利益だけでなく社会への貢献を重視する経営者や投資家に注目されているのがゼブラ企業です。 ゼブラ企業とは、社会課題解決と経済成長を両立させる企業の総称で、2023年頃から日本でも認知度が高まっています。
本記事では、ゼブラ企業の定義や注目される背景、ユニコーン企業との違いなどを詳しく解説します。
自社をゼブラ企業へ変革するためのステップや、日本と海外の具体的な事例も紹介しますので、社会課題解決と事業成長を両立させたい経営者・事業開発担当者の方は参考にしてください。
目次
- ゼブラ企業とは?
- ゼブラ企業が注目されている背景
- ゼブラ企業とユニコーン企業の違い
- ゼブラ企業の4つの特徴
- 1.社会的な課題に取り組んでいる
- 2.ステークホルダー全体への貢献を重視している
- 3.長期的視点での成長を目指している
- 4.新しい価値や仕組みを提供する
- 自社をゼブラ企業へ変革するための3つの実践ステップ
- 1.社会課題解決と収益を連動させるビジネスモモデルにする
- 2.持続的に成長できる長期戦略を構築する
- 3.ビジョンに共感する人材・組織体制をつくる
- ゼブラ企業向けの補助金
- 【日本・海外】ゼブラ企業の例
- 株式会社陽と人
- 株式会社ボーダレス・ジャパン
- Peerby
- まとめ
- スモールビジネスを、世界の主役に。
- よくある質問
ゼブラ企業とは?
ゼブラ企業とは、社会課題解決と経済成長を両立させる企業の総称です。英語でシマウマを意味する「Zebra(ゼブラ)」に由来しており、白と黒の模様が相反する2つの要素を統合している様子を象徴しています。
2017年にアメリカの女性起業家らが提唱したこの概念は、市場独占や短期的な急成長を追求するユニコーン企業へのアンチテーゼとして誕生しました。
ゼブラ企業は、単なる社会貢献活動やCSR(企業の社会的責任)とは異なり、事業そのものが社会課題の解決手段となっているビジネスモデルをもちます。
また、株主利益の最大化だけでなく、従業員・顧客・取引先・地域社会・地球環境のような、多様なステークホルダーの幸福度向上を経営指標に組み込む姿勢も特徴のひとつです。
日本では、2023年頃から中小企業庁がゼブラ企業の育成支援を開始し、徐々に認知度が高まっています。
社会貢献を果たせるビジネスモデルの確立は、これからの日本の中小企業やスタートアップが目指す新しい成功のかたちとして、投資家や採用市場からも大きな注目を集めています。
ゼブラ企業が注目されている背景
ゼブラ企業が注目される理由は、市場独占や短期的な利益を最優先するユニコーン企業のあり方を疑問視する声が増え、社会課題解決を成長の原動力とする新しい資本主義への転換が加速しているためです。
ユニコーン企業のビジネスモデルは、地域コミュニティの疲弊や環境負荷の増大といった副作用を招きました。
これに対し、ゼブラ企業の持続可能性や多種多様なステークホルダーとの共存を重視する経営姿勢が、複雑化する地域課題の解決策として評価されているのです。
また、インパクト投資(収益確保と社会・環境への効果を意図した投資)を行う金融機関の増加や、インパクトスタートアップ協会の設立といったエコシステムの構築も進んでいます。
日本国内においても、地方創生や人口減少対策、脱炭素社会の実現といった課題に対して、ゼブラ企業の貢献が期待されています。
ゼブラ企業とユニコーン企業の違い
ゼブラ企業とユニコーン企業には以下のような違いがあります。
| ゼブラ企業 | ユニコーン企業 | |
|---|---|---|
| 事業をする目的 | 持続的な成長・繁栄 社会への貢献 | 急成長 上場・売却 |
| 事業の方法 | 協力 | 競争 |
| 他企業との関係 | Win-Win | 勝者・敗者 |
| 事業が生み出す結果 | 共存 | 独占・寡占 |
| 受益者 | コミュニティ | 株主、一部の個人 |
ゼブラ企業とユニコーン企業の大きな違いは、成長の速度と目的です。
ゼブラ企業は、他社と協力してWin-Winの関係を築きながら、着実に事業を成長させる特徴があります。地域社会や自然環境と調和しながら共存し、コミュニティ全体が利益を享受できる仕組みをつくることを重視しています。
一方、ユニコーン企業は、他社と競争して指数関数的な急成長や上場・売却を目指すことが特徴です。事業によって利益を得るのは主に株主や一部の個人であり、事業の結果として独占・寡占が生まれる構造にあります。
