監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

ガソリン税は、揮発油税と地方揮発油税から構成されており、両税にはそれぞれ暫定税率が上乗せされています。
現在のガソリン税は、1リットルあたり53.8円です。2009年に道路特定財源制度が廃止されて以降、ガソリン税は一般財源として広く活用されています。
暫定税率は2025年6月時点で廃止に向けた動きがあり、与野党で議論が行われています。暫定税率は1リットルあたり25.1円課されているため、廃止されれば消費者の税負担が大幅に軽減される見込みです。
本記事では、ガソリン税の概要、ガソリン価格の内訳、暫定税率の歴史について、わかりやすく解説します。
目次
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ガソリン税とは
ガソリン税とは、ガソリンに課される税金で、1950年に道路整備の財源確保のために揮発油税・地方揮発油税が導入されました。1974年には暫定措置として暫定税率が追加され、実質的に恒久化されて現在も適用されています。
ガソリン税は、揮発油税・地方揮発油税(本則税率)と暫定税率から構成されており、合計で1リットルあたり53.8円が課されています。
なお、本則税率とは法律で定められた「基本となる税率」のことです。
揮発油税
ガソリンにかかる国税で、税率は1リットルあたり24.3円(本則税率)です。「温度15度で比重が0.8017を超えない炭化水素油」が揮発油として課税対象となります。
地方揮発油税
ガソリンにかかる地方譲与税で、税率は1リットルあたり4.4円(本則税率)です。国税として徴収された後に、国から地方公共団体に譲与されます。
暫定税率
1974年、道路整備の財源確保を目的として、本則の税率に上乗せする形で「暫定税率」が導入されました。これは揮発油税と地方揮発油税それぞれに追加される仕組みです。
具体的には、揮発油税に対して24.3円、地方揮発油税に対して0.8円が上乗せされ、合計で1リットルあたり25.1円が追加で課税されています。
本来は期限付きの措置でしたが、延長が繰り返され、現在では実質的に恒久化された税率となっています。
ガソリン価格の内訳は?
石油に課される主な税金には、石油石炭税・石油製品関税・石油ガス税・ガソリン税・軽油引取税・航空機燃料税・地球温暖化対策税があります。
このうち、ガソリンには以下の税金が課され、本体価格に上乗せされています。
税金の種類 | 概要 |
---|---|
石油製品関税 (輸入ガソリンの場合に課税) | 石油製品の輸入の際に課せられる関税 |
石油石炭税 | 原油・ガス状炭化水素などの輸入や採取の際に原油・石油製品、ガス状炭化水素、石炭に課税される税金 |
ガソリン税 | ガソリンに課される税金(揮発油税・地方揮発油税に暫定税率が加えられる) |
地球温暖化対策税 | 石油・天然ガス・石炭などの全ての化石燃料の利用に対し、CO2排出量に応じて課せられる地球温暖化対策のための税金 |
ガソリン税の二重課税を問題視する声も多い
ガソリンは、本体価格にガソリン税(揮発油税・地方揮発油税)や石油石炭税を合計した金額に対して、さらに10%の消費税が課されています。これは税金に税金が上乗せされるいわゆる二重課税であるとして問題視する声も少なくありません。
しかし、国税庁は、ガソリン税などは消費税の課税標準に含まれるとして二重課税にあたらないとの見解を示しています。
揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などは、メーカーなどが納税義務者となって負担する税金で、販売価額の一部を構成しているものです。そのため、利用者が納税義務者となる税金とは異なり、課税標準に含まれるとされています。
出典:国税庁「No.6313 酒税、たばこ税などの個別消費税の取扱い」
暫定税率のこれまでの歴史
ここからは、暫定税率の導入から廃止に向けた動きに至るまでの歴史を解説します。
暫定税率のこれまでの歴史
- 暫定税率の導入(1974年)
- ガソリン税の一般財源化(2009年)
- トリガー条項の設定と凍結(2010~2011年)
- 暫定税率の廃止に向けた動き(2024~2025年)
暫定税率の導入(1974年)
暫定税率は第一次石油危機の際に、第七次道路整備五カ年計画を進めるための副次的な財源として導入されました。
