会社設立の基礎知識

持分会社とは?種類・株式会社との違い・設立のメリット・デメリットを解説

監修 松浦 絢子(弁護士)

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

持分会社とは?種類・株式会社との違い・設立のメリット・デメリットを解説

持分会社とは、会社法で定められた4つの会社形態のうち、株式会社を除く「合名会社・合資会社・合同会社」の総称です。株式会社と比べて設立費用が安く、少人数で法人化したい事業者に適しています。

いずれも原則として出資者(社員)と経営者が一致する形態ですが、社員の責任範囲や設立費用などが異なるため、正しく理解することが重要です。

本記事では、持分会社の種類や株式会社との違い、設立のメリット・デメリットを解説します。また、持分会社を設立する際の流れや、社員が入社・退社する際の注意点もあわせて紹介します。

目次

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持分会社とは

持分会社とは、合名会社・合資会社・合同会社の総称です。会社法では、会社の種類を「株式会社」と「持分会社」に大別し、株式会社を除く3つの形態をまとめて持分会社と定義しています。

持分会社は、所有と経営が一致している会社形態であり、原則として出資者(社員)が経営にも関与する点が特徴です。

2023年時点では日本の会社の89.9%を株式会社が占めており、持分会社は約7.4%にとどまります。しかし、近年では比較的小規模な事業者が合同会社を選ぶケースが増えており、持分会社の設立件数も増加しています。

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出典:J-Net21「持分会社の社員の持分は譲渡できますか?」
出典:国税庁「令和5年度分会社標本調査」
出典:国税庁「令和5年度分 会社標本調査―調査結果報告―」

持分会社と持株会社(ホールディングス)の違い

持分会社と持株会社は名称が似ていますが、根本的に異なる概念です。

持分会社は、合名会社・合資会社・合同会社の総称であり、会社形態のひとつです。

一方、持株会社(ホールディングス)は、ほかの会社の株式を保有し、経営を管理・支配することを目的とした会社を指します。持株会社は、原則として株式会社の形態で設立されます。


出典:J-Net21「持分会社の社員の持分は譲渡できますか?」

持分会社の種類

持分会社の種類は、合名会社・合資会社・合同会社の3つです。

いずれも原則として出資者(社員)が経営に関わる形態で、比較的少人数の会社に適しています。ただし、出資者の責任範囲や経営への関わり方などに違いがあります。

以下で、それぞれ紹介します。

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出典:J-Net21「持分会社の社員の持分は譲渡できますか?」

合名会社

合名会社は、無限責任社員だけで構成される会社形態です。

無限責任とは、出資した金額に関係なく、会社の債務に対して全額を支払う義務を負うことを指します。無限責任社員の責任範囲には上限がないため、会社の財産だけで債務を返しきれない場合、個人の財産を使ってでも返済しなければなりません。

こうした責任の重さから、ほかの会社形態に比べて設立件数は少ない傾向にあります。

なお、合名会社では金銭出資だけでなく、労務出資(労働を提供すること)や信用出資(信用力を提供すること)も認められており柔軟な出資が可能です。

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合名会社とは?設立方法やメリット・注意点をわかりやすく紹介


出典:J-Net21「有限責任と無限責任について教えてください。」
出典:国税庁「令和5年度分会社標本調査」

合資会社

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員で構成される会社形態で、無限責任社員1名以上および有限責任社員1名以上の計2名以上の社員が必要です。

有限責任社員は出資した金額の範囲内でのみ責任を負う社員を指し、会社が債務を抱えた場合に出資額以上の責任は負いません。

合名会社と同様に、合資会社の無限責任社員も労務出資や信用出資が認められる場合があります。

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出典:J-Net21「有限責任と無限責任について教えてください。」
出典:内閣府「犯罪収益移転危険度調査書(令和4年12月)抜粋」

合同会社

合同会社は、2006年に施行された会社法によって新設された会社形態です。

合名会社や合資会社とは異なり、合同会社は有限責任社員のみで構成されます。出資者の責任範囲が限定されるため、合名会社や合資会社と比べてリスクを抑えられる点が特徴です。

近年設立件数が増えており、持分会社のなかでは合同会社がもっとも多く設立されています。

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合同会社とは?特徴や設立するメリット・デメリットについて解説