「理念はあるが成長戦略が追いつかない」と感じている経営者は、無理に急成長(ユニコーン)を目指すのではなく、社会課題の解決を優先するゼブラ企業として歩むことも選択肢のひとつです。
これにより、ビジョンに共感する優秀な人材が集まり、長期的な視点をもつ投資家からの資金調達や、政府が進める社会課題解決型ビジネスへの支援も受けやすくなります。
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ゼブラ企業の4つの特徴
ゼブラ企業の特徴には、以下の4つが挙げられます。
- 社会的な課題に取り組んでいる
- ステークホルダー全体への貢献を重視している
- 長期的視点での成長を目指している
- 新しい価値や仕組みを提供する
自社がゼブラ企業としての可能性をもっているか、あるいは目指すべき方向性として正しいのかを判断するために、代表的な特徴を理解しておきましょう。
1.社会的な課題に取り組んでいる
ゼブラ企業は、事業運営そのものが社会課題の解決に直結しています。経済的な利益と社会的な貢献を別々に考えるのではなく、ひとつのものとして捉えています。
これまでの日本企業は、利益の一部を社会に還元するという考え方が一般的でした。一方、ゼブラ企業の取り組みは、社会課題を解決するほど事業も成長し、その利益でさらに社会への貢献度が深まるという仕組みになっています。
社会課題には以下のようなことが挙げられます。
社会課題の例
- 環境保全
- 貧困解消
- 地域活性化
これらを実現するための取り組みを単なる慈善活動で終わらせず、持続可能な事業とすることが求められます。
2.ステークホルダー全体への貢献を重視している
ゼブラ企業は、従業員・顧客・取引先・地域社会・地球環境のようなステークホルダー全体への貢献を重視します。
複雑化する現代の社会課題を単独の力で解決することは困難であり、多様なパートナーとの連携を通じて価値を創出する共生関係を築くことが不可欠です。
具体的には、以下のような取り組みを行います。
ゼブラ企業の取り組みの例
- 従業員に対して:適正な給与や働きやすい環境を提供する
- 顧客に対して:誠実で質の高いサービスを提供する
- 取引先に対して:公正な条件で長期的なパートナーシップを築く
- 地域社会に対して:雇用創出や地域経済に貢献する
- 地球環境に対して:負荷を最小限にする努力を続ける
多面的な価値創造により、社会全体から信頼され、持続的な成長基盤を確立できるのです。
3.長期的視点での成長を目指している
ゼブラ企業は、長期にわたり企業と社会が共に利益を享受できる仕組みを作り上げることを目標としています。
教育や福祉といった公共性の高い領域において、短期間での無理な収益化を行うと、サービスの質が低下し、解決すべき社会システムそのものを破壊する恐れがあるためです。
長期的視点をもつことで、人材育成や地域との関係構築のように、すぐには収益に結びつかないものの、将来的に重要な資産となる活動に資源を配分できます。
長期的視点で成長を目指すことは強固な基盤づくりにつながり、短期的な市場変動や景気後退に左右されにくい事業構造を実現します。結果として、危機に対するレジリエンスが高い経営につながるでしょう。
4.新しい価値や仕組みを提供する
ゼブラ企業は、クリエイティブな技術や革新的なビジネスモデルを用いて、新しい価値や仕組みを提供します。単なるボランティアではなく、市場競争力をもった製品やサービスを生み出すことで、社会課題の解決を持続可能なものに変えていきます。
たとえば、シェアリングエコノミーのプラットフォームは、「所有から利用へ」という新しい価値観を提示し、資源の有効活用と環境負荷の低減を実現しました。
経営者は、自社の技術が社会の仕組みをどうアップデートし、どのような新しいスタンダードを構築できるかを明確に示すことで、行政や大企業との連携チャンスを広げやすくなるでしょう。
自社をゼブラ企業へ変革するための3つの実践ステップ
自社をゼブラ企業へと変革するには、戦略的なアプローチが必要です。以下に実践ステップを提示します。
- 社会課題解決と収益を連動させるビジネスモデルにする
- 持続的に成長できる長期戦略を構築する
- ビジョンに共感する人材・組織体制をつくる
1.社会課題解決と収益を連動させるビジネスモモデルにする
ゼブラ企業への変革において重要な第一歩は、漠然と社会によいことをしている状態から脱却し、具体的な社会課題を解決できるビジネスモデルを構築することです。
