会社設立の基礎知識

合同会社はやばい?やめとけといわれる理由や設立に向いている人・メリットを解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

監修 松浦 絢子(弁護士)

合同会社はやばい?やめとけといわれる理由や設立に向いている人・メリットを解説

合同会社は、比較的新しい会社形態であり、社会的信用度や認知度の低さから「やばい」「怪しいからやめとけ」といわれることがあります。

しかし、設立費用の安さや経営の柔軟性といった利点から、小規模事業者にも選ばれており、近年では設立件数が増加傾向です。

本記事では、合同会社が「やばい」といわれる理由や起こり得るトラブルを解説します。あわせて、合同会社のメリットや設立に向いている事業、スムーズに事業を行うためのポイントも紹介します。

目次

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合同会社が「やばい」「怪しいからやめとけ」といわれる理由

合同会社は、設立費用を抑えられる点や経営の自由度の高さから、近年設立件数が増えている会社形態です。しかし、「やばい」「怪しいからやめとけ」などといわれることもあります。

考えられる理由は、主に以下の3つです。

合同会社がやばい・やめとけと言われる理由

  • 社会的信用度が株式会社よりも低い
  • 資金調達が株式会社より難しい
  • ワンマン経営になる場合がある

社会的信用度が株式会社よりも低い

株式会社とは違い、合同会社には会社法上の決算公告の義務がありません。所有と経営が分離しておらず閉鎖的な会社形態であることから、ガバナンスの弱さや透明性の不足につながり、株式会社と比べると社会的信用度が低いのが現状です。

また、日本に古くからある株式会社に対し、合同会社は2006年5月1日の会社法改正で新しく設けられた会社形態であり、認知度の低さも信用度に関係していると考えられます。

近年では、合同会社の設立も増加しており、一律に「合同会社だから信用度は低い」とは限りません。ただし、金融機関からの高額融資や大口の取引などでは、株式会社のほうが有利になる可能性があります。

出典:J-Net21「株式会社、LLC、LLPの比較」

資金調達が株式会社より難しい

株式会社では、株式の発行や増資によって多数の投資家から資金を集められます。一方、合同会社では、株式発行による資金調達ができません。増資は可能ですが、出資できるのは合同会社の社員(出資者)に限られます。

増資以外の資金調達の方法は、国や自治体が実施する補助金・助成金や、借入(融資)が中心です。

出典:日本政策金融公庫「会社設立時における法律の予備知識」

ワンマン経営になる場合がある

合同会社では、意思決定を迅速に行うため、定款で代表社員(代表権をもつ社員)を定めるケースが多く見られます。しかし、代表社員に権限が集中すると、ワンマン経営に陥る場合があります。

また、合同会社には株主総会などの意思決定機関の設置が義務付けられていません。そのため、意思決定が迅速である反面、経営判断が代表社員に偏るリスクがあります。

出典:J-Net21「株式会社、LLC、LLPの比較」

【関連記事】
合同会社の代表社員とは?業務執行社員との違いや人数について解説

合同会社で起こり得るトラブル

合同会社は経営の自由度が高い反面、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。

合同会社で起こり得るトラブル

  • 出資者同士で対立すると経営が滞る可能性がある
  • 利益配分でもめることがある

特に、複数人で設立・運営する場合は意見が対立しやすく、こうしたトラブルが発生しやすくなります。

出資者同士で対立すると経営が滞る可能性がある

株式会社では、保有株数に応じて議決権が与えられ、保有株数が多いほど議決権割合が多くなる仕組みです。一方、合同会社では原則として議決権が出資者ひとり1票のため、株式会社に比べると意思決定が難しくなるリスクがあります。

特に、人数が「偶数」で意見が半分に分かれた場合は、意思決定が停滞する可能性があります。

ただし、合同会社は、定款によってひとり1票とは異なる議決権割合を定めることが可能です。複数人で設立する場合は、将来の意見対立の可能性も考慮し、定款で意思決定ルールを明確に定めることがトラブル回避のために有効です。

