会社設立の基礎知識

利益供与とは?具体例・リスク・防ぐためのポイントを解説

監修 松浦絢子 弁護士

利益供与とは?具体例・リスク・防ぐためのポイントを解説

利益供与とは、正当な理由なく財産上の利益を与える行為です。

会社法上は、株主の権利行使(議決権など)に関連して、会社が財産上の利益を与えることが利益供与にあたるとされています。会社法上の利益供与に該当しない会社間や取引先間の利益供与でも、税務上の問題などが生じることがあります。

利益供与は、会社法やその他の法令違反となるほか信用失墜を招くおそれがあるため、未然に防がなければなりません。

利益供与とみなされると、罰則が課されるだけでなく、取引先や金融機関との関係が悪化するリスクがあります。

本記事では、利益供与の定義や具体例、利益供与を未然に防ぐためのポイントを解説します。

目次

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利益供与とは

利益供与とは、企業が株主・子会社・グループ会社・特定の取引先に対して、正当な理由や対価なしに金銭や物品などの財産上の利益を与える行為のことです。

会社法第120条では「株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない」と定められています。会社が利益供与を行った場合、会社法違反となり、罰則の対象です。

会社法上の利益供与は、「株式の権利の行使」に関するものに限定されていますが、これ以外の利益供与であっても、税務上の問題などが生じるおそれがあります。

企業経営の透明性と公平性をたもつためにも、不当な利益供与を行わないことが重要です。

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

利益供与は何が悪いのか

利益供与が問題視されるのは、企業に重大な悪影響を及ぼす可能性があるためです。特定の関係者に不当な利益を与えることは、公平性や健全な競争、適正な意思決定を損なう要因となり、社内外の信頼低下を招くおそれがあります。

また、経済合理性の無い利益供与は会社法違反となるため、取締役が任務懈怠責任を問われたり、法的な処分を受けたりすることがあります。任務懈怠責任とは、職務上の義務を果たさないことで生じる責任のことです。

さらに、会社法上の利益供与に該当しない場合でも、不当な取引は損金不算入や寄附金課税の対象となり、税務調査や追徴課税のリスクが生じます。

子会社から親会社への利益供与の具体例

子会社とは、ほかの会社(親会社)の実質的な支配下にある企業のことです。会社法第2条第3項では、子会社を「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と定義しています。

子会社が親会社に対して、通常の取引では想定されないほど著しく有利な条件で利益を提供する場合、利益供与とみなされる可能性があります。

以下で紹介するのは、子会社から親会社への利益供与の具体例です。

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

子会社が親会社に無償で不動産を提供する

子会社が保有する土地や建物を無償または著しく低い賃料で親会社に貸与・贈与する行為は、利益供与とみなされます。

子会社の財産を不当に流出させ、親会社に一方的な利益をもたらす行為であり、子会社の株主や債権者の不利益につながるため、会社法などにより厳しく禁止されています。

子会社が親会社に有利な条件で商品やサービスを提供する

子会社が製造した製品を原価割れで親会社に供給したり、通常は手数料が発生するサービスを無償で提供したりする行為は、利益供与とみなされる可能性があります。

これは、市場価格から著しくかけ離れた不当な取引であり、子会社に不利益をもたらすためです。

親会社から子会社への利益供与の具体例

親会社とは、ほかの会社(子会社)を実質的に支配している企業を指します。会社法第2条第4項では、親会社を「株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と定義しています。

親会社が子会社に利益を供与する場合、通常は問題とされないケースが多いです。しかし、子会社が債務超過に陥っている状況で、経営再建のために親会社が経済合理性の無い支援を行った場合などは、利益供与とみなされる可能性があります。

以下では、親会社から子会社への利益供与の具体例を紹介します。

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

親会社が子会社に無償で資産を提供する

親会社の特許権やノウハウ、不動産などを無償または著しく低い対価で子会社に譲渡する行為は、利益供与に該当すると判断されることがあります。

このような取引により、親会社の財産が不当に流出すれば、親会社の株主や債権者の利益を損なう行為として法的・経済的な問題が生じるおそれがあります。

親会社が子会社から高値で商品やサービスを購入する

親会社が子会社から市場価格を大幅に上回る価格で商品やサービスを継続的に購入する行為は、利益供与とみなされるおそれがあります。

親会社の財産が不当に流出し、子会社に不当な利益をもたらすため、親会社の株主や債権者にとって問題となる場合があります。

グループ会社間取引における利益供与の具体例

会社法による明確な定義はありませんが、グループ会社は一般的に親会社・子会社・関連会社など資本関係によってつながりのある会社を指し、関係会社とも呼ばれます。

グループ会社間の取引は、グループ全体の利益を最大化するために行われることが一般的です。しかし、一方の企業のみに不当な利益をもたらし、もう一方の企業に不利益を与えるような場合には、利益供与とみなされることがあります。