まず、自社の強みや技術、ノウハウが、どのような社会課題の解決に貢献できるかを分析しましょう。環境問題・高齢化・教育格差・地方創生と、複数の候補があるときは、自社のリソースでとくにインパクトを出せる領域を選ぶことが重要です。
また、現在の製品やサービスが意図せず社会課題を悪化させていないかも検証しましょう。具体的な例としては以下のようなものがあります。
社会課題への悪影響となる例
- 過剰な包装材の使用
- 長時間労働を前提とした業務プロセス
- 環境負荷の高い原材料の使用
改善すべき課題を解消し、同時に社会への貢献度を創出するビジネスモデルへの転換を図ることが、ゼブラ企業への道筋となります。
2.持続的に成長できる長期戦略を構築する
ゼブラ企業として成功するには、短期的な利益追求ではなく、5年、10年先を見据えた長期戦略が不可欠です。
競合が急成長している場面でも、自社が守るべき「社会への約束」を優先できるだけの財務的な余裕と、計画的な成長シナリオをもっておかなければなりません。短期的な利益ではなく、キャッシュフローの安定性と再投資のバランスを重視しましょう。
資金調達では、以下のような多様な資金源を組みあわせることで、株主からの短期的なプレッシャーを避けられます。
資金調達手段
- 銀行融資
- 公的補助金
- クラウドファンディング
- 社会的インパクト投資
持続可能な成長とは、「無理のないペースで、しかし確実に前進し続ける戦略であること」です。
3.ビジョンに共感する人材・組織体制をつくる
ゼブラ企業の価値を最大化し、ビジョンを実現するためには、単にスキルの高い人を集めるだけでは不十分です。それ以上に、この社会課題を何とかしたいという強い思いをもつ人を仲間に迎える「ミッション重視の採用」を、組織づくりの中心に据える必要があります。
ゼブラ企業の原動力は、そこで働く人々の想いです。共通の目的意識をもつメンバーが集まることで、困難な課題に立ち向かい、共に乗り越えていける強い結束力をもったチームが生まれます。
採用サイトや経営会議において、自社がゼブラ企業として社会貢献とビジネスを両立させる存在であることを明確に発信しましょう。そうすることで、同じ想いをもつ人々を引き寄せることにつながります。
また、組織体制も、ゼブラ企業の理念に沿ったものにする必要があります。トップダウンの指揮命令型ではなく、現場の声を吸い上げ、意思決定に反映させるボトムアップの仕組みを取り入れましょう。
経営陣から現場の社員一人ひとりにいたるまで全員が、「自分たちは社会をよくするチームの一員である」という誇りをもてる環境を整えることが大切です。
ゼブラ企業向けの補助金
日本政府は、社会課題の解決を担うゼブラ企業の重要性を認め、多様な支援策を打ち出しています。
とくに中小企業庁が進める「地域課題解決事業推進」では、地域課題を解決するスタートアップ・中小企業を対象とした補助金やハンズオン支援が用意されています。
企業は補助金を受けることで資金援助を得られるだけでなく、国や自治体から「社会に必要な企業」と認められ、結果的に社会的信頼の向上にもつながるでしょう。気になる補助金があれば、積極的に活用しましょう。
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【日本・海外】ゼブラ企業の例
「ゼブラ企業」と一口に言っても、事業内容や取り組む社会課題は企業ごとにさまざまです。
国内・海外のゼブラ企業の例として以下の3社を紹介します。
- 株式会社陽と人
- 株式会社ボーダレス・ジャパン
- Peerby
自社に取り入れられる点がないか探ってみましょう。
株式会社陽と人
「株式会社陽と人」は、福島県の農産物や地域資源を最大限に活用し、地域と共に成長するためのさまざまな事業を展開するゼブラ企業です。
市場の規格外品も含め、生産者から直接買い取った農産物を、新たな規格として都市部に流通させる事業を展開し、生産者の所得とブランド価値の向上を目指しています。
そのほか、規格外や廃棄される農産物を活用した化粧品や加工食品の企画・販売、地方事業者への販売促進・マーケティング支援など、地域に根ざした事業を行っています。
出典:株式会社陽と人
株式会社ボーダレス・ジャパン
「株式会社ボーダレス・ジャパン」は、社会課題解決に取り組む起業家を支援し、その活動を広げるためのプラットフォームを提供するゼブラ企業です。
