会社設立の基礎知識

履歴事項全部証明書とは?提出が必要な場面や取得方法・手数料をわかりやすく解説

監修 松浦 絢子(弁護士)

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

履歴事項全部証明書とは?提出が必要な場面や取得方法・手数料をわかりやすく解説

履歴事項全部証明書とは、法人番号や資本金額など商業登記に登録された会社情報を証明するための書類です。法人設立後の届出や社会保険・労働保険への加入、融資や補助金を申し込む際など、多くの場面で提出が求められます。

履歴事項全部証明書は法務局の窓口だけでなく、郵送やオンラインでも申請でき、手数料を納めれば誰でも取得が可能です。

本記事では、履歴事項全部証明書が必要になる場面や登記簿謄本との違い、取得方法・手数料などについて詳しく解説します。

目次

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履歴事項全部証明書とは

履歴事項全部証明書とは、商業登記簿謄本に記録された法人番号や資本金額などの会社情報を証明するための書類です。履歴事項全部証明書には、現在の登記内容と、過去の変更履歴が記載されています。

履歴は「交付請求日の3年前の年の1月1日」以降の変更内容までです。

主な記載事項は、以下のとおりです。

履歴事項全部証明書の記載事項

  1. 会社法人番号
  2. 商号/原因年月日/登記年月日
  3. 本店所在地/原因年月日/登記年月日
  4. 公告をする方法
  5. 会社設立年月日
  6. 目的(事業内容)
  7. 発行可能株式総数
  8. 発行済株式の総数並びに種類及び数
  9. 株券を発行する旨の定め
  10. 資本金の額
  11. 株式の譲渡制限に関する規定
  12. 役員に関する事項/資格/氏名等/原因年月日/登記年月日
  13. 取締役会設置会社に関する事項
  14. 監査役設置会社に関する事項
  15. 登記記録に関する事項

出典:法務局「登記事項証明書記載例」

会社の基本情報が記載された履歴事項全部証明書は、法人が行うさまざまな手続きで必要となる重要な書類です。

あらかじめ数部取得しておくと、提出を求められた際にもスムーズに対応できます。ただし、提出先によっては有効期限がある点には留意が必要です。


出典:法務局「会社・法人の登記事項証明書の郵送請求」

履歴事項全部証明書と登記簿謄本(登記事項証明書)の違い

履歴事項全部証明書は、登記簿謄本(登記事項証明書)の一種です。

登記簿謄本(登記事項証明書)は、履歴事項全部証明書のほかに、現在事項証明書・閉鎖事項証明書・代表者事項証明書があります。

それぞれの証明書の内容は以下のとおりです。


証明書の種類記載内容
履歴事項証明書・交付請求日から3年前の年の1月1日以降の全ての登記事項
・「全部証明書」と「一部証明書」の2種類がある
現在事項証明書・交付請求日の時点で有効な登記事項
・「全部証明書」と「一部証明書」の2種類がある
閉鎖事項証明書・登記簿に記載されなくなった登記事項
・「全部証明書」と「一部証明書」の2種類がある
代表者事項証明書・会社の代表者がもつ代表権に関する登記事項のうち効力があるもの
・「全部証明書」と「一部証明書」に分かれておらず、1種類のみ
出典:法務省「商業・法人登記 Q&A「登記事項証明書と登記簿謄抄本とは、どう違うのですか?」」

登記簿謄本(登記事項証明書)について詳しく知りたい方は、別記事「登記簿謄本(登記事項証明書)とは?会社設立後に必要となるパターンや取り方などを解説」をご確認ください。

履歴事項全部証明書と全部事項証明書の違い

履歴事項全部証明書は商業登記簿謄本における証明書であるのに対して、全部事項証明書は、不動産登記簿謄本における登記事項証明書の一種です。

特定の不動産について、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている権利関係や所有者、抵当権など全ての事項が記載され、不動産の権利関係を確認する際に用いられます。


出典:長野県「全部事項証明書について」

履歴事項全部証明書の提出が必要になる場面

履歴事項全部証明書は、主に以下の場面で提出が求められます。

履歴事項全部証明書を提出する主な場面

  • 法人設立後の届出
  • 各種保険への加入
  • 法人名義での契約
  • 登記内容の変更
  • 融資・助成金・補助金の申請
  • 許認可申請

履歴事項全部証明書は、法務局の窓口または郵送での受け取りが必要であり、時間がかかるケースもあるため、早めに取得しておきましょう。

法人設立後の届出

法人設立後は、都道府県税事務所や市区町村役場にて法人設立届出書の提出を行います。その際に、法人設立届出書の添付書類として履歴事項全部証明書が必要です。

法人設立届出書の提出期限は自治体によって異なります。たとえば、東京都では、「設立日から15日以内」と定められています。

なお、法人を設立した際は税務署にも法人設立届出書を提出しますが、添付書類は定款のコピーのみで、履歴事項全部証明書の提出は必要ありません。

【関連記事】
【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは?