以下では、グループ会社間取引における利益供与の具体例を紹介します。

不適切な価格設定で取引する

グループ会社間で、商品を著しく安価に購入したり、高値で販売したりする行為は、利益供与とみなされる可能性があります。

特定の企業の利益を操作し、グループ全体の税負担を軽減しようとする意図があると疑われた場合には、税務調査の対象となるリスクがあります。

無利子または低金利で資金を貸し付ける

グループ会社間で、市場金利を大幅に下回る金利または無利子で資金を貸し付ける行為は、利益供与と判断されることがあります。

貸し付けた側から借り入れた側への実質的な寄附と判断され、税務上の問題に発展するリスクがあります。

取引先への利益供与の具体例

高額な接待や贈答品、不当に有利な条件での取引は、利益供与と見なされる可能性があります。

ここでは、取引先への利益供与の具体例を紹介します。

特定の取引先と不当な高値で取引する

ほかの取引先から安価に調達できるにもかかわらず、特定の取引先から著しく高い価格で商品を仕入れ続ける行為は、利益供与にあたることがあります。

正当な理由なく特定の取引先に不当な利益を与え、企業の財産を流出させる行為といえるためです。

特定の取引先を優遇する

取引を維持するために取引先に高額な物品を贈与したり、施設を無償で利用させたりする行為は、利益供与と見なされます。また、契約書に基づかない過大なリベートや謝礼を支払うことも、正当な理由のない利益供与と判断されることがあります。

利益供与とみなされるとどうなる?

利益供与は、企業や関係者にとって重大なリスクを伴う行為であり、法的制裁や税務上の不利益に加え、信用失墜など経営面への悪影響も避けられません。以下では、利益供与とみなされるとどうなるのかを解説します。

会社法上の罰則が科される

会社法が禁止する利益供与と認定された場合、利益を供与した側には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることがあります。

なお、会社法960条が定める特別背任罪(会社の役員などが任務に背き会社に損害を与えること)の罰則は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または両方です。

また、利益供与を受けた側にも同様の罰則が適用されることがあるため、関係者も法的責任を負うリスクがあります。

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

税務上の追徴課税を受ける

利益供与は税務上「寄附金」や「受贈益」と認定され、課税対象となります。利益を供与した側の企業は、損金として認められないため、法人税額が増加します。

一方、利益を受け取った側も所得税や法人税が課されます。税務調査で指摘された場合には、本来の税額に加え、過少申告加算税や重加算税、延滞税といったペナルティも課され、経済的負担が生じます。

企業の信用が失われる

利益供与が発覚し、法的な問題が表面化すると、企業の社会的信用は大きく損なわれます。

金融機関からの融資が難しくなる、取引先との関係が悪化するなど、企業経営に影響が出るおそれがあります。

利益供与をしないためのポイント

利益供与を防ぐためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

利益供与をしないためのポイント

  • 取引の妥当性を確認する
  • 社内ルールと承認プロセスを整備する
  • 専門家に相談する

それぞれ詳しく解説します。

取引の妥当性を確認する

取引において「なぜこの取引が必要か」「提示された・提示した価格は適正か」を検討しましょう。たとえば、グループ会社間の取引であれば、相手が外部の企業であっても同じ条件で取引するかを考えてみましょう。

特定の相手に不当に有利な条件を設定すると、意図せず利益供与となる場合があるため注意が必要です。

社内ルールと承認プロセスを整備する

子会社や親会社との取引では、金額の大小にかかわらず、社内規程に則った厳格な承認プロセスを設けることが重要です。たとえば、取締役会の決議を承認要件とし、複数の担当者でチェックする仕組みを導入することで、個人の判断による不適切な取引を防止できます。

組織として透明性と客観性を確保することで、利益供与を防げるでしょう。

専門家に相談する

自社の取引が利益供与に該当するか、税務上のリスクがないかなど、判断に迷う場合は税理士や弁護士などの専門家に相談することが推奨されます。

専門家は最新の法令や判例に精通しており、客観的な視点から潜在的なリスクを指摘してくれるため、トラブルの未然防止に役立ちます。

まとめ

利益供与は、特定の関係者に不当な利益を与える行為です。利益供与をすると、法令違反や税務上のペナルティ、企業の信用失墜につながります。そのような状況を防ぐためには、日頃から取引の妥当性を確認し、厳格な社内承認プロセスを整備することが重要です。

グループ会社間や取引先との間で行われる取引は、第三者から見ても公平で透明性があるかを常に意識し、判断に迷う場合は専門家に相談するようにしましょう。

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よくある質問

利益供与とは?

利益供与とは、子会社やグループ会社、特定の取引先などの関係者に対し、正当な理由や対価なく財産上の利益を与える行為のことです。

利益供与が株主の権利行使に関するものである場合は会社法第120条に抵触する可能性があります。また、会社法上の利益供与に該当しない場合でも税務上の問題が生じることがあります。

利益供与について詳しく知りたい方は「利益供与とは」をご覧ください。

利益供与の何が悪い?

利益供与は、企業の資金を不当に流出させて企業全体の利益を損なうほか、特定の株主だけを優遇することでほかの株主の信頼を失う可能性があります。さらに、法令違反による罰則や、税務上の問題につながるリスクもあります。

利益供与をしてはいけない理由を詳しく知りたい方は「利益供与は何が悪いのか」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子

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