監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
納税証明書は、金融機関に融資を申し込む際や自治体に補助金を申請する際などに必要な書類のひとつです。納税の有無や納付金額などが記載されており、「その1」と「その2」などの種類があります。
納税証明書は、場面ごとに求められる種類が異なるため、発行方法や手数料とあわせて違いを理解しておきましょう。
本記事では、納税証明書の種類や「その1」と「その2」の違い、納税証明書を発行する手段・手数料・請求書の記載内容などを解説します。
目次
- 納税証明書とは
- 納税証明書の種類
- 納税証明書の「その1」と「その2」の違い
- 納税証明書は何に使う?
- 確定申告に納税証明書は必要?
- 納税証明書の見方
- 納税証明書はどこでもらえる?
- オンラインで請求する方法
- 書面で請求する方法
- 納税証明書を取得する際の手数料
- オンラインで請求する場合
- 書面で請求する場合
- 納税証明書交付請求書の記載方法
- ①「住所(納税地)」「氏名又は法人名及び代表者氏名」「個人番号又は法人番号」
- ②「証明書の種類」欄及び「証明を受けようとする税目」
- ③「証明を受けようとする国税の年度」
- ④「証明を受けようとする事項」
- ⑤「証明書の請求枚数」
- ⑥「証明書の使用目的」
- ⑦「※税務署整理欄」
- 納税証明書を請求する際の注意点
- 確定申告直後は請求不可のケースがある
- 原則として本人または法人の住所以外には送付できない
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
- よくある質問
納税証明書とは
納税証明書とは、納税の有無や納付金額などが記載された書類です。法人が金融機関に融資を申し込む際や補助金を申請する際などに提出を求められます。
納付すべき税金は、国税・都道府県税・市町村税など種類によって納付先が異なるため、納税証明書の請求もそれぞれに対して行わなければなりません。
本記事では、国税に関する納税証明書に関して解説します。
納税証明書の種類
納税証明書の種類は、全部で6種類です。
| 納税証明書の種類 | 証明内容 |
|---|---|
| 納税証明書「その1」 | 納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等 |
| 納税証明書「その2」 | 「申告所得税及復興特別所得税」または「法人税」の所得金額 |
| 納税証明書「その3」 | 未納の税額がないこと |
| 納税証明書「その3の2」 | 「申告所得税及復興特別所得税」と「消費税及地方消費税」に未納の税額がないこと(個人用) |
| 納税証明書「その3の3」 | 「法人税」と「消費税及地方消費税」に未納の税額がないこと(法人用) |
| 納税証明書「その4」 | 証明を受けようとする期間に、滞納処分を受けたことがないこと |
納税証明書の「その1」と「その2」の違い
納税証明書の「その1」と「その2」の違いは証明する内容です。「その1」には納付すべき税額と納付した税額及び未納税額、「その2」には申告所得税及復興特別所得税または法人税の所得金額が記載されています。
手続きの種類によっては「その1」だけで足りる場合もあれば、「その1」と「その2」の両方が求められる場合もあります。
納税証明書は何に使う?
納税証明書は、たとえば、以下のような場面で使用されます。
| 納税証明書が必要な場面の例 | 提出が必要な納税証明書 |
|---|---|
| IT導入補助金 | 納税証明書「その1」または「その2」 |
| 民間金融機関の融資 | 納税証明書「その1」および「その2」など |
| 全省庁統一資格の申請 |
個人:納税証明書「その2」および「その3の2」 法人:納税証明書「その2」および「その3の3」 |
出典:調達ポータル「統一資格審査申請業務 インターネットによる申請」
出典:調達ポータル「統一資格審査申請業務 郵送・持参による申請」
補助金の申請において納税証明書の提出が求められる場合があります。たとえば、IT導入補助金2025では、納税証明書「その1」または「その2」の提出が必要です。
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者の業務効率化やDX推進に向け、ITツール導入を支援する制度です。
また、民間金融機関の融資においても、年収を確認するための書類のひとつとして、納税証明書が認められるケースがあります。
そのほか、国の省庁や独立行政法人などが発注する業務に入札するには「全省庁統一資格」と呼ばれる共通の参加資格を取得する必要があります。全省庁統一資格を申請する際は、税金の未納がないことや適正な申告を示すために、納税証明書の提出が必要です。
出典:IT導入補助金2025ポータルサイト「IT導入補助金制度概要」
出典:調達ポータル「全省庁統一資格について」
確定申告に納税証明書は必要?
