監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

一人社長で従業員がいない場合でも、法人化(法人成り)は可能です。会社を設立することで、社会的な信用度が高まったり支払う税金を抑えられたりと、個人事業主にはないメリットが得られます。
ただし、会社設立は個人事業主の開業に比べて手続きが多く費用もかかるため、事前に情報収集をし、資本金や各種書類を準備しておかなければいけません。
本記事では、一人で会社を作るうえで知っておくべき手順やメリット・デメリット、一人会社と個人事業主の違いなどについて、詳しく解説します。
目次
- 一人で作れる会社(法人)形態とは?
- 一人で会社を作る手順
- 一人で会社を作るメリット・デメリット
- 一人で会社を作るメリット
- 一人で会社を作るデメリット
- ①会社を作るのに必要な基礎情報を決める
- ②法人用に必要な実印を作成する
- ③定款を作成する
- ④公証役場で作成した定款の認証を受ける
- ⑤資本金を決定し払込を行う
- ⑥会社を作る際の必要書類を用意して法務局で登記申請を行う
- ⑦会社設立後の各種手続きを行う
- 一人会社の設立登記はオンラインで申請できる
- 一人会社と個人事業主の違い
- 社会的信用度の高さ
- 起業(法人成り)と開業(個人事業)にかかる費用
- 課税される税金
- 金融機関や投資家からの融資や出資の受けやすさ
- 事業に失敗した場合に受ける責任
- 経費として認められる幅
- 社会保険加入の有無
- 廃業にかかる費用
- 一人で会社を作る際の注意点
- 健康保険と厚生年金保険への加入は義務
- 経費の扱い方に気をつける
- 自分自身の給料(役員報酬)の金額で税金が変わる
- 個人事業主は廃業の手続きが必要
- 税務調査のリスクと対策
- まとめ
- freee会社設立なら、法人化の手続きをかんたん・あんしんに!
- よくある質問
一人で作れる会社(法人)形態とは?
一人で設立を行える会社(法人)形態は、株式会社・合名会社・合同会社の3種類です。合資会社は、2名以上のメンバーがいなければ設立できません。
なお、合名会社は、出資者全員に無限責任(出資額に関わらず負債全額を返済する義務)があるため、一般的に一人で会社を作る際に選ばれているのは株式会社と合同会社の2種類です。
株式会社と合同会社の違いについては、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
株式会社と合同会社の違いとは?それぞれのメリットとデメリットまとめ
一人で会社を作る手順
会社を設立する際は、定款の作成や登記申請など、さまざまな手続きが必要なため、計画的に準備しましょう。一人で会社を作る手順は、大きく分けて以下7つのステップです。
一人で会社を作る手順
- 会社を作るのに必要な基礎情報を決める
- 法人用に必要な実印を作成する
- 定款を作成する
- 公証役場で作成した定款の認証を受ける
- 資本金を決定し払込を行う
- 会社を作る際の必要書類を用意して法務局で登記申請を行う
- 会社設立後の各種手続きを行う
また、株式会社や合同会社の設立手順を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について
自分一人で合同会社を設立するには?用意する書類から必要手続きまで解説
一人で会社を作るメリット・デメリット
一人で会社を作ることには、意思決定の速さや資金節約など複数のメリットがある一方で、一人で行うからこそのデメリットもあります。法人化の手続きを始める前にメリット・デメリットを確認し、スムーズに会社設立・運営を進められるようにしましょう。
一人で会社を作るメリット
一人で会社を作るメリットは、以下の通りです。
一人で会社を作るメリット
- スムーズな意思決定で手続きが行える
- 法人化の際にかかる必要資金が抑えられる
- 会社運営に必要な知識や経験が得られる
- 自分の裁量で働き方を決められる
以下でそれぞれのメリットを、詳しく解説します。
スムーズな意思決定で手続きが行える
会社設立時には、商号や事業内容などを決定する必要があります。
複数人で会社を設立する場合は、メンバー間での議論を通じて意思決定を行い、皆が納得できるように進めることが必要です。
しかし、一人で会社を立ち上げる場合は、全ての意思決定を個人で行えるため、会社設立に関する要件を円滑に決定できます。
法人化の際にかかる必要資金が抑えられる
会社設立を行う場合は、一般的に事業所を借りたり、PCを購入したりといった設備投資が必要です。複数人で法人化すると、広い事業所や人数分の備品が必要なケースもあります。
一人の場合は、わざわざ広い事業所を借りなくとも、自宅やコワーキングスペース、バーチャルオフィスなどを利用して費用を抑えることが可能です。また、備品購入費も自分の分だけで済みます。
会社運営に必要な知識や経験を得られる
一人で会社を作る場合は、基本的に各種申請手続きや資金調達、営業から経理作業まで全て一人で行います。専門的な業務を外注するとしても、最終的な確認や判断を行うのは自分自身です。
そのため、会社運営に必要な知識や経験を網羅的に身につけられる点がメリットです。
自分の裁量で働き方を決められる
一人で会社設立を行って運営する場合、働く場所も働く時間も全て自分の裁量で決められます。
