監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
監修 鶏冠井 悠二

定款(ていかん)とは、法人の組織や運営に関する基本的なルールを記載した書類です。法人を設立する際には、法人形態にかかわらず必ず作成する必要があります。
また、株式会社・一般社団法人・一般財団法人・専門職法人は、定款を作成するだけではなく、その正当性を公証人が証明する「定款認証」を受けなければなりません。
定款には紙と電子の2種類があり、それぞれにかかる認証費用が異なります。本記事では、定款認証にかかる費用や手続きの流れを解説し、かかった費用の会計処理、消費税の扱いについても紹介します。
定款認証の流れや方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
【関連記事】
定款認証とは?認証までの流れや必要書類について解説
目次
株式会社や一般社団法人などは定款認証が必要
定款認証とは、作成した定款の正当性を公証人が証明する手続きのことで、本社所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。
定款認証が必要な法人形態は以下の通りです。
定款認証が必要な法人形態
- 株式会社
- 一般社団法人及び一般財団法人
- 税理士法人・司法書士法人・行政書士法人・土地家屋調査士法人・社会保険労務士法人・弁護士法人・監査法人・特許業務法人・特定目的会社・相互会社・金融商品会員制法人
- 信用金庫、信用中央金庫及び信用金庫連合会
出典:日本公証人連合会「公証事務」
合同会社などの持分会社は、公証人による認証を受ける必要がありません。
紙の定款認証にかかる費用
定款の作成方法は紙と電子の2パターンがあります。
電子定款の認証費用について知りたい方は、記事内「電子定款の認証にかかる費用」をご確認ください。
紙の定款認証にかかる費用は以下の3つです。
紙の定款認証にかかる費用
- 認証手数料
- 謄本の請求手数料
- 収入印紙代
認証手数料
定款認証を受けるためには、公証役場への認証手数料の支払いが必須です。定款の認証手数料は、資本金の額に応じて設定されています。
資本金額 | 定款の認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 1万5,000円または3万円 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
そのほか | 5万円 |
※一般社団法人および一般財団法人の定款認証の手数料は5万円です。
認証手数料が引き下げられる条件
- 資本金額が100万円未満
- 発起人が自然人かつ3人以内
- 定款に設立時の発行株式の全部を発起人が引き受ける旨の記載がある
- 取締役会を設置しない
出典:日本公証人連合会「公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について」
謄本の請求手数料
紙で定款を提出する際は謄本が必要で、1枚につき250円の手数料がかかります。1通あたり250円ではなく、「1枚」=「1ページ」を指しており、認証書の1ページを含んだ枚数が必要です。
よって、手数料は「250円 ×(定款のページ数 + 認証書)」となります。定款のページ数により料金は変動しますが、2,000円前後が一般的です。
出典:日本公証人連合会「公証事務」
収入印紙代
紙の定款は印紙税法の規定により課税文書となり、収入印紙代(印紙税)が必要です。
課税文書とは、印紙税法で定められた「印紙税が課税される文書」のことです。課税される印紙税の額は、文書の種類などに応じて決まります。
定款の認証を受ける際には、印刷・製本された定款原本に4万円の収入印紙を貼付して印紙税を納めます。
出典:日本公証人連合会「公証事務」
出典:国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」
電子定款の認証にかかる費用
電子定款の認証にかかる費用は、以下の通りです。
電子定款の認証にかかる費用
- 認証手数料
- 電磁的記録の保存手数料
- 同一情報の交付費用
電子定款の作成方法や手続きの流れについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
【関連記事】
電子定款とは? 作成方法や認証手続きの流れからメリット・デメリットまで解説
認証手数料
紙の定款認証と同様、電子定款の認証にも資本金額に応じて以下の手数料がかかります。
資本金額 | 定款の認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 3万円 |
以下の条件に当てはまる場合は、1万5,000円 ・資本金額100万円未満 ・発起人が自然人(個人)かつ3人以内 ・定款に設立時の発行株式の全部を発起人が引き受ける旨の記載がある ・取締役会を設置しない | |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
そのほか | 5万円 |
電磁的記録の保存手数料