法人の確定申告、個人の確定申告いずれの場合も、納税証明書は提出書類ではありません。そのため、確定申告提出時に納税証明書の添付・同封は不要です。
納税証明書の見方
納税証明書の記載項目は、以下のとおりです。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 証明書の種類名 | 「その1 納税額等証明用)」など、証明書の種別名が記載される部分 |
| 住所(所在地) | 個人なら「住所」、法人なら「所在地」が記載される欄 |
| 氏名(名称) | 個人なら「氏名」、法人なら「名称」が記載される欄 |
| 税目 | 所得税・法人税・消費税など、どの税金の証明かを示す欄 |
| 証明内容 | 納付すべき税額・納付済額・未納額などが一覧で記載される欄 |
| 発行番号 | 証明書ごとの番号を示す欄 |
| 発行日 | 証明書を発行した日付が記載される欄 |
| 税務署長名 | 発行した税務署長の氏名が記載される欄 |
| 署長印 | 税務署長の公印(押印欄) |
税目の欄には「法人税」など具体的な税金の種類が記載されています。また、証明内容の欄には、たとえば「その1」の場合、年度および区分・納付すべき税額・納付済額・未納税額・法定納期限などが記載されています。
書面の下部にはQRコードがあり、国税庁ホームページ「納税証明書確認コーナー」から証明内容の確認が可能です。PDFファイルをアップロードすることでQRコードが読み取られ、記載事項が端末の画面に納税証明書の形式で表示されます。
なお、納税証明書の紙面はプリンターでモノクロ印刷され、偽造防止のための各種加工が施されています。
出典:国税庁「QRコード付納税証明書確認コーナーに関するQ&A」
納税証明書はどこでもらえる?
納税証明書は、オンラインもしくは書面のいずれかで発行の請求が可能です。取得方法によって必要書類や手順が異なるため、自分に合った方法を確認してから申請を進めましょう。
オンラインで請求する方法
オンラインでの請求はe-Taxの「納税証明書の交付請求(署名省略分)」から行い、税務署の窓口・郵送・電子納税証明書のいずれかの方法で受け取ります。
各受け取り方法における電子証明書(例:マイナンバーカードなど)の必要性は、以下のとおりです。
| 受取方法 | 電子証明書等 |
|---|---|
| 税務署の窓口 | 不要 |
| 郵送 | 必要 |
| 電子納税証明書 (PDFファイル又はXMLファイル) | 必要 |
税務署窓口で受け取る場合は、電子証明書は不要です。ただし、受け取り時には本人確認が必要で、「マイナンバーカード」または「本人確認書類と番号確認書類」の提示が求められます。
郵送または電子納税証明書で受け取る場合は、本人の電子委任状を添付・送信すれば、代理人による請求や手数料の支払い、受領が可能です。
電子納税証明書は、e-Taxのメッセージボックスに90日間保存され、その期間内であれば何度でも使用できます。
スマホからマイナンバーカードを利用して取得する方法
納税証明書のオンライン請求は、スマホからも行うことができます。請求・受け取りの手順は、スマホ・パソコン共通で以下のとおりです。
オンラインで納税証明書を請求・受け取りする方法
- e-Taxホームページにログイン
- 納税証明書請求データを作成
- 画面にしたがって必要事項を入力し「送信」をタップ/クリック
- メッセージボックスに手数料の案内が格納される
- インターネットバンキングなどで手数料を納付
- 電子納税証明書をダウンロード
出典:国税庁「納税証明書はスマホで請求・受取ができます!」
出典:国税庁「G-1 納税証明書の交付請求手続」
e-Taxからオンラインで請求すると、メッセージボックスに手数料の案内が格納されます。その後、案内にしたがって手数料を納付すれば、電子納税証明書がダウンロードできます。
