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中小企業成長加速化補助金とは?対象企業・審査基準・必要な準備を解説

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

中小企業成長加速化補助金とは?対象企業・審査基準・必要な準備を解説

中小企業成長加速化補助金は、2025年に新設された売上高100億円に挑戦する中小企業を支援する補助金制度です。この補助金は、成長志向が強い中小企業への設備投資支援による地域経済の活性化、ひいては日本経済の好循環の実現を目的としています。

上限額は5億円(補助率1/2)で、大規模な設備投資を検討している中小企業にとっては、特に注目の補助金です。

本記事では、中小企業成長加速化補助金の要件・対象企業・審査基準・手続きの流れなどを紹介します。

目次

中小企業成長加速化補助金とは

中小企業成長加速化補助金は、売上高100億円超を目指す成長志向型の中小企業に対して、大胆な設備投資を支援する補助金制度です。

補助対象者売上高100億円を目指す中小企業
補助上限額5億円(補助率1/2)
補助事業実施期間交付決定日から24ヶ月以内
補助事業の要件①「100億宣言」を行っていること
②投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除いた補助対象経費の税抜合計額)
③一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定
(賃上げ実施期間は補助事業終了後3年間)など
補助対象経費建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費
出典:経済産業省・中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金」

補助金の上限額は5億円で、設備投資額の1/2に相当する金額までが補助の対象です。工場・物流拠点の新設・増築、自動化による生産性向上、設備の導入による新たな価値創出など、大規模な設備投資を計画している企業にとって、大きな後押しとなります。

対象となる企業・事業の要件

売上高100億円を目指す中小企業(売上高10億円以上100億円未満)が対象で、以下の3つを全て満たすことが要件です。

中小企業成長加速化補助金の対象企業・要件

  • 「100億宣言」を行っていること
  • 投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除いた補助対象経費の税抜合計額)
  • 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金のご案内」

賃上げ要件は、補助事業の終了後3年間の「給与支給総額」または「従業員・役員の1人あたり給与支給総額」の年平均上昇率が、拠点とする都道府県の直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であることです。

「給与支給総額」「従業員及び役員の1人あたり給与支給総額」のどちらで目標を立てるかは申請時に選択できます。

なお、賃上げ目標を達成できなかった場合は、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合を除き、未達成率に応じて補助金の返還を求められます。

100億宣言とは

100億宣言は、中小企業が自ら「売上高100億円」の目標を掲げ、取り組みを行うことを宣言する制度です。100億宣言を行うことで中小企業成長加速化補助金に申請できるほか、以下のメリットもあります。

100億宣言のメリット

  • 同じ100億企業を目指す者同士の成長の場として設けられた「経営者ネットワーク」に参加できる
  • 公式ロゴマークを使用できる(名刺などに記載できる)

100億宣言を申請する際には、中小企業庁のウェブサイトに掲載されているひな形・記載例を参考に以下の内容を記載してください。

100億宣言に記載する主な内容

  • 企業概要
  • 企業理念・100億宣言に向けた経営者メッセージ
  • 売上高100億円実現の目標と課題
  • 売上高100億円実現に向けた具体的措置

出典:中小企業庁「100億宣言」
出典:中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「100億宣言申請要領」

記載した内容は、事務局が運営するポータルサイトで公表されます。100億宣言を行うことで、企業の成長を目指す姿勢を対外的にアピールできるため、記載内容を明確にしておきましょう。

【関連記事】
100億宣言とは?中小企業成長加速化補助金制度の概要や提出のメリットも紹介

補助対象になる経費

建物費・機械装置費・ソフトウェア費・外注費・専門家経費が補助対象となります。各経費の詳細は、以下の通りです。

経費の種類経費の概要
建物費・専ら補助事業のために使用される事務所・生産施設・加工施設・販売施設・検査施設・共同作業場・倉庫
・そのほか投資計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・増築・改修・中古建物の取得に要する経費
機械装置費・専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具など)の購入、製作、借用に要する経費
・これらと一体で行う、改良・修繕、据付けまたは運搬に要する経費
ソフトウェア費・専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費
これらと一体で行う、改良・修繕に要する経費
外注費・補助事業遂行のために必要な加工や設計、検査等の一部を外注(請負・委託)する場合の経費
専門家経費・本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金のご案内」

