監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

定款認証とは、会社設立時に作成した定款(ていかん)の正当性を管轄の公証役場で証明してもらう手続きのことです。株式会社や一般社団法人などを設立する際には必ず定款認証を受けなければなりません。
定款認証を受けるためには、公証役場への事前予約が必要であり、定款以外にも必要な書類があります。手数料や収入印紙代もかかるので、事前に把握して準備を進めることが大切です。
本記事では、定款認証の流れや必要な書類、かかる費用を解説します。
目次
定款認証とは
定款認証とは、作成した定款の正当性を公証人が証明することを指します。
定款認証を行うことで「会社設立時に発起人全員の同意のもとで作成した定款(原始定款)である」と公的に証明され、定款の紛失・改ざん・社内紛争などのリスク抑止につながります。
なお、定款認証が必要なのは株式会社・一般社団法人・一般財団法人・弁護士法人などで、持分会社である合同会社・合資会社・合名会社は定款認証が不要です。
定款認証の流れ
定款認証を行うにはまず、定款を作成します。定款作成後、管轄の公証役場で定款認証の手続きを受けます。なお、公証役場で定款認証を受ける際は事前予約が必要なので忘れないようにしましょう。

ここからは、株式会社を想定して定款認証までの流れを解説します。
①定款を作成する
定款には大きく分けて「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類の事項を記載します。
記載事項 | 絶対的記載事項 | 相対的記載事項 | 任意的記載事項 |
---|---|---|---|
記載の要否 | 必須 | 任意(ただし記載しないと効力がない) | 任意 |
記載がない場合の影響 | 定款自体が無効となる | 定款は有効だが、その事項に関する効力が認められない | 定款の有効性や事項の効力に影響しない |
記載内容の例(代表的なもの) | 事業の目的、商号、本店所在地、資本金額、発起人の氏名・住所 | 株券の発行、発起人が受ける報酬 | 事業年度、定時株主総会の招集時期、役員の数 |
絶対的記載事項とは、記載がないと定款自体が無効になる内容のことです。定款には、以下の内容を必ず記載しましょう。
絶対的記載事項
- 事業の目的
- 商号
- 本店所在地
- 資本金額(出資財産額)
- 発起人の氏名または名称と住所
相対的記載事項とは、絶対的記載事項と異なり、記載がなくても定款が無効となることはないものの、記載していなければその事項の効力が認められない内容のことです。
たとえば、株券の発行や発起人が受ける報酬に関する内容などが該当します。
任意的記載事項とは、絶対的記載事項と相対的記載事項に該当せず、会社法の規定に反しない内容のことを指します。
記載は任意ですが、たとえば事業年度や定時株主総会の招集時期、取締役や監査役の数などを記載することで、その内容を明確にしておくことが可能です。
定款の記載内容に不備があると定款が無効となる可能性があるため、不安がある場合は作成した定款を事前にメールやFAXで公証役場に送り、内容をチェックしてもらいましょう。
定款は紙以外に電子で作成することもできます。電子定款は、PDFで作成した定款に電子署名を付与したもので、印紙代4万円が不要になるのがメリットです。電子定款を作成するためには、電子署名ソフトやICカードリーダライタなどが必要です。
定款の作り方は別記事「会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説」「電子定款とは? 作成方法や認証手続きについてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
②公証役場の予約を取る
定款認証は本店所在地を管轄する公証役場にて行います。定款認証を受けるには事前予約が必要です。
予約は電話またはWebからできます。Webから予約する場合は、日本公証人連合会ホームページから管轄の公証役場のページに遷移してください。
③定款認証を受ける
公証役場の予約当日になったら、必要書類や認証手数料を持参して公証人の認証を受けます。定款認証には基本的に発起人全員が参加します。
電子定款の認証であればオンラインで申請することもできますが、認証済みの電子定款は公証役場での受け取りが必要です。
認証済みの電子定款を受け取る際は、データを保存するためのUSBメモリやCD-Rなどの記憶媒体を必ず持参しましょう。なお、Web会議を利用して電子定款の認証を受けると、公証役場に行く手間を省けます。
万が一、定款の内容に不備がある場合には訂正が求められます。その場で訂正できれば当日中に認証完了まで進めますが、大きな不備がある場合には、定款を修正して公証役場を再訪しなければなりません。
freee会社設立では、定款の作成から認証までをオンライン上で完結できます。定款以外の設立時に必要な書類も無料で一括作成できるため、設立準備にかかる手間の削減につながります。
