監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

脱サラなどで起業した人は数多くいますが、それらの人がすべて成功を収めているわけではなく、失敗に陥ってしまう人もいます。起業が失敗してしまうと、生活を立て直すのが難しいことも多く、起業リスクを抑えるためには、失敗の原因を知り対策をしておくことが重要です。
本記事では、起業が失敗する理由や、失敗する人にありがちな特徴などを解説します。
目次
- 起業が失敗する確率
- 起業が失敗する6つの理由
- 業績不振
- 資金不足
- 集客力・営業力の不足
- 人材採用力や育成力の不足
- 利益の使い道を誤る
- 経営層の不仲やトラブル
- 起業に失敗する人にありがちな5つの特徴
- 資金計画が不十分
- 起業自体が目的になっている
- 経営者としての自覚がない
- 社会の変化に対応できない
- 人の意見に耳を傾けられない
- 起業を失敗させないための6つのポイント
- 副業からスタートする
- 小規模・低リスクからスタートする
- 綿密な事業計画を立てる
- 運転資金が尽きないように資金管理を行う
- 自分の苦手分野を補えるような仲間やパートナーを選ぶ
- 変化を恐れない
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
- よくある質問
起業が失敗する確率
経済産業省 中小企業庁が公表している中小企業白書によると、2018年~2022年の5年間における国内全体の開業率と廃業率は以下の通り推移しています。
開業率 | 廃業率 | |
---|---|---|
2018年 | 4.4% | 3.5% |
2019年 | 4.2% | 3.4% |
2020年 | 5.1% | 3,3% |
2021年 | 4.4% | 3.1% |
2022年 | 3.9% | 3.3% |
このデータにおける開業および廃業は「事業所における雇⽤関係の成⽴および消滅」で判断されています。
廃業率が3%台で推移していることから、起業が失敗に終わる確率は低いようにも見えますが、廃業していない企業の中には「廃業していないだけで稼げているわけではない」「独立前よりも収入が減った」というケースも含まれています。
また上記は、企業の信用調査を行う株式会社帝国データバンクに掲載されている企業の中での集計です。データベースに載る以前に商売を畳んでしまった場合は、そもそもカウントされない点に注意が必要です。
起業が失敗する6つの理由
「起業が失敗した」といえる状態はいくつかありますが、本記事では事業が立ち行かなくなり、「事業を畳む」「営業を終える」状態になったケースを指すこととします。
起業が失敗する理由は、主に以下の6つが考えられます。
起業が失敗する主な理由
- 業績不振
- 資金不足
- 集客力・営業力の不足
- 人材採用力や育成力の不足
- 利益の使い道を誤る
- 経営層の不仲やトラブル
業績不振
事業がうまく軌道に乗らなければ、当然のことながら事業を継続させることはできません。その結果、志半ばで事業を畳むという選択をせざるを得なくなるでしょう。
資金不足
事業を継続するためには、さまざまな観点から資金が必要になります。足りない資金の穴埋めができなければ、事業は継続できません。また、事業はうまく回っているものの、売掛金などの関係で手元資金がショートしてしまうこともあり、黒字倒産の可能性が出てきます。
集客力・営業力の不足
事業内容が顧客にとって有益なものであったとしても、それが顧客にきちんと届かなければ利益や売上にはつながりません。集客や営業を疎かにしてしまうと、事業は徐々に先細っていきます。
人材採用力や育成力の不足
事業を拡大させるためには、人を新たに雇って教育することが必要不可欠です。マネジメント不足によって従業員の能力を最大限に引き出すことができなければ、事業の成長は見込めず従業員の離職になってしまう危険もあります。
利益の使い道を誤る
事業で上げた利益の使い道は、販促、設備投資、採用強化などさまざまです。どういった使い道が正解かは、各企業の置かれている状況や抱えている課題により異なります。お金の使い道を誤ると、想定する成長曲線に乗れずに、徐々に経営が苦しくなる可能性があります。
