訪問介護は、高齢者や障がいのある人が「住み慣れた自宅で安心して暮らし続ける」ことを支える重要な社会インフラです。近年は高齢化とともに需要が拡大し、地域に密着した事業として新たに参入する事業者も増えています。
しかし、訪問介護の開業には法人設立・人員配置・設備・運営体制など、法的に定められた要件を満たす必要があり、資金計画や申請スケジュールの管理が不可欠です。
本記事では、訪問介護を開業するための流れや要件、必要な費用、活用できる融資・助成金制度などを解説します。
目次
- 訪問介護とは
- 訪問介護を開業するための要件
- 資格
- 人員配置基準
- 事業所の施設・設備
- 運営基準
- 訪問介護を開業する流れ
- STEP1. 法人を設立する
- STEP2. 物件の選定・備品を揃える
- STEP3. 人員を確保する
- STEP4. 指定申請書類を提出する
- 訪問介護の開業に必要な費用
- 訪問介護の開業資金に活用できる融資・補助金・助成金
- 新規開業・スタートアップ支援資金
- ソーシャルビジネス支援資金
- 介護労働環境向上奨励金
- 失敗しない訪問介護の開業3つのポイント
- スタッフが働きやすい職場環境を整える
- 集患施策にも力をいれる
- DX・IT化で業務を効率化をする
- 訪問介護事業における最新の制度改定と開業時にできること
- 【BCP対策】災害や感染症への準備をしておく
- 【加算対策】報酬アップのチャンスを逃さないように準備する
- 【虐待・ハラスメント対策】安心して働ける職場環境を整える
- 【情報公開】重要な書類はインターネット上でも見られるようにする
- 【外部連携】地域とつながり相談・協力できる体制をつくる
- よくある質問
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
訪問介護とは
訪問介護とは、自分や家族だけでは日常生活を送るのが難しい要介護者の自宅を訪問し、生活を支えるサービスです。
提供する主なサービスには、次の3つがあります。
- 身体介護:食事・入浴・排せつの支援など
- 生活援助:掃除・洗濯・調理・買い物の代行など
- 通院等乗降介助:通院時の移動や乗り降りのサポートなど
利用者本人だけでなく、共働きや遠方在住などの理由で、常に介護ができない家族にとっても心強く頼れる存在です。
訪問介護を開業するための要件
訪問介護を開業するには、以下の4つで国が定めた要件を満たす必要があります。
これらで定められている要件を満たせていないと指定申請が認められないため、必ず事前に確認しておきましょう。
資格
法律上、事業の代表者や管理者自身には特定の介護資格は必須ではありません。
ただし、サービス提供責任者には「介護福祉士」または「実務者研修修了者」以上の資格が必要です。また、訪問介護員には「介護職員初任者研修修了者」以上の資格が求められます。
これらは、サービスの質と安全性を確保するための重要な基準です。まずは有資格者を確保できるかが、指定申請に向けた最初のハードルになります。
人員配置基準
訪問介護を開業するには、法律で定められた人員配置基準を満たす必要もあります。
人員の配置基準は、以下のとおり定められています。
- 管理者:事業所全体を統括する常勤の管理者を1名配置
- サービス提供責任者:事業所全体を統括する常勤の管理者を1名配置
- 訪問介護員:訪問介護員を常勤換算で2.5名以上配置
なかでも重要な人員基準が、訪問介護員等を常勤換算で2.5名以上確保することです。
常勤換算とは、非常勤や登録ヘルパーを含めた勤務時間の合計を、常勤者1人分(週40時間など)に換算して計算する方法で、この人数にはサービス提供責任者も含まれます。
たとえば、週20時間勤務の職員は 0.5人分(=20時間 ÷ 40時間) として計算されます。
ただし、管理者とサービス提供責任者の兼務が認められるかは、自治体によって運用が異なる場合があるため、指定を受ける行政窓口に事前確認を行いましょう。
常勤換算の計算方法については、別記事「常勤換算とは?人員配置基準などの確認に必要な指標の計算方法や注意事項をわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
事業所の施設・設備
訪問介護の事業所には、日々の業務を円滑に行える環境が整っていることが求められます。
具体的には、次の3つの設備が必要です。
- 職員が事務作業を行うための事務室
- 利用者や家族が安心して相談できるスペース
- 感染症対策のための衛生設備
さらに、利用者や従業員の個人情報を保管するための鍵付きの書庫・キャビネットなどは、指定申請時の現地確認でもチェックされるポイントです。