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定款認証に必要な書類
定款認証に必要な書類は、以下の通りです。必要書類を忘れてしまうと定款認証を受けられないため、忘れずに持参しましょう。
定款認証に必要な書類
- 定款(3通)
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 発起人全員分の印鑑登録証明書と実印
- 登記事項証明書(発起人が法人の場合のみ)
- 委任状(代理人を立てる場合のみ)
定款(3通)
定款認証の際は、公証役場での保存用1通・会社保存用1通・登記申請用1通の合計3通の定款を用意してください。各定款には全発起人の実印と割印の押印が必要です。
実質的支配者となるべき者の申告書
実質的支配者となるべき者の申告書とは、設立予定の法人の実質的支配者を明示し、暴力団員や反社会的勢力などに該当しないことを申告する書類です。
実質的支配者となるべき者の申告書は、日本公証人連合会ホームページで「株式会社用」と「一般社団・一般財団法人用」をそれぞれダウンロードできます。また、公証役場で直接申告書を受け取り、手書きで用意する方法もあります。
なお、実質的支配者となるべき者の申告書の「実質的支配者」とは、法人の事業経営を実質的に支配できる人です。株式会社の場合は、株式全体の50%を超える株式を保有する人が該当します。
発起人全員分の印鑑登録証明書と実印
定款認証には、3ヶ月以内に発行した発起人全員分の印鑑登録証明書と実印が必要です。
印鑑登録証明書は市町村役場にて発行が可能ですが、マイナンバーカードがあればコンビニエンスストアなどに設置されているマルチコピー機での発行もできます。
実印は、発起人一人ひとりが所有している個人のものです。必ず持参しなければいけないものではありませんが、書類の修正が必要になる際に利用するため定款認証の際に持って行くことをおすすめします。
なお、印鑑登録証明書は定款認証以外にも登記時に提出が必要な書類であるため、あらかじめ発行しておくとよいでしょう。
【関連記事】
会社設立時に必要な印鑑証明書の発行方法とは?登記申請に必要な枚数も解説
登記事項証明書(発起人が法人の場合のみ)
発起人が法人の場合、3ヶ月以内に発行した登記事項証明書(登記簿謄本)が必要です。
登記事項証明書は、登記所・法務局証明サービスセンターの窓口・郵送・オンラインで交付請求できます。請求した証明書は、自宅や会社への郵送・登記所・法務局証明サービスセンターで受け取れます。
出典:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
委任状(代理人を立てる場合のみ)
定款認証は基本的に発起人全員が出向いて行いますが、都合がつかない場合には代理人を立てることができます。その際は、以下の内容が記載された委任状が必要です。
委任状は日本公証人連合会ホームページからダウンロードできますが、上記の内容が記載されていれば書式は自由です。なお、代理人が定款認証を受ける際は代理人の印鑑登録証明書・実印・身分証明書が必要になります。
定款認証にかかる費用
定款認証にかかる費用は、紙と電子で異なり、電子定款のほうが費用を抑えられる可能性があります。それぞれの費用を詳しく解説します。
紙の定款の場合
紙の定款認証にかかる費用は、以下の通りです。
紙の定款認証にかかる費用
- 定款認証の手数料:1万5,000~5万円
- 設立登記申請用の謄本の請求手数料:2,000円前後
- 収入印紙代:4万円
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定款認証の手数料
定款認証を受けるためには、公証役場への認証料の支払いが必須です。定款の認証手数料は、資本金の額に応じて3万~5万円に設定されています。
資本金額 | 定款の認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 3万円 |
100万円以上・300万円未満 | 4万円 |
そのほか | 5万円 |
なお、以下の条件に該当する場合、認証手数料は1万5,000円です。
認証手数料の引き下げ条件
- 資本金額100万円未満
- 発起人が実在する個人であり3人以内
- 設立時の発行株式の全部を発起人が引き受ける
- 取締役会を設置しない
出典:日本公証人連合会「公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について」
設立登記申請用の謄本の請求手数料
紙の定款は謄本が必要で、1枚につき250円の手数料がかかります。この1枚とは「1通」ではなく「1ページ」を指しており、認証書の1ページも含まれます。
よって、手数料は「250円 ×(定款のページ数 + 認証書)」となります。定款のページ数により料金は変動しますが、2,000円前後が一般的です。
出典:日本公証人連合会「公証事務」
収入印紙代
定款は印紙税法の規定により課税文書に該当します。そのため、定款を紙で作成した場合には収入印紙代4万円がかかります。
