監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

会社設立の際には、事前に決めておくべきことがいくつかあります。具体的には、社名・オフィスの所在地・資本金やその集め方、取締役会の有無・役員・事業年度・事業目的・会社設立日などが事前に決定しておくべき事項です。
それぞれの事項の必要性を理解して適切に決めておくことで、登記などの法的な手続きが円滑に進み、事業自体もトラブルなく開始しやすくなります。
本記事では、株式会社を設立する前に決めておくべき9つのことを解説します。
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目次
1:社名を決める
会社の顔となる社名(商号)を決定します。社名には、会社法などで定められたルールがあります。主なルールは以下の通りです。
社名を決める際のルール
- 使用できる文字:漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字(大文字・小文字)・アラビア
- 使用できる記号:「&」「’」「,」「‐」「.」「・」の6種類のみ
- 会社形態の表示:社名の中に「株式会社」という文字を必ず含める
- 誤認を招く名称の禁止:「〇〇支店」「〇〇事業部」など、会社の一部門と誤解される可能性のある文字や、銀行・信託・保険など特定の業種を示す文字(その業種でない場合)は使用できない
- 同一商号・同一本店の禁止:同じ所在地に同じ商号の会社を登記することはできない
2:オフィスの所在地
会社の本店所在地(主な事業所の場所)を決定します。本店所在地は定款に記載し、登記する必要があります。
選択肢としては、以下のようなものが考えられます。
- 自宅
- 賃貸オフィス
- レンタルオフィス・コワーキングスペース
- バーチャルオフィス
自宅を本店所在地とする場合は、設立当初のコストを抑えられます。ただし、賃貸物件の場合は、契約書で法人登記や事業所としての利用が許可されているか、事前に貸主(大家や管理会社)に確認が必要です。
賃貸オフィスは、一般的な事務所スペースを借りる方法です。レンタルオフィス・コワーキングスペースは、個室や共有スペースを利用する形態です。法人登記が可能か事前に確認しましょう。
バーチャルオフィスは、住所のみを借り、実際の作業は別の場所で行います。こちらも法人登記の可否を確認が必要です。
会社の信頼性や事業内容、予算などを考慮して最適な場所を選びましょう。
3:資本金と資本金を出す人
会社設立に必要な資本金の額と、その出資者(お金を出す人=発起人)を決定します。
会社法では資本金1円から会社を設立できますが、資本金は設立後の運転資金や会社の信用度に関わるため、適切な額を設定することが重要です。考慮すべき点として、以下のようなものが挙げられます。
- 目安
- 1,000万円のライン
- 創業融資との関連
目安としては、設立当初に必要な費用と、3ヶ月~半年程度の運転資金を合計した額とすることが多いです。
1,000万円のラインについては、資本金が1,000万円以上の場合、設立1期目から消費税の課税事業者となり、納税義務が生じます。節税の観点からは、特別な理由がない限り1,000万円未満に設定するのが一般的です。
創業融資との関連では、日本政策金融公庫などの創業融資において、自己資金(資本金を含む)の額が融資限度額に影響する場合があります。融資活用を考えている場合は、ある程度の資本金を用意しておくと有利になる可能性があります。
4:資本金の集め方
資本金を誰からどのように集めるかによって、会社の設立方法が異なります。主な設立方法は以下の2つです。
創業メンバーの自腹は、”発起設立”
設立時に発行する株式のすべてを、発起人が引き受ける(=出資する)方法です。
比較的手続きが簡単なため、小規模な会社や個人での設立では、ほとんどがこの方法によります。
投資家などに出してもらう場合は、”募集設立”
設立時に発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りを外部の引受人(投資家など)に募集して引き受けてもらう方法です。
発起設立に比べて、定款認証後の手続きが複雑になります。外部から広く資金を集める場合に用いられます。
5:取締役会を置くか否か
取締役会を設置するかを考えておきましょう。
