監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

登記申請書は、会社の設立や役員変更、不動産の相続といった法的な権利や事実関係を公に示す「登記」手続きを行う際に、法務局へ提出する重要な書類です。
特に法人においては、会社設立時だけでなく、本店移転や役員変更など、登記事項に変更があった場合にも提出が必要となります。
スムーズな登記申請のためには、申請書に記載する項目(商号・本店所在地・登記すべき事項など)を正確に理解し、正しい書き方で作成することが重要です。
本記事では、主に商業・法人登記に焦点を当て、登記申請書の書き方・必要書類・法務局への提出方法について詳しく解説します。
目次
登記申請書とは?
登記申請書は、法務局で各種登記手続きを行う際に必要な書類です。ここでは、登記申請書の定義や提出が必要な3つのケースを紹介します。
登記申請書の定義と提出先
登記申請書とは、個人や法人が所有権・地位・役職という法的事項を記録し、公的に証明するための重要な書類です。
申請書には、会社設立、不動産権利の変更、相続手続きなど、登記を必要とする特定の情報を記載して法務局に提出します。
登記申請書の提出先
登記申請書の提出先は、原則として登記する会社の本店所在地や不動産の所在地を管轄する法務局です。申請方法は、直接窓口への提出、郵送、またはオンライン申請があり、オンラインの場合は電子署名が含まれる必要があります。
申請書が受理され、法務局によって登記簿に内容が反映されることで、登記された事項の法的効力が生じ、第三者に対抗できるようになります。
登記申請書が必要なケースとは?
登記申請書は、商業・法人登記や不動産登記、相続登記など、さまざまな登記手続きにおいて重要な役割を果たします。これらの登記は、特定の事象や状態を公的に記録するためのものであり、法的な効力を持ちます。
商業・法人登記
商業・法人登記は、会社やその他の法人に関する情報を公に示すための手続きです。具体的には、以下のような場合に登記申請が必要となります。
- 会社の設立
- 役員の変更
- 商号(会社名)の変更
- 目的(事業内容)の変更
- 本店(主たる事務所)の移転
- 支店の設置、移転、廃止
- 資本金の額の変更
- 解散・清算
これらの変更があった際には、原則として2週間以内に登記申請書と必要書類(定款・払込証明書・役員の就任承諾書など)を法務局に提出する必要があります。
不動産登記
不動産登記は、土地や建物といった不動産の権利関係を公に示すための手続きです。主に以下のような場合に登記申請が必要となります。
- 所有権の移転
- 抵当権の設定・変更・抹消
- 所有者の氏名・住所変更
相続登記
相続登記は、不動産の所有者が亡くなった際に、その不動産の登記名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する手続きです。2024年4月1日から相続登記は義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に申請する必要があります。
相続登記を行わないと、不動産の売却ができない、他の相続人とトラブルになる可能性がある、過料が科されるリスクがあるなどのデメリットが生じます。
商業・法人登記申請の進め方と必要書類
商業・法人登記の流れは、以下のとおりです。
商業・法人登記の流れ
- 登記原因となる事実の発生
- 登記申請書の作成、添付書類の取得
- 登録免許税の納付
- 登記申請書・添付書類の提出
- 申請された登記の審査
- 登記の完了
ここでは、商業・法人登記申請書の記載項目とその書き方、登記申請の際に添付する必要な書類を紹介します。
登記申請書に記載する項目
登記手続きを円滑に進めるには、以下の記載項目への正確な情報記載が求められます。
商号
商号とは、会社や法人の正式な名称です。商号は、会社の定款で定められた名称であり、登記申請書にはこの商号を正確に記載する必要があります。
間違った名称を記載すると、登記が無効になる可能性があるため注意が必要です。
本店
本店は会社の主要な事業所、つまり「本社」の位置(住所)を指します。本社の住所が登記簿に登録されることで公的に明示されるため、正確な記載が必要です。
登記の事由