電子定款では、収入印紙代はかかりません。その代わりに、CD-R・DVD-R・USBメモリといった媒体に対する「電磁的記録の保存手数料」が発生します。
電磁的記録の保存手数料は、1回につき300円です。
出典:日本公証人連合会「Q9. その他確定日付等の手数料」
同一情報の交付費用
電子定款の場合、紙の定款でいう謄本に該当する「同一情報」が、1回700円でデータにて交付されます。電子データであるため、ページごとの加算がなく、一律の料金となります。
ただし、同一情報を書面で発行する場合は、1回700円に加え、その枚数に応じて1枚につき別途20円が加算されます。
出典:日本公証人連合会「Q9. その他確定日付等の手数料」
電子定款で認証を受ける際の注意点
電子定款は収入印紙代がかからなかったり、自宅からでも申請ができたりするメリットがあります。一方、申請に際して電子証明書の作成や、申請ソフトウェアのインストールといった諸準備が必要です。
収入印紙代がかからない分、電子定款の認証費用のほうが安く抑えられますが、電子定款を作成するのに準備で結果的に費用がかさむ場合もあります。
自身の設備環境やスケジュールに応じて、最適な作成・認証方法を選択しましょう。
定款認証の手続きの流れ
定款認証の手続きは、以下のステップで進みます。
定款認証の手続きの流れ
- 定款の作成
- 公証役場の予約を取る
- 公証人の認証を受ける
それぞれの流れについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
【関連記事】
定款認証とは?認証までの流れや必要書類について解説
定款認証に必要なもの
定款認証を受けるために必要なものは、以下の通りです。
定款認証に必要なもの
- 定款3通(公証役場での保存用1通・会社保存用1通・登記申請用1通)
- 発起人全員分の印鑑証明書をそれぞれ1通ずつ(発行から3ヶ月以内のもの)
- 発起人全員の実印(定款に不備があった場合にその場で修正するため)
なお、代理人が定款認証を行う場合は、上記に加えて代理人本人であることがわかる身分証明書(印鑑登録証明書)や委任状が必要です。
出典:日本公証人連合会「公証事務」
委任状の書式については管轄の公証役場へ問い合わせるか、各公証役場のホームページにあるサンプルを参考に作成しましょう。
定款認証にかかった費用の勘定科目
定款認証にかかった費用は、「創立費」の勘定科目で会計処理を行います。
創立費とは、会社の設立にかかった費用を処理する勘定科目で、主に以下の費用が該当します。
「創立費」に該当する主な費用
- 定款の作成費用
- 定款認証費用
- 登録免許税
- 設立登記のための専門家への報酬
- 発起人に支払う報酬
創立費は、繰延資産に該当する費用です。支出時にいったん繰延資産として資産に計上し、当年度以降、一括または一定の期間にわたって費用化していきます。
出典:日本税理士会連合会「中小企業の会計に関する指針」
【関連記事】
会社設立時の費用は経費になる?会社設立の流れに沿った仕訳方法も解説
繰延資産とは?償却期間や勘定科目から仕訳方法までわかりやすく解説
定款認証の費用に消費税はかかる?
定款認証の費用に消費税はかかりません。
これは、国や地方公共団体などが法令に基づいて行う一定の手続きにかかる手数料が、消費税法上、非課税とされているためです。
定款認証の手数料は法令に基づいて徴収される公的な手数料であるため、非課税として扱われます。
出典:国税庁「No.6201 非課税となる取引」
出典:e-Gov法令検索「消費税法(昭和六十三年法律第百八号)」
まとめ
定款の作成はどの法人でも必要ですが、株式会社・一般社団法人・一般財団法人・専門職法人は、さらに定款の認証を受けなければなりません。
定款には紙と電子があり、それぞれ認証にかかる費用が異なります。電子定款は紙の定款で必要になる収入印紙代がかからないため、費用を抑えることができます。
ただし、電子定款を作成するためには、電子証明書の準備や申請ソフトウェアのインストールなどの諸準備が必要です。
紙と電子の違いを理解したうえで、どちらで定款を作成・認証するのか検討しましょう。
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よくある質問
定款の認証とは?
定款の認証とは、正当な手続きで定款が作成されたことを、公証人が証明することです。
詳しくは記事内「株式会社や一般社団法人などは定款認証が必要」をご覧ください。
紙の定款認証にかかる費用は?
定款認証には、認証手数料がかかります。紙媒体で定款認証を受ける際は、そのほか謄本の請求手数料と収入印紙代も別途発生します。
詳しくは記事内「紙の定款認証にかかる費用」をご覧ください。
電子定款の認証にかかる費用は?
電子定款の場合、紙媒体と同様に認証手数料が必要です。紙媒体でかかる謄本の請求手数料と収入印紙代は不要ですが、代わりに電磁媒体への保存手数料と同一情報の交付費用が必要になります。
詳しくは記事内「電子定款の認証にかかる費用」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)
コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。
HP:かいでFP事務所
