会社設立の基礎知識

起業家とは?経営者・実業家との違いや向いている人の特徴などを解説

監修 鶏冠井 悠二

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

起業家とは?経営者・実業家との違いや向いている人の特徴などを解説

起業家とは、「事業を起こす人」のことです。特別な資格や学歴・職歴は不要で、事業を起こす志があれば誰でも起業家を目指すことができます。

ただし、実際に大変なのは起業後の過程です。事業で成功するためには、起業後を意識しながら、起業に必要な準備や失敗のリスクを減らすための方法を把握することが重要です。

また、起業には困難が伴うことが多いため、信頼できるネットワークの構築および公的制度の利用も検討しましょう。

本記事では、起業家の定義や似た言葉との違い、起業家に向いている人の特徴、起業に必要な手続きなどを解説します。

目次

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起業家とは

起業家とは、一般的に「自ら事業を起こす人」を指す言葉です。法人を設立して会社を立ち上げる場合だけでなく、個人事業主として開業する場合も含まれます。

「起業家」という名称に明確な定義があるわけではありません。学歴や経歴は関係なく、何らかの事業を立ち上げた人を起業家と呼びます。

そのため、学生の起業家も存在します。たとえば、全世界にユーザーを抱えるSNS「Facebook」の運営会社であるMeta Platforms, Inc.(創業当時はFacebook, Inc.)は、当時大学生だったマーク・ザッカーバーグ氏がダスティン・モスコヴィッツ氏らと共同創業した会社です。

起業家は、前例のない革新的なビジネスを立ち上げた人だけではありません。ビジネスアイデアやビジネスモデルが既存のものであっても、新たに事業を立ち上げた人を起業家と呼ぶことは多々あります。

既存の会社で後継者として社長になった人は、一般的に起業家とは呼びません。ただし、「起業」と「事業承継」を同時に実現するような場面では「起業家」とみなされる場合もあります。

誰でもなれる一方で会社を存続させるのは難しい

資格や学歴などを問われないため、自ら事業を起こせば誰もが起業家になれます。しかし、起業した会社を存続させることには困難が伴います。

以下のデータは、起業件数と廃業件数を示したものです。近年では年間13万~15万件の企業が新たに設立される一方で、4万~6万件の企業が休廃業・解散しています。

また、以下のデータは開業した企業がどの程度存続するかを示した企業生存率です。企業の設立から5年間で、約2割が廃業しています。

起業件数・廃業件数・企業生存率から計算すると、毎年休廃業・解散する4万~6万件のうち、多くが開業後5年以内の企業となっています。これを見ると、立ち上げ期を乗り越えることの難しさは明らかです。

起業家と経営者・実業家との違い

起業家と混同されやすい言葉に、「経営者」「実業家」「事業家」「企業家」があります。これらの言葉にも明確な定義はありませんが、それぞれの意味は区別して使われています。以下では、起業家と似た言葉との違いを解説します。

経営者との違い

経営者とは、一般的に「会社を経営している人」を指します。

経営者が自身で起業したか否かを問わず、会社を経営していれば経営者と呼ばれます。一方、起業家は自身で経営しているか否かを問わず、事業を立ち上げた実績があれば起業家とされます。

実業家との違い

実業は「農業や工業、水産業、商業などの商品や原料の生産・売買に関わる事業」を意味し、一般的に事業よりも具体的な産業活動に限定される言葉です。そのため、これらの生産や売買に関わる事業を営む人は実業家、業種を問わず事業全般を立ち上げる人は起業家と呼ばれます。

文脈によっては「複数の事業を立ち上げた人」「新たな事業に次々と挑戦する人」などを指して実業家というケースもあります。

事業家との違い

事業家とは事業を「行う」人、起業家は事業を「立ち上げる人」と整理できます。

事業家は、「事業を成功させた人」「事業を上手に運営する人」など、単に事業を行うだけでなく高い能力を持つ人物をイメージして使われることもあります。

企業家との違い

企業家が一般的に「設立した企業を経営する人」を指すのに対し、起業家は事業を「起こす人」「立ち上げる人」のことと位置付けられます。

そのため、自身で立ち上げた事業の運営を第三者に委任している場合は、企業家ではなく起業家と分類されます。

起業家に向いている人の特徴

一般社団法人日本能率協会が行った「トップマネジメント意識調査2023」の調査結果によると、経営を行う人に向いている資質として、以下のような項目が挙げられています。

