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チャイルドプランサポート制度とは?奨励金や企業が導入するメリットも解説

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

監修 鶏冠井 悠二

チャイルドプランサポート制度とは? 奨励金や企業が導入するメリットも解説

「チャイルドプランサポート制度」とは、企業が従業員の不妊治療・不育症治療と仕事の両立を支援するために設ける休暇等の制度です。

東京都では、企業によるチャイルドプランサポート制度の導入を促進する目的で「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」に取り組み、奨励金事業やセミナー・研修を行っています。

本記事では、企業がチャイルドプランサポート制度を導入するメリットや注意点から、「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」まで解説します。

目次

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チャイルドプランサポート制度とは

チャイルドプランサポート制度とは、企業が従業員の不妊治療・不育症治療と仕事の両立を支援するために休暇等を整備する制度を指します。

法律で正式に定められている用語ではなく、東京都が2024年度まで実施した「働く人のチャイルドプランサポート事業」において独自に使用していた制度名です。

2025年度からは、「働く人のチャイルドプランサポート事業」に代わり、「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」が始まっています。「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」の事業内容は、以下の3つです。

キャリアとチャイルドプラン両立支援事業の事業内容

  • 不妊治療・不育症治療に関するセミナー
  • 不妊治療・不育症治療と仕事の両立に関する研修
  • 不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金

出典:東京都 TOKYOはたらくネット「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」

不妊治療・不育症治療と仕事の両立支援が求められる背景

近年、晩婚化などを背景に、不妊治療・不育症治療を受ける人が増加しています。

こども家庭庁によると、不妊の検査・治療を経験したことがある夫婦は約4.4組に1組にのぼり、その割合は年々高まっています。

不妊治療・不育症治療と仕事の両立が難しい理由として、以下が挙げられます。

両立が難しい主な原因

  • 通院にかかる時間が読みづらく、仕事との日程調整が難しい
  • 精神面の負担が大きい
  • 体力面の負担が大きい
  • 通院回数が多い
  • 病院・会社・自宅間の移動が負担になる
  • 周囲の理解やサポートが得られない

不妊治療・不育症治療を受けると、突然会社を休まなければならないこともあります。

治療と仕事の両立ができずに雇用形態を変更する・離職する、あるいは治療をやめざるを得ないケースは少なくありません。こうした背景から、働きながら不妊治療・不育症治療を続けるための支援が求められています。


出典:こども家庭庁「不妊は特別ではない」
出典:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
出典:東京都 TOKYOはたらくネット「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」

企業がチャイルドプランサポート制度を導入するメリット

チャイルドプランサポート制度を導入するメリットは、従業員が不妊治療・不育症治療を受けながら仕事を続けられる点です。

また、離職防止や従業員のモチベーション向上につながるなど、企業にとっても以下のようなメリットがあります。

企業がチャイルドプランサポート制度を導入するメリット

  • 経験豊富な従業員の離職を防げる
  • 従業員のモチベーション向上が期待できる
  • 企業のイメージが向上する
  • 奨励金を受給できる可能性がある

経験豊富な従業員の離職を防げる

チャイルドプランサポート制度により、これまでスキル・経験を積んできた優秀な従業員が不妊治療・不育症治療を理由に離職することを防げます。

これにより、新たな人材を採用・育成する労力や費用が増加することも避けられるでしょう。

労働力不足が深刻化するなかで柔軟な働き方を支援する体制を整えることは、非常に重要です。

従業員のモチベーション向上が期待できる

チャイルドプランサポート制度により、下記のような効果が期待できるため、従業員のモチベーション向上につながるでしょう。

従業員にとってのメリット

  • 不妊治療と仕事を両立しやすくなる
  • 経済的な負担が減る
  • 周囲の理解が得られやすくなる

厚生労働省が不妊治療者(または治療予定者)に行った調査では、休暇制度や、制度を利用しやすい環境づくりが求められていることがわかりました。

項目割合
不妊治療に利用可能な休暇制度20.8%
有給休暇など現状ある制度を取りやすい環境作り20.1%
通院・休息時間を認める制度17.6%
有給休暇を時間単位で取得できる制度13.8%
テレワークなどの柔軟な勤務を可能とする制度(勤務時間、勤務場所)13.1%

また、制度が整備されていることで、周囲の従業員が将来のライフプランに活かせるなどのメリットがあります。従業員のモチベーションが向上すれば、組織活性化や生産性向上も期待できるでしょう。