出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」

利益配分でもめることがある

株式会社では、原則として出資額に応じて利益が配分されますが、合同会社では特に規定がなく、利益配分を自由に定められます。

そのため、利益配分を決める際に社員同士で意見が分かれたり、不公平感が生まれたりする可能性があります。

トラブルを避けるためにも、社員全員で十分に話し合い、利益配分に関するルールを明確に定めて定款に記載しましょう。

出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」

合同会社の特徴

会社を設立する際には、会社形態ごとの違いや特徴を理解したうえで適切な形態を選択する必要があります。

会社法で規定されている会社形態は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類です。

合同会社では、出資者が社員になり、ひとり1票の議決権を有します。

出資者は有限責任であり、自身の出資額の範囲内でのみ責任を負います。そのため、仮に会社が倒産した場合でも、出資額を超える責任を負う必要はありません。

なお、合同会社の設立は資本金1円以上、社員1名以上が要件です。

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」
出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」
出典:J-Net21「有限責任と無限責任について教えてください。」

合同会社と株式会社の違い

株式会社と合同会社の主な違いは、以下のとおりです。

  
株式会社合同会社
意思決定株主総会社員の同意(定款による)
所有と経営原則完全分離原則同一
役員の任期最長10年任期なし
代表者の名称代表取締役代表社員
決算公告必要不要
定款認証必要認証不要
利益配分出資比率に応じる定款で自由に規定
設立費用約20万円〜約10万円〜
上場可能不可
社会的信用度高い株式会社と比べると低い
出典:e-Gov「会社法(平成十七年法律第八十六号)」
出典:J-Net21「株式会社、LLC、LLPの比較」
出典:日本公証人連合会「公証事務」
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

株式会社と合同会社は、いずれも資本金1円以上、社員1名以上で設立できる点で共通しています。しかし、意思決定の方法・設立費用・社会的信用度などに違いがあります。

株式会社と合同会社の違いについて、詳しくは別記事「株式会社と合同会社の違いとは?それぞれのメリットとデメリットまとめ」をご覧ください。

合同会社を設立するメリット

合同会社は、やばいといわれることがある一方で、以下のようなメリットも存在します。

合同会社の主なメリット

  • 会社設立費用が株式会社より安い
  • 所有と経営が一致していて経営の自由度が高い
  • 定款の認証や決算公告が不要で手続き負担が少ない

会社設立費用が株式会社より安い

株式会社の設立費用が約20万円からであるのに対し、合同会社は約10万円と、一般的に費用を抑えられます。

また、合同会社には決算公告の義務がないため、多くの株式会社が決算公告の方法として選択する官報公告掲載料金(毎年数万円)もかかりません。

【関連記事】
会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説

出典:日本公証人連合会「公証事務」
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

所有と経営が一致していて経営の自由度が高い

合同会社では、出資者が社員であり、会社の所有と経営が一致しています。そのため、社員(=経営者)自身の判断で迅速かつ柔軟に事業方針を決定・実行しやすい点がメリットです。

一方で、株式会社では出資者である株主と経営者が別であることが多く、所有と経営が分離しています。会社に関する重要事項を決定するには、原則として株主総会を開催し、株主から承認を得なければなりません。

出典:日本政策金融公庫「会社設立時における法律の予備知識」

定款の認証や決算公告が不要で手続き負担が少ない

合同会社は、株式会社と異なり、設立時に定款の認証が不要なため、一般的に手続きの手間や費用負担が少ないです。

また、株式会社では毎年必ず決算公告を行う義務がありますが、合同会社にはその義務がありません。

【関連記事】
会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について

出典:J-Net21「株式会社、LLC、LLPの比較」
出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」

近年は合同会社の設立件数が増えている

近年では合同会社が設立されるケースも多く見られ、2024年には4万1,774社の合同会社が新設されました。

会社形態設立件数
株式会社98,671件
合同会社41,774件
合資会社19件
合名会社11件
出典:e-Stat政府統計の総合窓口「会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」

Apple Japan・グーグルジャパン・アマゾンジャパンなど、規模の大きい外資系企業にも採用されています。

合同会社に向いている事業

合同会社は、株式会社と比べて信用度や認知度はやや低いものの、設立が比較的容易で、運営の自由度が高い点が特徴です。そのため、以下のような事業や状況に向いているといえます。