経営を行う人に向いている資質とされる項目

  • 本質を見抜く力
  • 変化への柔軟性
  • イノベーションの気概
  • ビジョンを掲げる力
  • 胆力(覚悟、腹の括り方)
  • 熱烈な意思
  • 情熱
  • 発信力
  • 高い志

出典:一般社団法人日本能率協会 ニュースリリース「『トップマネジメント意識調査2023』 <調査結果発表> 」

これらの結果をもとに考えると、以下のような人が起業家に向いているといえるでしょう。

起業家に向いている人の特徴

  • 行動力や決断力があり物事の本質を見出せる
  • 好奇心旺盛で柔軟な考え方ができる
  • 事業を通して解決したい社会課題がある
  • リスクを恐れず挑戦でき失敗しても諦めない
  • 考えや信念が簡単にぶれない
  • 人付き合いが上手・得意
  • 新しい価値を生み出すための行動ができる

行動力や決断力があり物事の本質を見出せる

まず挙げられるのが、行動力や決断力があることです。これは、調査結果の「本質を見抜く力」「胆力(覚悟、腹の括り方)」「発信力」に関連します。どんなに素晴らしいビジネスモデルや事業プランを思いついても、行動に移さなくては実現できません。

有限会社オン・ザ・エッヂ(現・株式会社ライブドア)を創業した堀江貴文氏も、「まず行動から事後的に本質が生まれる」と述べています。

また、起業家は重要な判断を求められる局面に何度も直面することから、行動力だけでなく決断力も重要な資質といえるでしょう。

出典:東洋経済ONLINE「堀江貴文「やりたいことがない人」3つのパターン」

好奇心旺盛で柔軟な考え方ができる

好奇心旺盛で柔軟な考え方ができることも、起業家として成功するためのポイントと考えられます。これは、調査結果の「変化への柔軟性」と関連があります。

世間のトレンドや最新の出来事に対して常にアンテナを張っておける人なら、世の中が抱えている潜在的な悩みや課題を見つけやすいでしょう。

2013年にベンチャー支援組織WiLを設立した伊佐山元氏は、日本経済新聞のコラムで常に好奇心をもつことの大切さを述べています。

さらに、固定観念に捉われずさまざまな意見を柔軟に取り入れられる人なら、変化し続ける世の中の価値観やニーズにも対応できるでしょう。

出典:日本経済新聞「根気強さ・好奇心…米国の高校が教える起業家精神」

事業を通して解決したい社会課題がある

事業を通して解決したい社会課題がある人も、起業家に向いているといえます。ビジネスアイデアは、課題や困りごとから生まれることが多々あるためです。

これは、調査結果の「イノベーションの気概」「情熱」「ビジョンを掲げる力」「高い志」に関連しています。

一例として、澤田優香氏を紹介します。澤田氏は看護師としての勤務経験や自身が患者として入院した経験から、患者と看護師のコミュニケーションに課題を感じました。その課題意識をもとに、オペレーション刷新に役立つツール「ちょいリク」を生み出しています。

解決したい社会課題が明確な人や日ごろからさまざまなことに問題意識をもっている人は、起業家に向いているかもしれません。課題に対して「解決するにはどうしたらよいだろう」と「問い」を持つことが大切です。

出典:東京都産業労働局「東京都創業NETインタビュー」

リスクを恐れず挑戦でき失敗しても諦めない

リスクを恐れず挑戦し、失敗しても諦めない姿勢は、起業家にとって重要です。これは、調査結果の「イノベーションの気概」「情熱」「胆力(覚悟、腹の括り方)」「高い志」と結び付いています。

