監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

日本の家計金融資産の大部分は高齢者が保有しており、高齢者による投資活動の活性化が重要視されています。その背景も踏まえ、65歳以上の高齢者向けの新しいNISA制度として、プラチナNISAの検討が進められています。
プラチナNISAでは、現行のNISAで対象外の毎月分配型の投資信託も投資対象です。プラチナNISAの導入によって、預貯金に偏りがちな高齢者の資産を投資へと促すことが期待されています。
本記事では、プラチナNISAの概要やメリット・注意点などを解説します。
目次
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プラチナNISAとは
プラチナNISAは、65歳以上の高齢者を対象に検討されているNISA制度(少額投資非課税制度)です。高齢者の投資促進を目的に、金融庁が制度の検討を開始しています。
2025年4月に、資産運用立国議員連盟が「資産運用立国2.0に向けた提言」を石破首相に提出し、今後取り組むべき施策のひとつとして、プラチナNISAの創設が取り上げられました。
検討中のプラチナNISAの主な特徴は以下の通りです。
プラチナNISAの特徴
- 65歳以上の高齢者が対象になる
- 毎月分配型の投資信託も購入できる
- NISA口座からのスイッチングの仕組みも検討されている
65歳以上の高齢者が対象になる
現行のNISAは18歳以上が対象ですが、プラチナNISAは65歳以上の高齢者が対象です。
内閣官房によると、日本の家計金融資産の6割超を60歳以上が保有しているとされています。企業の成長に向け投資を拡大するには、高齢者が保有する貯金を取り崩して投資に向けるよう促すことが求められています。
出典:内閣官房「資産所得倍増に関する基礎資料集」
毎月分配型の投資信託も購入できる
検討中のプラチナNISAでは、毎月分配型の投資信託も購入できることが大きな特徴です。毎月分配型の投資信託では、1ヶ月ごとに決算を行い、収益などの一部を毎月の分配金として支払います。
現行のNISAでは、毎月分配型の投資信託は対象外です。複利効果が得られにくく、長期的な資産形成を目的とする制度の趣旨に合致しないとされているためです。
出典:日本証券業協会「「毎月分配型の投資信託」とは?」
NISA口座からのスイッチングの仕組みも検討されている
プラチナNISAでは、NISA口座内でのスイッチング制度の導入が検討されています。
具体的には、既存のNISA口座で保有している資産を売却することなく、非課税枠のまま毎月分配型の投資信託に乗り換えできる仕組みです。スイッチングは1回限り認められる見通しです。
スイッチングが実現すれば、NISAで積み立てた資産を非課税のまま毎月分配型商品に移行し、定期的な現金収入を得られるようになります。
プラチナNISAのメリット
プラチナNISAが実現されれば、高齢者は非課税で毎月分配型の投資信託を購入でき、老後に安定的な収入を確保しやすくなります。
以下で詳しく解説します。
老後に安定的な収入を確保できる
プラチナNISAで毎月分配型の投資信託を購入すれば、定期的に分配金を受け取れます。老後に安定的な収入を確保しやすくなり、年金だけでは不足しがちな毎月の生活費の補填が可能です。
毎月の分配金が非課税になる
プラチナNISAでは、毎月受け取る分配金が非課税となります。
通常、投資信託の分配金や株式の配当金には約20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の税金がかかり、受け取りの際に源泉徴収されます。
一方、NISA口座で受け取る分配金は全額非課税です。プラチナNISAでも、約20.315%に相当する税負担がありません。
出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
プラチナNISAのデメリット・注意点
プラチナNISAで毎月分配型の投資信託に購入する場合、元本を取り崩すリスクや複利効果を得にくいなどのデメリットがあります。さらに、毎月分配型の投資信託は、手数料が高い商品が多いことも注意点です。
以下で詳しく解説します。
元本を取り崩すことになる場合もある
毎月分配型の投資信託は、運用益だけで分配金を賄っているわけではありません。運用成績が振るわない場合、元本の一部を取り崩して分配金に充てるケースがあり、これを「特別分配金」と呼びます。
分配金を受け取っていても、元本は目減りすることがあるため、運用状況の確認は欠かせません。
複利効果を得にくい
プラチナNISAで毎月分配型の投資信託に購入する場合、利益の再投資による複利効果を得にくい点もデメリットです。
再投資型の投資信託は、運用益が自動的に再投資されることで利益がさらに利益を生む複利効果が働きます。しかし、毎月分配型では利益の一部が定期的に払い出されるため、運用益が蓄積されにくく、資産の増え方が緩やかになります。
複利で大きな運用益を得たい場合は、毎月分配型の投資信託は最適な方法ではありません。
手数料が高い商品が多い
毎月分配型の投資信託には、信託報酬(運用・管理をしてもらうために支払う手数料)が割高な商品が多い傾向があります。
毎月分配型の投資信託の信託報酬は年1%~2%ほどの商品が多く、一般的に信託報酬が0.05%~0.20%台とされる低コストなインデックスファンドと比べると、コスト面での負担が大きいです。
また、毎月分配型の投資信託は購入時手数料も高めの傾向があります。
プラチナNISAとiDeCoの違いは?