運営基準
訪問介護の開業では、設備や人員の整備だけでなく、事業を適正に運営するための運営基準を満たす必要があります。
その中心となるのが、運営規程の作成です。運営規程には以下の項目を具体的に明記する必要があります。
- 事業の目的
- 営業日
- 提供するサービス内容
- 利用料金
さらに近年では、災害や感染症の発生時にも事業を継続できるよう備える「BCP(事業継続計画)」の策定が特に重要視されています。2025年4月以降、BCPを未策定の事業所は介護報酬が減算されているため、開業準備の段階から対応しておきましょう。
出典:厚生労働省「医療施設の災害対応のための事業継続計画(BCP)」
訪問介護を開業する流れ
訪問介護を開業するときの大きな流れとしては以下のとおりです。
それぞれの段階で必要な書類や要件を理解して、着実に開業準備を進めていきましょう。
STEP1. 法人を設立する
訪問介護は個人事業としての開業が認められておらず、株式会社・合同会社・NPO法人などの法人格を取得する必要があります。
これは、サービスの継続性や責任の所在を明確にするために定められた基準であり、要件を満たしていない場合は指定申請そのものができません。
会社を設立する際は、定款の「事業目的」の項目に「介護保険法に基づく訪問介護事業」という文言を記載しましょう。すでに障害福祉サービスなどの法人を運営している場合は、定款にこの事業目的を追加し、法務局で目的変更の登記手続きを行う必要があります。
法人設立の手続きをスピーディーに進めたい方には、「freee会社設立」の活用がおすすめです。必要な書類を自動作成でき、煩雑な定款作成や登記準備を効率的に完了できます。freee会社設立を活用して、法人の設立を進めましょう。
STEP2. 物件の選定・備品を揃える
訪問介護の事務所の広さに厳密な規定はなく、生活スペースと事務所スペースが明確に区分されていることなどの条件を満たしている場合には、自宅兼事務所での開業も可能です。
ただし、自宅兼事務所が認められるかは自治体によって異なるため、指定申請前に管轄の行政窓口へ確認しましょう。
STEP3. 人員を確保する
上述したように、訪問介護を開業するには、管理者・サービス提供責任者(サ責)・訪問介護員の配置が必要です。
それぞれ、法律で定められている配置基準があるため、それに従ったスタッフ・職員の採用を行います。
STEP4. 指定申請書類を提出する
訪問介護の開業には、開業予定地の都道府県または市区町村から、指定居宅サービス事業所の指定を受ける必要があります。
この指定を受けるためには「指定申請」を行う必要があります。指定申請に必要な書類は主に以下のとおりです。ただし、自治体によって必要書類が異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
【提出が必要な書類(東京都の場合)】
- 指定申請書
- 訪問介護事業所の指定等に係る記載事項
- 登記事項証明書
- 従業者の勤務体制・勤務形態一覧表
- 資格証の写し
- 事業所の平面図
- 運営規程
- 利用者からの苦情処理措置の概要
- 誓約書
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 体制等状況一覧表
- 加算様式・参考書式
- 老人福祉法に基づく届出
- その他(変更届など)
申請書類は、一般的に事業を開始したい月の2ヶ月前までに提出を完了させる必要があります。遅れると指定が翌月以降にずれ込み、その間の人件費や家賃が無駄になってしまうため、スケジュール管理は重要です。
書類が受理された後は、担当者による現地確認(実地指導)が行われます。すべての基準を満たしていると認められると、事業者として指定されます。
訪問介護の開業に必要な費用
訪問介護を開業するには、総額でおよそ200万〜500万円の資金が目安となります。
法人設立や事務所契約などにかかる「開業資金」と、開業後の運営を支える「運転資金」の2種類に分類して計画しましょう。
あらかじめ運転資金を準備しておくのは、収入源である介護報酬の入金が、サービス提供の2ヶ月後になるためです。その間も人件費や家賃などの支払いが発生するため、初期費用とは別に最低3ヶ月分の運転資金を確保しておくことが重要です。
自己資金・融資・補助金を組み合わせて現実的な資金計画を立て、開業の準備を進めましょう。
訪問介護の開業資金に活用できる融資・補助金・助成金
訪問介護の開業にはまとまった資金が必要です。
自己資金だけでまかなうのは難しいため、公的な融資制度や助成金・補助金を活用しましょう。