出典:J-Net21「合同会社について教えてください。」
出典:J-Net21「有限責任と無限責任について教えてください。」
出典:国税庁「令和5年度分会社標本調査」

持分会社と株式会社の違い

持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)と株式会社の主な違いは、以下のとおりです。


項目合名会社合資会社合同会社株式会社
所有と経営一致一致(原則)分離
出資者社員株主
出資者の人数1名以上2名以上1名以上1名以上
責任範囲無限責任無限責任、有限責任有限責任有限責任
定款認証手数料不要1万5,000円~5万円
登記費用
(登録免許税)
6万円6万円資本金額の1,000分の7(6万円未満のときは6万円)資本金額の1,000分の7(15万円未満のときは15万円)
意思決定機関定款で自由に決定株主総会など(法律の規定)
利益の分配定款で自由に決定保有株式数に応じて分配
出資の譲渡原則ほかの社員の承諾が必要原則自由
知名度株式会社に比べて低い高い
出典:内閣府「犯罪収益移転危険度調査書(令和4年12月)抜粋」
出典:日本公証人連合会「公証事務」
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」

持分会社と株式会社では、所有権のあり方や設立手続き、意思決定方法などに大きな違いがあります。違いを正しく理解することで、自社にとって最適な会社形態を選びやすくなります。

所有権・責任範囲

株式会社の特徴は、所有者と経営者が分離されている点です。所有者(株主)は経営に直接関与せず、株主総会の決議で選任された取締役が会社の経営を担います。一方、持分会社は、所有者と経営者が一致しています。

また、出資者の責任範囲にも違いがあります。4つの会社形態のうち、有限責任を負う出資者のみで構成されるのは、株式会社と合同会社の2つです。

一方、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方で構成され、合名会社は無限責任社員のみで構成されます。


出典:内閣府「犯罪収益移転危険度調査書(令和4年12月)抜粋」
出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

設立手続き・費用

持分会社と株式会社を設立するには、いずれも法人登記の申請が必要です。

また、株式会社は定款(会社の基本規則を定めた文書)の作成後、公証人の認証を受ける必要があります。そのため、持分会社と比べて設立費用が高くなる傾向があります。


費用合名会社合資会社合同会社株式会社
定款認証手数料不要1万5,000円~5万円
定款の収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)
登録免許税6万円資本金額の1,000分の7(6万円未満のときは6万円)資本金額の1,000分の7(15万円未満のときは15万円)

意思決定・運営体制

株式会社は、会社法に基づいて株主総会や取締役会などの機関を設置する義務があり、これらを通じて組織の運営や重要な意思決定を行います。

一方、持分会社ではこれらの機関の設置義務がなく、定款によって意思決定方法を定めることが可能です。定款の定めがなければ、社員の過半数の合意により決議されます。


出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」
出典:内閣府「犯罪収益移転危険度調査書(令和4年12月)抜粋」

持分会社を設立するメリット

持分会社は、設立手続きやコストの負担が比較的軽く、柔軟な運営が可能な会社形態です。少人数で法人化したい場合や、経営の柔軟性を重視する場合に適しています。

持分会社を設立する主なメリットは、以下のとおりです。

持分会社を設立するメリット

  • コストを抑えて設立できる
  • 迅速に意思決定できる
  • 運営の自由度が高い

コストを抑えて設立できる

持分会社は、株式会社に比べて手続きが簡便で、設立コストも低く抑えられます。

株式会社を設立するためには、公証人による定款の認証が必要で、1万5,000円~5万円の認証手数料などが発生します。

一方、持分会社を設立する際は、定款の認証が不要です。また、登録免許税の最低額も、株式会社が15万円であるのに対し、持分会社は6万円に設定されています。


出典:日本公証人連合会「公証事務」
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

迅速に意思決定できる

持分会社は、所有と経営が一致しており、少人数で構成されることが多いため、迅速な意思決定が可能です。

一方、株式会社は所有者と経営者が分離しており、株主総会や取締役会などの決議を経て重要な事項を決定するため、意思決定に時間を要することがあります。


出典:内閣府「犯罪収益移転危険度調査書(令和4年12月)抜粋」

運営の自由度が高い

持分会社では、会社の運営ルールを定款によって柔軟に設計できるため、企業の実情に応じた経営が可能です。

たとえば、株式会社では原則として出資比率により利益を分配しますが、持分会社では利益の分配割合を定款で自由に定められます。また、意思決定の方法や業務執行の体制も、自社の実情にあわせて設計できます。