出典:東京都主税局「法人設立・設置届出書の記載要領」
出典:eLTAX 地方税ポータルシステム「法人設立・設置届出書 記載要領」
出典:国税庁「C1-4 内国普通法人等の設立の届出」

社会保険や労働保険への加入

社会保険や労働保険へ加入する際、添付書類として履歴事項全部証明書が必要です。

社会保険の加入手続きは管轄の年金事務所、労働保険の加入手続きは労働基準監督署・公共職業安定所(ハローワーク)で行います。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、加入が必要となった事実発生から5日以内、労働保険は10日以内に書類を提出する必要があるため、間に合うよう早めに準備しておきましょう。


出典:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧」
出典:日本年金機構「新規適用の手続き」
出典:J-Net21「労働保険の加入について教えてください。」

法人名義での契約

事務所の賃貸借契約や法人口座の開設など、法人名義で各種契約手続きを行う際に履歴事項全部証明書の提出が求められる場合があります。

また、法人名義のクレジットカードを申し込んだり、事業用の車を購入したりする際にも提出が必要になるケースがあります。

登記内容の変更

事務所の住所や取締役など、登記内容が変更された場合には手続き(変更登記)が必要です。主に以下のケースが挙げられます。

変更登記が必要となる主なケース

  • 役員の変更
  • 商号の変更
  • 事業目的の変更
  • 本店所在地の移転

このとき、変更内容によっては、現在の会社情報を証明するために添付書類として履歴事項全部証明書の提出が必要です。

【関連記事】
変更登記とは?商業登記・法人登記の違いや手続きを解説


出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式」

融資・助成金・補助金の申請

金融機関からの融資や、国・自治体の助成金・補助金制度を申請するときにも履歴事項全部証明書の提出が求められることがあります。

たとえば、「IT導入補助金」では、交付申請の際に履歴事項全部証明書(申請日からさかのぼって3ヶ月以内に発行されたもの)の提出が必要です。

なお、金融機関や制度によっては、履歴事項全部証明書以外にも定款のコピーや決算書類が必要になることもあるため、事前にホームページで確認しましょう。

【関連記事】
会社設立時に最適な助成金・補助金は?金額・条件・申請方法を一覧で紹介


出典:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局TOPPAN株式会社「交付申請の手引き」

許認可申請

建設業や人材派遣業など、特定業種を行うためには許認可申請をしなければなりません。許認可が必要となる主な業種は以下のとおりです。

許認可が必要となる業種の例

  • 建設業
  • 人材派遣業
  • 理美容業
  • 旅館業
  • 旅行業
  • 飲食業
  • 医薬品販売業
  • 廃棄物処理業
  • 貸金業
  • 倉庫業
  • 自動車運送業
  • 電気工事業

これらの許認可申請を行う際にも、履歴事項全部証明書が必要となる場合があります。貸借対照表や定款などの提出が求められる場合もあり、業種によって異なるため、対象の許認可を管轄する行政機関に確認しましょう。


出典:J-Net21「許認可が必要な業種は」
出典:国土交通省「許可申請の手続き」

【関連記事】
許認可とは?取得しない場合のペナルティや申請方法について解説

履歴事項全部証明書の取得に必要なもの

履歴事項全部証明書を取得する際に必要なものは以下のとおりです。


申請方法必要なもの
窓口申請 ・登記事項証明書交付申請書
・登記手数料(収入印紙)
郵送申請 ・登記事項証明書交付申請書
・登記手数料(収入印紙)
・返信用切手を貼った封筒
オンライン申請 ・登記事項証明書交付申請書
・登記手数料(電子納付)
出典:法務局「会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ」
出典:熊本地方法務局「会社・法人の登記事項証明書の郵送請求について」
出典:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」

登記事項証明書交付申請書の様式は、法務局のWebサイトでダウンロードできます。ただし、証明書発行請求機が設置されている登記所の窓口で申請する場合は、機械を操作することで作成できるため、申請書をダウンロードして記載する必要はありません。