新規開業・スタートアップ支援資金
訪問介護の開業資金を調達する際、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」の融資を活用する方法があります。
特に「新規開業・スタートアップ支援資金」は、これまでの実績がない創業者でも利用しやすく、事業の将来性や実現可能性を重視して審査が行われます。民間の金融機関と比べて融資のハードルが低く、低金利・長期返済が可能です。
審査を通過するためには「なぜこの事業を始めたいのか」という開業への熱意だけでなく、具体的な収支計画を盛り込んだ事業計画書の提出が必要です。
まずは公庫の窓口に相談し、専門担当者と一緒に事業計画を磨き上げるところからスタートしましょう。
ソーシャルビジネス支援資金
日本政策金融公庫の融資制度のなかでも、訪問介護事業の社会的な価値に着目した「ソーシャルビジネス支援資金」もおすすめの支援制度です。
この制度は、高齢者福祉や地域活性化など、社会課題の解決に取り組む事業を対象としています。高齢者の在宅生活を支える訪問介護は、その趣旨にまさに合致する事業と見なされるため対象になりやすいです。
適用が認められれば、「新規開業・スタートアップ支援資金」よりもさらに低い特別利率で融資を受けられる可能性があり、長期的な返済負担の軽減につながります。
介護労働環境向上奨励金
融資だけで資金調達を行うのはリスクがあるため、返済不要の助成金・補助金を積極的に活用しましょう。
なかでも「介護労働環境向上奨励金」は、介護サービス事業者が働きやすい職場づくりや設備を導入する際に活用できます。
ただし、助成を受けるには、事前に計画書の提出・認定取得が必要です。導入後に申請しても対象外になることが多いため、開業準備段階から活用を前提に申請を進めましょう。
失敗しない訪問介護の開業3つのポイント
訪問介護の開業を成功させるには、制度を理解するだけでなく、実際の運営を安定させる工夫が欠かせません。
人材不足や採用コストの高騰など、介護業界特有の課題を乗り越えるには、事前の戦略が重要です。
スタッフが働きやすい職場環境を整える
訪問介護事業を成功させるうえで重要なのは、人材の確保と定着です。介護業界が慢性的な人手不足にある今、スタッフが「ここで働き続けたい」と感じられる職場環境を戦略的に整えることが、事業所の競争力になります。
具体的には、介護職員処遇改善加算などの各種加算を確実に取得し、その原資を明確な賃金規程に反映させることで、給与への納得感を高めましょう。
また、スマートフォンアプリを活用して記録業務を効率化し、直行直帰を可能にする仕組みを整えることで、ヘルパーの身体的負担や移動時間の無駄を減らせます。
さらに、新人研修制度の充実や定期的な面談によるキャリアアップ支援など、スタッフが安心して成長できる環境づくりも、人材の定着率を高めるためには欠かせません。
集患施策にも力をいれる
訪問介護事業を成功させるうえで大切なのが、利用者を安定的に確保するための集患施策です。どれほど質の高いサービスを提供しても、利用者に選ばれなければ事業は成り立ちません。
安定した集患には、地域の居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーとの信頼関係づくりが重要です。
ケアマネジャーは利用者のケアプランを作成し、最適なサービス事業所を選定する役割を担っています。ケアマネジャーから「あの事業所なら安心して任せられる」と第一に思い出してもらえる存在になることが、安定的な紹介につながります。
そのためには、開業前から事業所の理念や強みを明確にまとめたパンフレットを用意し、管理者とサービス提供責任者は挨拶回りを行いましょう。
開業後も、迅速で丁寧な報告を行うなど信頼を積み重ねることで、地域に根付いた紹介ネットワークを築くことが大切です。
DX・IT化で業務を効率化をする
少人数で運営する小規模な事業所ほど、開業初期からのDX・IT化で業務を効率化しましょう。
訪問介護では、サービス記録の作成・国保連への請求・ヘルパーのシフト管理など、膨大な事務作業が発生します。これらをすべて手作業で行うと、管理者やサービス提供責任者が本来注力すべき人材育成やケアマネジャーへの営業といった、重要業務の時間が奪われてしまいます。
記録から請求データを自動作成できる介護ソフトなどを導入することで、事務作業を削減することが可能です。訪問ルートを最適化したシフト作成もできるので、移動時間のムダを減らして稼働率を向上させられます。
DX・IT化をコストではなく生産性を高めるための戦略的投資と考え、補助金制度なども活用しながら積極的に取り入れていきましょう。
