監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

新しく会社を立ち上げたり、個人事業主から法人化したりするとき、会社設立の手続きの一部は専門家(士業)に依頼できます。
会社設立に関わる業務の依頼先は、主に司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士であり、依頼できる業務内容はそれぞれ異なります。本記事では各士業について解説するとともに、司法書士に依頼した際の会社設立の手続きの流れや費用などについてご紹介します。
目次
司法書士は会社設立の登記申請などを代行
会社設立の手続きを自身で完結させようとすると、複雑で時間のかかる作業が多く、手間がかかります。特に、その中でも会社設立時に必要な「登記申請」は、専門的な知識と正確な書類作成が求められるため、専門家である司法書士へ依頼することで、不備なくスムーズに登記申請を進めることができます。
司法書士は、登記手続きの専門家です。特に登記申請は司法書士の独占業務であり、他の士業では代理できません。
会社設立時には、登記申請をはじめ以下の業務を司法書士に依頼できます。
会社設立時に司法書士に依頼できる手続き・業務
- 会社設立登記
会社設立時に法務局に提出する登記申請書類の作成と提出を代行 - 定款作成・認証の代行
公証役場で行う定款認証の準備や手続きを支援 - 役員変更や本店移転
設立後の登記事項の変更手続きを行う
会社設立時に依頼したいそのほかの士業
下表は、司法書士をはじめとした、会社設立時に手続き代行を依頼できる主な士業と、その業務範囲や特徴をまとめたものです。司法書士のほかにも行政書士、税理士、社会保険労務士などさまざまな士業がありますが、それぞれ得意とする分野や手続きは異なります。
司法書士 | 行政書士 | 税理士 | 社会保険労務士 | |
---|---|---|---|---|
主な業務 | ・会社設立登記の申請 ・定款作成・認証の代行 ・役員変更や本店移転手続きの代行 | ・許認可申請代行 ・定款作成の代行 ・契約書や規約作成のサポート | ・税務相談・アドバイス ・会社設立前の資金計画支援 ・申告書作成代行 | ・労務管理サポート ・就業規則作成 ・社会保険・労働保険手続き代行 |
対応可能な手続き例 | ・会社設立登記申請 ・定款認証 ・商号変更などの登記 | ・飲食店営業許可 ・建設業許可申請 ・介護事業届出 | ・法人税申告書作成 ・決算報告 ・資金繰りのアドバイス | ・労働保険加入手続き ・給与計算 ・就業規則作成 |
特徴 | 専門的な登記業務に強い | 許認可手続きに特化 | 税務全般に強く、節税対策や開業後の経理業務もサポート | 労務管理や社員の保険手続きに特化 |
行政書士
行政書士は、許認可申請や行政手続きの専門家であり、行政機関への許認可申請や各種書類作成を得意とします。
具体的には、行政書士に以下の業務を依頼できます。
行政書士に依頼できる会社設立時の業務
- 許認可申請
飲食店営業許可や建設業許可など、事業内容に応じた各種許認可の取得手続きを代行 - 定款作成の代行
定款の作成をサポート(ただし、登記申請は司法書士業務) - 契約書や規約の作成
会社運営に必要な各種書類の作成を支援
税理士
税理士は、税務・会計の専門家であり、主に会社設立後の税務や会計業務をサポートします。具体的には、税理士に以下の業務を依頼できます。
税理士に依頼できる会社設立時の業務
- 開業計画のアドバイス
資本金の設定や決算月の選定など、節税対策や資金計画の立案を支援 - 記帳代行
会計帳簿の作成や、税務署への申告書作成をサポート
税理士は、会社設立時の手続きである定款作成などは専門外であるケースが多いです。しかし、会社設立後の税務支援を依頼できることから、会社設立時に顧問契約を結び、設立に関する手続きから設立後の支援までトータルで依頼を受ける税理士も多くいます。
社会保険労務士(社労士)
社会保険労務士(社労士)は、労務管理や社会保険手続きの専門家です。会社設立後の従業員の労働環境を整える、労務周りのサポートを担ってくれます。
具体的には、社会保険労務士に以下の業務を依頼できます。
社会保険労務士に依頼できる会社設立時の業務
- 社会保険・労働保険の手続き
従業員を雇用する際に必要な社会保険や労働保険の加入手続きを代行 - 就業規則の作成
法律に基づいた就業規則や労働条件通知書の作成を支援 - 労務管理のサポート
労働トラブル防止や労働環境整備に関する専門的なアドバイスを提供
司法書士との契約は「スポット契約」が基本
士業に依頼する方法は、スポット契約と顧問契約の2種類です。それぞれ、以下のような特徴があります。
スポット契約 | 顧問契約 | |
---|---|---|
概要 | 特定の業務や手続きに限り単発で依頼する契約形態 | 継続的なサポートを受けるために士業と期間契約を結ぶ形態 |
業務範囲 | 会社設立時の手続きのみや、特定の許認可申請、決算申告業務だけなど業務ごとにスポットで依頼 | 税務や労務、人事に関する日常的な相談や手続きの代行、法改正や助成金情報の提供など、幅広い業務を包括的にサポート |
費用 | ・依頼した業務に対する報酬のみが発生し、継続的な費用負担はない ・業務単価は顧問契約よりも高くなる傾向がある | ・月額の顧問料が発生する ・スポット契約に比べて業務単価は割安 |
対応速度 | 急ぎ対応依頼の場合は別料金が発生することも | 継続的な契約のため、優先的にサポートを受けられる |
スポット契約・顧問契約それぞれの特徴と、司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士それぞれの特徴を踏まえると、以下のように依頼するのが一般的だといえます。
各士業との一般的な契約形態
- 司法書士、行政書士への依頼:スポット契約
- 税理士、社会保険労務士への依頼:顧問契約