事業にはリスクがつきものであり、リスクを避けてばかりでは成功には到達できません。ビジネスでは「やってみなければわからないこと」も多々あります。特に起業直後は資金繰りに苦しみ、成果を得られない状態が続くこともあるでしょう。

京セラ株式会社やKDDI株式会社の創業者で「経営の神様」として有名な稲盛和夫氏も、受験や就職活動、そして就職後の仕事など人生のさまざまな局面で挫折を経験しつつも、そのたびに前を向いて行動を続けました。

うまくいかないときや失敗したときに大切なのは、その原因を分析して改善策を考えることです。多少の失敗があっても心が折れずに気持ちを切り替えられることは、志をもって事業を進める際に重要な素養といえます。

出典:東洋経済ONLINE「受験に失敗、就職難「稲盛和夫」逆境を覆す力の原点」

考えや信念が簡単にぶれない

起業家に向いている人の特徴として、考えや信念が簡単にぶれないことも挙げられます。これは、調査結果の「情熱」「ビジョンを掲げる力」「胆力(覚悟、腹の括り方)」と関連しています。

時代の流れや社会情勢を読むことは大切ですが、周囲と似たようなことをしているだけでは成功につながりにくいです。周りに流されず、自身が重要だと判断したことには信念を貫く強さが必要です。

近畿経済産業局は、事業に一度失敗した後、事業転換や再起業などの再チャレンジをして成功したスタートアップ企業60社以上の起業家を対象として調査を行っています。

その調査結果によると、「再チャレンジに成功した理由」の質問に対してもっとも多かった回答は、「一貫した信念を持った取り組み」でした。

事業を始めたばかりの頃は、長時間労働を強いられることもあり、心身ともにタフさが求められます。「成功したい」という強い信念があれば、心身ともに大変な状況でも前に突き進めるでしょう。

出典:近畿経済産業局「令和4年度スタートアップ起業家の再チャレンジに関する実態調査 報告書」

人付き合いが上手・得意

人付き合いが上手・得意な人も起業家に向いています。どんな仕事も1人では完結できません。事業を前に進めていきたいなら、関係者の協力を得ながら進めていくことが求められます。

優れた経営者は、仕事関係者や社員だけでなく、プライベートでも周囲に好かれている人が多く見られます。ソフトバンクグループの創業者である孫正義氏は、非常にハードに働いて仕事にも厳しいビジネスマンでありながら、人を惹きつける魅力的な人物としても有名です。

人脈が広がるほど、自分の考えをより多くの人に伝える必要が出てきます。初対面の人とも信頼関係を早く築けるコミュニケーション能力は、重要な資質といえます。

出典:東洋経済ONLINE「「孫正義」側近、幹部、ライバルが明かす正体」

新しい価値を生み出すための行動ができる

変化を恐れず、事業を通じて新しい価値を生み出す行動も、起業家にとって重要な要素です。調査結果の「変化への柔軟性」「イノベーションの気概」「情熱」「胆力(覚悟、腹の括り方)」に関連します。

新しいサービスや体験の提供は、起業を成功させる要因のひとつです。そのためには既存のビジネスモデルにとらわれず、新しい技術やシステムの構築にチャレンジする行動が求められます。

新しいサービスを提供する過程では、技術的に実現できるか、消費者や市場に受け入れられるかなど、多くの不確実性が伴います。そのような環境のなかでもリスクをとって行動し、情熱をもって継続できることは起業家にとって重要な素養といえるでしょう。

起業家になるには?必要な準備と手順

起業家になり会社を運営していくために主に必要な準備や手順は、以下のとおりです。

会社設立のケースを主として、会社員として働きながら起業する際に必要な準備と手順を解説します。

【関連記事】
会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について

①事業計画書の作成

事業計画書とは、事業内容・必要な資金・収支見込みなど今後の事業展開についてまとめた文書です。融資を受ける際の根拠資料として重要であり、事業アイデアを可視化するうえでも有効です。