なお、単なる老朽化設備の更新は補助対象外です。また、外注費・専門家経費を除く補助対象経費分が投資額1億円(税抜き)以上になることも要件のひとつです。

中小企業成長加速化補助金の審査基準

1次公募の審査は、提出書類に基づく1次審査、プレゼンテーション・質疑応答による2次審査の2つで行います。

1次審査提出書類に基づき、形式要件(中小企業確認など)の適格性の確認および計画の効果・実現可能性等について定量面の書面審査
2次審査提出された申請資料を用いて申請企業の経営者自身によるプレゼンテーションおよび外部有識者との質疑応答
出典:中小企業成長加速化補助金(1次公募)公募要領

中小企業成長加速化補助金の審査では、経営力・波及効果・実現可能性を評価されます。

▼審査のポイント(抜粋・要約)

経営力経営者のビジョンやシナリオが明確であるか
補助事業の位置づけを踏まえて、飛躍的な成長につながることが見込まれるか
外部・内部環境の認識を踏まえた事業戦略となっているか
(売上高成長率、付加価値増加率、売上高投資比率など)
波及効果産業競争力の強化、イノベーションの創出、地域資源の活用、サプライチェーンへの効果など波及効果が見込まれるか
賃上げへの取り組み、適切な取引姿勢、女性が活躍しやすい職場環境、BCPへの取組状況など
(賃上げ率、地域未来牽引企業、パートナーシップ構築宣言など)
実現可能性迅速に投資を実行できる財務状況や組織体制が整っており、金融機関などのコミットメントが得られているか
(ローカルベンチマーク、金融機関の支援姿勢など)
出典:経済産業省・中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金」

経営力は、事業計画の明確さ、事業の飛躍的成長の可能性、外部・内部環境の認識などが重要な要素です。

波及効果は、産業競争力の強化・イノベーションの創出・地域資源の活用・サプライチェーンへの効果などが含まれます。賃上げへの取り組みは、審査でも注目されるポイントです。

また、実現可能性は、財務・組織の体制が整っているか、金融機関からの協力が得られているかなどが審査されます。

補助金交付までのスケジュール

事前準備から補助金の交付・報告までのスケジュールは、以下の通りです。

申請後に審査に通過して採択されると、補助金交付が決定し、補助事業終了後に補助金が支払われます。なお、補助事業終了後には、所定の報告が必要です。

1次公募の補助金交付・報告までの流れを見ていきましょう。

1.事前準備

事前準備は、GビズIDプライムアカウントの取得と、100億宣言の2つが必要です。それぞれの概要を紹介します。

GビズIDプライムアカウント取得

GビズIDは、経済産業省が提供する全ての事業者を対象とした共通認証システムです。

ひとつのID・パスワードで複数の行政サービスにログインでき、補助金申請、社会保険手続き、各種認可申請など業務上の電子届出や申請に使用できます。

GビズIDのアカウントの種別は、プライム・メンバー・エントリーの3種類です。中小企業成長加速化補助金の申請では、省庁・自治体のサービスの全てで利用できる法人代表者・個人事業主向けの「プライム」を取得します。

GビズIDプライムアカウントの取得は、オンラインまたは書類で申請が可能です。デジタル庁のGビズIDウェブサイトのトップページから「GビズIDアカウントの作成をはじめる」ボタンを選択して進み、画面にしたがって作成します。