訪問介護事業における最新の制度改定と開業時にできること
最近の制度改定では、訪問介護を取り巻くルールや評価の視点が強化・見直されています。
開業を目指すのであれば、これらの制度を理解し、初動から備えることが重要です。
【BCP対策】災害や感染症への準備をしておく
訪問介護を開業するうえで、優先して取り組むべき課題がBCP(事業継続計画)の策定です。
2025年4月からは、自然災害や感染症の発生に備えたBCPを策定していない事業所は、介護報酬が減算されるというペナルティが適用されています。
BCPでは、緊急時の連絡体制や支援優先度の基準、衛生用品などの備蓄計画を定めて全職員に周知することが求められます。
BCPへの対応は単なる減算対策ではなく、非常時に職員と利用者の安全を守り、地域から信頼される事業所をつくるための重要な経営課題です。
出典:厚生労働省「医療施設の災害対応のための事業継続計画(BCP)」
【加算対策】報酬アップのチャンスを逃さないように準備する
2024年度の報酬改定により、訪問介護の基本報酬は厳しい水準になっています。こうした経営環境のなかで安定した収益を確保するには、質の高いサービス提供体制を評価する「加算」を計画的に取得する必要があります。
なかでも、職員への研修計画や定期的な会議の開催などを要件とする「特定事業所加算」は、収益への影響が大きく、多くの事業所が取得を目指す代表的なものです。
また、外部の理学療法士などと連携してリハビリ支援を行う「生活機能向上連携加算」のように、ケアの質の向上と収益アップを両立できる加算もあります。
開業準備の段階から、どの加算が自社の理念やサービス方針に合致するのかを検討し、必要な人員や体制を整えましょう。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
【虐待・ハラスメント対策】安心して働ける職場環境を整える
2024年4月から、すべての介護事業所において虐待防止措置の実施が完全義務化されました。これは、利用者の人権を守るだけでなく、職員が安心して働ける職場環境を整えるための重要な取り組みです。
具体的には、以下の体制整備が求められます。
- 虐待防止のための指針の策定
- 管理者を含む委員会の設置と定期開催
- 全職員を対象とした年1回以上の研修実施
さらに、利用者やその家族からのハラスメントに対応するための体制構築も必要です。職員が問題をひとりで抱え込まず、組織として迅速に対応できる仕組みが求められます。
そのためには、相談窓口の設置や対応フローを明確にし、職員が安心して相談できる環境をつくることが重要です。
出典:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」
【情報公開】重要な書類はインターネット上でも見られるようにする
2025年4月から、介護事業者の情報公開に関する義務が強化されました。
すべての事業所には、国が整備するデータベースに財務状況を報告することが義務化されています。加えて、利用者がサービスを選ぶ際の判断材料となる「運営規程の概要」や「重要事項説明書」などを、自社のホームページなどで公表することも求められています。
これらの取り組みは、事業運営の透明性を高め、利用者がより安心して事業所を選択できるようにするためのものです。
開業時には、最低限の内容でも構わないので自社のホームページを用意し、厚生労働省が定める情報を公開できる状態にしておきましょう。
出典:厚生労働省「介護サービス情報の公表制度」
【外部連携】地域とつながり相談・協力できる体制をつくる
現代の介護では、利用者の生活に医療・福祉・行政など複数の分野が関わるため、ひとつの事業所だけで多様なニーズに応えるのは難しくなっています。
そのため、開業時から地域社会の一員として、他の専門機関と積極的に連携する体制を築くことが求められます。これが、国が推進する「地域包括ケアシステム」の基本的な考え方です。
たとえば、生活機能向上連携加算の取得を視野に入れ、地域のクリニックや訪問看護ステーションに所属する理学療法士などと協力する関係の構築が考えられます。
また、BCP対策の一環として、災害発生時に職員や物資を融通し合える協定を近隣の事業所と結ぶのも有効です。
地域の医療・介護資源を活用し、他事業所とのネットワークを構築することが、利用者支援の質を高めるだけでなく、安定した経営の実現につながります。
出典:厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業について」
よくある質問
訪問介護はひとりで開業できますか?