事業計画書を作成することでプランの問題点が明らかになったり、新たなアイデア生まれたりすることもあります。

【関連記事】
事業計画書とは?作成する目的や作り方について解説

②資格や許認可の要否の調査

事業計画書を作成したら、資格や許認可の要否を確認します。事業内容によっては「届出」「許可」「認可」のいずれかが必要なこともあるためです。

届出に関しては、必要書類を提出すれば基本的に問題ありません。たとえば理・美容業を営む場合、所管の保健福祉事務所などへの届出が必要です。

許可・認可に関しては、所定の書類を提出して審査を受ける必要があります。たとえば建設業を営む場合、一定規模の工事を請け負うには所轄の都道府県知事または国土交通大臣の許可を受けなければなりません。

【関連記事】
許認可とは?取得しない場合のペナルティや申請方法について解説

出典:神奈川県「理容所・美容所の届出について」
出典:国土交通省「建設業の許可とは」

③資金計画の作成

資金計画を立てる際は、「事業を立ち上げるために必要な資金」と「借入金や融資も含めて自分が調達できる資金」の2つを考える必要があります。

いくら用意すればいいか目途を立てるために、会社設立に必要な登記費用や事務所の賃貸費用・人件費・備品購入費など必要な資金を整理しましょう。

【関連記事】
起業・開業時の資金調達方法は?開業に必要な金額や選び方も紹介

④商号や事業目的などの検討

事業をスタートさせるにあたっては、商号や事業目的についても決めなければなりません。

商号は、以下のような一定のルールの範疇であれば自由に決められます。

商号を決める際のルール

  • 「株式会社」「合同会社」「合資会社」の文字を実態にあわせて正しく入れる
  • 公序良俗に反する文字は使用できない
  • 同一の住所で同一の商号は使えない
  • 漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)を使用可
  • ローマ数字や一部の符号(?や!など)は使用不可

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)第六条」
出典:e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十条」
出典:e-Gov法令検索「商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第二十七条」
出典:e-Gov法令検索「商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第五十条」

⑤事業開始に必要な手続きの実施

事業を開始するにあたっては、社会保険や労働保険関連以外にもさまざまな手続きが必要です。具体的には、以下の手続きが発生します。

事業開始のために必要な手続き

  • 会社の代表印の作成
  • 定款の作成
  • 公証役場で定款の認証
  • 資本金の払込み
  • 設立登記の申請

⑥雇用保険や社会保険の手続きの実施

会社を設立する場合、社長1人のみでも社会保険への加入が求められます。年金事務所に届け出る書類を準備し、会社設立の登記完了後の5日以内に管轄の年金事務所に提出します。

また従業員を1人以上雇い入れる場合は、労災保険と雇用保険の手続きが必要です。

まずは事業を開始した日から10日以内に、労災保険に関して所轄の労働基準監督署に保険成立届出を提出しなければなりません。その後に、雇用保険に関して所轄のハローワークに適用事業所設置届を提出します。

出典:厚生労働省「新規に事業を開始された事業主の皆様へ」

⑦名刺・ホームページの作成

会社設立時には、外部とのやり取りに備えて名刺を作成することも大切です。また、事業・会社の顔となるホームページも用意しておきましょう。

近年ではSNSの活用がビジネス上でも重視され、ホームページよりSNSアカウントの作成・運用を優先するケースもあります。

起業初年度の年収はどれくらい?

起業家の年収については、最新かつ具体的なデータがあるわけではありません。また起業家と一概にいっても、事業規模や業種などによって年収は大きく異なります。

起業家初年度の年収の目安を算出する方法として、やや間接的ですが企業の月商データを参考にする方法があります。そのうえで、経費や開業費・資金調達の返済分、税金などを差し引き、企業の利益額を導き出します。

企業の利益見込みから、起業家としてどれだけの報酬を得られるか計算するとよいでしょう。

日本政策金融公庫の調査結果によると、2024年度の起業家の月商(開業後1年以内の総売上高)と開業費用は以下のとおりです。

開業後の月商と開業費用の目安割合

◆開業後の月商(開業1年以内の企業)
100万円未満:40.2%
100万~500万円未満:43.9%
500万~1,000万円未満:8.4%
1,000万円以上:7.5%