また、収入印紙は郵便局などで購入して申請書に貼付しますが、オンライン申請の場合はインターネットバンキングなどによる電子納付が可能です。

なお、履歴事項全部証明書の申請に際して、取得する人の本人確認書類や印鑑の押印は不要です。


出典:法務局「登記事項証明書交付申請書」

履歴事項全部証明書の取得にかかる費用

履歴事項全部証明書の申請にかかる費用は以下のとおりです。


申請方法費用
窓口600円
郵送600円
登記・供託オンライン申請システム 窓口受け取り:490円
郵送受け取り:520円
出典:法務局「登記手数料について」

登記・供託オンライン申請システムによる申請は、窓口・郵送申請と比べて手数料が安く設定されています。取得にかかる費用を抑えたい場合は、登記・供託オンライン申請システムを利用しましょう。

履歴事項全部証明書の取得方法

履歴事項全部証明書の取得方法は以下の3つです。

履歴事項全部証明書の取得方法

  • 法務局の窓口
  • 法務局への郵送
  • 登記・供託オンライン申請システム(申請のみ)

交付申請を行うと、通常は即日で処理されます。法務局で手数料の納付が確認されてから履歴事項全部証明書が発行されるため、速やかに納付手続きを行いましょう。

なお、履歴事項全部証明書は、会社の関係者にかかわらず誰でも取得できます。


出典:法務局「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」
出典:登記・供託オンライン申請システム「登記・供託オンライン申請システムについて」

法務局の窓口にて交付申請を行う

履歴事項全部証明書は会社の本店所在地の管轄に関係なく、全国の法務局窓口で申請・取得できます。

登記事項証明書交付申請書の「①全部事項証明書(謄本)」の「履歴事項証明書」にチェックを入れ、600円分の収入印紙を貼付して提出しましょう。

なお、法務局窓口の営業時間は平日の9:00〜17:00で、土日祝と年末年始は閉庁しています。


登記事項証明書交付申請書
出典:法務局「登記事項証明書交付申請書」
出典:法務局「法務局の窓口対応時間について」
出典:法務局「登記手数料について」

法務局に郵送で交付申請を行う

登記事項証明書交付申請書を管轄の法務局に郵送し、履歴事項全部証明書を取得する方法もあります。

郵送の際は600円分の収入印紙が必要です。また、証明書を返送してもらうために、自身の住所を記載し、切手を貼り付けた返送用の封筒も忘れずに同封しましょう。

履歴事項全部証明書は、郵送してから数日以内に送られてきます。


出典:熊本地方法務局「会社・法人の登記事項証明書の郵送請求について」

登記・供託オンライン申請システムで交付申請を行う

履歴事項全部証明書の交付申請はオンラインでも可能です。登記・供託オンライン申請システムに登録し、「かんたん証明書請求」からすぐに交付申請できます。

オンラインで申請する主なメリットは以下のとおりです。

オンライン申請の主なメリット

  • 自宅や会社から平日8:30~21:00まで申請できる※
  • 窓口・郵送請求と比べて手数料が安い
  • 電子納付できる

※国民の祝日・休日、年末年始(12月29日~1月3日)を除く

オンラインでできるのは申請のみで、受け取りは法務局の窓口か郵送を選択します。PDFなど、電子データでの受け取りはできません。

登記・供託オンライン申請システムによる交付申請は、取得にかかる手数料がもっとも低く抑えられています。


出典:法務省「オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)」

まとめ

履歴事項全部証明書とは、法人番号や資本金額などの会社情報を証明するための書類で、4種類ある登記簿謄本(登記事項証明書)のうちのひとつです。

履歴事項全部証明書は法人設立後の届出や社会保険・労働保険への加入、融資を受ける際など、多くの場面で提出が求められます。

法務局窓口や郵送、登記・供託オンライン申請システムにて交付申請ができ、手数料を納付すれば誰でも取得できます。

法人を運営するにあたって提出を求められる場面が多いため、履歴事項全部証明書の概要や取得方法を理解しておきましょう。

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履歴事項全部証明書とは?

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詳しくは記事内「履歴事項全部証明書とは」をご覧ください。

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詳しくは記事内の「履歴事項全部証明書の取得方法」をご覧ください。

履歴事項全部証明書と登記簿の違いは?

履歴事項全部証明書は、登記簿謄本(登記事項証明書)の1種です。登記簿謄本には、履歴事項全部証明書・現在事項証明書・閉鎖事項証明書・代表者事項証明書の4種類があります。

詳しくは記事内の「履歴事項全部証明書と登記簿謄本(登記事項証明書)の違い」をご覧ください。

監修 松浦 絢子弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

松浦 絢子弁護士

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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