出典:内閣府「犯罪収益移転危険度調査書(令和4年12月)抜粋」
出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」

持分会社を設立するデメリット

設立コストや経営の柔軟性などの面で多くのメリットがある持分会社ですが、以下のデメリットも存在します。

持分会社を設立するデメリット

  • 大規模な資金調達が難しい
  • 株式会社に比べて社会的信用度が低い

大規模な資金調達が難しい

株式会社では、株式を発行することで広く投資家から資金を集め、事業の拡大につなげることが可能です。しかし、持分会社には株式を発行する仕組みがないため、大規模な資金調達が難しい傾向があります。

また、株式会社の株主は、原則として自由に株式を譲渡できますが、持分会社では持分の譲渡に際してほかの社員の承認が必要です。


出典:国土交通省「第3章 法人格の種類による財源の特徴」
出典:J-Net21「持分会社の社員の持分は譲渡できますか?」

株式会社に比べて社会的信用度が低い

株式会社はもっとも一般的な会社形態で、日本に存在する会社の中でも約9割を占めています。持分会社は、株式会社と同様に法人格をもつ会社形態ですが、株式会社と比べると社会的信用度や知名度が低い傾向にあります。

また、持分会社では株式会社のように「代表取締役」の肩書きを使用することはできません。「代表」や「代表社員」などの肩書きが一般的に使用されます。


出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」
出典:国税庁「令和5年度分会社標本調査」

持分会社における社員の入社・退社時の注意点

経営を担う社員によって構成される持分会社では、社員の入社や退社は会社の意思決定や運営体制に直接関わる重要な事項です。

持分会社で新たに社員を迎えるには、原則として全社員の同意が必要です。持分会社の定款には社員の氏名や住所が記載されているため、社員の入社に伴い定款の変更手続きも求められます。

さらに、社員は出資者でもあるため、新たに入社する社員は出資を行わなければなりません。

また、持分会社を退社した社員は、持分の払戻しを受けることができます。払戻しによって会社の財産が減少するため、資金繰りや財務状況への影響を考慮した資金計画が必要です。


出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」
出典:法務局「合同会社の設立手続について」
出典:J-Net21「持分会社の出資の払戻しとはどのような制度ですか?」

持分会社の設立方法・流れ

持分会社は、株式会社と比べて設立手続きが簡便であるため、スムーズに設立しやすい会社形態です。設立の流れは以下のとおりです。

持分会社を設立する際の流れ

  1. 定款を作成する
  2. 資本金を払い込む
  3. 設立登記を行う

まず、社名や事業内容などの基本事項を決定し、組織運営の根本となる「定款」を作成します。株式会社では定款作成後に公証人の認証が必要ですが、持分会社では認証は必要ありません。

次に、設立登記を行う前に出資金の全額を払い込むか、金銭以外の財産を現物出資として給付します。

その後、定款を含む必要書類をそろえ、本店所在地を管轄する法務局に設立登記の申請を行います。設立登記の申請は、書面(持参または郵送)またはオンラインでの手続きが可能です。


出典:日本公証人連合会「公証事務」
出典:J-Net21「合同会社の設立手続き」
出典:法務局「合同会社の設立手続について」

まとめ

持分会社とは、会社法で定められた4つの会社形態のうち、株式会社を除く「合名会社・合資会社・合同会社」の総称です。

持分会社は所有者と経営者が同一であるため、迅速かつ柔軟な経営が行えます。また、設立手続きや費用の負担が比較的少なく、少人数での事業立ち上げに適しています。

大規模な資金調達が難しい点や株式会社との違いを踏まえ、自社の事業に適した会社形態を選択しましょう。

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よくある質問

持分会社とは簡単にいうと?

持分会社とは、合名会社・合資会社・合同会社の総称です。所有と経営が一致する特徴をもっています。

詳しくは、記事内「持分会社とは」をご覧ください。

持分会社のメリットは?

持分会社は、費用を抑えて設立できる会社形態です。また、迅速に意思決定できる点や運営の自由度が高い点もメリットです。

詳しくは、記事内「持分会社を設立するメリット」をご覧ください。

監修 松浦 絢子弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

松浦 絢子弁護士

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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