◆開業費用
500万円未満:41.1%
500万~1,000万円未満:30.7%

出典:日本政策金融公庫 総合研究所「「2024年度新規開業実態調査」 ~アンケート結果の概要~」

起業家が成功するには?失敗・リスクを減らすための考え方

事業失敗のリスクを減らすためには、ポイントを押さえた行動が重要です。以下では、失敗のリスクを減らすための考え方を、具体的な行動例を交えて解説します。

小さく起業する

事業を始めるにあたっては、まずは「小さく起業すること」が推奨されます。できるだけコストをかけずに起業すれば、失敗した際のリスクを最小限に抑えられるためです。

いきなり大規模な店舗や事務所を構えると、大きな固定費として月々の賃貸料が発生します。また、従業員を多く雇うほど人件費も増えます。仕入れ値が高額な商品を多く仕入れるほど、売れ残ったときの損失は大きくなるでしょう。

起業当初は自宅やレンタルオフィスなどを事務所として活用し、家族の協力を得ることで人件費を抑えると、リスクを低減できます。

初期コストがかかりやすい商品を扱う事業では、小規模に製品を作り、実際の反応を確認してから本格提供するMVP(ミニマムバリュープロダクト)の実践を検討しましょう。

スモールビジネスの一例として、副業でWebサイト運営を始め、広告の掲載や情報コンテンツの販売で収益を上げる方法が挙げられます。Webサイトの運営は自宅でも可能で、パソコンとインターネット環境があればすぐに始められます。

個人で始める

事業は個人で始めたほうが、責任や意思決定を自分ひとりで管理できるためリスクを抑えられます。

自分ひとりで事業を始めれば、働き方や方向性などを柔軟に変更しやすくなります。そのため最初は人を雇うのではなく、必要に応じて外注したほうがリスクを抑えられるでしょう。

一例として、大学在学中に竹井夢子氏が立ち上げた出版社があります。竹井氏は自分らしく輝くことをコンセプトとし、「出版社で働く」ではなく「出版社を創る」道を選びました。SNSで多くのフォロワーを持つインフルエンサーとしても知られており、注目を集める起業家のひとりです。

なお、知人や友人同士で起業する場合は曖昧な取り決めにせず、契約書を交わして権利や責任を明確にしておくことが重要です。

出典:集英社オンライン「自分らしく輝く」に込めた願い。出版社ブルーモーメントが“生き方”を伝える理由」

キャッシュの確保に留意する

事業運営のために一定のキャッシュ(現金)を確保しておくことも、リスク軽減につながります。

たとえば、小売業は先に仕入れが必要な事業です。まず支出が発生し、商品を販売してはじめて収入が得られるため、仕入れから販売までの期間は、資金が先行して出ていきます。

キャッシュのサイクルを管理し、いざというときに利用可能な資金調達先を確保しておくことが、事業失敗のリスクを軽減するポイントです。

商品・サービスのニーズを把握する

事業を成功させるには、商品・サービスのニーズをしっかり把握することも大切です。革新的で優秀な商品・サービスでも、需要がなければ販売に結びつかず赤字になってしまいます。

なお、ニーズには顕在化しているものだけでなく潜在的なものもあります。事業計画の段階でニーズを把握するためにリサーチを徹底し、収益モデルを検討することが重要です。

変化には柔軟に対応する

起業家には、変化への柔軟な対応も必要です。最初に考えた計画やアイデアに強い自信があっても、状況に応じて変更する柔軟さと判断力が求められます。

新しい情報に対して常に収集し、状況に応じて適切に軌道修正できる体制を整えておきましょう。

よき助言者または相談相手を見つける

事業の失敗リスクを減らすには、よき助言者や相談相手を見つけることも大切です。的確なアドバイスをくれるパートナーや指導者がいると、ビジネスにおける無駄を減らし、より合理的な意思決定ができるようになります。