企業のイメージが向上する

チャイルドプランサポート制度の導入により、働きやすい環境づくりを行っている企業としてイメージが向上する点もメリットのひとつです。求職者から見て「働きやすい企業」のイメージが高まるため、優秀な人材の確保につながるでしょう。

「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」は、東京都が独自に行っていますが、厚生労働省でも不妊治療と仕事の両立支援を進めています。そのひとつとして「くるみんプラス」等制度があります。

「くるみんプラス」等制度とは、不妊治療と仕事の両立支援に取り組む企業を評価する認定制度です。認定されるとくるみんプラスマークを使用できるため、外部へのPRとして活用できます。


出典:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」

【関連記事】
くるみんプラスの認定条件とは?不妊治療と仕事の両立を目指す取り組みを解説

奨励金を受給できる可能性がある

チャイルドプランサポート制度を導入すると、東京都が実施する「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」を受給できる可能性があります※。

「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」は、不妊治療・不育症治療のための休暇・休業制度を新たに整備した企業に対する奨励金です。東京都で事業を営む企業が一定の要件を満たすと、最大40万円の奨励金を受給できます。

「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」は東京都が実施する事業ですが、厚生労働省でも「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」を実施しています。詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。

※2018年度から2024年度まで実施されていた「働く人のチャイルドプランサポート制度整備奨励金」に申請した企業は、本奨励金を申請できません。ただし、2018年度または2019年度に「働く人のチャイルドプランサポート制度整備奨励金」を申請し、不妊治療と不育症治療のいずれか、または両方の休業制度を整備した場合は、「不育症治療のための休暇制度等整備事業」を申請できます。


出典:東京都 TOKYOはたらくネット「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」
出典:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立を支援する助成金のご案内」

企業がチャイルドプランサポート制度を導入する際の注意点

チャイルドプランサポート制度は、従業員・企業の双方にメリットがある制度ですが、ただ導入するだけでは十分な効果が得られません。導入する際は、以下の2点に注意しましょう。

企業がチャイルドプランサポート制度を導入する際の注意点

  • 従業員への周知・理解を徹底する
  • ハラスメント対策を行う

従業員への周知・理解を徹底する

チャイルドプランサポート制度を導入しても、従業員が制度の存在を知らなかったり、言い出しにくい雰囲気があったりすると、十分に活用されない可能性があります。

従業員がチャイルドプランサポート制度を利用しやすいように、社内説明会や研修を実施するなどして制度の意義や内容を周知しましょう。

役員や管理職も含む全従業員への周知を徹底することで、治療を受ける従業員が周囲からのサポートを得やすくなり、周囲の従業員も働きやすくなるでしょう。


出典:厚生労働省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」

ハラスメント対策を行う

チャイルドプランサポート制度を導入する際は、不妊治療による休暇の取得などが原因のハラスメントが生じないように対策を行わなければなりません。

ハラスメント対策の例

  • 不妊に対する正しい知識を周知して理解を深める
  • ハラスメントに関する企業の方針を明確化・周知する
  • 不妊治療に関する相談や休暇の申し出を受けた際の対応を明確化する
  • 周囲の従業員の業務状況の把握・調整を行う

また、不妊治療・不育症治療を行う人のなかには、周囲に知られたくない人も多くいるため、プライバシーの保護にも十分な配慮が必要です。


出典:厚生労働省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」

東京都「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」の概要

東京都で事業を営む企業が不妊治療・不育症治療と仕事の両立支援を行うと、「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」を受給できる可能性があります。主な対象事業者は以下の通りです。

主な対象事業者

  • 都内で事業を営んでいる企業等である
  • 都内に勤務する常時雇用労働者を2人以上雇用している
  • なお、社内相談員として任命する常用労働者2人については、雇入れ日から6ヶ月以上継続して雇用している必要がある
  • 新たに申請する不妊治療・不育症治療のための休暇制度等が就業規則・規程に明文化されておらず、かつ、運用されていない

奨励金の交付額は、最大40万円です(①か②を選択)。

区分奨励金の交付額
①「不妊治療」および「不育症治療」の休暇制度および休業制度の整備事業40万円
②「不育症治療」の休暇制度および休業制度の整備事業10万円
(すでに不妊治療の休暇制度等を導入済みの企業が対象)

