監修 松浦 絢子(弁護士)
会社の形態として多いのは株式会社ですが、合同会社が選択されるケースもあります。法務省によると、2024年の1年間に約14万件の会社設立登記が行われ、そのうち株式会社が約10.2万件、合同会社が約4.2万件でした。
会社設立から設立後の事業運営までをスムーズに進めるには、適切な会社形態を選ぶことが重要です。
本記事では、株式会社と合同会社の違いを設立費用・決算公告・役員の任期などから整理し、それぞれの会社形態のメリット・デメリットについて解説します。
目次
株式会社と合同会社の基礎知識
株式会社と合同会社は、いずれも会社法で規定されている会社形態のひとつです。会社形態には合名会社・合資会社もありますが、現在は株式会社または合同会社で設立するケースが主流となっています。
違いを知る前に、それぞれがどのような会社形態なのかを把握しましょう。
株式会社とは
株式会社とは、株式を発行して集めたお金で運営する形態の会社です。株式とは出資した人に対して発行する証券のことで、出資をして株式を保有している人が株主にあたります。なお、現在は株券を発行しない会社も多く、株式が必ずしも証券として交付されるわけではありません。
株式会社は出資者と経営者が異なる点が特徴で、出資者である株主が株主総会で経営者(取締役)を選出します。議決権は一株につき一議決権が原則です。株主は持ち株数に応じて議決権を株主総会で行使でき、会社の経営に間接的に参加します。ただし、中小企業では株主と経営者が同一である会社も少なくありません。
国税庁が公表した「2024年度分会社標本調査」の結果によると日本の法人の約9割が株式会社であり、4種類ある会社形態の中で最多です。
出典:国税庁「2024年度分会社標本調査」
合同会社とは
合同会社とは、出資者と経営者が同一である会社形態をいいます。
このような会社形態を持分会社と呼び、合名会社・合資会社も持分会社のひとつです。
持分会社は、出資者が社員として経営を行います。株式会社のように株式を発行して出資者を募ることはせず、所有と経営が一致している点が特徴です。合同会社・合名会社・合資会社には、以下のような違いがあります。
合同会社・合名会社・合資会社の違い
- 合同会社:社員全員が有限責任社員である
- 合名会社:社員全員が無限責任社員である
- 合資会社:無限責任社員と有限責任社員の両方がいる
有限責任社員と無限責任社員で異なるのは、会社が倒産した場合に会社の負債を返済する義務の範囲です。有限責任社員は自分の出資額を超える責任は負いませんが、無限責任社員は、会社や会社債権者に対して自分の出資額を超える責任を負います。
有限責任社員は無限責任社員に比べるとリスクが低いため、持分会社で会社設立をする際は、社員が有限責任である合同会社が選ばれることが多くなっています。
なお、株式会社と持分会社では「社員」の意味が異なるため、混同しないように違いを理解しましょう。株式会社の社員は一般的には「従業員」を指しますが、持分会社での社員は「出資者」を指します。
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社には次のような違いがあります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 最高意思決定機関 | 株主総会 | 原則として社員の過半数(ただし、定款変更など重要事項は総社員の同意が必要) |
| 出資者 | 株主 | 社員 |
| 経営者 | 取締役 | 業務執行社員(業務執行社員を選任しない場合は社員全員) |
| 出資者と経営者 | 分離 | 同一 |
| 責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 |
| 設立費用の目安 | 20万円~ | 6万円~ |
| 議決権 | 原則として一株一議決権 | 一人一議決権 |
| 決算公告義務 | 有 | 無 |
| 定款の作成 | 必要 | 必要 |
| 定款の認証 | 必要 | 不要 |
| 役員の任期 | 通常2年、最長10年 | 制限なし |
| 利益の配分 | 出資比率による | 自由 |
| 信用度 | 高い | 株式会社に比べて低い |
| 株式発行による資金調達 | 可 | 不可 |
出典:J-Net21「会社設立時には戦略的に資本金額を決める」
以下では、2つの会社形態の違いのうち、主なものについて解説します。
会社設立費用
会社設立時にかかる費用は、一般的に株式会社よりも合同会社のほうが安く済みます。設立費用のうち、株式会社と合同会社で差が出る主なものは「登録免許税」と「定款認証手数料」の2つです。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 設立登記時の登録免許税 | 資本金額の1,000分の7 (15万円に満たないときは1件につき15万円) | 1件につき6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金額や条件に応じて1.5万円~5万円 | 認証不要 |
株式会社では少なくとも15万円の登録免許税がかかるのに対して、合同会社では申請1件につき6万円です。
また、合同会社は定款認証が不要で認証手数料がかかりませんが、株式会社は定款作成後に公証人による認証を受ける必要があり、資本金額や条件に応じて1.5〜5万円の手数料がかかります。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
出典:日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
決算公告義務
株式会社では決算公告が義務付けられていますが、合同会社には決算公告の義務はありません。
株式会社の場合、定時株主総会の終結後、遅滞なく貸借対照表(大会社は貸借対照表および損益計算書)を公告することが会社法で義務付けられています。
そのため、毎年決算公告を行う手間がかかり、官報に掲載する方法で決算公告を行うと費用もかかります。官報に掲載する場合は掲載枠単位で購入する必要があります。貸借対照表の要旨の掲載に通常2〜3枠程度必要となり、その費用は2枠で約8万円、3枠で約12万円です。
なお、官報の掲載料は国立印刷局の料金改定により変動するため、最新情報はつど確認する必要があります。
一方、合同会社は決算公告義務がないため、手間や費用がかかりません。
税金
株式会社も合同会社も課税される税金の種類は同じです。法人税・事業税・消費税などが課され、税率についても違いはありません。
ただし、会社設立時にかかる登録免許税の税額が異なります。
役員の任期