書面で請求する方法
書面で請求する方法は、郵送と税務署の窓口の2つです。それぞれで必要となる書類は以下のとおりです。
| 請求方法 | 交付に必要な書類 |
|---|---|
| 郵送 |
・必要事項を記載した納税証明書交付請求書 ・手数料の金額に相当する収入印紙 ・所要の切手を貼った返信用封筒 ・番号確認書類の写しおよび本人確認書類の写し(個人のみ) |
| 税務署の窓口 |
・必要事項を記載した納税証明書交付請求書 ・手数料の金額に相当する収入印紙又は現金 ・本人確認書類および番号確認書類 |
税務署の窓口で請求する場合は、本人(法人の場合は代表者)からの委任状があれば、代理人が請求することもできます。
なお、上表にある「本人確認書類」には、1枚で足りるものと、2枚の提示が必要なものがあります。持参予定の本人確認書類がどちらに該当するか、以下を参考に確認しておきましょう。
| 1枚で足りるものの例 | 2枚の提示が必要なものの例 |
|---|---|
|
・マイナンバーカード(個人番号カード) ・運転免許証 ・写真付き住民基本台帳カード ・旅券(パスポート) |
・写真の貼付のない住民基本台帳カード ・国民健康保険・健康保険・船員保険・介護保険の被保険者証や共済組合員証 ・国民年金手帳(2022年3月31日以前交付) ・基礎年金番号通知書 |
番号確認書類としては、マイナンバーカードや通知カードなどが利用できます。
納税証明書を取得する際の手数料
納税証明書の取得には手数料がかかり、請求方法(オンラインか書面)や交付する書類の種類によって金額が異なります。申請前に金額を把握しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
オンラインで請求する場合
オンラインで納税証明書を請求する場合の手数料は、以下のとおりです。
| 納税証明書の種類 | 手数料 |
|---|---|
| 納税証明書(その1)(その2) | 税目数 × 年度数 × 枚数 × 370円 |
|
納税証明書(その3)(その4) ※(その3の2)(その3の3)も含む | 枚数 × 370円 |
直接所轄の税務署窓口で受け取る場合は、電子納税証明書は1件の請求につきひとつの電子ファイルが交付されるため、請求枚数は常に1枚として取り扱われます。
書面で請求する場合
納税証明書を書面で請求する場合の手数料は、以下のとおりです。
| 納税証明書の種類 | 手数料 |
|---|---|
| 納税証明書(その1)(その2) | 税目数 × 年度数 × 枚数 × 400円 |
|
納税証明書(その3)(その4) ※(その3の2)(その3の3)も含む | 枚数 × 400円 |
なお、手数料を収入印紙で支払う場合、収入印紙に消印すると無効になります。郵送での受け取りを希望する場合は、郵送料(切手)および返信用封筒の準備も必要です。
納税証明書交付請求書の記載方法
①「住所(納税地)」「氏名又は法人名及び代表者氏名」「個人番号又は法人番号」
「住所(納税地)」「氏名又は法人名及び代表者氏名」「個人番号または法人番号」には、納税する人の住所や氏名、個人番号を記載します。
法人の場合は、法人名・代表者の氏名・法人番号を記載します。
②「証明書の種類」欄及び「証明を受けようとする税目」
「証明書の種類」欄と「証明を受けようとする税目」欄のそれぞれ該当する部分に、チェックを入れます。
「証明書の種類」欄では、納税証明書の種類(「その1」~「その4」)を選択します。「証明を受けようとする税目」欄では、対象となる税金(所得税や法人税など)を選びます。
複数の項目にチェックを入れ、1枚の請求書で複数種類の証明書の交付を請求することも可能です。
③「証明を受けようとする国税の年度」