取締役会を設置するかどうかを決定します。取締役会は、会社の業務執行に関する重要事項を決定する機関です。設置は任意ですが、設置する場合としない場合で、機関設計や意思決定プロセスが異なります。
取締役会を設置する場合の主な特徴は以下の通りです。
- 取締役が3名以上必要
- 監査役(または会計参与)の設置が原則必要
- 重要な業務執行の決定や代表取締役の監督を行う
- 株主総会の権限が一部軽減され、機動的な意思決定が可能になる場合がある
取締役会は会社の重要事項を決定・監督する合議体の機関であり、設置することで株主総会を開かずに迅速な経営判断がしやすくなるメリットがあります。
一方で、役員(取締役・監査役等)の人数要件があり、役員報酬などの運営コストが増加する可能性も考慮する必要があります。特に、株主が経営に関与しない場合や、将来的に外部からの出資を広く受け入れたい場合に設置が検討されます。
6:役員を決める
1人で会社を設立する場合、役員は取締役のみですが、複数人で会社を設立するなら、そのほかの役員も設定できます。
会社役員は取締役・会計参与・監査役の役職を指します。各役職の概要は次の通りです。
役職 | 概要 |
---|---|
取締役 | 業務を執行するための意思決定を行う役割を担う |
会計参与 | 取締役と共同で会計書類を作成する会計の専門家としての役割を担う |
監査役 | 取締役会の中で取締役と会計参与の業務執行を監査する役割をもつ |
専務・常務 | 社長をサポートする役職で、業務管理や監督を行う |
7:事業年度
会社の会計期間である事業年度(決算期)を決定します。事業年度の末日(決算日)は、自由に設定できます(例: 3月末・9月末・12月末など)。
決める際の主な考慮ポイントは以下の通りです。
- 自社の繁忙期と決算業務の時期をずらす
- 税理士の繁忙期(一般的に4月~5月頃)を避ける
- 消費税の免税期間(設立後最大2年間)を最大限活用する
繁忙期との調整を考慮するのは、決算や法人税申告の準備には一定の作業時間が必要となるため、本業が忙しい時期と重なると負担が大きくなる可能性があるからです。
税理士の繁忙期(主に3月決算企業の申告が集中する時期)を避けることで、税理士とのコミュニケーションが取りやすくなったり、決算料の交渉がしやすくなったりする可能性を期待する考え方です。
消費税の免税期間を最大限活用するには、設立日から決算日までが1年に近くなるように設定します。例えば、4月1日に設立する場合、決算日を3月末にすると、設立1期目(約1年間)と2期目(1年間)の合計約2年間、原則として消費税の納税が免除されます(※資本金1,000万円未満などの条件あり)。
なお、事業年度(決算日)は登記事項ではないため、設立後でも定款を変更し、株主総会の決議を経ることで変更が可能なので、状況に合わせて見直すことができます。
8:事業目的
事業目的とは、その会社を設立するにあたり具体的に会社で何を事業とするのかを目的として設定するもので、定款の作成にあたって事業目的を決めておく必要があります。
定款は、会社設立時に発起人全員の同意のもとで定める企業の根本原則が記載された書類で、会社設立時に必要なものです。
特に株式会社の場合は、定款の認証手続きが必要です。定款作成後に公証役場に必要な書類を持参のうえで足を運び、手続きを行います(またはオンラインで認証手続きが可能です)。
出典:法務省「オンラインによる定款認証及び設立登記の同時申請の取扱いを開始しました」
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9:会社設立日
登記申請をした日が会社設立日になります。
吉日を会社設立日にしたいなど、会社設立日にこだわりがある場合は、会社設立日を具体的に決めて、それに向けて準備を進めましょう。
まとめ
会社設立の際には、社名・オフィスの所在地・資本金・資本金の集め方・取締役会の設置の有無・役員・事業年度・事業目的・会社設立日を事前に決めておきましょう。
上記事項を事前に決めておくことで、円滑に会社設立の事務手続きや事業の準備を進めていくことができます。特に複数人で会社を設立する場合は、事前によく話し合いながら必要事項の決定を行いましょう。
会社設立の方法を知りたい方はこちら
会社設立時に決めておくべき項目について、以下の記事でまとめています。
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監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