当初は2年間の暫定的な措置とされましたが、その後延長が繰り返されて実質的に恒久化されています。導入以降、税率は2度引き上げられ、1979年から現在の税率(1リットルあたり25.1円)となっています。
ガソリン税の一般財源化(2009年)
ガソリン税は当初、道路特定財源制度により道路整備のための財源として用途が限定されていました。道路特定財源制度は、道路の整備費用を自動車利用者に負担してもらう制度です。
2008年に道路特定財源制度の見直しが進められ、2009年に道路特定財源制度が廃止されました。これにより、ガソリン税や自動車関連の税収は一般財源化され、道路整備に限らず活用されています。
出典:国土交通省「道路特定財源の一般財源化について」
トリガー条項の設定と凍結(2010~2011年)
2010年から、ガソリンの平均小売価格が3ヶ月間連続で1リットル160円を超えたときに暫定税率分を一時的に停止するトリガー条項が導入されました。これは、ガソリンの価格が高騰した際に、負担を緩和するための仕組みです。
トリガー条項が発動された際には、130円を下回ると暫定税率が再開されます。
しかし、実際にはトリガー条項が導入されてから発動された事例はありません。また、2011年の東日本大震災のときに財源確保を理由に発動が凍結されてから、現在に至るまで凍結されたままとなっています。
暫定税率の廃止に向けた動き(2024~2025年)
2024年12月11日に自民党・公明党・国民民主党の3党が暫定税率の廃止に合意し、2025年春頃まで協議が続けられていました。
その後、2025年6月には、立憲民主党・日本維新の会・国民民主党・共産党などを含む野党7党が共同で「ガソリン暫定税率廃止法案」を提出しました。
6月20日に衆議院本会議で可決されたものの、翌21日の参議院財政金融委員会では採決に至らず、法案は実質的に廃案となっています。
こうした経緯を踏まえ、今後も与野党間で議論が続く見通しであり、引き続き動向を注視する必要があります。
ガソリン税の暫定税率廃止・減税が実現した場合の影響
暫定税率が廃止され、ガソリン税の大幅な減税が実現すれば、ガソリン価格の引き下げにより輸送費や生産コストの軽減が期待されます。これらのコスト抑制を通じて物価高騰を和らげる効果も期待され、消費者や企業の負担も軽減されるでしょう。
一方で、税収の減少による財政への影響は課題です。暫定税率を廃止した場合、年間で国は約1兆円、地方は約5千億円もの税収減となります。暫定税率の廃止により、公共サービスや道路網の維持管理に必要な財源が不足することが懸念されています。
そのほかのガソリン税に関わる議論について
そのほかガソリン税に関わる議論として、電気自動車の普及に伴うガソリン税収の減少が議題に上がっています。
既存の電源開発促進税(電気を使用する人に課される目的税)がありますが、税収が増えても使途が限られているため、代替財源としての活用は困難です。そのため、新たな財源として走行距離課税の案が検討されています。
走行距離課税は走行した距離に応じて課税されるもので、燃料の種類に関係なく、道路を利用した分だけ課税される仕組みです。
2022年10月には鈴木俊一財務相が参院予算委でEVへの走行距離課税に言及し、注目を集めました。
まとめ
ガソリン税は、ガソリンに課される税金です。揮発油税・地方揮発油税、暫定税率から構成されており、合計で1リットルあたり53.8円が課されています。
2025年6月時点では、暫定税率の廃止に向けた動きがあり、今後も議論が続く見通しです。暫定税率が廃止されれば、ガソリン価格が下がり、家計負担の軽減などにつながることが期待されます。
暫定税率の廃止など、今後のガソリン税の動向に注目しておきましょう。
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よくある質問
ガソリン税の内訳は?
ガソリン税は、揮発油税・地方揮発油税(本則税率)と暫定税率から構成され、合計1リットルあたり53.8円が課されています。
詳しくは「ガソリン税とは」をご覧ください。
ガソリン税の暫定税率は廃止される?
2024年12月に暫定税率の廃止に自民党・公明党・国民民主党の3党が合意し、2025年現在も廃止に向けた議論が続けられています。
詳しくは「暫定税率の廃止に向けた動き(2024~2025年)」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