登記の事由は、なぜその登記が必要になったのか理由を記載する部分です。たとえば、「会社設立」「本店移転」「役員変更」という具体的な変更や手続きを明確にするために、この項目を活用します。
登記すべき事項
登記すべき事項では、今回の登記で変更や新たに登録される内容を示します。具体的には、商号・本店所在地・事業目的・役員などが含まれ、登記簿に記載される情報です。
課税標準金額
課税標準金額は、登記にかかる税額を計算する基準となる金額で、会社設立ならば資本金の額が該当します。記載された金額を基に登録免許税が算出されるため、正確な記載が重要です。
登録免許税
商業・法人登記手続きに際して法務局に支払う登録免許税の額を記載します。会社設立ならば、以下の計算式で算出します。
会社形態ごとの登録免許税の算出方法
- 株式会社:「資本金 × 0.7%」 または「150,000円」のどちらか高い額
- 合同会社:「資本金 × 0.7%」または「60,000円」のどちらか高い額
- 合名会社・合資会社:申請件数 × 60,000円
添付書類
登記申請の際に添付が必要な書類の部数を記載します。たとえば、定款の写し、役員の就任承諾書、印鑑証明書などが含まれ、これらの書類が漏れなく提出されることで、登記手続きが円滑に進みます。
商業登記に必要な添付書類
商業・法人登記を行う際には、以下のような添付書類が必要です。
書類名 | 詳細 |
---|---|
定款 | ・会社の基本ルールを定めた文書 ・会社設立時に作成が必要 ・公証人の認証を受けたものを提出する必要あり |
払込証明書(払込があったことを証する書面) | ・会社の資本金が実際に払い込まれたことを証明する書類 ・通常は銀行の振込明細書や通帳のコピーを添付する |
役員の就任承諾書 | ・代表取締役や取締役、監査役などの役員が正式に就任を承諾したことを証明する書類 |
印鑑証明書 | ・代表取締役の印鑑の正確性を確認するための書類 ・市区町村の役所で取得できる |
添付漏れがあると再申請が必要になるため、申請前の早めの準備を心がけましょう。
商業登記の提出期間
商業・法人登記は、会社法第915条第1項で「原則として登記の事由が発生した時から2週間内」に、本店の所在地での実施が定められています。
登記を遅れて行ったとしても、書類に不備がなければ、申請を却下されることはありません。しかし、虚偽の登記申請や登記申請の懈怠があった場合、100万円以下の罰金を科される可能性があるため注意してください。
出典:法務省「登記-商業・法人登記-「商業・法人登記」」
登記申請書の書き方と注意点
登記申請書の作成は、法人設立の第一歩として重要なプロセスです。ここでは、登記申請書の基本的な書き方と押さえておきたい注意点を解説します。
登記申請書の書き方とサンプル
商業・法人登記申請書を作成する際は、法務局の公式サイトで公開されているサンプルを活用すると、初心者でもわかりやすく正確な申請書を作成できます。
申請書を作成する上で最も重要なのは、定款や株主総会議事録などの記載内容と登記申請書の内容を一致させることです。
特に、商号・本店所在地・目的・資本金の額・役員の氏名・住所などは、一字一句正確に記載する必要があります。記入ミスを防ぐためにも、法務局の記入例をよく確認し、提出前には必ず複数回チェックするようにしましょう。
登記申請書を手書きで作成する際のポイント
登記申請書は手書きでの申請が可能ですが、登記情報に誤りがあると再提出が必要になるため、誤字や修正に注意してください。
法務局が指定するフォーマットに従い、必要な項目を漏れなく記入し、読みやすい丁寧な字体での記載が求められます。手書きの際には、黒のボールペンを使用し、鉛筆やフリクションボールペンなどの摩擦によって消える、または見えなくなるものは使用不可です。
誤字や記入ミスが発生した場合は、修正液や訂正テープの使用を避け、訂正箇所に二重線を引いた上で、訂正印の押印が必要です。ただし、訂正箇所が多い場合には、新しい用紙で最初から書き直しましょう。
提出する前に必ず全体を見直し、誤字脱字や記載漏れがないかの最終チェックが大切です。
登記申請書の入手方法
登記申請書は各法務局の窓口で受け取れますが、「法務局の公式ウェブサイト」の活用が最も便利です。このサイトでは、商業登記・不動産登記・相続登記などの用途に応じた申請書を簡単にダウンロードできます。
申請書のフォーマットはPDFやWord形式で提供されており、自宅で印刷して手書きで記入できます。また、Word形式のファイルを使用すれば、パソコンでOfficeソフトを使用した直接入力も可能です。
