
経営計画書は、企業の将来像や経営理念の実現に向けた道筋を文書化し、組織全体の方向性を定める重要な書類です。しかし、記載内容やポイントを理解せずに作成すると、形骸化した計画に終わってしまう可能性もあります。
本記事では、経営計画書の基本的な役割や事業計画書との違い、作成するメリットに加え、具体的な書き方と記載例を項目ごとに解説します。
目次
経営計画書とは?
経営計画書は、企業が経営方針や目標、およびそれらを達成するための具体的な行動指針や数値目標を体系的に文書化したものです。
経営ビジョンで描かれる将来の理想像に対し、現状とのギャップを埋めるための戦略や行動計画を、誰がいつまでに何をどのように実行し目標を達成するかという視点で整理します。
経営計画書は社員に目的意識や一体感をもたらし、組織の活力を引き出す効果があります。さらに、金融機関や株主からの対外的な信用力向上にもつながります。
経営環境の変化やリーダー交代に応じて柔軟に修正しつつも、企業の羅針盤として経営を導く役割を担うのが経営計画書なのです。
出典:国税庁「第2節 ビジョンと経営計画の策定」
経営計画についての詳細は別記事「経営計画とは?必要な理由や種類、計画を立てるときに必要な4要素まで解説」をあわせてご確認ください。
事業計画書との違い
経営計画書と事業計画書は、役割や目的に明確な違いがあります。
経営計画書は企業の理念や将来像を明確にし、組織全体の方向性や戦略を示す長期的な指針として活用されます。対して事業計画書は、経営計画書で掲げた目標を具体的に実現するための実行計画であり、短期的なスケジュールや数値計画を中心に構成されるのが一般的です。
経営計画書 | 事業計画書 | |
---|---|---|
目的 | 企業の理念や将来像を示し、組織全体の方向性や戦略を定める | 部門や事業、製品単位の目標達成に向けた具体的な行動計画を定める |
視点・範囲 | 長期的・全社的視点での計画 | 短期的・事業単位での具体的な計画 |
内容 | 理念・目標・将来の姿・全体戦略 | 事業戦略・資金計画・販売目標・スケジュール・数値計画など |
役割 | 組織全体の方向性を示し、事業活動の指針となる | 経営計画書の方向性に沿った事業活動を具体化し実行する |
活用場面 | 社内の方向性共有、経営層の戦略策定 | 補助金申請・金融機関への提出資料・実務担当者の実行計画として活用 |
関係性 | 上位の計画(事業計画書を内包する) | 経営計画書の下位に位置し、具体的な行動計画として経営計画書を補完する |
経営計画書は長期的な理念や戦略を示し、事業計画書は経営計画の実現に向けた具体的な短期計画として位置付けられます。
事業計画書についての詳細は別記事「事業計画書の書き方を項目別に解説!テンプレートや作成時のポイント」をあわせてご確認ください。
経営計画書を作成するメリット
ここでは、経営計画書の作成による以下3つのメリットについて解説します。
経営計画書を作成するメリット
- 経営の方向性が明確になる
- 組織の一体感を醸成できる
- 金融機関や投資家からの信用力が向上する
経営の方向性が明確になる
経営計画書は、経営理念の実現に向けた道筋を具体化できるツールです。経営理念を理解していても、何を目指しどのように進むかが曖昧では実現性が低くなりがちです。
経営計画書には企業としての価値観や考え方を反映した中長期的な目標をベースに、社会の変化やリスクも考慮した戦略が記されます。そのため、企業を運営していく上での方向性が定まり、組織全体で想いを共有しやすくなるでしょう。
未来を見据え、具体的な方針とリスクへの備えが明示されることで、経営理念の実現に近づく指針となる点が経営計画書の大きなメリットです。
組織の一体感を醸成できる
経営計画書は、企業としての理念や価値観、具体的な目標などをより正確に従業員に共有できるため、組織全体で進む方向が一致しやすくなります。
従業員一人ひとりが共通の目的を理解したうえで行動することでチームとしての一体感が高まり、連携が強化されるでしょう。さらに、会社の方針や価値観が明確になることで従業員も所属する企業や自身の将来像を描きやすくなり、安心して働ける環境を構築できます。
企業および経営者の意図や理想を言葉にして伝えることで、組織全体の士気やエンゲージメントの向上にもつながります。
金融機関や投資家からの信用力が向上する
経営計画書は、金融機関や投資家に事業の健全性や成長性を示す重要な資料です。
事業の方向性や収益目標が具体的に記されていることで、外部関係者が経営の現状や将来性を正しく理解しやすくなります。返済能力やリスク対応の方針も計画書で示されるため、資金提供先としての信頼を獲得しやすくなるのです。
融資判断の際には、収益確保のための実行計画が整っているかどうかが重視されるため、説得力のある経営計画書が証明になります。信頼に足る経営体制が可視化されれば資金調達がしやすくなり、外部との関係構築もより円滑になるでしょう。
経営計画書の書き方と記入例
経営計画書は、形式が定められているわけではありません。テンプレートなどを活用し、自社に適した経営計画書を作成しましょう。
経営計画書の記入例をいくつか掲載するので、参考にしてください。
<経営計画書記載例:地方飲料メーカーA社>
項目 | 内容 |
---|---|
経営ビジョン |
|
経営方針 |
|
長期目標(5年後) |
|
中期目標(3年後) |
|
短期目標(単年度) |
|
部門別施策 |
|
<経営計画書記載例:地方建設業B社>
項目 | 内容 |
---|---|
経営ビジョン |
|
経営方針 |
|
長期目標(5年後) |
|
中期目標(3年後) |
|
短期目標(単年度) |
|
部門別施策 |
|
なおここからは、経営計画書に記載することの多い以下の項目について深掘りします。
経営計画書に記載する主な項目
- 会社概要
- 経営理念
- 基本方針
- 経営戦略
