監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

会社設立時に作成する定款は、その後も様々な手続きで提出を求められることがあります。多くの場合、提出するのは定款の原本ではなく「写し(コピー)」ですが、その写しが原本と相違ないことを証明するために「原本証明」が必要となる場合があります。
しかし、「原本証明とは具体的に何か?」「どのような場面で必要なのか?」「どうやって作成するのか?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
本記事では、定款の原本証明について、その役割・必要な場面・書き方・注意点などを分かりやすく解説します。
目次
定款とは?
定款(ていかん)とは、会社の組織や運営に関する基本ルールを定めた書類であり、「会社の憲法」とも呼ばれます。具体的には、以下のような事項が記載されます。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 発起人の氏名・住所
- 株式に関する事項
- 役員に関する事項 など
株式会社・合同会社などの法人形態を問わず、会社設立時には必ず作成が必要です。通常、会社設立の発起人が作成し、株式会社の場合は公証役場で認証を受ける必要があります(合同会社の場合は認証不要)。
定款の種類1.原始定款
原始定款(げんしていかん)とは、会社設立時に最初に作成され、認証(株式会社の場合)を受けた定款のことです。
株式会社の場合、公証役場で認証を受けた際に公証人が署名(または記名押印)したものが原始定款にあたります。設立手続きの際に法務局へ提出するものも、この原始定款です。
定款の種類2.現行定款
現行定款とは、現在の定款です。設立以来一度も変更していない場合は、原始定款が現行定款となります。
定款としての効力があるのは現行定款です。そのため、定款の提出を求められたときは、原則として現行定款や現行定款の写しを提出してください。ただし、提出先によっては、原始定款の提示や提出が必要になることもあります。
定款の原本証明とはどういうもの?
定款の原本証明とは、提出する定款の写し(コピー)が本物であることを証明する書類です。
そもそも定款の原本は、あなたの会社に1部、公証人の認証を受けた場合は公証役場で受理されたものが1部保管されています。公証役場で認証された定款は、定款の承認から20年間の間は公証役場にて保存されます。
定款は会社の機密事項を記載した重要な書類のため、提出を求められたときでも原本ではなく写しを提出することが基本です。その際、原本証明を添付して、定款の写しが本物であることを証明します。
定款の写しとは?原本証明との違い
定款の写しは、定款をコピーしたものです。カラーでも白黒でも構いません。通常はすべてのページをA4サイズにコピーし、すべての綴じ目に会社の代表印で契印し、左側を2ヶ所ホチキスで留めて完成させます。
電子定款の場合も、写しの作成方法は同じです。すべてのページをA4サイズの用紙にプリントアウトし、すべての綴じ目に会社の代表印で契印し、左側を2ヶ所ホチキスで留めて完成します。
原本証明が必要なときは、写しの最後のページに原本証明を記載し、会社の代表印を押印して仕上げます。
定款の原本証明が必要になる場面
主に次の3つの場面で、定款の提出が求められます。写しを提出する際に原本証明も求められることがあるため、準備しておきましょう。
定款提出が求められる場面
- 法務局で登記手続きを実施するとき
- 行政機関で補助金・助成金を申請するとき
- 金融機関に融資を申込むとき
各状況を具体的に紹介します。
法務局で登記手続きを実施するとき
会社の設立登記はもちろん、設立後に役員変更・商号変更・目的変更・本店移転などの変更登記を法務局に申請する際、添付書類として定款の提出が必要になる場合があります。
行政機関で補助金・助成金を申請するとき
国や自治体などの行政機関では、法人が利用できる補助金制度や助成金制度を実施していることがあります。制度に申請するときは、定款提出を求められることが一般的です。定款の写しに原本証明をつけて提出してください。
金融機関に融資を申込むとき
金融機関に融資を申込むときも、定款提出を求められることがあります。金融機関によって異なりますが、定款の写しを提出する際には原本証明をつけることが必要な場合もあります。
また、法人口座を開設するときも、定款の写しや原本証明を求められることがあります。スムーズに申込めるように、あらかじめ原本証明を準備しておきましょう。