経営層の不仲やトラブル
経営層での不仲やトラブルも、起業が失敗する際にありがちな理由のひとつです。利益の分配や責任の所在など、トラブルの火種になりそうな問題は多々あります。特に、友人関係同士で起業したケースでありがちなので、起業前にしっかり話し合っておくようにしてください。
起業に失敗する人にありがちな5つの特徴
「起業に失敗しやすい人」には一定の傾向があるのも事実です。以下に、起業で失敗する人や、その事業の特徴をまとめました。
起業失敗する人にありがちな特徴
- 資金計画が不十分
- 起業自体が目的になっている
- 経営者としての自覚がない
- 社会の変化に対応できない
- 人の意見に耳を傾けられない
これらの特徴に当てはまるからといって、起業を諦めるべきというわけではありません。ただし、起業失敗のリスクが高いことは理解しておいたほうがよいでしょう。
資金計画が不十分
事業を継続させるためには、初期投資以外にも、会社を回していくための運転資金を十分に確保しておく必要があります。この計画が不十分だと、起業後の早い段階で資金不足による失敗を招いてしまいます。
安定して事業を進めていくためには、起業までに必要となる資金はもちろん、起業後の当面の運転資金を正確に把握しておくことが大切です。
起業自体が目的になっている
本来、「ビジネスによって社会の課題を解決したい」「自分らしい生き方・働き方を実現したい」など、自身の社会的な目的を達成する手段のひとつとして起業を選択するものです。しかし、中には「起業すること」自体が目的になっている人もいます。
このようなケースでは起業後のビジョンを明確に描けず、いざ起業しても、思ったような成果を上げられずに終わってしまうかもしれません。
経営者としての自覚がない
会社員として優秀な人材が起業するケースは多くありますが、企業に勤める人材に求められる才能と経営者に求められる才能は異なります。
経営者に求められるスキルは多岐にわたりますが、とくに重要なものとしては主に以下が挙げられます。
経営者に求められるスキル
- 先見性
- ビジョンを描く力
- 決断力
- リーダーシップ
- 論理的思考能力
- 情報分析能力
売り上げの目標達成率やコストだけでなく、キャッシュ・フロー(現金の出入り)をよく見て、事業運営や成長のために適切な判断をしなければなりません。上記のスキルを生かし、「自社の状況・目標・成長性」などさまざまな要素をもとにした決断が求められます。
社会の変化に対応できない
一般的に、起業する前には必ず事業計画を立てますが、想定通りに物事が進んでいくことは極めてまれです。
起業時の事業計画に固執して、トレンドの変化や技術の発展、円高・円安といった為替変動などの社会の変化に対応できないと事業が頓挫する可能性があります。
人の意見に耳を傾けられない
自ら決意する・判断を下すことは重要ですが、他者の意見を聞かず、自分と異なる意見を受け入れないといった姿勢は危険です。どんな人でも自らの知見には限りがあり、間違っている可能性もあります。
事業を成長させるうえで視野を広げることは重要ですす。他者とさまざまに意見を交わす中で、新たな発想や課題解決の糸口が見つかることもあるでしょう。事業の風向きが悪いときに、意固地になって自分の計画やアイデアを推し進めようとすると、取り返しのつかない事態に陥るケースがあります。
起業を失敗させないための6つのポイント
起業に失敗する要因や、その後の影響を踏まえたうえで、失敗させないための対策を押さえておきましょう。起業を成功させるためには何が必要なのか、6つのポイントを紹介します。
起業を失敗させないためのポイント
- 副業からスタートする
- 小規模・低リスクからスタートする
- 綿密な事業計画を立てる
- 運転資金が尽きないように資金管理を行う
- 自分の苦手分野を補えるような仲間やパートナーを選ぶ
- 変化を恐れない
副業からスタートする
今の仕事を捨てていきなり起業するのは、リスクが大きいケースも多いです。まずは、今の仕事を継続しつつ副業で事業を始めてみるのが得策です。