なお、電子定款は「電磁的記録」であり、印紙税法上の「文書」には該当しないため、課税対象外です。
電子定款は作成から認証手続きまでオンラインで行うことができ、効率的に手続きを進められるメリットがあります。
ただし、電子定款を作成するには、専用の機器やソフトウェアが必要です。一からそろえると収入印紙代以上に費用が発生する可能性もあるため、メリット・デメリットを十分に理解した上で、定款の作成方法を決定しましょう。
【関連記事】
電子定款とは? 作成方法や認証手続きの流れからメリット・デメリットまで解説
定款認証の費用はいくらかかる?紙・電子別にかかる費用を詳しく解説
電子定款の場合
電子定款の認証にかかる費用は、以下の通りです。
電子定款の認証にかかる費用
- 定款認証の手数料:1万5,000~5万円
- 同一情報の提供手数料:1通につき700円
- 電磁的記録の保存手数料:1回あたり300円
定款認証の手数料
紙の定款認証と同様に電子定款の認証の際も、資本金額に応じて3万~5万円の手数料がかかります。
資本金額 | 定款の認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 3万円 |
100万円以上・300万円未満 | 4万円 |
そのほか | 5万円 |
なお、以下の条件に該当する場合には認証手数料が1万5,000円となります。
認証手数料の引き下げ条件
- 資本金額100万円未満
- 発起人が実在する個人であり3人以内
- 設立時の発行株式の全部を発起人が引き受ける
- 取締役会を設置しない
出典:日本公証人連合会「公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について」
同一情報の提供手数料
同一情報とは、紙の定款でいう謄本に該当する情報のことです。同一情報の提供手数料は1通につき700円かかります。
書面による交付を希望する場合は、同一情報の提供手数料に1枚あたり20円が加算され、「700円 + 20円 ×(定款のページ数 + 1枚)」となります。
電磁的記録の保存手数料
電子定款では、紙の定款認証にかかる収入印紙代はかかりません。しかし、認証済み定款のデータをUSBメモリやCD-Rなどの媒体に記録してもらう場合、電磁的記録の保存手数料として1回につき300円がかかります。
定款認証にかかる時間
定款認証の手続きは、定款や必要書類などに不備がなければ30分前後で完了します。
日本公証人連合会が提供している「定款作成支援ツール」を活用すれば、原則として48時間以内に定款認証までの手続きがオンライン上で完結します。
定款作成支援ツールでは、定款のほかに実質的支配者申告書や委任状(代理人を立てる場合)の作成も同時に可能で、誰でも利用することができます。
公証人との面前審査の手続きについてもウェブ会議が原則のため、よりスピーディーに進めることができるでしょう。
出典:日本公証人連合会「定款認証の48時間処理利用マニュアル」
出典:日本公証人連合会「定款認証の手続が「2つの原則」の導入で便利になります!」
まとめ
定款認証は、株式会社や一般社団法人などが法人を設立する際に、必要不可欠な手続きです。
認証手続きは事前予約が必須であり、定款とともに提出する書類がいくつかあります。また、手数料や収入印紙代などの費用がかかるので、事前に確認して準備を進めることが大切です。
定款に不備があると当日中の定款認証ができなくなる可能性があるため、不安な場合は認証手続き前に公証役場にメールやFAXを送り内容を確認してもらいましょう。
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定款(ていかん)を簡単に作成する方法
定款とは、会社のルールブックであり、会社設立時に必ず必要な書類の一つです。
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よくある質問
定款認証とは?
定款認証とは、会社設立時に作成した定款の正当性を管轄の公証役場で証明してもらう手続きのことです。株式会社や一般社団法人などを設立する場合には必ず定款認証を受けなければなりません。
詳しくは記事内「定款認証とは」をご覧ください。
定款認証にはいくらかかる?
定款認証には、約6万〜10万円程度かかります。内訳は、公証人へ支払う手数料1万5,000〜5万円(資本金額によって異なる)、設立登記申請用の謄本の請求手数料が約2,000円、収入印紙代4万円です。
なお、電子定款であれば収入印紙代はかかりません。
詳しくは記事内「定款認証にかかる費用」をご覧ください。
定款認証にはどのくらい時間がかかる?
定款や必要書類などに不備がなければ30分前後で認証手続きは完了します。
なお、日本公証人連合会が提供している「定款作成支援ツール」を活用すれば、原則として48時間以内に定款認証までの手続きがオンライン上で完結します。
詳しくは記事内「定款認証にかかる時間」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