自分自身のペースで仕事を進めることが可能なため、理想とするワークライフバランスを実現しやすいです。
一人で会社を作るデメリット
一人で会社を作ることはメリットがある一方で、以下のデメリットもあります。
一人で会社を作るデメリット
- 全ての手続きを一人で行うため労力がかかる
- 会社の事業が上手くいくかどうかは自分の能力次第
- 一人だと複数名で運営している会社より信用度が低い
全ての手続きを一人で行うため労力がかかる
一人で会社を作るには、法人化の手続きから運営に必要な経理作業まで全て一人で行わなければならず、かなりの労力や時間がかかることが予想されます。
そのため、事前に勉強しての知識を身につけたり、効率化できるツールを活用したりといった対応が必要です。
会社の事業が上手くいくかどうかは自分の能力次第
一人で会社を運営する際は、事業の意思決定を迅速に行える反面、事業の成否が個人の能力に大きく左右されます。ほかのメンバーにアドバイスを求めることができず、一人で責任を背負わなくてはなりません。
事業の成功のためには、社外の人と連携しアドバイスを得ることが重要です。自身の能力に頼るだけでなく、外部のサポートを受ける体制を設けましょう。
一人だと複数名で運営している会社より信用度が低い
一人で会社を運営していると、資金調達や顧客獲得などさまざまな面で複数名で運営している会社より信用されにくい傾向があります。
一人で運営している会社が信用されにくい理由はいくつかあります。一人だと、万が一働けなくなった際に事業が完全に停止してしまう恐れから事業継続性が低いとみなされやすいことも理由のひとつです。
たとえば、法人口座を開設する際に、金融機関の審査に影響することもありえます。しかし、個人事業主と比較すると一人でも法人化しているほうが信用度が上がるため、事業の幅が広がることも事実です。
①会社を作るのに必要な基礎情報を決める
会社設立を行うには、まず必要な基礎情報を決めます。
会社設立のための基礎情報
- 会社形態
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 会社設立日
- 会計年度
- 役員や株主の構成
これらは会社設立に必要な「定款(ていかん)」に記載する重要項目のため、不足がないように決定しましょう。
②法人用に必要な実印を作成する
法人用の実印は、登記申請書類や重要な契約書などに押印する際に使用されます。
法人用の実印は一般的な印鑑とは異なり、専門の業者に作成依頼が必要です。そのため、会社設立を決定した段階で実印の作成を依頼しておくことで、その後の手続きをスムーズに進められます。
法人用の実印は法務局で登録する必要があり、その際に印鑑届書が必要です。なお、2021年2月15日に法改正が行われ、オンラインで設立登記を行う際は印鑑の届出が任意となりました。
ただし、会社間の取引や融資の契約などの場面で使用することがあるため、オンラインで登記申請を行う場合でも、法人用の実印を作成しておくほうが便利です。
③定款を作成する
定款(ていかん)とは、会社の目的・事業内容・役員の任期など、事前に設定した基礎情報などを規定した書類です。会社を設立するためには、定款の作成と提出が必須です。
定款の記載内容は会社法によって一定の基準が設けられており、事業目的や商号などの「絶対的記載事項」は必ず記載しなければいけません。万が一記載されていない場合は定款自体が無効となります。
【関連記事】
会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説
④公証役場で作成した定款の認証を受ける
定款が作成できたら本店所在地がある公証役場にて定款を提出し、認証を受けます。定款の認証手続きを受けるには、以下の書類や費用が必要です。
定款の認証手続きに必要な書類
- 定款:3部
- 発起人全員の3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書:各1通
- 発起人全員の実印
- 定款認証手数料:15,000円 〜50,000円 ※
- 謄本代:250円 × 定款の枚数(現金)
- 収入印紙:40,000円
- 委任状(代理人が申請する場合)
- 実質的支配者となるべき者の申告書
※資本金額や条件によって異なる
認証手続きは予約制なので、事前に公証役場に連絡をして日時を決めましょう。認証手続きの手段は、ウェブ会議または訪問の2通りです。
また、提出の前にメール・郵送・FAXなどで定款を送付しておくと公証人が事前に内容をチェックしてくれるため、認証手続きもスムーズに進みます。
定款はオンラインで電子認証を行うと、収入印紙代の40,000円がかかりません。ただし、電子定款のためのソフトウェア購入費などで、かえって高くついてしまうこともあるので、事前に費用を確認しておきましょう。
定款の認証は株式会社・一般財団法人・一般社団法人の3形態でのみ必要な手続きで、合同会社や合名会社は定款の認証を受ける必要はありません。
⑤資本金を決定し払込を行う
定款の認証が完了したら、資本金を決定し払込を行います。資本金払込は一般的に銀行振込によって行うことが多く、その場合は別途、振込手数料がかかります。
また、この時点では、法人口座を開設することができないため、振込先は自分自身の個人口座にしてください。