会社設立時の登記申請や、許認可申請、定款作成などは、単発業務として司法書士や行政書士にそれぞれスポットで依頼するケースが一般的です。ただし、登記変更が頻繁に行われたり、許認可更新が定期的に発生したりする業種である場合は、司法書士、行政書士と顧問契約を結ぶケースもあります。
税理士、社会保険労務士は、会社設立以降も継続的な業務依頼が考えられます。よって、税理士、社会保険労務士とは顧問契約を結び、長期的なサポートを受けることが一般的です。
依頼する司法書士の選び方
自社に合う司法書士と契約を結ぶためにも、選定時には次の4つのポイントを意識しましょう。
司法書士の選定ポイント
- 依頼業務と対応可能業務は合致しているか
- 経験と実績はあるか
- 費用が適切か
- コミュニケーションが取りやすいか
専門家ごとに料金設定が異なることはもちろん、スポット契約と顧問契約で短期的・長期的にかかる費用も異なります。会社設立後の資金繰りを考慮したうえでの検討が必要なため、相見積もりを行うなどして比較検討しましょう。
司法書士に依頼するメリット・デメリット
司法書士に依頼することで、専門的な法務手続きを正確かつ効率的に進められるため、自身は事業の準備に専念できます。
具体的には、司法書士への依頼により、以下のようなさまざまなメリットが得られます。
司法書士に依頼するメリット
- 専門家に任せることで手続きミスを防げる
- 自身は煩雑な手続き対応が不要なため事業計画や本業に集中できる
- 最新の法令に基づいた適切な手続きで、安心して会社設立ができる
一方、司法書士に依頼する大きなデメリットは、費用が発生するという点です。報酬が数万円から十数万円程度発生するため、自分で手続きを行う場合と比較して会社設立時に必要な費用が高くなります。
会社設立の手続きを司法書士に依頼した際にかかる費用
報酬額は各司法書士が自由に設定することが認められています。
一般的に、資本金500万円の株式会社の設立時に司法書士へ手続き代行を依頼した場合、平均報酬額は約10万円とされています。このほかに交通費や郵送費を別途支払う必要もあります。
会社設立にあたっての手続きにかかる費用について詳しく知りたい方は、別記事「会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説」をご覧ください。
出典:日本司法書士連合会「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」
司法書士に依頼した場合の会社設立手続きの流れ
司法書士に会社設立を依頼すると、以下の流れで手続きが行われます。以下は一般的なケースであり、司法書士事務所(以下、事務所)によって手続きや流れは異なります。
司法書士に依頼した場合の会社設立手続きの流れ
- 設立する会社の基本情報を司法書士へ伝える
- 司法書士が必要書類の作成を行う
- 書類の確認・押印と登記費用の用意
- 司法書士が代理人となって定款認証を行う
- 資本金の振込
- 司法書士が代理として登記申請を行う
- 登記完了
会社設立の流れについて詳しく知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について」をあわせてご確認ください。
1. 設立する会社の基本情報を司法書士へ伝える
まずは設立する会社の基本情報(以下)を司法書士へ伝えます。
- 会社の商号(社名)
- 本社所在地
- 事業年度
- 資本金 など
一般的には依頼側が司法書士の事務所へと訪れ対面でヒアリングを行いますが、電話やオンライン会議でヒアリングをする事務所もあります。このヒアリングのタイミングで、事業年度や資本金について司法書士に相談をすることもできます。
2. 司法書士が必要書類の作成を行う
提出した情報をもとに、司法書士が登記書類を作成します。会社の憲法ともいわれる「定款」もこのステップで作成します。
3. 書類の確認・押印と登記費用の用意
書類作成が完了したら、代表者印と登記費用を持って事務所に行きましょう。司法書士が作成した書類を確認しながら押印をし、登記費用を司法書士に預けます。
会社の基本情報を伝える際に司法書士が印鑑の発注をサポートしてくれることもあります。代表者印を持っていない場合は司法書士に相談してみましょう。
【関連記事】
会社設立に必要な印鑑は?種類や役割、用意する際のポイントを解説
4. 司法書士が代理人として定款認証を行う
司法書士が公証人役場で定款の認証手続きを行います。
5. 資本金の振込
定款認証後、資本金を指定の口座へ入金します。このとき、入出金明細を必ずとっておきましょう。登記費用については、司法書士に預ける形で支払うことが一般的です。
6. 司法書士が代理人として登記申請を行う
入金後、司法書士が法務局に出向き会社設立の登記申請を行います。司法書士が会社設立の登記申請を行った日が「会社設立日」となります。
7. 登記完了
法務局によって異なるものの、登記申請から1週間〜2週間後に法人登記が完了します。設立登記を完了させると「登記簿謄本」や「会社の印鑑証明書」を取得できるようになり、会社を設立したと認定されます。
まとめ
会社設立の手続きは全て自身でも行えますが、複雑で時間のかかるものです。費用はかかりますが、司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士などの専門家に手続きやそれに伴う業務を依頼することで円滑に進められます。
特に司法書士は登記申請や定款作成などを代行してくれる専門家であり、会社設立のエキスパートだといえます。各士業の特性を踏まえ、自社が必要な手続き代行やコンサルティングを依頼しましょう。
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監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