奨励金を受給するためには、不妊治療・不育症治療のための休暇制度等に関して、主に以下の要件を満たす必要があります。

奨励金を受給するための主な要件

  • 時限的な制度でない
  • 休暇日数は、労働者1人あたり「不妊治療」「不育症治療」についてそれぞれ年間5日以上(頻繁な通院が必要な場合はさらにそれぞれ5日以上)
  • 休業期間は、労働者1人あたり「不妊治療」「不育症治療」についてそれぞれ1年以上
  • 休暇・休業ともに連続取得、分割取得ができる
  • 休暇を取得した際の賃金の取り扱いは有給とする

出典:東京都 TOKYOはたらくネット「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」

「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」の交付申請の流れ

「不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金」を受給するためには、決められた受付期間中に事前エントリーしたうえで申請を行う必要があります。

事前エントリーから受給までの流れは、以下の通りです。

なお、2018 年度から2024年度までの「働く人のチャイルドプランサポート制度整備奨励金」に申請した企業は、本奨励金を申請できません

※ただし、2018年度または2019年度に「働く人のチャイルドプランサポート制度整備奨励金」を申請し、不妊治療と不育症治療のいずれか、または両方の休業制度を整備した場合は、「不育症治療のための休暇制度等整備事業」を申請できます。


出典:東京都TOKYOはたらくネット「令和7年度不妊治療・不育症治療に係る職場環境整備奨励金募集要項〈電子申請用〉」

1.事前エントリー

決められた受付期間内に、東京都産業労働局雇用就業部ホームページ「TOKYOはたらくネット」から事前エントリーを行いましょう。

なお、予定数を上回るエントリーがあった場合は抽選によって申請可能企業が決定されます。通過しなかった場合は交付申請できません。

2. 奨励金の交付申請

事前エントリーの結果、申請可能企業となったら、申請期間内に交付申請書類を東京都に提出します。

申請方法は、郵送と電子申請のいずれかです。電子申請はデジタル庁が提供する電子申請システム(Jグランツ)を利用して行うため、事前にGビズIDのアカウント取得が必要です

申請の際は、事業計画書兼交付申請書に加え、さまざまな書類の提出が必要です。スムーズに申請できるように余裕をもって準備を進めましょう。

※GビズIDとは、ひとつのアカウントで複数の行政サービスにログインできる法人・個人事業主向け共通認証システムです。

3. 奨励事業の実施

申請後、交付が決定した企業は、奨励事業実施期間(3ヶ月)内に所定の取組事項を全て実施します。

奨励事業の取組事項

  • 社内意向調査の実施
  • 社内管理職(全員)の所定研修の受講
  • 「不妊治療」や「不育症治療」と仕事の両立に関する社内相談体制の整備
  • 「不妊治療」や「不育症治療」のための休暇制度等の整備
  • 「不妊治療」や「不育症治療」のためのテレワーク制度等の整備
  • 社内説明会の実施

「テレワーク制度等」とは、モバイルワーク・サテライトオフィス勤務・在宅勤務・フレックス・時差勤務のいずれかひとつ以上を含む制度を指します。

期間内に実施できなければ奨励金を受給できないため、計画的に進めましょう。

なお、取組事項の詳細は、「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」の募集要項で確認できます。

4. 実績報告

奨励事業の実施後、実績報告書を含む書類一式をそろえ、提出期限内にJグランツから東京都に提出します。

提出した実績報告書などをもとに審査が実施され、奨励金交付額が確定します。提出書類に関してヒアリングや追加書類の提出を求められた際は、速やかに対応しましょう。

5. 奨励金の受給

奨励金交付額の確定通知書が送付され、奨励金が振り込まれます。審査の状況によって異なりますが、確定通知書の送付後、受給までにかかる期間は1ヶ月程度です。

まとめ

チャイルドプランサポート制度とは、従業員の不妊治療・不育症治療と仕事の両立を支援するための休暇等の制度です。

2025年度からは「キャリアとチャイルドプラン両立支援事業」が開始されました。

東京都で事業を営む企業がチャイルドプランサポート制度を導入することで、従業員の離職防止やモチベーション向上、企業イメージ向上などの効果も期待できます。

働きやすい環境づくりを進め、組織活性化や生産性向上を図りましょう。

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よくある質問

企業がチャイルドプランサポート制度を導入するメリットは?

企業がチャイルドプランサポート制度導入による主なメリットは、以下の通りです。

企業がチャイルドプランサポート制度を導入するメリット

  • 経験豊富な従業員の離職を防げる
  • 従業員のモチベーション向上が期待できる
  • 企業のイメージが向上する
  • 奨励金を受給できる可能性がある

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。

監修者 鶏冠井 悠二
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