定款の原本証明の書き方
原本証明は定款のコピーとともに付ける添え状のようなものです。とくにフォーマットに決まりはないですが、定款の写し(コピー)が定款と相違がないことを記し、代表者名や社名、住所などを記載したうえで代表者印を捺印したものが一般的です。
紙の定款の場合は、以下の手順で原本証明を書きましょう。
紙定款の場合
- 定款の表紙を含む全ページをコピーする
- 左側を2ヶ所ほどホチキスで留める
- すべての綴じ目に会社の代表者印で契印する
- 最後のページの余白、もしくは裏面に、定款原本と相違ない旨と原本証明作成日の日付、本店所在地、会社名、代表者名を記載する
- 代表者名の右横に代表者印を押す
電子定款の原本証明の書き方は、以下をご覧ください。
電子定款の場合
- 電子定款のデータをすべてプリントアウトする
- プリントアウトした紙を順にそろえ、左側を2ヶ所ほどホチキスで留める
- すべての綴じ目に会社の代表者印で契印する
- 最後のページの余白、もしくは裏面に、定款原本と相違ない旨と原本証明作成日の日付、本店所在地、会社名、代表者名を記載する
- 代表者名の右横に代表者印を押す
いずれもA4サイズでモノクロコピーが一般的です。提出先で定款の写しや原本証明の書き方を指定している場合は、規定にしたがって作成してください。
定款の原本証明を作成する際の注意点
定款の原本証明を作成するときは、提出先の規定にしたがうことが大切です。
一般的な注意するべきポイントを2点紹介します。不明点があるときは、提出先に問い合わせましょう。
提出先に原本証明が必要か確認する
定款の写しを提出する際に、原本証明が必ずしも全てのケースで要求されるわけではありません。
例えば、金融機関での手続きなどでは、原本証明が不要な場合もあります。一方で、法務局での登記手続きや補助金申請などでは、原則として必要とされることが多いです。
不要な手間を避けるためにも、定款の写しを提出する前に、提出先の機関に原本証明が必要かどうかを確認するのが最も確実です。
原本証明は押印廃止だが記名は必要である
以前は原本証明に会社代表印の押印が必須とされていましたが、法改正により、一部の手続きにおいては押印義務が廃止されました。
ただし、押印義務がなくなった場合でも、以下の点に注意が必要です。
- 記名は引き続き必要であること
- 押印が推奨される場面があること
記名は依然として必要です。押印義務はなくなっても、「原本と相違ない旨の記載」・「日付」・「本店所在地」・「会社名」・「代表者の役職・氏名」の記載(記名)は引き続き必要となります。
また、提出先によっては(特に金融機関など)、慣習や内部ルールとして依然として押印を求められる場合があります。そのため、提出先に確認の上、特に指定がなければ、トラブル防止の観点から代表者印を押印しておくのが無難と言えるでしょう。
出典:法務省「申請書、各添付書面等の押印の要否について(商業・法人登記)」
まとめ
定款の原本証明は、定款の写しを各種手続きで提出する際に、その信頼性を担保するために重要な役割を果たします。
法務局での登記手続き・補助金申請・金融機関での融資や口座開設といった場面で必要となることがあります。作成する際は、定款の写しの最終ページなどに原本と相違ない旨・日付・会社情報・代表者情報を記載し、(必要に応じて)会社代表印を押印するのが一般的です。
ただし、原本証明や押印の要否は提出先によって異なるため、事前に確認することが最も重要です。本記事を参考に、必要な場面で適切に対応できるよう準備しておきましょう。
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よくある質問
定款の原本証明とはどんなもの?
定款の原本証明とは、定款の写しを提出する際に作成する添え状のようなものです。定款の写しが本物であることを証明するために作成します。
詳しくは記事内「定款の原本証明とは」をご覧ください。
定款の原本証明が必要になる場面とは?
定款の提出を求められる場合、基本的には定款原本ではなく、定款の写しと原本証明を提出します。法務局で登記をするときや行政機関で補助金・助成金制度を利用するとき、金融機関で融資を申込むときなどに必要になることがあります。
詳しくは記事内「定款の原本証明が必要になる場面」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