株式会社の役員には任期があり、定期的に役員変更の手続きを行う必要があります。任期は原則として取締役が2年、監査役が4年です。なお、非公開会社(全ての株式に譲渡制限を設けている株式会社)の場合は、定款を変更すれば取締役・監査役ともに任期を最長10年まで延長できます。
同じ役員が引き続き役員を務める場合でも、任期満了のたびに登記を行わなければなりません。その際、資本金額が1億円を超える場合は1件につき3万円、1億円以下の場合は1件につき1万円の登録免許税がかかります。
一方、合同会社は役員の任期がないため、任期満了による登録免許税がかかりません。
出典:J-Net21「役員変更の手続きについて教えてください。」
出典:J-Net21「会社設立時には戦略的に資本金額を決める」
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
利益分配と経営の自由度
株式会社の場合、株主への配当金は原則として出資比率に応じて行われます。一方、合同会社では、出資比率とは異なる割合で利益を配分することも可能です。
また、基本的に株式会社では、事業経営に関する事項などの意思決定は株主が行います。重要事項に関しては株主総会での議決を経る必要があり、経営者が自由に決められるわけではありません。そのため、経営の自由度は合同会社より低くなる傾向があります。
一方、合同会社は出資者と経営者が同じであるため、株式会社のように経営者以外の出資者の賛同や承認を得る必要はありません。所有と経営が分離されていない分、経営の自由度は株式会社より高くなります。
出典:J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」
信用度
株式会社は、決算公告が会社法で義務付けられているなど法律の規制が多い分、社会的な信用度は合同会社よりも高い傾向があります。
そのため、金融機関からの借り入れ・取引先との交渉・人材募集など、事業運営にあたって有利に働く可能性があります。
株式会社と合同会社のメリット・デメリット
株式会社と合同会社の違いを踏まえた両者のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| メリット | ・合同会社よりも信用度や知名度が高く資金調達がしやすい ・上場による資金調達が可能 | ・株式会社よりも設立費用を抑えられる ・所有と経営が一致しているため迅速な意思決定が可能 ・決算公告の義務がない |
| デメリット | ・合同会社よりも設立に費用や手間がかかる ・決算公告の手間がかかる | ・株式会社よりも信用度や知名度が低く資金調達がしにくい ・出資者同士で意見対立があると意思決定が困難になる場合がある |
株式会社は、信用度の高さや資金調達のしやすさなどが主なメリットです。ただし、合同会社に比べて会社設立費用が高く、決算公告の手間がかかります。
一方、合同会社は、出資者が事業経営を行うため、意思決定を迅速に行える点がメリットです。
ただし、出資割合に関係なく出資者一人につき一議決権をもつため、出資者の意見が対立すると意思決定が困難になる場合があります。また、出資者の数が偶数の合同会社では、賛成と反対が同数になってしまい、会社としての意思決定ができなくなるケースもあります。
このような場合、リスクを回避するために、定款で多数決の方法や代表社員の決定権を定めておくことが必要です。
株式会社と合同会社はどちらを選ぶべき?
一般に株式会社と合同会社が適しているとされるケースは、それぞれ以下のとおりです。
株式会社が適しているケース
- 資金調達が必要で社会的な信用度を重視する
- 将来事業拡大による資金調達の可能性や上場の可能性がある
合同会社が適しているケース
- 設立費用を抑えたい
- 会社名を出さなくても取引が成立する
- 小規模のビジネスで大きな資金調達を必要としない
出資者が出資した額の資金で事業を運営でき、資金調達の必要がない小規模なビジネスであれば、合同会社であっても事業を継続できるでしょう。
一方、将来的に事業を拡大し、増資や金融機関からの借り入れなど資金調達をする可能性がある場合は、社会的な信用度が高い株式会社が適しています。
合同会社で設立し、途中で株式会社に変更する方法もありますが、会社形態を変更する際に手続きの手間や費用がかかります。
なお、会社法で規定されている会社形態は「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4種類であり、会社を設立する場合はこの4つの中から選択します。
法務省によると、2024年の設立登記件数は株式会社が約9.9万件、合同会社が約4.2万件でした。一方、合名会社は11件、合資会社は19件と設立件数は少なく、ほとんどの法人が株式会社または合同会社のいずれかの形態で会社を設立しています。
【関連記事】
新設できる会社は4種類!会社形態ごとの特徴を15項目で比較
自分一人で合同会社を設立する流れは?必要書類から関連する手続きまで解説
まとめ
会社を設立する際には、事業の内容や規模などを踏まえて会社形態を選ぶことが重要です。日本でもっとも多い会社形態は株式会社ですが、事業規模などによっては合同会社が適しているケースもあります。
株式会社と合同会社では、設立費用・決算公告義務の有無・経営の自由度・社会的な信用度などで違いがあり、いずれもメリットとデメリットがあります。両者の違いを理解したうえで、自社に合った会社形態を選択しましょう。
適切な会社形態を選ぶことで、会社設立後のスムーズな事業運営を実現でき、事業の安定や拡大の可能性を高めることにつながります。
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株式会社と合同会社の違いは?
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株式会社と合同会社それぞれのメリットは?
株式会社は信用度の高さや資金調達のしやすさがメリットです。一方、合同会社は設立費用を抑えられる、意思決定を迅速に行えるなどのメリットがあります。
株式会社と合同会社、それぞれのメリットについて詳しくは「株式会社と合同会社のメリット・デメリット」をご覧ください。
参考文献
▶︎ e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」
▶ e-Stat「会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」(2024年)
監修 松浦 絢子弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。