気候変動・貧困・ホームレス・人権・就労支援・子育て・地域課題・ダイバーシティなど、多様な社会課題に取り組む起業家の育成・支援を行っています。国内外で積極的に事業を展開し、14ヶ国で50以上のソーシャルビジネスを運営しています。
新たな起業家の創業資金として託す「相互扶助システム」「恩送り経営」というビジネスモデルは、2019年グッドデザイン賞を受賞しました。
出典:株式会社ボーダレス・ジャパン
Peerby
「Peerby(ピアビー)」は、活用されていない日用品を近隣の住民同士でシェアできるプラットフォームを提供する、オランダのスタートアップです。もともとはユニコーン企業として急成長を遂げ、現在ではゼブラ企業として事業を行っています。
過去には事業の急成長に伴い収益性を求められるなかで、貸し借りの際に手数料を得る課金型のレンタルモデルに取り組むこともありました。
そのなかで、助け合いのコミュニティの提供が本質的な価値であることが再認識され、現在ではメンバーシップフィーに課金するコミュニティモデルへ転換してサービスが提供されています。
出典:Peerby
まとめ
ゼブラ企業とは、社会課題解決と経済的成長を両立し、持続可能な未来を目指す経営モデルです。ユニコーン企業の急成長とは異なり、長期視点での共生を重視する姿勢は、投資家や求職者から強い支持を得ています。
日本政府もゼブラ企業への支援を強化しており、中小企業庁の実証事業やインパクト投資など、資金調達の選択肢も拡大中です。
自社の理念を言語化し、社会的価値を可視化することで、共感を生む強いブランドを構築できます。社会と利益をつなぐこの歩みは、次世代経営の指針となるでしょう。
スモールビジネスを、世界の主役に。
ビジネスには立ち上げから運営までさまざまなアクションが伴います。
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自動化によるプロセスの最適化や管理体制の改善がもたらすのは、業務効率の向上だけではありません。ルーティンワークや非効率な作業に手を取られることがなくなれば、よりクリエイティブな活動に時間を充てられます。
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よくある質問
ゼブラ企業はなぜ「ゼブラ」というのですか?
ゼブラ企業の「ゼブラ」は英語でシマウマを意味する「Zebra(ゼブラ)」に由来しており、社会貢献と利益という、相反しがちな2つの要素を両立させていることを象徴しています。
また、空想上の生きものであるユニコーンに対し、シマウマは実在する動物であり、群れで生活する特性をもっています。この「実社会に根ざしていること」や「他者と協力して生き抜くこと」が、ゼブラ企業の経営理念と重なるため、この名が付けられました。
詳しくは「ゼブラ企業とは?」をご覧ください。
ユニコーン企業とゼブラ企業の違いは何ですか?
ユニコーン企業とゼブラ企業の違いは成長の速度と目的にあります。
ユニコーン企業はベンチャーキャピタルからの巨額資金を元手に、指数関数的な急成長を目指し、短期間での市場独占や上場、投資家へのリターンを最優先するモデルです。
一方でゼブラ企業は、社会課題の解決を目的とし、多様な関係者との共生を重視しながら、数十年単位での持続可能な成長を目指すモデルです。
詳しくは「ゼブラ企業とユニコーン企業の違い」で解説しています。
ゼブラ企業の経営理念は何ですか?
「利益と社会貢献の両立」「共生と協力」「長期的持続性」がゼブラ企業の核心的な経営理念です。
自分たちだけが利益を享受するのではなく、従業員・顧客・取引先・地域社会・地球環境のすべてのステークホルダーの幸福を目指します。
短期的な株価や売上よりも、解決すべき課題に対してどれだけ真摯に向き合えるかを経営の羅針盤としています。
ゼブラ企業という概念はいつから注目されはじめたのですか?
ゼブラ企業の概念は2017年にアメリカで提唱され、日本で注目されはじめたのは2023年頃です。
とくに政府の「経済財政運営と改革の基本方針」に社会的起業家やゼブラ企業の支援が明記されたことで、民間だけでなく公的な支援対象としての認知が急速に広がりました。
2026年現在、ゼブラ企業という言葉は投資家・金融機関・自治体・採用候補者との間で、社会貢献とビジネスを両立させる概念として認識されています。
詳細は「ゼブラ企業が注目されている背景」でも解説しています。