合同会社に向いている事業

  • 一般消費者向け事業の場合
  • 小規模事業の場合
  • 出資比率に基づかない利益配分をしたい場合

一般消費者向け事業の場合

商品・サービスを選ぶ一般消費者は、「会社名」や「会社形態」よりも、「ブランド名」や「店舗名」を基準に判断する傾向があります。

そのため、一般消費者向けのBtoCビジネスでは、会社名や会社形態は社会的信用度への影響があまり大きくありません。

小規模事業の場合

合同会社は、株式会社と比べて設立費用や手続きの負担が少なく、スムーズに設立できる点が特徴です。そのため、コストを抑えて事業を始めたい小規模事業者や、一人で法人を立ち上げたい事業者に適しています。

また、合同会社には株式を発行する仕組みがないため、資金調達の方法は補助金・助成金や借入(融資)が中心となります。

この点から、株式上場やベンチャーキャビタルからの出資など多額の資金調達を必要としない小規模事業者に向いているといえるでしょう。

出資比率に基づかない利益配分をしたい場合

株式会社では、出資額に応じて利益が配分されるため、資金力がある出資者ほど多くの利益を受け取ります。

一方、合同会社では、出資比率に基づかない割合で利益を配分できるため、貢献度が高い社員に多くの利益を配分することが可能です。

合同会社を設立してスムーズに事業を行うためのポイント

合同会社でスムーズに事業を進めていくためには、起こり得るトラブルやリスクを把握し、事前に備えることが重要です。主なポイントは以下のとおりです。

合同会社でスムーズに事業を進めるポイント

  • 意思決定や利益配分のルールを定款で明確に定める
  • 代表社員を定めておく
  • 補助金・助成金を活用する

また、設立後のトラブルを避けたい人やできるだけ早く本来の業務に集中したい人は、専門家への相談や設立代行サービスの利用を検討するのもよいでしょう。

意思決定・利益配分のルールを定款で明確に定める

合同会社を設立する際は、意思決定・利益配分のルールを定款で明確に定めましょう。

意思決定の方法や利益配分の基準が明確でないと、社員間で不満や不公平感が生じたり、意見がまとまらず事業運営に支障が生じたりする原因となるためです。

たとえば、利益の配分方法として、出資額に関係なく固定の比率で配分する方法や、売上への貢献度に応じて変動させる方法などがあります。また、意思決定の方法は、過半数の同意で決定する、あるいは特定の社員に権限を集中させる方法などが考えられます。

出典:J-Net21「株式会社、LLC、LLPの比較」
出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」

代表社員を定めておく

複数人で合同会社を設立する場合は、定款で代表社員を定め、責任の所在を明確にしておくと、円滑に事業を運営しやすいです。

合同会社では、出資者=経営者であるため、原則として社員全員が業務執行権と代表権をもつ立場になります。そのため、契約や手続きで混乱が生じたり、社内で対立が起きたりする可能性があります。

代表社員に権限が集中するとワンマン経営に陥るリスクもあるため、十分に検討しましょう。

補助金・助成金を活用する

国や自治体が行う補助金・助成金を活用し、計画的に資金を調達しましょう。

合同会社は、株式会社のように株式を発行した大規模な資金調達が行えません。しかし、補助金・助成金を活用して資金を確保できれば、スムーズに事業を展開しやすいです。

具体例として、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などが挙げられます。

ただし、補助金・助成金には、あらかじめ採択件数や金額が決まっているものもあり、要件を満たしていても必ず受給できるとは限りません。

出典:J-Net21「補助金・助成金の違いや補助金活用における注意点について教えてください。」
出典:全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金」

まとめ

合同会社が「やばい」「怪しいからやめとけ」といわれる理由には、社会的信用度の低さや資金調達の難しさが挙げられます。また、合同会社は出資比率に関係なく、ひとり1票の議決権があるため、意見が割れた場合は対立してしまう可能性があります。

一方で、株式会社に比べると設立費用が安く、経営における意思決定がスムーズに行えるなど、メリットも多いため、近年では合同会社の設立件数が増えているのも事実です。

発生し得るトラブルを理解し、意思決定や利益配分のルールを明確に定めるなどの対策を行ったうえで、合同会社を設立しましょう。

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合同会社のメリットは?

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合同会社を設立するリスクは?

合同会社は、出資比率に関係なくひとり1票の議決権をもつため、意見が割れて対立し、意思決定が滞る可能性があります。

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合同会社でよくあるトラブルについて、詳しくは記事内「合同会社で起こり得るトラブル」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

監修 松浦 絢子弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

松浦 絢子弁護士

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