結論、ひとりだけで訪問介護事業は開業できません。法律で定められた「常勤換算で2.5名以上」という人員配置基準を満たせないためです。
ただし、代表者自身が管理者やサービス提供責任者を兼務し、常勤の訪問介護員を2名雇用するという「最低3名体制」を整えれば、小規模事業所として開業できます。
人員以外にも訪問介護を開業するためにはいくつかの要件が定められています。詳しくは記事内「訪問介護を開業するための要件」をご確認ください。
訪問介護事業所を開業しても儲かないって本当ですか?
訪問介護事業者によって儲かるかどうかは異なるため、一概に「儲からない」とは言い切れません。
厚生労働省の調査によると、訪問介護事業所の収支差率は6.1%となっており、介護サービスのなかでも高水準です(※新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含む)。
訪問介護のオーナーの年収はいくらですか?
訪問介護事業のオーナー年収は、400万〜800万円程度が目安です。
ただし、この金額は事業所の規模や所在地、稼働率、加算の取得状況によって変動します。
訪問介護が潰れる理由は何ですか?
訪問介護事業所が廃業や倒産にいたる主な理由は、「人材の確保・定着の失敗」と「資金繰りの悪化」の2つにあります。
人材面では、サービス提供責任者がひとりのみの場合、その職員が退職した時点で人員基準を満たせず、事業を続けられなくなるおそれがあります。後任が見つからず、廃業にいたるケースも少なくありません。
また、介護報酬の入金がサービス提供から約2ヶ月後と遅れるため、資金サイクルを誤ると運転資金が不足し、人件費や家賃が支払えなくなるリスクがあります。さらに、ケアマネジャーへの営業不足による利用者獲得の停滞も、売上不振を招く要因です。
これらのリスクを避けるには、スタッフが働きやすい職場環境づくりと、3ヶ月分以上の運転資金を確保する計画的な資金管理が不可欠です。
未経験でも訪問介護事業は始められますか?
介護現場での実務経験がない人でも、経営者として訪問介護を開業するのは法律上可能です。事業の指定要件を法人として満たしていれば問題なく、経営者個人の資格や経歴が直接問われるわけではありません。
ただし、その場合の事業成功は、経験豊富な管理者や資格要件を満たしたサービス提供責任者を採用できるかに左右されます。
未経験の経営者は、経営・資金調達・労務管理といった経営面に専念し、現場の運営は採用した専門職に権限を委譲するなど、明確な役割分担を行いましょう。
まとめ
訪問介護は、地域の高齢者や障がいをもつ人の暮らしを支える事業です。開業する際は、法人設立・人員確保・指定申請といった要件を満たしながら、資金計画や運営体制の準備を進めましょう。
また、安定経営を実現するには、スタッフが働きやすい環境づくり・ケアマネジャーとの信頼構築・DXによる業務効率化の3点を軸に、持続可能な仕組みの整備が重要です。
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