GビズIDの取得には2週間程度かかることがあるため、時間に余裕をもってアカウントを作成しましょう。

出典:デジタル庁「GビズIDで行政サービスへのログインをかんたんに」

「100億宣言」の登録申請

100億宣言を作成し、特設サイトから100億企業実行事務局にPDF形式で提出します。

中小企業庁ウェブサイトで掲載されている100億宣言のひな形・記載例を参考に作成して提出しましょう。

出典:中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「100億宣言申請要領」

2.申請・審査

申請受付開始後に申請手続きを行い、審査を受けます。

1次公募では、以下の内容で補助金の申請受付が行われました。

受付期間2025年5月8日から2025年6月9日17時まで
提出方法補助金申請システム「jGrants」から申請
提出書類・投資計画書
・投資計画書別紙
・ローカルベンチマーク
・決算書等(3期分)
・金融機関による確認書(該当者のみ)
・リース取引に係る誓約書(該当者のみ)
・リース料軽減計算書(該当者のみ)
出典:中小企業成長加速化補助金(1次公募)公募要領

提出書類を準備したうえで、補助金申請システム「jGrants」からGビズIDでログインして申請してください。提出書類の申請様式は、中小機構「100億企業成長ポータル」からダウンロード可能です。

1次公募への申請後に、申請書類に基づく1次審査と、プレゼンテーション・質疑応答による2次審査が実施されます。審査結果はウェブ上で公表され、jGrantsで事務局から採択者・不採択者に通知されます。

3.実績報告・補助金の交付

審査で採択された後は、補助事業を実施し終了後に実績報告を行います。その後、確定検査を経て補助金が確定し、補助金を受領する流れです。

なお、補助事業終了後には、5事業年度分(計6回、毎年度実施)の事業化状況報告・知的財産等報告を行います。

出典:中小企業成長加速化補助金(1次公募)公募要領

中小企業成長加速化補助金の注意点

中小企業成長加速化補助金を活用すれば、設備投資にかかる費用の負担を軽減できますが、いくつか注意点があります。補助事業実施期間や報告義務について、それぞれ確認しておきましょう。

補助事業実施期間(24ヶ月以内)の計画立案

中小企業成長加速化補助金の事業期間は、交付決定日から24ヶ月以内とされています。工場や拠点などの新設には、1年以上の工期がかかることもあるため、期間内に実施できるように見通しを立てて計画しておきましょう。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金のご案内」

交付後の報告義務と注意事項

1次公募の公募要領によると、事業化や賃金引上げの状況については、事業実施年度を含む5事業年度分、計6回の報告が必要です。

賃上げは補助金の交付要件であり、要件を満たさなかった場合には補助金の返還が求められることがあります。ただし、本補助金制度では補助事業の事業化により収益を得られたと判断される場合に、収益納付が求められることはありません。

出典:中小企業成長加速化補助金(1次公募)公募要領

まとめ

中小企業成長加速化補助金は、売上高100億円超を目指す企業の設備投資を支援する補助金制度で、工場・物流拠点の新設、自動化、設備導入などを大規模に実施したいと考えている中小企業にとって、大きな後押しとなります。

申請をする場合は、まず100億宣言を行った上で、GビズIDプライムアカウントを取得します。そのほか要件や手続き方法も確認し、申請に向けて必要な準備を進めましょう。

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よくある質問

対象となる企業や事業の要件は?

売上高100億円を目指す中小企業(売上高10億円以上100億円未満)が対象で、以下を全て満たすことが要件です。

中小企業成長加速化補助金の補助対象要件

  • 「100億宣言」を行っていること
  • 投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除いた補助対象経費の税抜合計額)
  • 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定

詳しくは、記事内「対象となる企業・事業の要件」をご覧ください。

申請から補助金支給まではどのくらいかかる?

支給時期は、補助事業の終了時期によります。

1次公募の公募要領では、補助事業の終了後に実績報告・確定検査を経て補助金が確定し、補助金を受領すると示されています。

詳しくは、記事内「補助金交付までのスケジュール」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史
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