さらに、ダウンロードページには設立する法人形態別や用途に合わせた記入例が用意されているため、申請目的に合致したサンプルを利用しましょう。
申請書をダウンロードする際は、最新のフォーマットを確認し、古い形式の申請書を使用しないよう注意が必要です。また、登記申請書以外にも、定款や就任承諾書などの必要な添付書類も一緒に確認し、ダウンロードしておきましょう。
出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式」
登記申請書の提出方法
登記申請書の提出方法には、法務局の窓口への持参と郵送、オンライン申請があります。それぞれの特徴や、申請方法を解説します。
法務局への提出手続きと郵送方法
登記申請書を初めて提出する際は、管轄の法務局の窓口に直接訪れることも検討する必要があります。
法務局での直接提出のメリットは、窓口で担当者と一緒に申請書や添付書類が正しく揃っているか確認できる点です。20分間の対応時間でチェックできる、一般的な内容の確認のみですが、不備があればその場で指摘されるため、再提出が手早く行えます。
法務局に書類を提出すると審査が行われ、登記が完了すると、申請者に対して登記完了証が交付されます。この通知が届いた時点で、登記が正式に完了したことになるため、登記簿謄本(登記事項証明書)の記載内容を確認することが大切です。
郵送での提出は書留で送る
遠方に住んでいる場合や、法務局に直接訪問できない場合は、郵送での提出も可能です。
登記申請書や必要書類を郵送する際は、書類が無事に届いたかどうかを確認するためにも、発送後の追跡が可能な書留または簡易書留を利用してください。
なお、郵送で申請する場合は、申請書が法務局に到着して受付手続きを行った日が登記年月日になります。
オンライン申請のメリットと申請の流れ
法人登記は、窓口への持参や郵送だけでなく、オンラインでの申請も可能です。オンライン申請のメリットと申請の流れを下記に記載します。
オンライン申請のメリット
商業・法人登記のオンライン申請は、法務局へ行く手間を省き、インターネット上で完結できるため、忙しい人や遠方の人にとって非常に便利です。自宅や出張先からも対応可能で、交通費や時間を節約できる上、夜間の申請も可能です。
また、以下の条件を満たせば24時間以内に登記が完了するため、従来の窓口申請と比較して迅速です。
- 役員等が5人以内であること
- 添付書面情報(定款、発起人の同意書、就任承諾書等)が全て電磁的記録(PDFファイル)により作成され、申請書情報と併せて送信されていること(完全オンライン申請)
- 登録免許税の納付が収入印紙ではなく電子納付が利用されていること
- 補正がないこと
※補正とは、オンライン申請の不備を登記官からの連絡に基づき事後的に是正すること
さらに、リアルタイムで申請状況を確認できるため、手続きの進捗を把握しやすく、補正が必要な場合にも素早く対応できます。
オンライン申請の流れ
法人登記のオンライン申請には、まず「登記・供託オンライン申請システム」サイトで申請者情報を登録し、ID・パスワードの取得が必要です。その後、オンライン申請用の「申請用総合ソフト」をダウンロードし、申請書情報を作成します。
申請書を作成する際は、各種登記申請書様式から目的に合ったものを選び、必要項目の入力が完了したら電子署名を付与した添付書類をオンラインで提出してください。
書類によっては電子化が困難な場合があり、その場合は「書面提出」のチェックを入れ、後日郵送または窓口に持参します。
最後に申請データを送信し、申請完了後は「処理状況表示」画面で進捗を確認しましょう。
まとめ
登記申請書とは、会社設立や不動産権利変更、相続などに必要な重要書類です。申請書は管轄の法務局への提出が必要で、申請方法は窓口への持ち込み、郵送、オンラインがあります。オンライン申請は特に手続きが迅速に対応できるため便利です。
登記申請書は、正確な記載と添付書類の準備が欠かせないため、本文を参考にしながら、手続きの流れと注意点を確認して進めてください。
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監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