なお、支払い後は資本金を証明する書類として、「通帳の表紙と1ページ目」と「資本金の振込内容が記載されているページ」をコピーしておきましょう。これらは、後日登記申請の際に必要となるので、大切に保管しておいてください。
⑥会社を作る際の必要書類を用意して法務局で登記申請を行う
ここまでの手続きや準備が完了したら、会社設立のための登記申請を法務局にて行います。登記申請には、以下10種類の書類が必要です。
登記申請に必要な書類
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑登録証明書
- 資本金払込があったことを証する書面
- 印鑑届出書(オンライン申請時は任意)
- 「登記すべき事項」を記載した書面または保存したCD-R
不備がなければ10日ほどで登記完了となり、晴れて法人として認められます。基本的に登記完了の連絡はなく、万が一不備があった場合のみ申請した役所から連絡があります。
より具体的な会社設立の費用や手続きを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について
⑦会社設立後の各種手続きを行う
会社を設立したら、税務署や年金事務所、銀行などで各種手続きを行います。会社設立後に必要になる主な手続きは以下の通りです。
会社設立後の手続き
- 法人税・消費税(インボイス)について税務署に届け出る
- 法人住民税・法人事業税について各都道府県税事務所・市町村役場に届け出る
- 健康保険・厚生年金の加入手続きについて年金事務所へ届け出る
- 銀行で法人口座を開設する
会社設立後の各種手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは?
一人会社の設立登記はオンラインで申請できる
会社の設立登記は、法務局に直接行って手続きするほか、オンラインでも申請できます。オンライン申請であれば法務局に行く手間がかからず、一定の条件を満たせば申請から原則24時間以内に登記が完了する点がメリットです。
一人会社のオンライン申請の流れは以下の通りです。
一人会社のオンライン申請の流れ
- オンライン申請の準備
- 申請書情報の作成
- 添付書面情報の添付
- 電子署名の付与
- 申請データの送信
- 登録免許税の納付
オンライン申請システムを利用するためには登録が必要です。初めて利用する場合は、法務省のサイト「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと」にアクセスして申請者情報を登録しましょう。
申請書情報と添付書面情報には、作成者の電子署名を付与する必要があります。「公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカードに搭載される電子証明書)」があれば電子署名を付与できるので便利です。
「マイナンバーカード」は、自身の住んでいる地方自治体で手続きすると入手できます。
登録免許税の納付方法で電子納付を選択した場合は、インターネットバンキングなどの方法で納付します。
会社設立登記のオンライン申請のやり方については、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
法人登記のオンライン申請とは? 申請方法やメリットについて解説
出典:法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」
出典:総務省「公的個人認証サービスによる電子証明書」
一人会社と個人事業主の違い
一人会社も個人事業主もひとりで事業を行う点は同じですが、以下の違いがあります。
一人会社と個人事業主の違い
- 社会的信用度の高さ
- 起業(法人成り)と開業(個人事業)にかかる費用
- 課税される税金
- 金融機関や投資家からの融資や出資の受けやすさ
- 事業に失敗した場合に受ける責任
- 経費として認められる幅
- 社会保険加入の有無
- 廃業にかかる費用
一般的な法人と個人事業主との違いについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
個人事業主と法人の違いは?13項目で比較した特徴とメリット・デメリットや法人化を選択するポイント
社会的信用度の高さ
個人事業主と一人会社(法人)を比較すると、法人のほうが社会的信用度は高くなります。企業によっては法人としか業務提携を行わないところもあるため、個人事業主に比べて事業の幅が広がる点においてメリットがあるでしょう。
中には、個人事業主では受注できなかった大規模な取引が、一人会社を設立することによって可能になるケースもあります。
起業(法人成り)と開業(個人事業)にかかる費用
一人会社の設立はいわゆる「法人成り」であるため、登録免許税や各種手数料などの費用が発生します。しかし、個人事業主の開業は開業届を提出するのみかつ手続きが無料なので、費用面で違いがあります。
会社設立を行う場合、株式会社と合同会社でそれぞれかかる費用は以下の通りです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款用収入印紙代 | 40,000円 (電子定款では不要) | 40,000円 (電子定款では不要) |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 (250円/1ページ) | 0円 |