老後資金のための制度としては、すでに導入されているiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)もあります。iDeCoは、拠出した掛金を自身で運用して資産形成を行う年金制度です。
プラチナNISAとiDeCoの制度上の違いは、以下の通りです。
項目 | プラチナNISA (検討中の制度) | iDeCo |
---|---|---|
目的 | 老後の資産運用・取り崩し | 老後資金の積み立て |
税制優遇 | 投資で得られる利益(分配金など)が非課税 | 掛金全額が所得控除の対象 運用益が非課税 受け取り時に控除が適用(年金受取なら公的年金等控除、一時金受取なら退職所得控除) |
対象年齢 | 65歳以上 | 原則20歳以上65歳未満の国民年金加入者※ (引き出し可能期間は原則60歳以降) |
投資対象 | 毎月分配型の投資信託など | 運営管理機関が選定した投資信託、定期預金、保険商品など |
制度の位置づけ | 高齢者向けのNISA(少額投資非課税制度) | 公的年金を補完する私的年金制度 |
引き出し制限 | 原則いつでも引き出し可能 | 原則60歳までは引き出し不可 |
出典:国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)のメリット」
(※)2025年税制改正により、一定の要件を満たす場合、加入可能年齢が70歳未満まで引き上げられる予定
iDeCoの目的は老後資金の積み立てであるのに対し、プラチナNISAの目的は老後の資産運用・取り崩しです。
そのほか、対象年齢や投資対象、制度の位置付けなどさまざまな面で違いがあります。目的やライフステージにあわせて、2つの制度の活用を検討しましょう。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)の特徴」
出典:国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)のメリット」
まとめ
プラチナNISAは、65歳以上を対象に検討されている高齢者向けのNISA制度で、毎月分配型の投資信託も購入できる点が大きな特徴です。プラチナNISAで毎月分配型の投資信託を購入すると、老後の安定的な収入源を確保できるうえに、分配金は非課税となります。
ただし、毎月分配型の投資信託には、元本が取り崩されるリスクがあります。さらに、複利効果を得にくい点や手数料の高い商品が多い点などもデメリットです。
プラチナNISAの制度創設に向けた今後の動向にも注目していきましょう。
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よくある質問
プラチナNISAと現行のNISAの違いは?
プラチナNISAと現行のNISAの主な違いは、65歳以上が対象となる点と、毎月分配型の投資信託が購入可能となる点です。
詳しくは「プラチナNISAとは」をご覧ください。
プラチナNISAのメリット・デメリットは?
プラチナNISAのメリットとしては、老後の安定的な収入源を確保できる点と、毎月の分配金が非課税となる点が挙げられます。
一方デメリットは、元本を取り崩す可能性がある点、複利効果を得にくい点、手数料の高い商品が多い点などです。
詳しくは「プラチナNISAのメリット」「プラチナNISAのデメリット・注意点」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