- 数値目標・計画
- 行動計画
- スケジュール
会社概要
会社概要は、社外の関係者に対して企業の基本情報を正確に伝えるための重要な項目です。新規の取引先や金融機関が信用度を判断する材料となるため、事実に基づき正確に記載する必要があります。
内容は一般的に公開される会社案内やホームページと同等の情報量が適切です。
経営計画書では以下の情報を過不足なく記載し、企業の信頼性や規模感が伝わるようにまとめます。
会社概要の記載項目
- 商号
- 本社所在地
- 代表者名
- 設立年月日
- 事業内容
- 資本金
- 社員数
- 主な取引先
- 取引銀行
- 会社沿革
会社概要に該当する項目は社外からの確認が多い部分なので、正確さを重視して記載するようにしましょう。
経営理念
経営理念は、企業が目指す方向性や社会に対して果たすべき使命を明示する重要な要素です。経営計画書に記載することで、社内外に向けて共通認識を形成しやすくなります。
とくに取引先や顧客が経営計画書を読んだときに、経営理念や企業が目指しているものが明確であるほど共感や支持を得やすくなります。経営理念は企業としての根幹の考え方や価値観を、ビジョンは将来的に到達したい姿を具体的に表しましょう。
基本方針
基本方針は、経営理念を実現するための方向性や姿勢を示す重要な項目です。経営理念が企業の目標や存在意義を表すのに対し、基本方針は現状の課題を踏まえて、どのような考え方で経営を進めるかを定めます。
策定時には財務状況や業務の課題、人材の強みを分析し、具体的な行動につながる方針を明確にしましょう。経営計画書に記載する際は、社員の行動基準として認識しやすい内容が求められます。特に、以下に関する姿勢や考え方を整理すると理解しやすくなります。
- 商品・サービス
- 顧客
- 社員
- 地域貢献
共通認識を持てるよう、具体的かつ簡潔にまとめましょう。
経営戦略
経営戦略は、経営理念に基づいて企業が進むべき方向と達成方法を具体化する重要な計画です。外部環境の変化や自社の強みを踏まえ、優先順位を決めることで持続的な成長につながります。 なお経営計画においては、経営戦略の内容を以下のレベルで整理して記載しましょう。
経営戦略の内容
- 企業戦略:企業全体の長期的方向性
- 事業戦略:各事業単位の方針
- 機能戦略:部門別の具体的な施策
経営戦略を策定するには、内部資源や市場動向を分析し、成功に必要な要因を見極めることが不可欠です。経営資源を有効に活用するためにも、組織全体で共有できる方針にまとめます。
数値目標・計画
数値目標・計画は、経営計画の実現性を高めるために重要な項目です。売上や利益の目標だけでなく、組織運営や資金調達の計画も含めて策定します。
将来の資金不足や人材不足を防ぐためにも、中長期的な視点で準備することが求められます。経営計画書に盛り込むべき主な項目は、以下のとおりです。
経営計画書に盛り込むべき主な項目
- 売上計画:原価率や粗利益率を含む
- 収支計画:収入・支出・借入金や返済の見通し
- 資金計画:投資・借入枠・資金調達方法の検討
- 人員計画:組織体制・採用・人材育成の方針
数値目標を明示することで、社員が方向性を共有しやすくなります。
行動計画
行動計画は、経営理念の実現に向けて具体的な行動内容を定める重要な項目です。誰が・いつまでに・どのような手段で実行し目標を達成するか明確にすることで、実効性の高い取り組みにつながります。
目標は会社全体・各部門・個人の単位で策定し、それぞれの役割と責任を明らかにする必要があります。まず戦略目標を設定のうえ、数値目標と具体的な行動に落とし込むことで行動計画をスムーズに設定できます。
スケジュール
経営理念の達成に向けて、基本方針に沿って具体的にいつまでに何を行うかも記載しましょう。計画期間を短期・中期・長期に分け、それぞれに応じた目標を設定することが重要です。
短期では、1年単位で売上や利益など実現可能な数値目標を定めます。中期は3年から5年を目安にし、長期は10年先を見据えた方向性を描きます。
経営計画書に記載する際は、1年間の具体的な行動計画や目標値を明確にまとめましょう。各スパンで見直しができるよう、柔軟性を意識することも大切です。
経営計画書を作成する際の注意点
経営計画書を作成する際は、以下3つの視点を意識することが不可欠です。
経営計画書を作成する際の注意点
- 具体的である
- 一貫性がある
- シンプルでわかりやすい
経営計画書は、従業員だけでなく企業の取引先や顧客なども閲覧できるため、一貫性があり理解しやすいものであることで、信頼を得やすくなります。
また、従業員が自分の役割を理解できるように、具体的な数値や行動計画まで記載しましょう。抽象的な記述では日々の業務に結びつかず、実効性が低くなります。
情報を詰め込み過ぎず、誰でも理解できる簡潔な構成にする工夫が重要です。
まとめ
経営計画書は、企業の理念や戦略、具体的な数値目標や行動計画を明示し、経営の方向性を組織内外に示す羅針盤となる書類です。作成することで、方向性の明確化や組織の一体感、外部からの信用向上につながります。
作成の際は、具体性・一貫性・わかりやすさを意識し、各項目に沿って正確かつ実現可能な内容を盛り込むことが重要です。経営理念に基づいた計画書を整えることで、持続的な成長を支える基盤を築けるでしょう。
自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
会社設立の準備から事業開始までには、多くの書類や手続きが必要になります。書類の転記をするだけでもかなりの時間がかかってしまいます。
freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。設立件数30,000社以上の実績をもつfreee会社設立なら、初めての方もあんしんしてご利用いただけます。
起業ダンドリコーディネーターが完了までサポートしてくれるからあんしん!