定款の認証料 (公証人に支払う手数料) | ・資本金100万円未満:30,000円 ※ただし、創業支援等事業計画の認定を受けた市区町村で創業する場合など、一定の要件を満たせば15,000円に軽減されます(2022年1月1日改定) ・資本金100万円以上300万円未満:40,000円 ・資本金300万円以上:50,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円 または 資本金額 × 0.7% どちらか高いほう | 60,000円 または 資本金額 × 0.7% どちらか高いほう |
合計 | 約167,000円〜 | 約60,000円〜 |
上記はあくまで一般的な法人化にかかる費用です。
合同会社の設立費用について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】
自分一人で合同会社を設立するには?用意する書類から必要手続きまで解説
課税される税金
法人と個人事業主とでは、課税される税金が大きく異なります。それぞれが支払う税金は、以下の通りです。
課税される税金 | |
---|---|
法人 | ・法人税 ・法人事業税 ・法人住民税 ・特別法人事業税 ・消費税 |
個人事業主 | ・所得税 ・消費税 ・住民税 ・個人事業税 |
収入に対してかかる税金は、法人は一定税率ですが、個人事業主は累進課税です。普通法人の法人税率は、資本金額や課税所得額などによって異なります。
区分 | 適用関係(開始事業年度) | |||
---|---|---|---|---|
2022年4月1日以後 | ||||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||
上記外の普通法人 | 年800万円超の部分 | 23.2% |
さらに、法人は10年間まで損失繰越ができるのに対して、個人事業主は3年間である点も異なります。
法人にかかる税金に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
法人にかかる税金の種類は?税率や計算方法を個人事業主と比較
金融機関や投資家からの融資や出資の受けやすさ
法人化すると社会的信用度が向上し、金融機関や投資家から融資や出資を受けやすくなります。
実際、一部の金融機関では個人事業主を融資の対象外としている場合もあるため、法人化することで資金調達が容易になるメリットがあります。
事業に失敗した場合に受ける責任
事業に失敗した場合に受ける責任は、個人事業主と法人で異なります。個人事業主は無限責任を負う一方、法人は合名会社の社員・合資会社の無限責任社員を除き、有限責任です。
無限責任とは、事業における責任を全て自分自身(事業主)が負うことで、負債全てを一人で背負う可能性もあります。
一方、有限責任である法人は、出資額以上の責任を負わないため、事業に失敗した場合のリスクは比較的少ないです。法人としての責任範囲が明確に定められているため、個人的な財産や資産は保護される傾向があります。
そのため、法人化することは、事業に失敗した場合のリスクを軽減することにもつながります。
経費として認められる幅
法人は、個人事業主に比べて経費として認められる幅が大きく、節税できることがメリットです。
たとえば法人は自分自身の収入を役員報酬として扱うことができ、経費として認められます。個人事業主の場合は、自身の収入は経費計上できません。
社会保険加入の有無
法人は社会保険への加入が義務付けられていますが、個人事業主には加入の義務はありません。社会保険は会社負担と個人負担で支払うものですが、一人会社である場合はその全てを自分で負担する必要があります。
ただし、役員報酬が0円であったり、報酬額が社会保険料よりも低かったりする場合は、社会保険へ加入できません。これらの場合は、一人会社の社長であっても、個人事業主と同じ国民健康保険と国民年金に加入します。
廃業にかかる費用
万が一廃業となった場合、法人と個人事業主ではかかる費用が異なります。
個人事業主は廃業届の提出の際に費用がかかりませんが、法人が廃業する場合は以下の費用が必要です。
法人の廃業にかかる費用
- 登録免許税:41,000円(解散登記30,000円、清算人登記9,000円、清算結了登記2,000円)
- 官報公告費用:30,000〜40,000円
また、廃業の手続きを専門家へ依頼する場合には、7〜10万円ほどの追加費用が発生する可能性があります。
一人で会社を作る際の注意点
一人で会社を作り運営していくうえで、以下の点に注意しなければいけません。
一人で会社を作る際の注意点
- 健康保険と厚生年金保険への加入は義務
- 経費の扱い方に気をつける
- 自分自身の給料(役員報酬)の金額で税金が変わる
一人で会社を作る際には、健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられています。また、経費の扱い方や、役員報酬の金額による税金の変動にも注意が必要です。それぞれ、以下で詳しく解説します。
健康保険と厚生年金保険への加入は義務
