」と呼ばれています。具体的には、「通貨で」「労働者に直接」「全額を」「毎月1回以上」「一定の期日」に支払わなければならないというものです。

賃金の制度やルールについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
賃金とは?最低賃金制度や支払いのルールなどを解説

社会保険などの要件の確認

社会保険料の加入要件は段階的に拡大されており、確定している要件からさらに改正が行われる可能性があります。定期的に厚生労働省のホームページで情報更新の確認をしましょう。

2024年10月からの最新の社会保険の加入要件は以下のとおりです。

社会保険の加入要件


  • 従業員数 51人以上の会社
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金 8.8万円以上
  • 2ヶ月を超えて雇用される見込みがある
  • 学生ではない

健康保険料・介護保険料率は、事業所で加入している各健康保険組合や協会けんぽのホームページ、厚生年金保険料率は日本年金機構のホームページで確認できます。

社会保険の加入条件については、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
社会保険の加入条件とは?従業員・事業所別の条件や2024年問題後の変更点を解説【2026年最新】

従業員情報、勤怠情報の管理

正しい給与計算を行い、適切に給与を支払うために重要なのは、従業員の情報や勤怠情報を正しく管理することです。

給与計算において重要なポイントは、以下の4つです。

  • 従業員の勤怠管理の徹底
  • 役職や人事評価などの基本給に関わる情報の管理とアップデート
  • 扶養の有無や通勤手当に関する手続きの促進と情報管理
  • 扶養内で働く従業員の所得管理

従業員の勤怠情報は、割増賃金を含めて正しい金額で給与を計算するための基本的な項目です。

また、人事評価などによって昇給及び降給などが発生した際に、適切なタイミングで給与計算に反映できるようにしておく必要があります。

社会保険料の計算漏れを防ぐだけでなく、従業員が平等に会社の福利厚生を受けられるよう、各種手当の周知や扶養家族の申請といった手続きの促進も積極的に行いましょう。

事業所所在地のルールの確認

会社やその事業所の所在地が全国に点在する場合、各都道府県で給与に関するルールが変わるため、情報のアップデートは必須です。

とりわけ最低賃金に関しては、地域によって差異があるため、事業所に所属する従業員の賃金が最低賃金を割らないようにご注意ください。万が一、賃金が最低賃金を下回った場合、50万円以下の罰金が課せられます。

給与計算をミスなく行うための注意点

給与計算業務には労務や情報漏えい、税務に関するリスクが伴います。なんらかの間違いがあった場合、内容によっては訴訟や刑事罰、追徴課税などにつながるおそれがあります。

労務のリスク

勤怠管理や給与計算をアナログで管理、または手動でデータを転記する必要がある場合、データの入力ミスや情報の移行ミスによって、賃金の支払い不備もあり得ます。

ほかにも、従業員によるタイムカードの打刻漏れや、テレワークなど勤務形態の煩雑化によるデータ処理のミスにも注意が必要です。

残業代未払いなどが労働基準法の違反とみなされると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

勤怠管理のミスや見落としを防ぐため、複数人でのチェックをルーティンにする、システムの導入でヒューマンエラーを回避するといった対策を講じましょう。

情報漏えいのリスク

給与計算業務の際、何らかの理由で従業員の個人情報を漏えいしてしまった場合、個人情報保護法違反となるおそれがあります。この場合、情報を漏えいした従業員は1年以下の懲役または50万円以下の罰金、またはその両方が科せられ、情報を漏えいした会社は1億円以下の罰金が科せられます。

刑事罰以外にも、情報漏えいされた従業員からの訴訟や、会社の信用の失墜、それに伴う企業価値の低下などさまざまなリスクが考えられます。情報管理には細心の注意を払いましょう。

税務のリスク

万が一、給与計算を間違えると、社会保険料や所得税の計算にも影響が及ぶことに注意が必要です。

会計処理を間違えて実際の納税額よりも少なく申告・納税してしまうと、後から追徴課税などを含めた金額を請求される可能性があります。またそれだけでなく、税務署からの税務調査を受ける場合もあります。

追徴課税は金額の負担が大きいだけでなく、書類の作り直しが必要となるため、給与や保険料率の計算ミスなどに十分気を付けましょう。

修正・精算ミスによる法的リスク

給与計算に間違いが見つかった場合、その後のリカバリー方法を誤ると、さらに深刻な法的トラブルに発展するおそれがあるため注意が必要です。

賃金の不足(未払い)が発生していた際は、労働基準法違反を避けるためにも速やかな清算が求められます。ただし、実務上は従業員に説明を行った上で直近の給与計算で調整給として合算し、精算を行うのが一般的です。

一方で、本来よりも多く支払ってしまった過払いを翌月以降の給与から差し引く場合は、より慎重な対応が求められます。労働基準法には賃金全額払いの原則があるため、会社が一方的に多額の相殺を行うことは原則として認められません。判例上、計算ミスの是正を目的とした合理的な範囲内の調整であれば肯定される傾向にあります。ただし、トラブルを未然に防ぐためには事前に本人へ通知し、同意を得た上で精算を進めるなどの配慮が不可欠です。

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まとめ

給与計算は、従業員への正しい給与支払だけでなく、社内の労務管理や税務管理などのためにも重要な業務です。

とくに手当は企業によって内容が異なるため、会社で支払っている手当のうちどれが課税対象で、どれが非課税対象なのかなどにも注意が必要です。

給与計算の業務を担当することになったら、必要な知識を習得するとともに、定期的な情報のアップデートで正しく給与を計算しましょう。

よくある質問

給与計算のやり方は?

給与計算のやり方は、以下のステップに沿って算出します。


  1. 総支給額の計算(基本給 + 諸手当 + 残業代など)
  2. 控除額の計算(社会保険料 + 税金など)
  3. 差引総支給額(手取り額)の確定

それぞれの計算方法についての詳細は、記事内の「給与計算の基本フローと計算式」をご覧ください。

給与の手取り額の計算方法は?

給与の手取り額は、給与計算の計算式「総支給額 - 控除額 = 差引総支給額(手取り額)」によって計算できます。

詳しい計算の方法は、記事内「3. 差引総支給額の計算」をご覧ください。

給与計算で間違いが見つかった場合、どう修正すればよい?

不足分については発覚後速やかに支払うか、従業員に説明した上で翌月の給与に調整給として合算して精算するのが一般的です。一方、過払い分を差し引く場合は、労働基準法の「全額払いの原則」に配慮する必要があります。トラブルを防ぐため、事前に本人へ通知し、同意を得た上で精算を進めるようにしましょう。

詳細は、本記事内の「修正・精算ミスによる法的リスク」をご覧ください。

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