「証明を受けようとする国税の年度」は、国税の納税証明を受けようとしている年度を記載する欄です。
税の種類によって記載する年度の区分が異なります。たとえば、申告所得税等は「年分」、法人税は「事業年度」、消費税等は「課税期間」を記載します。
複数年分の記載欄がありますが、請求できるのは原則として、直前の年分(事業年度・課税期間)からさかのぼって3年前までです。
なお、納税証明書の「その3」「その3の2」「その3の3」については、国税の年度を指定することができません。
④「証明を受けようとする事項」
「証明を受けようとする事項」欄では該当部分にチェックを入れるか、証明を受けたい期間の記載が必要です。
「その1」では「法定納期限等」「源泉徴収税額」「未納税額のみ」のうち必要なものにチェックを入れます。
「その2」は、「申告所得税及復興特別所得税」の証明を請求する場合に限り使用します。この場合、「総所得金額」「事業所得金額」「その他の所得金額」のいずれかにチェックを入れます。
「その3」では特に記載は必要なく、「その4」では「証明を受けようとする期間」の記載が必要です。
⑤「証明書の請求枚数」
「証明書の請求枚数」欄は、必要な証明書の枚数を種類ごとに記載します。
「その1」「その2」を複数年度分、または「その3」を複数税目分だけ請求した場合は、原則として1枚の証明書が発行されます。
一方、「その1」「その2」を年度ごと、「その3」を税目ごとに請求した場合は「各〇枚」と具体的な枚数を記載しなければなりません。
⑥「証明書の使用目的」
「証明書の使用目的」欄では、以下の項目から該当するものにチェックを入れます。
「証明書の使用目的」欄のチェック項目
- 資金借入
- 入札参加指名願
- 登録申請(更新)
- 保証人
- その他
該当する使用目的がなかった場合は「その他」にチェックを入れ、カッコ内に具体的な使用目的を記載します。
⑦「※税務署整理欄」
「※税務署整理欄」とある部分より下の欄は、請求側が記載する必要はありません。
納税証明書を請求する際の注意点
納税証明書は申請方法や種類によって手続きが異なるため、事前に確認しておくことが重要です。スムーズに取得するためにも、申請のタイミングや送付先の制限など、注意すべきポイントを押さえておきましょう。
確定申告直後は請求不可のケースがある
納税証明書は、確定申告や納税の直後には発行できない場合があります。約2週間経過すれば発行可能とされていますが、実際の発行日は所轄の税務署に確認しましょう。
確定申告や納税直後に納税証明書が必要になった場合は、正確な発行日を確認したうえで、提出までのスケジュールを調整する必要があります。
原則として本人または法人の住所以外には送付できない
納税証明書の送付は、原則として本人または法人の住所(納税地)以外にはできません。
ただし、本人(法人の場合は代表者)からの委任状と、代理人の本人確認書類(「書面で請求する方法」で挙げた本人確認書類)があれば、代理人の住所へ送付することも可能です。
代理人に納税証明書に関する手続きを一任する場合は、必要書類を事前に準備しておきましょう。
まとめ
納税証明書は、金融機関の融資申込や自治体の補助金申請などで必要な、納税状況を証明する書類です。主に国税について発行され、「その1」には納付すべき税額・納付済額・未納税額が記載され、「その2」には所得税や法人税の所得金額が記載されます。
納税証明書は、e-Taxを通じてのオンライン・税務署窓口・郵送で請求が可能です。
必要な納税証明書は、用途によって種類が異なるため、提出先にどの納税証明書が必要なのか、事前に確認しておく必要があります。
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監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