会社の設立人数に関わらず、全ての法人は健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられています。これは、健康保険法第3条、厚生年金保険法第9条の法律によって定められており、個人事業主から法人化する場合でも加入しなければいけません。
ただし、役員報酬が0円である場合や報酬額が社会保険料よりも低い場合は社会保険への加入ができないため、国民健康保険と国民年金に加入します。
会社設立の社会保険の加入について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
一人社長も会社設立時には社会保険加入が必須!必要な書類や手続きをわかりやすく解説
出典:e-Gov法令検索「健康保険法(大正十一年法律第七十号)」
出典:e-Gov法令検索「厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)」
経費の扱い方に気をつける
法人化すると、経費にできる勘定科目が増えますが、経費に充てられる条件が難しい勘定科目があります。たとえば、福利厚生費・会議費・交際費・法定福利費などです。
特に、一人社長のランチや旅行代金は、福利厚生費としては認められにくいです。ただし、取引先が関係している場合は、交際費や会議費として計上することが可能なケースもあります。
出費がどの勘定科目に該当するのか理解し、仕訳を正しく行いましょう。
自分自身の給料(役員報酬)の金額で税金が変わる
一人で会社を設立すると、自分自身への給料は一般的に役員報酬で支払います。役員報酬は、毎月定額に定めることで経費としての計上が可能になり(定期同額給与)、法人税の節税対策として有用です。
しかし、役員報酬を高く設定し過ぎると個人の所得税負担が重くなる恐れがあります。また、低く設定し過ぎてしまうと法人税が高くなってしまいます。そのため、バランスを慎重に考慮し、役員報酬を適切な金額に設定することが重要です。
【関連記事】
役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説
個人事業主は廃業の手続きが必要
個人事業主が一人会社を作る場合は、個人事業の廃業の手続きが必要です。主な届出は以下の通りです。
書類 | 対象者 | 提出先 |
---|---|---|
①廃業等届出書 | 全個人事業主 | ・所轄の税務署 ・都道府県税事務所 |
②所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告をしていた人 | 所轄の税務署 |
③所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書 | 予定納税をしていた人 | 所轄の税務署 |
④事業廃止届出書 | 消費税を納税していた人 | 所轄の税務署 |
⑤給与支払事務所等の廃止届出書 | 従業員を雇っていた人 | 所轄の税務署 |
各届出の書き方や手続きの方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
個人事業主なら知っておくべき!廃業に際して実施すべき手続きとは
税務調査のリスクと対策
個人事業主のままで一人会社を設立すること自体は問題ないですが、個人事業と法人で同じ事業内容を行うと、所得を分散させて税金逃れをしていると税務署に疑われる可能性があります。
個人事業を続けつつ法人も設立する場合は、事業内容を別のものにするほうが安心です。別の事業であれば税務署から疑われる可能性や、税務調査が入るリスクを軽減できるでしょう。
また、同じ業種で法人を設立した後も個人事業の廃業手続きをしていないと、同じ業種で個人事業と法人事業を行っている状態になります。この場合も、税務署に所得分散・税金逃れを疑われることになりかねません。
個人事業の存続が必要ない場合は、法人設立時に個人事業の廃業届を忘れずに提出してください。
まとめ
一人で会社を作る手順には、会社形態の決定や定款の作成、登記申請、設立後の各種届出など複数のステップがあります。一般的に株式会社または合同会社で設立することが多く、自身で情報収集を行いながら一つひとつの手続きを進める必要があります。
一人で会社を作るメリットとして、社会的信用の向上や経費の幅が広がることが挙げられますが、全ての業務を自分で担う負担や税務上のリスクもあるため注意が必要です。一人で会社を作る際は、手順を事前に確認し、個人事業主との差や会社設立に関わる要件を理解した上で準備を進めましょう。
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よくある質問
一人で会社を作る手順は?
一人で会社を作るときには、定款の作成や認証・資本金払込・法務局での登記申請などが必要です。会社設立後には税務署や年金事務所などで税務や社会保険の手続きを行います。
詳しくは、記事内「一人で会社を作る手順」をご覧ください。
一人で会社を作るメリット・デメリットは?
一人で会社を作ると、自分の裁量で会社を運営できるなどのメリットがある一方、全ての手続きを自分一人で行うため手間がかかるなどのデメリットもあります。
詳しくは、記事内「一人で会社を作るメリットとデメリット」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
HP:有限会社ライフスタッフ