また、信頼できる税理士を見つけることも不可欠です。優秀な税理士には、以下のような支援を期待できます。

優秀な税理士に期待できる支援

  • 経営に関する相談を受けられる
  • 節税に関する助言が得られる
  • 税務調査への備えができる
  • 必要に応じてほかの士業(司法書士や行政書士など)を紹介してもらえる

起業家の育成に向けた国の取り組み

国は、国内での起業家の育成に向け、2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定しました。

スタートアップ育成5か年計画では、起業家によるネットワーク構築や資金調達を促進するため、さまざまな支援策が実施されています。以下では、数ある支援策のなかからいくつかの制度を紹介します。

出典:内閣官房「スタートアップ育成ポータルサイト」

メンターによる若手人材の発掘・育成

起業家が事業を成功させるうえで、起業経験者や専門家などのメンターが重要な役割を果たします。

日本ではインキュベーター(起業家に施設や設備を提供する事業者・制度)の整備が進んでいる一方で、メンターの体制整備は依然として途上にある状況です。

国は、起業家を目指す人材の支援として、未踏事業(IT分野で未踏的なアイデアをもつ人材の支援)などを実施しています。未踏事業は2024年当初予算で強化され、2025年2月までに約400人が事業化へとつなげられました。

出典:内閣官房「スタートアップ育成5か年計画」
出典:経済産業省「スタートアップ育成に向けた政府の取組」

女性起業家支援(GIRAFFES JAPAN)

女性起業家支援(GIRAFFES JAPAN)は、全国各地で活躍する女性起業家を総合的に支援するネットワークを整備する制度です。

女性起業家支援では、全国8地域で事業説明会や交流会など、ネットワーキングイベントが開催されました。そのほか、ビジネスプラン発表会の開催や、女性起業家に向けたグループメンタリングの実施などの活動も行われています。

出典:経済産業省「スタートアップ育成に向けた政府の取組」
出典:GIRAFFES JAPAN「WHAT'S GIRAFFES」

カーブアウト加速等支援事業

カーブアウトとは、企業が一部の事業部門を切り出して新しく会社を設立するプロセスです。

企業が研究開発で得た技術のなかには、事業化されずに埋もれたり消滅したりする技術が存在します。カーブアウト加速等支援事業は、企業に蓄積された未活用の技術を活用して起業する人を対象に、研究開発費の助成や専門家による支援を行う事業です。

出典:経済産業省「スタートアップ育成に向けた政府の取組」

まとめ

起業家とは、「事業を起こす人・立ち上げる人」を指す言葉です。ただし、法的な根拠や明確な定義がないため、文脈によって解釈が分かれることがあります。

起業に資格や学歴・職歴などは問われないため、誰でも起業家を目指すことができます。しかし、起業後に事業を存続させるには、さまざまな困難を伴います。起業に必要な準備や手続き、失敗のリスクを下げるポイントを把握し、自分のビジネスを着実に育てましょう。

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よくある質問

起業家と実業家の違いは?

実業家とは、農業や商業、工業など生産や売買に関わる事業を営む人のことです。一方の起業家は、事業の種類を問わず自分でビジネスを立ち上げる人を指します。

詳しくは、記事内の「実業家との違い」をご覧ください。

起業家に向いている人の特徴は?

起業家に向いていると考えられるのは、以下のようなタイプの人です。

起業家に向いている人の特徴

  • 行動力や決断力がある人
  • 事業を通して解決したい社会課題がある人
  • 考え方などが簡単にぶれない人
  • 好奇心旺盛・柔軟な考え方ができる人
  • リスクを恐れない、失敗しても諦めない人
  • 人付き合いが上手な人
  • 新しい価値を生み出すための行動ができる人

詳しくは、記事内の「起業家に向いている人とは」をご覧ください。

起業で失敗しないためのポイントは?

起業で失敗しないためには、できるだけ小さく、可能であれば1人で始めることがポイントです。また、経費をかけすぎないことや消費者のニーズを把握すること、そして頼れるメンターや税理士を見つけることもおすすめします。

詳しくは、記事内の「失敗のリスクを減らすための考え方」をご覧ください。

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。

監修者 鶏冠井 悠二

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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