初めての会社設立では、書類の書き方や提出先、設立後の手続きなどさまざまな場面で不安を抱えてしまうこともあるでしょう。
freee会社設立では、会社設立に詳しい起業ダンドリコーディネーターが常駐しており、設立準備から登記後に必要な手続きまでを完全無料で並走・サポートします。
相談方法はオンライン面談、LINE相談、電話、メールなどから選べます。まずお気軽に問い合わせフォームからおためし相談(最大30分)の予約をして、ご自身のスケジュールや設立手続きに関する疑問や不安を解消しましょう。
入力項目・次にやること、すべて画面上で把握できる
freee会社設立では、必要項目を記入していくだけで会社設立に必要な書類を作成することができます。また、登記の際に必要となる会社印も同時に購入が可能です。

freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。
会社名や資本金額など必要項目を入力すると、定款(ていかん)をはじめとする会社設立に必要な約10種類の書類を自動で作成します。
<freee会社設立で出力できる書類の一例>
- 定款
- 登記申請書
- 印鑑届出書 など
設立にかかるコストを削減できる
設立費用を削減したい方には電子定款がおすすめです。紙の定款では、収入印紙代40,000円がかかりますが、電子定款ではこれが不要となります。
freee会社設立は電子定款にも対応しており、電子定款作成に必要な機器やソフトの準備なども必要がないため、自分で作成するよりもコストを抑えることができます。
<設立にかかる費用の比較例>

(1)freee会計を年間契約すると、無料になります。
(2)紙定款の印紙代(40,000円)
会社設立の準備を進めながら、バーチャルオフィスの申し込みが可能!
会社設立するためにオフィスの住所が必要になります。
自宅をオフィス代わりにしている場合は、自宅の住所でも問題ありませんが、公開情報となってしまうので注意が必要です。
自宅兼オフィスのように実際の住所を公開したくない場合や、管理者や所有者に物件の法人登記が認められていない場合は、バーチャルオフィスを利用するのがおすすめです。
freee会社設立では、会社設立に必要な書類を無料で作りながら、バーチャルオフィスの申し込みもできます!
まずはこちらからfreee会社設立に無料で登録してみてください!
自分で手続きする時間のない方には「登記おまかせプラン」がおすすめ!
「初めての会社設立で不安」、「自分で手続きする時間がない」という方には、司法書士が手続きまで代行してくれる登記おまかせプランがおすすめです。
設立代行の費用相場は10万円前後ですが、freeeの登記おまかせプランは一律5万円で利用できます。※海外在留者が出資者・役員の場合等の特殊ケースを除く
登記おまかせプランの利用方法等の詳細は、freee会社設立の無料登録が完了後にメールにてご案内します。
会社設立の準備をお考えの方は、ぜひ登録無料のfreee会社設立をお試しください。
よくある質問
経営計画書とは
中長期的な経営方針・目標を明確にし、経営理念を実現するための道筋を示す文書が経営計画書です。社員の目的意識醸成や、企業としての一体感を生み出すためにも役立ちます。
詳しくは記事内「経営計画書とは?」をご覧ください。
事業計画書と経営計画書の違いは?
経営計画書は企業理念や目標など、企業の方向性・戦略策定における書面です。対して事業計画書では、経営計画書で掲げた目標の実現につながる実行計画を示します。
詳しくは記事内「事業計画書との違い」をご覧ください。
経営計画書には何を書くべき?
経営計画書には、以下の項目を記載しましょう。
経営計画書に記載する項目
- 会社概要
- 経営理念
- 基本方針
- 経営戦略
- 数値目標・計画
- 行動計画
- スケジュール
詳しくは記事内「経営計画書の書き方と記入例」をご覧ください。