本格的に起業する前に副業から始めることで、問題点を洗い出しブラッシュアップしていくことができ、失敗の芽を潰しやすくなるでしょう。
小規模・低リスクからスタートする
小さな規模でスタートすることで、事業規模を拡大する前のリスクが少ない状態で問題点を把握できることもあります。小規模からのスタートはあまり多くの資金を必要としないため、失敗したときにリカバリーしやすく、損失を抑えやすいといえるでしょう。
綿密な事業計画を立てる
事業計画が曖昧なままだと、どこかで事業が頓挫してしまいます。事業がうまくいっていない場合に、事業計画の何が問題だったかの振り返りができないからです。事業計画がしっかりしたものであれば、どの要素に問題があったかを突き止めて改善するのは比較的容易ですです。
事業計画を立てるにあたっては、以下のような項目を検討しましょう。
事業計画を立てる際に検討する項目
- 事業理念
- 事業の概要
- 事業のコンセプト
- 自社事業の強み
- 競合や市場環境の分析
- 販売戦略やビジネスモデル
- 売上予測や販売計画
- 人員計画
- 財務計画 など
事業計画に基づいて経営を行えば、方向性がズレる心配はありません。
ただし、初めての起業では事業の将来性を十分に考慮できず、当初に立てた事業計画よりも大幅なズレが生じてしまうことも多くあります。このような場合には、事業の実態に応じて柔軟に事業計画を調整・修正していくことも大切です。
運転資金が尽きないように資金管理を行う
資金管理は、事業を継続させるために必要不可欠です。事業立ち上げからしばらくの間、思うような利益が上がらなくても、なるべく計画通りに事業を進められるように資金管理は確実に行ってください。
また、会社経営では売上げと支払いを把握し、資金が不足する事態を避けることも大切です。資金繰り表を作成してお金の流れを把握し、手元にお金が残せる状態にすることで、資金がショートするリスクを下げられます。
【関連記事】
資金繰り表とは?作成のメリットやエクセルでの作り方をわかりやすく解説
自分の苦手分野を補えるような仲間やパートナーを選ぶ
組織崩壊による失敗を避けるためには、誰をビジネスパートナーにするのかを慎重に見極めることが重要です。
どんなに気の合う友人でも、ビジネスパートナーとして重要な資質を有しているかを踏まえて判断しなければ、空中分解の危険性があります。一緒に仕事をしたことがある、自分にはない能力を持っている、信頼できると感じているような相手を選ぶことを意識しましょう。
変化を恐れない
事業は必ずしも想定している通りに進むとは限らず、修正を余儀なくされることも多々あります。そういったときに、変化を恐れずにケースバイケースで判断できることが重要です。
経営者は自分で事業の進め方を決めなければならないため、意識の切り替えが不十分だと、事業が滞ったり想定した利益を得られなくなったりする可能性があります。
まとめ
夢を追って起業した人の中には、道半ばで事業を畳まざるを得なかった人も一定数います。そういった人が失敗した理由は、資金不足や経営層でのトラブルなどさまざまなことが考えられます。これから起業しようと考えている人は、先人の失敗から学んだうえで同じ轍を踏まないようにしなければなりません。
副業から始めて問題点を解決してから規模を大きくする、事前に綿密な事業計画を立てるなど、失敗する可能性を低くするための方法はいくつもあります。起業にはさまざまなリスクが付きまとうのは事実ですが、起業を目指して準備を始める段階からできる限りの対策を進めましょう。
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よくある質問
起業は失敗しやすい?
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詳しくは記事内「起業が失敗する確率」をご覧ください。
起業を失敗させないためのポイントは?
起業に失敗する要因や、その後の影響を踏まえたうえで、ぜひ知っておきたいのが「失敗しないための対策」です。
詳しくは記事内「起業を失敗させないための6つのポイント」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
